SNSコラム

【前編】「商談の半数以上にSNSの力が働いている」ベイジ枌谷さんに聞く、BtoB企業のSNS活用

2020年08月18日
ザ・プロフェッショナル

最終更新日:2021年5月20日

各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルたちとホットリンクCMO・いいたかが、2020年以降のSNSマーケティングのあり方について考える対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」

今回のゲストは、株式会社ベイジ (baigie)代表取締役の枌谷 力(そぎたに つとむ)さん。直近1〜2年でSNSでのコンテンツ発信に注力し、「BtoB企業のためのweb制作会社」というキャッチコピーのもと、ブランド発信を強化しています。

同社の年間500件近い問い合わせのうち、商談化まで至る有効案件に絞って認知経路を分析すると、その50~60%がSNSがきっかけの可能性が高いそうです。

案件単価が数百万円から1000万円超と比較的高額で、SNSが効きにくいといわれるBtoBにおいて、もっともSNSマーケティングを成功させているBtoB企業といえます。

インタビュー前編では、費用対効果の測定が難しいSNSマーケティングに対し、BtoB企業はどのような姿勢で取り組めばよいのか、枌谷さんといいたかが意見を交わしました。

(聞き手:ホットリンクライター/編集者 私がエレン

枌谷力。NTTデータで営業職を経験後、Webデザイナーとして広告代理店に就職。フリーランスとしてのキャリアを経て、2010年に株式会社ベイジ(baigie)を設立。「BtoB企業のためのweb制作会社」として事業展開している。BtoBマーケティングや戦略コンサル、UX/UIデザイン、コンテンツ制作といった分野も得意とする。マーケティング支援会社・ナイル株式会社のUX戦略顧問も務める。

後編はこちらから。

【後編】「魂がこもった記事を書けているか?」ベイジ枌谷さんが定義する良質なコンテンツとは

「Webサイトをリニューアルするならベイジに頼むしかないと思った」

私がエレン:
先日はいいたか主催の「#バズらない話をしようか(ダークソーシャル倶楽部)」にご出演いただいたり、過去にはオンラインカンファレンス「#NEWWORLD2020」にもご登壇いただきました。

普段から交流の深いお二人ですが、そもそもどのように知り合われたのでしょうか。

参考:「人生、どうなったら成功だと思う?」Web業界で活躍中の3人が飲み語る #バズらない話をしようか

リアルの強みをネットで体現する。コンテンツメーカーが今やろうとしていること  #NEWWORLD2020 DAY3

枌谷:
最初に直接お話ししたのは、昨年ホットリンクさんのWebサイトリニューアルを依頼いただいたときですよね。
ベーシックに勤められているころからいいたかさんのお名前はよく見聞きしていました。まさか、一緒に仕事するとは思っていませんでしたね。

いいたか:
ホットリンク入社が決まった時、まず僕がやるべきなのはWebサイトのリニューアルだと考えていました。Webサイトまわりの課題感は当社のCEOも同じように感じていたので、すぐに進めようとなって。CEOから「どこに任せたらいいか」と聞かれた時に「ベイジ一択です」と即答しました

枌谷:
うれしいですね。でも、なぜ当社を推してくれたんでしょう? いいたかさんの周りで、うちと仕事した人はとくにいなかったし、関わりはなかったですよね。

いいたか
以前から枌谷さんのブログやSNSでの発言を拝見していて、正しい発信をしているなと感じていたからです。Web界隈からもベイジさんの良い噂ばかり聞いていましたね。「意見も波長も合いそうだ」と感じて、ベイジさんを推薦しました。
枌谷さんと先述したCEOとで初回打ち合わせをしてもらったのですが、30分ほどで即決し、その場で契約の話を進めたんですよね。

枌谷
スピーディすぎて、社員にもつい自慢しました。いまだ破られていない、商談からクロージングまでの最速記録です(笑)。

私がエレン:
ベイジさんに手がけていただいたWebサイトリニューアルの経緯を解説したコンテンツは、ほうぼうで話題になりましたよね。

参考:ホットリンクのサイトリニューアル戦略資料を公開(8,000字の解説付)

