SNSコラム

ビジネス貢献しないインフルエンサーマーケは、なぜ生まれてしまうのか? 石渡広一郎×澤山モッツァレラ

2024年03月07日
SNSコラム | ザ・プロフェッショナル

各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルと、SNSやマーケティング、ビジネスのあり方について考える対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」。今回は番外編として、ホットリンクの石渡広一郎と澤山モッツァレラの対談をお送りします。

2024年2月14日、ホットリンクは新サービス「HottoLink Creator Marke(ホックリ)」をリリースしました。本サービスでは、商品・サービスの特徴、ユーザーベネフィットを伝えることに優れたクリエイターとタッグを組み、成果につながるインフルエンサーマーケティングを提供いたします。

従来のインフルエンサーマーケティングは、一時的な話題創出にはつながるものの、しっかりとしたビジネス貢献に必ずしもつながっていないケースが散見されます。そんな状況で、ホットリンクがインフルエンサーマーケティングを主軸としたサービスを展開するのはなぜか。弊社CNS事業本部長の石渡広一郎に聞きました。

(写真・執筆:サトートモロー インタビュー・編集:澤山モッツァレラ

インフルエンサーマーケティングを本格始動する理由

澤山:ホットリンクはどちらかというと「戦略系のSNSマーケティングに強い会社」というイメージが強いかと思います。なぜこのタイミングで、インフルエンサーマーケティングサービスである「ホックリ」をスタートしたのでしょうか?

石渡:ホットリンクは、実は2020年頃からインフルエンサーを起用したマーケティング手法に着手しています。現在にいたるまで、様々な企業様とご一緒し、成果を生み出してきました。公開しているものでは、ジョンソンヴィル様にリロ氏を起用した事例などがあります。

https://www.hottolink.co.jp/column/20221219_112728/

石渡:ホットリンクは、お客様のマーケティング上の課題を解決するためにさまざまなサービス・事業を立ち上げてきました。その中で、着実にインフルエンサーマーケティングの成功事例が生まれノウハウも蓄積されてきました。

 同時に、インフルエンサーマーケティングが市場として今後も成長することを見越して、「ホックリ」の立ち上げへといたりました。

 これまでの推移を見ても、インフルエンサーマーケティングの市場は伸び続けています。市場が成長しているということは、世の中にニーズがあるということ。企業の多くが、優れたクリエイターやインフルエンサーを起用したいという想いを抱いているのだと思います。

澤山:そうしたニーズが絶えず存在する理由は、どこにあるのでしょうか?

石渡:ソーシャルメディアの存在が大きい気がします。ソーシャルメディアは、いわば「パーソナルメディア」の複合体です。クリエイターやインフルエンサーはひとつのメディアを形成しています。

 企業側にはこうしたメディアとのタイアップ、コラボを通じて商品を紹介してもらいたい、サービス体験を語ってほしいというニーズがあるのかと思います。

澤山:なるほど。4マス(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)が長年取り組んできた活動と同じことを、インフルエンサーマーケティングで実践したいのですね。

インフルエンサーマーケは「ラクな手段」ではない

澤山:インフルエンサーマーケティングのニーズは常に存在する一方で、失敗事例もよく聞きます。残念なことですが、インフルエンサーマーケティングがある種“胡散臭い”手法と受け取られてしまう現状もあるように思います。

石渡:失敗事例において共通して見られるのが、マーケティング活動を行なうために必要なソリューションや、プロモーションとして必要な要素を満たしていないことです。わかりやすい例だと、商品の魅力やサービスの機能・便益を伝えたいのに、その説明がそもそも不十分という感じですね。

 商品・サービスの良さがユーザーに伝わらない形で、コンテンツが出来上がってしまっている。こうした失敗例は、インフルエンサーマーケティングでは珍しくありません。クリエイターの良さを活かすことと、マーケティングのソリューションとして備わっているべきものの、バランスが取れていないのだと思います。

 それに、ターゲットのフォロワーと商品・サービスがマッチしていないという問題も起こっています。特にソーシャルメディアは、コミュニティが細かく分断されていてサイロ化(全体が見渡せなくなる現象)が生じやすいため、こうしたギャップに陥りがちです。

