SNSコラム

【後編】Mr. CHEESECAKEが提供しているのは「時間」だ。本物のブランドであるために田村さんが考えること

2020年08月27日
ザ・プロフェッショナル | 食品業界向け

最終更新日:2021年5月20日

前編では、田村さんのSNSとの付き合い方やMr. CHEESECAKE立ち上げの経緯、現在の販売形式に至るまでのユーザーとの交流などを語っていただきました。

【前編】始まりはInstagramの投稿から―大人気店「Mr. CHEESECAKE」代表・田村さんとSNSの付き合い方

後編では、Mr. CHEESECAKEが顧客に提供している「価値」や、コロナ禍において飲食業界ができること、そしてブランド作りにおける田村さんの思いをお聞きしました。

Mr. CHEESECAKEが提供しているのは「時間」だ

いいたか:
Mr. CHEESECAKEって、お客さんにチーズケーキを楽しんでもらうためのこだわりを随所に感じます。オウンドメディアにせよクリエイティブにせよ、チーズケーキを買えた人も買えなかった人も楽しめる体験が用意されている印象です。お客さんに提供したい体験や価値については、普段どのように考えているんですか?

参考:Mr. CHEESECAKE JOURNAL

田村:
レストランでの経験が大元にあります。うちの商品は、家で食べる人が大多数です。D2Cって一般的にモノを作って配送するまでが仕事のように思われてるでしょうが、僕はそれで終わりにしたくない。Mr. CHEESECAKEがフォーカスしているのは、お客様にどういう「時間」を提供できるか? です。


田村:
レストランでは、客単価3万円でだいたい3時間のコース料理を提供します。でも、同じ3時間ならレストランでの食事より、映画を選ぶ人の方が絶対多い。だったら、レストランでの3時間を映画以上に素晴らしい体験にして頂くために何ができるか? それをシェフ時代からずっと考えていたんですね。

僕たちは冷凍・半解凍・全解凍と3つの食べ方を伝えていますが、それは食べるという時間を提供したいからです。冷凍・半解凍・全解凍で味が変わるんですが、「そろそろ溶けたかな」というワクワク感は、時間を楽しんで頂くことだと思っています。

また、お客様には自分の好みに合わせた食べ方を選んで頂けます。すると「僕は全解凍が好き」「私は半解凍が好き」というコミュニケーションが商品に対して生まれ、またその時間がよりよいものになります。

Mr. CHEESECAKEは店舗がないですが、レストランでお客様に料理を提供していたときと感覚は全く同じです。違うのは届け方と形態だけ。配送後にご自宅でどんな時間を過ごして頂けるかを考えるのは、ごく自然のことです。

いいたか:
チーズケーキに合うドリンクも紹介してるじゃないですか。それもお客さんへの時間の提供のひとつですか?

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田村:
そうです。「せっかくMr. CHEESECAKEを買うなら、特別な飲み物も用意しよう」と、飲み物を考える時間も楽しく過ごして頂きたいので、ドリンクを提案するコンテンツも作っています。

あと、お客様が写真をSNSに載せるのがうちのブランド文化のひとつでもあるんですね。「撮影用にミスチに合うお皿やカトラリーを買おう」とか「こんなロケーションを用意しよう」というお客様も多くいらっしゃいます。

そういった点も加味して、「お客様の体験をどこまで設計できるか、設計のために何ができるか?」をひとつひとつ考えるのは本当に重要なんです。それには単純に「美味しさ」だけを考えるのではなく、「美味しさをどういうふうに伝えるか、届けるか?」という視点もないと。

「D2Cは知らなかった」のに、D2Cの手本と言われる理由

いいたか:
食器を買うところまでお客さんが行動を起こしてるのはすごい。ところで、レストラン時代と現在の販売形式で、印象的な違いはどんな部分ですか。

田村:
お客様とのコミュニケーション量の差ですね。レストラン時代は、僕と話したいというお客様は1日に2人ほどしかいなかった。一方、オンラインで販売してるとSNSを通じて気軽に会話できるんですよね。レストラン時代とは比べ物にならないぐらいコミュニケーションが取れるので、すごく楽しいです。