ホットリンクとの取り組みが始まった前後で、枌谷さんのマーケティング界隈でのプレゼンスも向上したように思うのですが、実際何か変化はあったでしょうか。

枌谷:
ホットリンクさんとのサイトリニューアルのプロジェクトは、私自身がホットリンクさんから直接SNSの講義を受けている面もありました。打ち合わせのたびに「なるほど!」と思わされていましたね。

とくにホットリンクさんのノウハウの影響を受けて、私もTwitterの運用方法を色々と変えたのですが、SNSで繋がるクラスタが明らかに変わりましたね。それまでウェブ制作系クラスタと一部のBtoBマーケ系クラスタに限られていたのが、一気に広がったというか。
それ以降、SNS経由の売り上げも上がってきていますし、ホットリンクさんとのお仕事は、当社にとってはターニングポイントのひとつだったと感じています。

SNS単体でKPIを追ってはいけない

いいたか
BtoB企業で、ベイジさんほどうまくSNSマーケティングを実施できているところはほとんどいないですよね。BtoB企業がSNSマーケティングに取り組む際、よく課題になるのが、「何をKPIに設定すればいいのか」。多くの企業は、SNS単体で成果を見ようとするんですよね。

枌谷
単体ではなく、マーケティング全体に対する波及効果を見ないといけませんよね

いいたか:
プラットフォームが多様化している今は、ひとりのユーザーといろんなチャネルで接触するんですよね。なので、入り口だけで見ても出口だけ見ても、正確な効果測定はできないんです。

例えば、情報通の社員がたまたま枌谷さんのTwitterアカウントを見て、次にベイジのブログを見て「良い会社だな」と思う。その情報通社員が、自社のWebサイトリニューアルを考えている社員にベイジを推薦し、推薦された人がサイトに訪問し、コンバージョンしたとします。

これは出口だけ見ると「SNSに触れた人はコンバージョンしてないし、コンバージョンした人はSNSに触れてない」ことになりますが、そこに至るまでにはSNSでの発信が大きく寄与している。

どのコンテンツに触れて問い合わせに至ったのかを見るべきなんです。

※画像提供元:ベイジ 

SNSがコンバージョンの作用する流れの図。社内の情報通はTwitterやオウンドメディアを見ているが、コンバージョンした本人はTwitterやオウンドメディアに触れていない、ということが起こりうる。

枌谷:
Googleアナリティクスで分析すると、コーポレートサイトや製品サイトの流入チャネルとしてSocialが多くなることは、稀です。なぜならSNSで知った企業のサイトには、指名検索から訪問したり、社内チャットに貼られたリンクから訪問したりする傾向があるからですね。

Googleアナリティクスのチャネルの数字だけ見てると、見誤ります。

例えば当社でも、お問い合わせや資料請求などのラストセッションの流入チャネルだけ見ていると、Socialの貢献は2~4%程度しかありません。

※画像提供元:ベイジ

でも、Googleアナリティクスの流入チャネルの情報では正確な認知経路がつかめないため、これとは別に、フォームで認知経路の質問をしてるんですよね。そうすると、問い合わせの約10%以上がSNSで認知しているのです。
さらに社内紹介/社外紹介についても、SNSで認知した社内スタッフや知人が紹介のきっかけであるケースが多く、かなりの確率でSNSの力が働いています。

※画像提供元:ベイジ

さらに当社の場合、お問い合わせがきてもそこから商談に至るのは1割程度なのですが、その1割の有効商談に絞ると、SNS経由が25%近く、社内紹介/社外紹介が30%近くになります。つまり、最大で50~60%の商談が、SNSによって生み出されている可能性があります。

私たちには今、BtoBのWeb制作の事業と、業務システムのUIデザインの事業の2つが存在するのですが、検索経由の有効商談化は後者の方が圧倒的に多いです。要するに、前者のBtoBのWeb制作に絞ると、7~8割がSNS経由の商談であったり受注であったりするのかな、と思います。

こうなってくると「SNSは事業貢献している」と明確に断言できますよね。

私がエレン:
マーケティング全体のひとつの施策として捉え、どれだけ購買プロセスをアシストできているかを測定するべきだということですね。そのような体制を整備できれば、すべてのBtoB企業にとってSNSマーケティングは有効な手段になるのでしょうか。