澤山:本来ターゲットにしたい層と、インフルエンサーやクリエイターの情報が届く層。この二つにギャップが生じていると。

石渡:それ以外にも、商品・サービスのマーケティングやプロモーションを行なうためのコミュニティの設定が誤っていることも多い気がします。これはインフルエンサーマーケティングに限らずの話ですが。

澤山:ターゲティングが不十分というケースのほか、そもそものコンテンツの質が低いケースもあるのでしょうか。

石渡:そうですね。コンテンツの質が低いまま、企画が実施されているという言い方が正しいかもしれません。事前のすり合わせが不十分なまま制作に入るため、コンテンツの修正が限定的になってしまう。特にインフルエンサー頼みで企画を進行すると、この事態に陥りやすい気がします。

澤山:実感としてもわかります。私自身もX(Twitter)のフォロワー数が2万人超いることもあり、インフルエンサーとしてPR案件を担当したことが何回かあります。大半はしっかり企画をしてくれましたが、中には企画からコンテンツの拡散までほぼすべて丸投げされるケースもあったように思います。

石渡:ある種、広告代理店にとってインフルエンサーマーケティングが“ラクな手段”になってしまっているんですよね。その結果、施策として十分な準備がなされないまま、実施にいたっているのだと思います。

 クリエイターやインフルエンサーにすべてを任せて、商品・サービスの魅力を伝え切るのは限界があります。本来は、企業側がしっかりサポートしなくてはいけません。実際、インフルエンサーマーケティングがソリューションとして適切なのかを考えるとき、そうではない事例も多かったはずです。

 ギフティングはその最たるものだと思います。ギフティングはインフルエンサーに自社商品を贈り、使用感を体験した上で商品を宣伝してもらう施策です。

 この施策は「数百人のインフルエンサーに商品を贈り、何人かがバズればいい」という感覚で用いられていることが多いかと思いますが、商品の情報などを丁寧にお渡ししなければ、博打になってしまいます。

 インフルエンサーと丁寧にコミュニケーションを重ねないと、インフルエンサーマーケティングは十分に機能しません。にもかかわらず、肝心なコミュニケーションを省略しているケースが多い気がします。

澤山:何らかの理由があるとはいえ、企業が本来手をかけるべき部分に力を注いでいないわけですね。

石渡:どのようなマーケティング手法であれ、“ラクな手段”なんて存在しない。それなのに、業界がインフルエンサーマーケティングのことを誤解して、かけるべきコストやコミュニケーションに時間を割いていないのではないか。これこそが、インフルエンサーマーケティングが失敗する大きな要因だと考えています。

「#PR表記をすると成果が落ちる」は本当か?

石渡:インフルエンサーマーケティングといえば、PR表記も誤解されていることが多いなと感じます。

 あえてハッキリ言いますが、「『#PR』が付いているから成果が出ない」ということはないと私は考えています。PRと銘打たれたコンテンツであれ、質が高ければ態度変容は起きるんです。

 リロ氏のコンテンツを見て、ホットサンドメーカーを買いたくなった人はたくさんいるでしょう。イラストレーター・りおたさんのコンテンツを見て、サッカー観戦したくなった人も多いはずです。

「りおた」の絵は、なぜ有名選手を魅了するのか? イラストレーターりおた #ザ・プロフェッショナル|SNSコラム|ホットリンク

澤山:同感です。PR表記によってインプレッションは多少下がりますが、そのことと届けたい層にしっかりアプローチできているかは別問題だと思います。

石渡:リロ氏、りおたさん、そしてぼく・イラストレシピさんの3人は、「ホックリ」のパートナーでもあります。なぜこの3人とご一緒しているかというと、クリエイターとしてのこだわりを持ちつつも、商品・サービスの良さを伝えるという視点を持っているからです

 3人のクリエイターは、「商品の良さを伝える」というのは決して簡単なことではないと理解しつつ、議論を重ねながらコンテンツを制作してくださいます。

ホットリンクは「やるべきことをやる」だけ

澤山:既存のインフルエンサーマーケティングの問題点について話してきましたが、「ホックリ」はこれらの問題をどのように克服していますか?

