SNSコラム

【前編】SNS活用の鍵は「クラスター」。消費者行動研究の専門家が語るSNSマーケティングの今後

2020年06月29日
SNSコラム

各業界で活躍する様々なプロフェッショナルたちとホットリンクCMO・飯髙が、2020年以降のSNSマーケティングのあり方について考える対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」。

今回のゲストは、横浜国立大学でSNSと消費者行動の関連性を研究されている鶴見教授。もとは流通の研究に取り組んでおり、近年はSNSと購買との相関関係に着目。2018年に出版した『消費者行動の実証研究』では、消費者行動にSNSがどれだけの影響を与えているのか、最新の研究データを元に解説しています。

今回はホットリンク・マーケティング部部長/ホットリンク総研研究員の室谷とともに、SNSマーケティングの重要性について、アカデミックな観点を交えた議論をしました。

ホットリンク総研… 
「SNS時代の売れる話題づくりを科学する」をコンセプトに創設。ホットリンクのデータサイエンティストやマーケター、社外の専門家が連携して各SNSのアルゴリズム解析やクリエイティブ分析など、ソーシャルメディアマーケティングの研究を行う

鶴見裕之。横浜国立大学大学院 国際社会科学研究院 教授。公益財団法人流通経済研究所 主任研究員、横浜国立大学 准教授を経て2020年4 月より現職。専門はマーケティング/マーケティング・サイエンス/消費者行動論。
後編はこちらから。

「SNSでバズると商品が売れる」のは本当?POSデータ×SNSデータで研究を始めた理由

室谷:
鶴見先生は、SNSと消費者行動の相関関係を研究される前は流通領域に関する研究をされていたんですよね。

鶴見:
以前は「流通経済研究所」というシンクタンクに所属していました。そこで、5年ほどPOSデータの研究や顧客会員データの研究を続けていたのですが、だんだん別の領域にも関心を持ち始めまして。

ちょうど大学に移って、しばらく経ったころが2011年前後で、SNSが台頭し始めていたんです。当時、大手広告代理店の担当者はすでに「SNSでバズると商品が売れる」と肌で感じていました。ただ、あくまで肌感覚でしかない。「風が吹けば桶屋が儲かる」というような都合のよい話ばかりで、どう繋がっているのかを明確に認識している人はほとんどいなかった。

その肌感覚を数値化するためには、ネット上での検索が実際の移動や購買行動にどう結びついているのか、自分が得意としていたPOSデータとSNSデータを照らし合わせて検証すればいいのではないかと考えました。それがきっかけで今の研究領域に移行しましたね。

最近だと、もう少し領域を広げています。DXやOMOが台頭しはじめ、オンラインとオフラインが境目なく繋がるようになってきた時代、オンラインでのアクションが実際の行動にどう結びついているのかを研究しています。

飯髙:
当社もお客様のソーシャルマーケティングを支援する際は、必ずSNS上のデータだけでなく、POSデータと照合して売上貢献度を計測しています。SNS上のデータで一番重視しているのは、指名検索のボリュームです。

ブランド名での検索って、普通の広告施策では爆発的には増えないですよね。広告でタッチして認知をとって、興味があれば調べてもらえるぐらい。

一方、僕たちが推進しているUGC起点の施策だと、指名検索が増えやすいんです。過去のデータから、指名検索が増えると売上貢献率が上昇することもわかっています。なので、指名検索の推移と売上の推移を突き合わせて分析するようにしていますね。

「SNSマーケティング」というと、バズを狙いにいくものがまだ多いように感じますが、どれだけバズってもあくまで一時的なものでしかないし、商品が流通しないと意味がないんですよね。

瞬間風速的な認知ではなく、UGCを積み重ね、指名検索数を底上げできるよう支援を続けて、最終的にPOSにつなげていくのが僕たちの手法です。

SNSマーケティングは「クラスター」を意識するべき

鶴見:
ぜひ現場の方に聞いてみたいことがありまして。今、新型コロナウィルスで世界が深刻な状態に陥っています。SNSでもバイラルマーケティングと言われるように、ウィルスの感染経路と、SNSの拡散の仕組みって酷似しているんですよね。

大変な状況に面している方が大勢いらっしゃることを認識したうえでの話ですが、ウィルス関連のニュースがこれだけ流れている今、「SNSマーケティングの概念は理解しやすくなっている/SNSをマーケティング施策に活かせる方が増えるのでは?」と感じています。