枌谷:
正直、そうとは限らないんですよね。BtoBの中でもSNSが有効なのは、現場の意見を聞いて導入するサービスを決めるボトムアップ型の商材だと思います。

私たちの場合も、意思決定者やWeb担当者が社内チャットなどで良い制作会社の情報を募り、その中から声をかけたりすることが起こります。このように現場の情報を参考に導入を決めていくのが、ボトムアップ型の商材です。この手の商材の場合、社内にSNSをやっているスタッフの声が、意思決定メンバーの中に入りこみやすい傾向があります。

 

「ダークソーシャルとは」とは……
「オープンではないソーシャル」のこと。FacebookやTwitterのタイムラインなど誰でもアクセスできるのがオープンソーシャル、DMやLINEなど当事者でのみやりとりされるのがダークソーシャル。

逆にトップダウン型、例えば経営コンサルとか法人向け金融サービスのような、会社の上層部や一部の役職者だけで意思決定するような商材の場合、その意思決定者自身がSNSをやってない限りは、SNSはほとんど効かないんじゃないかな、と思います。

SNS運用を強制しても意味なし。SNS好きな社員に任せてみる

私がエレン:
では、向いている企業がこれからSNS運用を始める場合は、どのように進めればいいのでしょうか。

枌谷:
SNS運用は本人の資質が大きく関わってきます。つまり「SNSが好きかどうか、発信することに抵抗がないか」が重要なんです。無理にやらせても絶対に伸びることはありません。

Twitterが好きな社員がまったくいない企業はほとんどないと思うんです。まだ研究中ですが、私がBtoB企業3社で取り組んでいるTwitter道場の傾向でいうと、5%~10%の社員はTwitterに向いてて、継続的に活動を支援することで開花する傾向が見受けられます。

そのような社員にTwitter運用を促して、のびのび発信させる環境を整えるのが重要だと思います。SNSは確実性が読めない施策なので、興味があるとか、楽しさベースで始めるのがいいでしょうね。

いいたか:
社員が発信するのは大きな意味がありますよね。新型コロナウイルスの影響もあって、店舗スタッフがインフルエンサーとしてSNSを活用する施策も注目され始めてますし。ホットリンクでも最近、社員のインフルエンサー化を支援するサービスを始めました。

参考:「社員も情報発信し、顧客とつながる時代へ。 『社員インフルエンサー化支援サービス』の提供を開始」

枌谷:
採用文脈でも、社員がSNS発信を積極的に行っていると圧倒的に有利ですよね。ベイジの社員が結構SNSで発信してくれるようになってきたんですが、社員の顔や人柄が見えると、応募しやすくなるんでしょうね。今年の1~6月で、約60人が直接応募してくれました。これは昨年の倍のペースです。どの求人媒体にも情報を掲載していないのに。

私がエレン:
SNSマーケティングを始める際に、気をつけておくべきポイントはどこにあるのでしょうか。

枌谷:
大前提として、良質なコンテンツを用意しておくことが何より重要です。

いいたか:
僕もそう思います。SNSの受け皿になる部分がしっかりしてないとダメなんですよね

だからこそ、僕がホットリンクに入社して最初にやりたかったのが、Webサイトリニューアルだったんです。「これから、ホットリンクとしてUGCに力を入れていくぞ」という時に、UGC経由で当社にたどり着いたユーザーに提供するコンテンツがちゃんとしていないと、どれだけUGCを醸成できても意味がないんですよね。

記事終盤で語られた「SNSマーケティングには、良質なコンテンツが必要」という話題について、後編ではさらに深掘りしていきます。枌谷さんやいいたかが考える「良質なコンテンツ」とは?

後編はこちらから。

【後編】「魂がこもった記事を書けているか?」ベイジ枌谷さんが定義する良質なコンテンツとは

 

今回の「ザ・プロフェッショナル」もお楽しみいただけましたか? 本シリーズでは、今後も各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルをお招きして対談を行ないます。過去の記事はこちらからご覧ください。

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