SNSコラム

りおた氏、1枚の絵を語り尽くす。「エディオンピースウイング広島」イラストを徹底解剖

2024年04月30日
SNSコラム | ザ・プロフェッショナル

2024年2月から広島市内中心部に掲出されている、イラストレーター・りおた氏が手掛けるイラスト群。明治安田J1リーグ・サンフレッチェ広島の新しいスタジアム「エディオンピースウイング広島」をテーマにした作品は、広島市の中心・紙屋町を彩り、多くの人々を魅了しています。

人物の描写や構図、カラーリングから背景に至るまで緻密に計算し尽くされた作品は、クライアント様だけでなくサンフレッチェ広島サポーターからも高い評価を得ました。

イラスト制作の裏側には、どのような思いが込められていたのでしょうか。HottoLink Creator Marke(ホックリ)で協業するホットリンク・石渡広一郎および澤山モッツァレラが話を聞きました。

(撮影:鶴丸和幸[(株)REConos] 執筆・編集:澤山モッツァレラ)

実質、3日間で描き上げました

――本イラスト、非常に好評をいただいていますね。この制作依頼を受けたのは、いつ頃だったんですか?

りおた:2024年1月末でした。ちょうどその頃は個展の準備が終わりかけ、2月半ば締切のJリーグ案件に集中しようと思っていた時期だったんですよね。

 ご依頼主は、紙屋町にある「そごう広島店」などを中心とした「紙屋町・基町にぎわいづくり協議会」様でした。サンフレッチェ広島の新スタジアムが完成するタイミングで、街を盛り上げたいというご依頼です。非常に興味深かったのですが、「納期的にこなせるかな」と考えたことを覚えています。

――納期は、どのような感じだったんですか?

りおた:2月10日ごろでした。ただ、その時点でJリーグ案件に集中したいと思っていたので、お受けするなら「3~4日以内に仕上げること」「その代わり、大きな修正はお受けできないこと」といった条件が必要だなと思っていました。

 幸い、ご快諾いただけたので引き受けました。実質的な制作期間は3日程度ですね。

――3日で! 横位置と縦位置の2パターンを8種類ぐらいですよね。

りおた:ノボリ用、三日月形のタペストリーなどもありますから、それぐらいですね。幸い、ラフは一発でいいものができました。1日目にラフを描いて石渡さんに送ったら、その時点で「これでいきましょう」と言われたぐらいで。

――石渡さんは、ラフのチェックから担当されているんですね?

石渡:そうですね。りおたさんのサポート時には「クライアントのリクエストに応えているか」「作品に『りおたさんらしさ』が出ているか」「多くの方に受け入れていただけるクリエイティブになっているか」の3点に気を配っています。今回の施策に関しても、上記のポイントに沿うお手伝いをするためラフから確認させていただいた形です。

――ありがとうございます。全体の構図のポイントは、どのあたりにおいてますか?

りおた:中央にエディオンピースウイング広島があって、そこに向かってサポーターが集まるところです。2月にこけら落としが決まり、「カッコいい新スタジアムができたから、来てください」というコンセプトが明確だったので、求められる要素もわかりやすかったです。

 近隣の紙屋町、基町、八丁堀あたりから人が集まっていくイメージ。ペデストリアンデッキをわたってスタジアムに人が集結し、背景にグリーンアリーナと原爆ドームがある。デフォルメを加えているので正確な位置ではないですが、広島の街並みが伝わる描写を心がけました。

――サポーターが持つタオルマフラーの上には、白い鳩も描写されています。

りおた:ピースウイングとは「平和の翼」ですから、平和の象徴である鳩をあしらいました。白い鳩ってなかなか飛んでいないんですが(笑)、象徴として。総じて、スタジアムへ向かって見えない集中線があるような、真ん中に向かっていく構図になっていると思います。

石渡:結果的にわずか3日間で見事なイラストを完成させ、皆さまから高い評価を得ることができましたね。

りおた:そうですね、X(旧Twitter)を見る限り、サンフレッチェ広島サポーターの皆さんにも喜んでいただけたようで本当にうれしく思っています。

実は、ほとんどのカラーを紫で作っています

――イラスト自体にフォーカスして伺います。改めて、完成までの思考プロセスを教えてください。(何度か同じイラストを貼りますので、読者の皆さまは別ウインドウで開きながらお楽しみください)

りおた:まず依頼内容を聞いた時点で、構図のイメージがすぐに浮かんだんです。真ん中にエディオンピースウイング広島を配置して、そこに向かってサポーターが歩いていく。まるで魚眼レンズで撮ったような構図を思い描きました。左下に指先だけを描いていますが、それも中央への視線誘導の目的で配置したものです。

――言われてみれば、キャラクターの目線もすべて新スタジアムに注がれていますね。

石渡:ご依頼内容が「街を元気にするイラストを」だったので、見る人がそれぞれ自分を主人公だと思えるようなものになっていますよね。指だけの描写も、「見ているあなたが応援しに行くんですよ」というメッセージを感じます。

――私はサンフレッチェ広島サポーターなので、背番号の配置も「わかってるなあ」と感じましたね。

りおた:ユニフォームの背番号は、現役の選手のものを選びました。「#4」は荒木隼人選手、「#6」は青山敏弘選手、「#11」は満田誠選手、「#19」は佐々木翔選手、「#33」は塩谷司選手、「#51」は加藤陸次樹選手といった具合に。

――10番は、あえて片側が隠れるようにしているんですね。

りおた:そうです。10番でも16番でも18番でもいいなと思ってるし、いろいろな想像が膨らめばと思っています。

――中央の男性が持っているタオルマフラー「SANFRECCE」の「E」の部分も、あえて見えないようにしているんですね。

りおた:最後の「E」の部分は、隠れるように描いています。ギリギリまで文字を詰め込むと読みづらくなるのと、タオルの立体感を出したいのと両方ですね。

 スタジアムに向かって掲げられたタオルマフラーが、風にはためいているニュアンスを出したかったんです。Eが隠れても、サンフレッチェのものだとはわかると思うので。

石渡:色使いも印象的ですが、どのようなことを意識したんですか?