ただ、レストランでお客様の席まで行って「温かいうちにお召し上がりください」みたいなコミュニケーションはECだとできない。でも接客はオンライン上でも可能なので、オンラインでできることは全部やるべきだと思ってます。そのひとつの形が「Mr. CHEESECAKEのある生活」をより良くする情報を、オウンドメディアやSNSで発信することです。

いいたか:
ユーザーとコミュニケーションをとりながらブランドを育てていく、まさしくD2Cのお手本のようなスタイルですよね。

田村:
よくD2Cの文脈でお話し頂くのですが、僕は全然意識していなくて。正直、ずっと料理人をやってきていたのでビジネスは知らなかったんです。ただ、自分のやりたいことを続けているだけ。あとはどうすればお客様が喜んでくれるか、どんなメッセージを発信すれば、僕らの描く世界とお客様の求めるものに齟齬が生まれないかを考えています。

田村:
例えば、オウンドメディアのコンテンツに「私とミスチと。」というコラムシリーズがあります。Mr. CHEESECAKEってどうしても僕の名前が前に出がちですが、実は色んなクリエイターが関わってくれている。だから良いコンテンツが生まれているのに、僕しか目立たない状況がすごく嫌で、このシリーズは生まれました。「プロフェッショナルが集まっていて、Mr. CHEESECAKEはいいブランドなんだよ」ってストーリーをお客さんに伝えたいんですよね。

参考:「Vol.1 Mr. CHEESECAKEを『ブランド』にするために。デザイナー タカヤ・オオタがあえてやらなかったこと」Mr. CHEESECAKE JOURNAL

いいたか:
オールユアーズの木村さんをはじめ、D2C業界で仲良くしてくださってる人は多いんですが、皆さん愛されてるなと思うんですよね。ファンがいる人って、やっぱりストーリーのディストリビューション方法が上手。

オウンドメディアに載せてたフレンチトーストレシピのUGCもめちゃくちゃ出てましたけど、それってコンテンツがちゃんとディストリビューションされてるからだなと。

田村:
僕はモノを作る人間なので、いかに良いモノを作れるかを最重要視していますが、同時に「伝える」ことも必要なんですよね。
モノが売れると、「売り方」に興味を持たれることの方が多い。でも、そもそも美味しくなかったら絶対に売れないし、リピーターも来ない。

売り方だけではモノは売れません。とはいえ、どんなに良いモノを作っても誰にも知られなかったら、存在していないことと一緒です。
プロダクトの良さがあって、かつ伝え方がある。その両方のバランスを見ることは大事にしていますね。

飲食業界変革の担い手となる?「D2C×デリバリー」の可能性

いいたか:
話は少し変わりますけど、コロナ禍で飲食業界は変化せざるを得ない状況になってますよね。田村さんは、今後の飲食業界にはどのような可能性があると感じていますか。

田村:
正直、なんでもできるなと思っていて。ひとつはD2C的なデリバリーサービスです。

多くのレストランは、Uber Eatsなどのデリバリープラットフォームに出店し、そこでいかに面を取れるのかを争っています。でも僕は「そもそもプラットフォーム上で戦う必要があるのか?」と思っていて。
それよりも、SNSで商品情報をしっかり発信して、知ってもらった上で指名買いしてもらった方がいいんじゃないかと。

そこでMr. CHEESECAKEとは別で僕が監修で始めたのが、KitchenBASEさんと共同開発した「チキンオーバーライス」です。

参考:スパイシーさがやみつきになる「チキンオーバーライス」が販売START!|KitchenBASE @base_kitchen|note

商品はTwitterから発信しており、お客様から商品に関する意見を頂いて、商品改善も行っています。例えば、お客様から「米がパサパサしている」というフィードバックが入ったことがあって。チキンオーバーライスってタイ米を使うのでパサパサしているのが普通なんですけど、日本人には食べ慣れないだろうと、米を変更しました。そしたらフィードバックをくれた方が「自分の意見を反映してくれた」と、また食べに来てくれたんです。