例えば、ニュースを見ていると「クラスター」という言葉をよく耳にすると思います。クラスターとは「集団」「群れ」という意味を持つ言葉で、疫学の文脈では感染者集団を指します。特定のコミュニティで集団感染が引き起こされてしまうように、SNS上で特定のコミュニティに情報を投げかけると、そのコミュニティをきっかけに爆発的に拡散されるケースがあるんです。このあたりに関して、ホットリンクさんはどうお考えでしょうか。

飯髙:
「SNSマーケティングの概念が理解されやすくなっているのでは」といった教授の予想は、おっしゃる通りだと思います。

SNSには、ゴルフ好き、サッカー好きなど様々なクラスターがいますよね。僕たちはそれぞれのクラスターを認識した上で、クラスターごとに適切なコミュニケーションを取るようにしています。

ひとつのクラスター内でしっかり情報を広げていくと、別のクラスターにも広がる可能性が増すんです。ゴルフもサッカーも好きなど、ほとんどの方が複数のクラスターに所属しているので、そこを起点に情報が拡散される。ここも、ウィルスが別のコミュニティに感染する仕組みと似ていますよね。

企業の場合、まずはひとつのクラスターとコミュニケーションをとり、自社の商品やサービスに関する認知を広げていく。クラスターに所属する方々とのエンゲージメントが高まれば、他クラスターにも商品を紹介してもらえる流れが生まれやすい。

そこからまた別のクラスターにも拡散され、結果的に広範囲でUGCが発生する状態を作り出せるんです。ポイントはひとつのクラスター内で完結するのではなく、隣り合うクラスターに飛び火するような設計を持って進めることですね。

ただ、やはりそのような考えを前提にソーシャル運用している企業は少ないです。概念を理解していても、一部のクラスターだけで完結するような設計しかできていないところが、ほとんどだと感じています。

室谷:
さきほど一瞬バズの話が出ましたが、「SNSマーケティングといえばバズマーケティング」という認識をされているSNS担当者がまだ多数派です。鶴見先生がおっしゃるように、疫学的なアプローチができるようになると、バズに偏りすぎない、より本質的なSNSマーケティングに近づけるのかなと。

もちろんバズマーケティングも適切な場面で利用すれば非常に有効な手段なので、選択肢のひとつとして持っておくべきです。ただ、SNSマーケティングの手法はそれだけではないという認識が広がってほしいですね。

大事なのは、情報を拡散していくためのネットワークをどう形成するのかというところだと考えています。

画像・動画などとらえどころのない消費行動を理解するには?

室谷:
さまざまなSNSプラットフォームが普及したことで、認知経路も多様化し、経路ごとの効果測定がより難しくなってきていますよね。

鶴見:
そうですね。とくに若年層の場合、TwitterやInstagram上で流れる写真、動画など、テキストに比べてとらえどころのないデータを参考にモノを買う傾向にあるんですよね。

なので、今後のSNSマーケティングでは画像や動画をどれだけ解析できるかが重要になってきます。私自身、データアナリストとして、画像認識技術を駆使してどのようなものが流行るのか、分析の準備を始めています。

ただ、やはりテキスト分析に比べて難易度は高いと感じますね。

室谷:
画像や動画を解析する場合、具体的にはどのような点が難しいのでしょうか。

鶴見:
テキスト分析の場合は、「テキストマイニング」技術が成熟してきているので、既存の技術を利用すれば人工知能に精通していなくても比較的簡単に進められるんですよね。

「テキストマイニング」とは……
人間の言語=自然言語をAIなどで処理をする「自然言語処理」の手法を使い、テキスト(文章)データから有益な情報を取り出す技術のこと。ビッグデータの活用領域において重要視されている。

一方、画像や動画の場合、認識技術はまだ発展途上です。マシンスペックもかなりのレベルを要求されます。そのため技術的な課題が克服されて、人工知能の研究者でなくても扱えるようになれば、一気に研究が進められると考えています。

 

――後編では、SNSが小売業界にどのような変化を起こしたのかをテーマに議論が繰り広げられました。アカデミックの領域で活躍する鶴見教授と、SNSマーケティングの現場をよく理解する飯髙・室谷、それぞれの立場から見解が示されました。

【後編】学問に触れる。自力で稼いでみる。激動の時代を生きるマーケターに求められる素質とは

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