WebマーケティングとSNSマーケティングの違いは「対象範囲」と「温度感」
Webマーケティングは、インターネットを使ったマーケティング活動の総称です。Webサイト、検索エンジン、Web広告、メール、そしてSNSも、すべてWebマーケティングの手段に含まれます。SNSマーケティングは、そのうちSNSを使う活動を指します。つまり両者は並列した概念ではなく、包含関係にあります。
そのため「どちらが良いか」を比べるときは、実際には「SNS以外のWeb施策(検索・広告・自社サイト)」と「SNS」を比べることになります。両者を分ける軸は、対象範囲とユーザーの温度感です。
- 対象範囲:Webマーケティングはインターネット上の施策全体、SNSマーケティングはX(旧Twitter)、Instagram、TikTok、YouTube、LINEなどSNS上の施策に限られます
- ユーザーの温度感:検索・広告・自社サイトは、課題やニーズを自覚して調べている人と接触可能な面です。SNSは、タイムラインやアルゴリズムによるおすすめを通じて、潜在顧客の日常の接点にアプローチできる面です。
この顕在層か潜在層かの違いが、狙う相手、情報の広がり方、成果の測り方の違いにもつながっていきます。
Webマーケティングとは:探している人を自社サイトでの成果につなげる活動
Webマーケティングの多くの施策は、Webサイトに人を集め、問い合わせや購入、資料請求といった成果(コンバージョン)につなげることを目的にしています。検索キーワードや広告のクリック、サイト内の行動がデータで残るため、どの施策から何件の成果が出たかを追いやすいのが特徴です。
主な手法は次のとおりです。
- SEO(検索エンジン最適化):検索結果で自社のページが上位に表示されるよう、コンテンツやサイト構造を整える施策です
- Web広告:検索キーワードに連動するリスティング広告、Webサイトやアプリの広告枠に出すディスプレイ広告、SNS上に出すSNS広告などがあります
- コンテンツマーケティング:オウンドメディアの記事や資料、動画で見込み客の疑問に答え、検討を進めてもらう施策です
- メールマーケティング:メールマガジンやステップメールで、一度接点を持った人との関係を続けます
- サイト改善(アクセス解析・LPO・EFO):サイトに訪問した人が購入やお問合せなどの成果に至る確率を高めるために、ページや入力フォームなどを改善します
- SNSマーケティング:本記事で比べているSNS上の施策も、Webマーケティングの手法の1つです
検索や広告は「今まさに探している人」にアプローチしやすいため、購入や問い合わせに近い顕在層を獲得するのに向いています。一方で、検索されるのは名前やカテゴリーを知っている商品に限られ、まだ知られていない商品やカテゴリは検索経由での接点の母数が限定的になります。
SNSマーケティング=アカウント運用ではない
SNSマーケティングは、SNS上で商品やブランドを知ってもらい、理解や購入につなげる活動です。企業の公式アカウントで投稿することだけを指すと思われがちですが、実際にはもっと広い範囲を含みます。
- 公式アカウントの運用:自社で発信し、コメントやシェアを通じてユーザーと関係をつくります
- SNS広告:X、Instagram、TikTokなどに配信する広告で、フォロワー以外にも届けられます
- UGC(ユーザーによるクチコミ投稿)の創出:SNS上のユーザーが自発的に商品やブランドについて会話している状態をつくります
- インフルエンサーとの協働:発信力のある個人に有償で商品を紹介してもらいます
- 投稿キャンペーン:ハッシュタグ投稿などの参加型企画で、ユーザーの投稿を促します
- ソーシャルリスニング:SNS上のクチコミを集めて分析し、商品開発や施策の改善に使います
ホットリンクの整理では、SNSは自社で発信するオウンド(公式アカウント運用)、費用を払って届けるペイド(SNS広告やインフルエンサー)、第三者が自発的に語るアーンド(UGC)の3つの性質を内包するプラットフォームです。「SNSマーケティング = SNSアカウント運用」だと思ってしまうと、売上につなげるためのSNSマーケティング戦略の全体像が見えなくなります。
関連:トリプルメディアの中でのアーンドメディアの役割と活用方法
比較表で見るSNS以外のWeb施策とSNSの違い
SNS以外のWeb施策とSNSを、接点・届く相手・広がり方・指標・成果の見え方で比べると次のとおりです。
観点 | 検索・広告・自社サイト中心のWeb施策 | SNSマーケティング |
主な接点 | 検索結果、Web広告、自社サイト | タイムライン、おすすめ表示、SNS内検索、知人のシェア、SNS広告 |
届きやすい相手 | 課題を自覚して探している人(顕在層) | まだ探していない人(潜在層)と、既存のファン |
情報の広がり方 | 閲覧者で止まり、情報は広がりづらい | シェアやクチコミで、ユーザーからユーザーへ情報が広がる |
主な指標 | 検索順位、アクセス数、CVR、コンバージョン数、獲得単価(CPA) | リーチ数、エンゲージメント、UGC数、指名検索数、フォロワー数 |
成果の見え方 | 広告は配信直後から数字が出る。SEOは継続して積み上げる | 継続した運用のなかで、フォロワー数やクチコミ、指名検索として表れる |
接点と届く相手の違い