りおた:紫を基調とし、同系色を微妙に変化させることでメリハリを付けています。スタジアムの影の色合いや、空の色、遠景のビル群なども、実は紫の濃淡で表現しているんですよ。

――灰色っぽく見える部分も、紫なんですね!

りおた:人物のカオも、サンチェ君も実は明るい紫なんです。差し色としてユニフォームの袖にある黄土色を入れ、ピースウイング周辺の色も黄緑にしてアクセントにしました。

 黄土色に関しては、ユニフォームと合わせて10番の女の子の髪色にして金髪っぽく見えるよう調整しています。基調を紫に統一することで、全体としてゴチャつかず、すっきり整理できました。

より多くの人が、自分ごとだと捉えられるように

――このイラストで、最も手がかかっているのはやはりピースウイング広島の構造ですか?

りおた:そうですね、建築物の描き込みは一番時間をかけています。最初にピースウイングを配置し、そこに逆の弧を描くような形で人を配置すればうまくまとまるのではと思いました。人物に関しては指定もなかったので、様々な性別・年齢層の方を描いています。

石渡:このキャラクター設定は、どのように考えたんですか?

りおた:今回は主役が一般のサポーターなので、どのようにメリハリをつけるかは自由だったんですね。

 特にチカラを入れたのは、中央の女の子の表情です。ここが描けた時点で「ハマったな」という感覚がありました。

りおた:それに加えてファミリー層、長年通っているようなコアサポーターを描いたり。様々なタイプの人物を登場させることで、より多くの人が自分事として捉えられるイラストにしたかったんです。

――細かい工夫を、様々な場所にこらしておられるんですね。

りおた:あと画面手前の人物を大きく、奥の人物を小さく描くことで、遠近感を出しています。これによってスタジアムまでの奥行きが強調され、(手前に配置された)サポーターの一体感や高揚感が醸成されるのではないかと考えました。

石渡:本当に計算され尽くしたイラストですね。改めて、3日間でここまで仕上げたことが信じられません(笑)。

公式球を最新モデルにした理由

――クライアント様からの評価はいかがでしたか?

りおた:ほぼほぼ一発OKでしたね。サンチェ君と、サッカーボールを追記してくれというぐらいでした。

りおた:サッカーボールに関して、旧式のデザインにするか最新のものにするか迷ったんですけど、目の肥えたサポーターの方はデザインが古いと「こいつ、わかってない」と思われるかもと考えたんですよね。それで、2024年の公式球に寄せて描いた形です。

 あとは、権利関係ですね。今回はサンフレッチェ広島さんからではなく「紙屋町・基町にぎわいづくり協議会」様からのご依頼だったので、チームスポンサーの企業様も多くいるとはいえユニフォームやサンチェ君などの権利はどうかなと思ってました。フルに使わせていただき、ありがたかったです。

――実際、「紙屋町・基町にぎわいづくり協議会」様からの評価も上々だったようですね。先方から、以下のようにコメントを預かっています。

紙屋町・基町にぎわいづくり協議会では、待望の新サッカースタジアムが近傍に開業するにあたり、まちとしてお祝いするとともに、サポーターや市民の皆さまにワクワクしながら回遊していただけるよう、まちなかを紫色に染めたいと考えていました。

 そのビジュアルの制作をどうするか検討する中、りおたさんがかつて手掛けられた作品を拝見するにつれ、りおたさんなら本会の想いをかたちにしてくださるのではないかということでお願いした次第です。

 実際に描いてくださったビジュアルは、想像した以上にワクワクした雰囲気が感じられ、「まちなかスタジアム」であることが一目瞭然の、本会の意図を十二分に汲んだものに仕上げていただきました。目にした多世代の方々に「スタジアムに行ってみたい」と思っていただけているのではないでしょうか。

 まちにビジュアルを掲出した途端、SNS等で数多くの反響をいただいており、りおたさんにお願いして本当に良かったと考えています。ありがとうございました>

りおた:ありがたい限りです。広島といえばカープカラーの赤に染まる街で、サンフレッチェが優勝した時ですら市街地は紫に染まることはなく「いつもの週末の街並みだった」という背景があるんですよね。

 本案件を通じて「広島の街を、紫に染めてくれてありがとう」といった声を、たくさんのサポーターの方々や関係者の方からいただけました。イラストを通じて街の歴史とクラブの歴史に関わる部分で携われたことを感慨深く思います。ぜひ、また機会があればお手伝いしたいですね。

石渡:その際は、ぜひ弊社からもサポートさせてください。

――りおたさん、引き続きホックリの一員としてご協力のほどよろしくお願いします!

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