SNSコラム

「素人さん」に発注しないために。マーケティング支援会社に依頼する以前の問題 対人マン(R6Bソーシャルコマースディレクター)×鈴木脩平(ホットリンク執行役員COO)

2024年06月28日
SNSコラム | ザ・プロフェッショナル

最終更新日:2024年6月30日

「Instagram運用代行会社には、商売を理解しているコンサルタントが少ない」。アパレル業界や建築業界などを卓越した対人スキルで渡り歩いてきたなにわの商人・対人マンさんは、Instagram支援を始めとするSNSマーケティング支援会社について辛辣な言葉を投げかけます。

そもそも、「対人マン」とは何者なのか。累計161社・234アカウントを支援してきた経験を通じて、企業のSNS運用にどのような問題点を感じているのか。対人マンさんとX(旧Twitter)を通じて交流している、弊社執行役員・鈴木脩平も交えて話を伺いました。

(撮影:松島章太 執筆:サトートモロー 編集:澤山モッツァレラ

競合他社からも愛される対人スキル

鈴木:「対人マン」という名前、インパクトがすごいですよね。

対人マン:この名前は、僕のことをよく知る人に命名してもらったんですよ。「バイネームで仕事を取るのではなく、名前を隠して活動しようかな」と相談したところ、「対人スキルでここまでのし上がってきたのだから、“対人マン”と名乗ったら?」と提案してもらって。

 名前の響きが気に入って、その場でアカウント名を変えてプロフィールも一切削除しちゃったんです(笑)。

澤山:そう言わしめる、対人マンさんの経歴が気になります。

対人マン:僕のキャリアは、18歳に服飾関係の問屋へ就職したことから始まります。ここでバイヤーや販売員、フロア責任者など販売にまつわるさまざまな経験を積みました。

 次に、27歳で建築事務所に転職しました。「自分に足りない能力は営業力だ」と思い、世界で一番難しい商材である「家」を売る経験を積もうと決めたんです。せっかく営業を学ぶのであれば、高額商材の販売経験を積みたいなとも思っていました。

 転職時は、他の営業マンと比べて年上でした。そして他の営業マンのほうが、圧倒的に専門知識を持っていました。「若さでも知識量でも勝てない」と考えた僕は、ショールームのスタッフさんと仲良くなることにしたんです。

澤山:どうやって仲良くなったんですか?

対人マン:お客様をショールームにお連れするとき、毎回スタッフさんにお礼を伝えたり、お土産を持っていったりしたんです。すると、僕のお客様にはとても丁寧に対応してくれるし、見積書などの書類もすぐ作成してくれるようになりました。

鈴木:いわば外部も含めた「対人マンチーム」を作り、売上を伸ばす営業スタイルを確立したのですね。

対人マン:そうですね(笑)。このときはとにかく多忙でした。ほぼ毎日、朝6時から夜中2時ぐらいまで働く生活。休みは月に1日あればいいほうだったんじゃないかな。

 そんな生活を続けていたものだから、鋼のメンタルを持つ僕も身体を壊してしまって。6年ほど働いて、病院で「うつ病一歩手前」と診断されてその日に辞表を出しました。療養後、最初に勤めていた会社の取引先で、創業90年以上の歴史を持つタオルメーカーに再就職しました。

 僕は量販店向けの営業を担当していましたが、タオルの知識ゼロでも商品を売れるよう、他の営業とはまったく異なる戦略を選びました。競合他社の営業マンと仲良くなって、新規の取引先を紹介してもらったりしていました。

鈴木:そんなこと、可能なのですか?

対人マン:競合他社といっても、扱う商品のカテゴリーが異なれば互いに利益を奪い合うことになりませんからね。

 もちろん、ただ「紹介してほしい」とお願いするわけではありません。営業マンのなかでも年上という立場を活かして、他社の営業マンを集めて定期的に親睦会を開催したんです。親睦会を開くようにしてしばらく経つと、「対人マンさんなら」と紹介されるようになりました。

 それと、取引先の店舗にもよく足を運びました。取引先や周りの店を視察して、売り場の状況に合わせて商品を提案します。現場に足を運ぶ営業マンなんてほとんどいなかったので、取引先も重宝してくださるんですよね。

 結果、創業90年以上のメーカーで、担当したほとんどの取引先との取引額を過去最高にしました。会社を辞めたときは、競合他社の人たちが送別会を開いてくださいましたね。

鈴木:取引先からもライバルからも愛されていたと。まさに「対人マン」なエピソードですね。

「インスタ映え」のない時代から始めたインフルエンサーマーケ

鈴木:タオルメーカーを辞めてからはどうしたんですか?