そうなると、期待が生まれるんですよね。「自分の好みの味に変えていける可能性がある」と。

田村:
現状キッチンは2.5坪でスタッフも一人ですが、初月で450万円売り上げました。SNS上でのコミュニケーションを軸に展開して「これだけ売り上げられるんだ」と手応えを感じましたね。

レストランで単価が2~3万円のところでも、月に1000万円売り上げるのは本当に大変なんですよ。でもこのやり方なら、最小人数で、少ない家賃で売上を伸ばしていける可能性がある。
実験的にやってみて、僕はこの業態に可能性を見出していますが、飲食業界の方たちがどう見てくれているかはまだわかりません。

オンラインで料理を提供する最善の手段を、業界全体でもっと考えなければいけないと思います。

いいたか:
Uber Eatsでの面取りの戦略って、僕らの業界でいうとSEO戦略と近いのかなと思います。検索して当たったお店の店名って、お客さんの記憶には残りづらいんですよね。

いいたか:
でもフィードバックして、そのフィードバックを商品に反映してくれたお店は、お客さんの記憶に残る。他店と比較されず、記憶に残るためにどうすればいいのかは、飲食だけでなくさまざまな業界の人間が考えるべきだと思います。

Mr. CHEESECAKEは、「本物」のブランドを目指す

いいたか:
今後、Mr. CHEESECAKEをどのように成長させたいと考えていますか?

田村:
ハイブランドにしたいですね。イメージ的には、Maison Margiela(メゾン・マルジェラ) 。僕という「人」や「世界観」が全面に出ているというより、商品がちゃんと浮き上がるような設計がされたブランドが最高にクールだと思っています。

Mr. CHESSECAKEのキャッチコピーは「世界一じゃなく、あなたの人生最高に。」です。多くの料理人は、世界で一番おいしいものを作ろうとします。でも、それって比べようがないじゃないですか。それなら世界一ではなく、食べた人の人生一番を目指す方がいい。


田村:
実は僕たちが一番、「Mr. CHEESECAKEらしさってなんだろう?」って考えてるんですね。
ブランドって僕たちだけで作れるものじゃないんですよ。お客様がどう思っているか、食べた体験をどう発信しているかも含めて、ブランドの価値は生まれます。究極的には、ブランドってファンから自然に生まれて育まれていくものだとも思います。

こだわっている部分をいうならば、クリエイティブに余計なものは乗せないこと。商品の本質的な部分が浮き上がるような、本当に必要な情報だけを研ぎ澄まして乗せています。
僕は偽物が大嫌いなんですよ。まごうことなき「本物」でありたい。

いいたか:
なるほどなあ。

田村:
もちろん、味に絶対の自信を持てる商品を作ることが大前提にありますけどね。料理人は、美味しい料理を作るのが絶対的な使命ですから。

いいたか:
今日お話をうかがって思ったのは、良いモノを作るという田村さんのベースにある思いは本当に正しいなと。僕もそこに対する考えは同じで、SNSマーケティング支援の依頼を頂いても、そもそも提供するモノが良くなければ協力できない方針ですから。

事業のベースには田村さんのモノづくりへの思いがあって、その届け方を自分なりの方法で行ったことも良い結果を引き起こしたんだなと感じました。

あとは、Mr. CHEESECAKEというブランドは、田村さんの高校時代の原体験からすべて繋がってますよね。美味しい料理を作って、届けて、お客さんを喜ばせたいという思いが一貫しています。そのストーリーがあるからこそ、ここまでの人気を得ているんだと思いました。

田村:
ありがとうございます。今後も美味しいモノを作るというのと、今の時代の生活様式に合った届け方は模索していきたいと思っています。

オンラインで買って、家に届くことで味わってもらえる体験は、Mr. CHEESECAKEだからこそ考えられるはずだと。

美味しいだけじゃなく、機能美すら兼ね備えた商品設計を続けていきたいです。

――田村浩二さん、本日はお忙しいところありがとうございました。

前編はこちらから。
【前編】始まりはInstagramの投稿から―大人気店「Mr. CHEESECAKE」代表・田村さんとSNSの付き合い方

 

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