石渡:ホックリのサービス内容と、ホットリンクの強みは以下の3点だと考えています。

(1)貴社ブランドに最適なインフルエンサーのキャスティング
ホットリンクの強みであるデータ分析に基づいて、ブランドとの親和性が高いインフルエンサーをキャスティングします。また、単にインフルエンサーへPR投稿を依頼するのではなく、インフルエンサーとの「共創」でコンテンツを制作することで、購買行動と話題化を実現します。

(2)ユーザーのインサイトに合った企画設計
自社商品について反応しやすいユーザーのインサイトに合った企画を、綿密にプランニングします。それによって商品が話題化され、認知獲得を実現することができます。また、単独の企画としてではなく全体のSNS戦略と連動させ、施策効果の最大化を実現します。

(3)効率的な広告配信による、十分なアテンション(認知)の獲得
ターゲット層への広告配信を合わせて実施することで、アテンションを十分に獲得することができます。弊社が独自開発したコミュニティクラスタ分析によって「自社商品について反応しやすいユーザーが存在するコミュニティ」にターゲティングし、効率的に広告を配信することが可能です。

 この3点について、独自性の高いことは書かれていません。お客様の商品・サービスのプロモーションを行なうために、インフルエンサーと一緒にやるべきことをやる。これが、問題点の克服につながるのかなと思っています。

 ソーシャルメディアにおける情報拡散の仕組みを踏まえた上で、適切な広告配信を行なう。優秀なパートナーとともに、コンテンツの質と制作スピードを両立できるディレクションを提供する。こうした行動を、一つ一つ丁寧に行なうのが、私たちの仕事かなと。

澤山:問題点を取り除くというよりも、これまでに蓄積してきた「こうすれば成果が出やすくなる」という手法にしっかり取り組んでいくということなのですね。

クリエイターとは「一生をともにする」覚悟で

澤山:今後、「ホックリ」はどのような方向性を目指していこうと考えていますか?

石渡:クリエイティブやコンテンツという最後のピースに当たる部分は、クリエイターさんに委ねられるところがあります。そして商品のジャンルによって相性が良いコンテンツ、クリエイティブは異なります。だからこそ、今後はより多くのクリエイターさんと関係を構築していきたいです。

 同時に、「ホックリ」ではパートナーとなるクリエイターを成功に導くお手伝いもしていきたいです。私は弁理士の資格を持っていて、クリエイターの創作活動を支援する「Arts and Law」という非営利団体の理事も務めています。

 そこで活動していると、クリエイターという職業の大変さを痛感します。一部のエンタメ業界を見ていると、クリエイターが「消費される存在」として扱われています。しかし、企業案件をこなすことは、クリエイターにとって大きな活路になると思うんです。(関連:マンガとSNS、なぜこんなに相性が良いのか? 佐渡島庸平さんに訊いてみた

 「ホックリ」を通じて、すべてのクリエイターを救うことはできません。それでも私たちは、「この人と一生をともにする」という覚悟を持って、パートナーと接していきたいと考えています。そして、クリエイターやインフルエンサーを起用したいという企業と、うまくマッチングしていきたいですね。

澤山:3人のパートナーのように、「ホックリ」に共感してくれるクリエイターやインフルエンサーと、親密な関係を築いていきたいですね。

石渡:一部のクリエイターは、商業的な活動を避ける傾向にあります。しかし、商業的な背景で生まれた作品が、長く語り継がれるものになる可能性を秘めているのです

 例えば、ヨハネス・フェルメールの『牛乳を注ぐ女』という絵がありますよね。実はあの作品は、もともとパン屋の看板として描かれたと言われているんです。

澤山:そうなんですね!

石渡:フェルメールがお金に困っていた頃、パンの代金として描かれたと言われています。こうした事例でもわかるように、純粋なアートの観点で作られたコンテンツじゃなくても大きな価値が生まれると、クリエイターの方々には知ってほしいなと思います。

澤山:「そうだ、京都行こう」など、数十年にわたり人々の心に残るテレビCMもありますね。

石渡:もちろん、クリエイターとの関係構築と同時並行で、プランニングやコンテンツ設計、ディレクションなど弊社が担う部分は今後もブラッシュアップし続けていきます。

 ここまでに取り上げたインフルエンサーマーケティングの失敗は、実施する会社のケイパビリティに根本的な問題がありました。ホットリンクなら、その問題を解決して失敗のリスクを最小限にできます。

 インフルエンサーマーケティングに失望している担当者様は、弊社の「ホックリ」でもう一度この手法を再検討してみてください。

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