対人マン:最初の会社の先輩が立ち上げた服飾雑貨メーカーに転職しました。ここでの経験が、僕の今の活動につながっています。

 当時は楽天市場やYahoo!ショッピングなど、ECが広く普及すると同時に、ブログブームでもありました。そこで僕は、アメブロの人気ブロガーがアパレルブランドを立ち上げたり、人気タレントがブランドのPRをしたりする様子を目の当たりにします。

 そして2012年、ブログブームが落ち着きを見せたあたりで僕はInstagramに出会います。「これだ!」と思った僕は、そこから2019年にかけて、今でいうインフルエンサーマーケティングに取り組みました

 最初の数年は、インフルエンサーと直接会って地道に関係を築いていきました。2015年あたりから徐々にInstagramが注目されると、楽天市場の有名店にインフルエンサーを紹介してPRを支援するようになります。その話を聞きつけた他店舗にも、インフルエンサーをアテンドしていきました。

 当時は、ファッション誌のモデルを起用するPR手法が当たり前の時代で、僕の活動は一躍有名になっていきました。インフルエンサーのアテンド以外にもInstagramでモデルオーディションを開催したりして、一時期は「フィクサー」と言われていました(笑)。

鈴木:インフルエンサーマーケティングという言葉はおろか、「インスタ映え」も一般的ではなかったときから対人マンさんはSNSを事業に活用していたのですね(「インスタ映え」は2017年に流行語大賞に選ばれている)。

対人マン:今みたいにXの投稿で発信するようになったのは2018年からで、同時期から店舗やECへの集客支援コンサルティングもするようになりました。このあたりから、自分の名前を出して仕事をするのが嫌だなと思ったタイミングで、知人からのアドバイスを受けて「対人マン」と名乗るようになったんです

 以上が、皆さんがあまりご存知ではない対人マンのキャリアです。

澤山:すでにここまでで濃厚すぎますね……(笑)。

フォロワー数を増やす“だけ”のSNS支援に価値はない

鈴木:販売や営業、インフルエンサーマーケティング、そしてInstagramも経験している。こんなマーケターは対人マンさん以外にはいないのではないでしょうか。

対人マン:そうかもしれません。僕はインフルエンサーを起用しての商品プロデュースも、ギフティングPRも、売り場づくりも経験済みです。ストーリーズに貼るURLにパラメーターを付与したPRの効果検証も、株式会社StylePicksの深地雅也さんといちはやく取り組んでいました。

 だから、お客様に対して「フォロワー増やしましょう」とアドバイスするだけのSNSコンサルティング会社について、常々「ふざけるな」と思っています。お客様の売上につながらない施策を提案してお金をいただくなんて、どういうことだと

鈴木:その想いはXでもつづられていますよね。

対人マン:SNS支援会社を利用するのなら、相手が自社の商品や商売を理解しているかはちゃんと見ておくべきです

 例えばBtoCであれば、百貨店、量販店、ドラッグストア、ホームセンターなど各販売先に異なる商習慣があるし、客層も異なります。業界によりますが直接メーカーと取引しているわけではなく、ベンダー(問屋)が仲介してやり取りをしている場合もあります。

 こうしたビジネス構造に対する知識や経験がなく、ただ「フォロワー数を増やしましょう」「インプレッション増やしましょう」と提案するだけ。こうした自称「コンサルタント」に、一歩踏み込んだアドバイスができるとは思えません。

鈴木:商品が買われるまでの構造を理解していない企業に依頼するのは、確かに不安が強いですね。

対人マン:それと、SNSコンサルタントと名乗る人々が高額商品を買ったことがあるのかも疑問です。

 高額商品は一般商品と異なり、「あなたから買いたい」という感情が購買の動機につながります。車であれ住宅であれ、営業マンが嫌な人だと買いたいと思えないでしょう? 一般商品でも、ネイルサロンや美容室は同じような心理が働くものです。

 だからこそ、こうした商材はただ見栄えのいい投稿だけでは売れません。果たしてどれだけのコンサルタントが、こうした購買心理を理解しているでしょうか?

 僕は今でも、常に商品やサービスを買ったりお客様の売り場に行ったりしています。店舗に行くときは、必ず駐車場に止まっている車を観察しています。見ているのは「どんな商品が売れているか」ではなく、「どんな年齢・年収・服装のお客様がお店に来ているのか」です

 この経験を重ねてきたから、「ドラッグストアでのお買い物が好きで○○というブランドが好きなお客様はこういう属性の人です」とすぐ答えられます。ここまでペルソナを理解していなければ、お客様の支援なんてしてはいけないですよ。

澤山:いやあ、ぐうの音も出ない話ですね……。

運用代行に依存して金をドブに捨てるな

対人マン:そもそも僕は、Instagramコンサルタントや運用代行会社にSNSにまつわるすべてを任せることに否定的です。特に、代行会社に企画を考えさせたり、DMやコメント返信までさせたりするのは絶対にNGだと思うんですよね。

鈴木:先日、近しい内容をつぶやいていましたね。

対人マン:ここでも書いていますが、運用代行はあくまで「よその会社の人」であり、あなたの会社の商品を売るために本気になれるとは限りません。しかも、運用代行会社は商品に対する知見も不十分ないわゆる「素人さん」です。そんな会社に、集客という事業でもっとも大事な要素を一任するのですか? と。

 とはいえ、運用代行に依頼してはいけない! というわけではありません。

・社内校閲で文章はすべてチェックして、投稿作業だけ依頼する。
・画像などはすべて自社が用意して共有する
定期的に打ち合わせをして、企画につながるアイディアを出してもらう。

 こういうスタンスでの運用代行活用なら、僕はOKだと思います。僕もInstagramの運用代行をしていますが、これらのルールは徹底しています。

鈴木:クライアントと運用代行との本来あるべき関係性だと思います。対人マンさんは、コンテンツや企画の主体は自社が持つことが大切だと考えているのですね。

対人マン:一生支援会社に依頼し続けるのではない限り、社内に知見を蓄えて自分たちで運営できる力は身につけたほうがいいと思います。

 「支援会社への依頼をやめた途端、皆さんのSNS運用は振り出しに戻ります。依頼にかけたお金をドブに捨てる結果になりますが、それでもいいですか?」

 SNS運用に迷う人から相談を受けたとき、僕はよくこう問いかけます。この事実に、意外と多くの人が気付いていません。

鈴木:重い問いかけですね……。自社でInstagramやSNSを運用する力を身につけるために、大切なことは何でしょうか?

対人マン:一番大切なのは、継続できるようにすることです。写真が上手な運用担当者がいたけれど、その人が退職した途端にパタっと更新が止まってしまった。過去にそういうアカウントを数多く見てきました。

対人マン:そもそも、企業はまずSNSが得意な人・不得意な人がいることを知るべきです。僕は世の中の8割以上の人々が、後者に分類されると思います。そうでなければ、今頃Instagramは1万フォロワー以上のアカウントであふれていますよ。

 SNSの最大の敵は「継続」であり、SNSが得意な人が担当者になるとは限らない。そのなかで5年10年とSNSを更新し続けるには、社内のルールが不可欠です。

 「週◯回更新しましょう」「◯時と◯時に更新しましょう」「投稿内容は商品やお客様のことを軸にしましょう」など、誰が担当してもSNSを継続できるルールを作りましょう。投稿をバズらせることよりも、継続できる仕組みづくりのほうが圧倒的に重要だと思います。

フォロワーは減るもの。リーチは伸びないもの。

澤山:最後に、改めてSNS運用で大事なことについて教えてください。

対人マン:SNS運用を継続するための正しい目標を立てましょう。SNSはまだ、多くの会社で誤解されています。僕はよく、「フォロワー数に比べてリーチが伸びないんです」と相談されます。ですが世の中の大半はSNSが苦手で、すぐに飽きてしまうものです。

 今でもFacebookを更新していますか? アメブロを書いていますか? 更新どころかアクセスすらしていない人も多いんじゃないでしょうか。

 ほとんどの人がSNSを続けられない以上、フォロワーが減ってしまうことも、リーチ数がなかなか伸びないことも当たり前です。僕がInstagramを支援するときは、いの一番にこのことを伝えています。

鈴木:この事実を知らず、フォロワー数を増やすという目標のせいで袋小路に入ってしまう担当者さんは、少なくない気がします。

対人マン:SNS運用って意外と孤独なんです。僕はことあるごとに、SNS運用担当者さんに声をかけます。「周りはSNSの重要性を十分理解していないかもしれません。でも僕は分かっているから安心してください」って。

 会社が正しくルールと目標を定められないと、SNS運用担当者さんはどんどんしんどくなっていくでしょう。担当者さんが追い詰められないよう、会社全体でSNSの効果効能を知り、SNS運用の目標はフォロワー数ではないことを理解しましょう。

澤山:対人マンさん、今回はお忙しい中ありがとうございました!

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