「〇〇 比較」「〇〇 料金」と検索して調べる人は、すでに課題や欲しいもの、知りたいことを自覚しています。SNSでは、ユーザーは特定の商品を探しているわけではなく、タイムラインやおすすめに流れてきた投稿の中で受動的に商品に出会います。
情報の広がり方の違い
Webサイトのコンテンツや広告の情報は、基本的に企業からユーザーへ一方向に届きます。一方でSNSでは、ユーザーがブランドや商品に関する投稿をシェアしたり言及したりするため、複数ユーザーから複数ユーザーに情報が届く構造になっています。このユーザーによる情報の広がりは、検索や広告にはないSNS固有の性質です。
成果の測り方の違い
Web広告やSEOは、自社サイトへの訪問数やCV数、CPA(CV単価)などで評価するのが一般的です。同じ物差しをSNSに当てると、SNS経由のサイト流入やコンバージョンは少なく見えがちです。ホットリンクはSNSマーケティングのROIの考え方として、SNS単独のCPAではなく、マーケティング全体への波及効果を指標にして測るべきだとしています。SNSが得意なのは潜在層へのリーチだからです。
具体的にはSNS上のUGC数と指名検索数もKPIにすることをおすすめしています。詳細は下記記事をご覧ください。
関連:フォロワー数に頼らないSNSマーケティングの指標設計
また、SNSはSEOと同じく中長期の継続で成果が出るため、成果が表れるまでは投資期間と考えることを勧めています。
デジタルマーケティングとの違い
デジタルマーケティングは、デジタル技術やデータを使うマーケティング全般を指し、Webマーケティングよりさらに広い概念です。
Webマーケティングが主にWebサイトや検索、Web広告、SNSといったインターネット上の接点を扱うのに対し、デジタルマーケティングは、スマートフォンアプリ、店舗のPOSデータや会員データ、デジタルサイネージなど、オフラインの接点から得られるデータも対象に含めます。3つの関係は、デジタルマーケティングの中にWebマーケティングがあり、その中にSNSマーケティングがある入れ子の形で捉えると整理しやすくなります。
SNSマーケティングのメリットと注意点
SNSを始めるか、注力するかを判断するには、メリットと注意点を両方見ておく必要があります。
メリット
- まだ探していない人に届く:検索されない段階の人にも、タイムラインやおすすめを通じて商品を知ってもらえます
- クチコミが広告費以外の露出を生む:ユーザーの投稿が別のユーザーに届くため、広告を出していない時間や場所でも商品が話題に上ります。ホットリンクも、広告費を使わずに自然に話題を広げられる点をソーシャルメディアマーケティングの最大の利点と考えています
- お客様の声が直接集まる:コメントやクチコミから、商品の使われ方や不満を把握でき、商品改善や次の企画に生かせます
注意点
- 直接的な成果だけでは評価しにくい:SNS経由の直接コンバージョンだけでは成果を過小評価することになります。マーケティング全体におけるSNSの役割を整理して、適切なKPIを設定する必要があります。
- フォロワー数を目的にしない:プレゼントキャンペーンでフォロワーを増やしても、売上につながらない可能性があります。特に最近ではSNS上で投稿がリーチするかはアルゴリズム次第になっており、フォロワーがいても必ず投稿が届くわけではありません。フォロワー数やSNS経由の流入数だけでなく、UGC数や指名検索数の推移もあわせて見ます
- 継続する体制が必要:投稿の企画、コメントへの返信、数字の振り返りを続ける担当者と時間を確保できるかを事前に確かめます
- 発信内容のリスク管理:投稿は拡散されるぶん、誤解を招く表現や不適切な内容も広がりやすくなります。投稿前の確認手順と、問題が起きたときの対応窓口を決めておきます。
関連:SNSマーケティングを売上につなげるためのポイント
SNSのUGCで知り、検索して買う:SNSとWeb施策のつながり
SNSとWeb施策は、どちらかを選ぶものというより、購買全体の流れの中でそれぞれの役割を担っています。
SNSで商品を知った人は、その場で買うとは限らず、あとから検索して詳しく調べて購入に至るという実情があります。実際のデータを見てみましょう。ホットリンクが2024年5月にInstagram利用者を対象に実施した「Instagramの利用に関する調査」では、Instagramで発見した商品の詳細情報を検索したことが「ない」人は19.9%にとどまりました。約8割が、Instagramで知った商品を詳しく知るためにInstagram内外で検索していたことになります。
出典:株式会社ホットリンク「Instagramの利用に関する調査」
同調査では、Instagramの投稿がきっかけで商品を購入した経験がある人は55.2%で、購入経路は「後日外部サイトで検索をしてECサイトで購入した」が最多でした。
この最も多かった流れでは、購入の前に検索を挟みます。検索結果に出てくる自社サイトやECページで情報が見つからないと、SNSで生まれた関心が購入まで届かずに終わってしまいます。
出典:同調査
ホットリンクは、この流れをULSSAS(ウルサス)という購買行動モデルで整理しています。UGC(クチコミ投稿)→いいね→SNS内での検索→GoogleやYahoo!での検索→購入→拡散(購入者自身の投稿)と進み、その投稿が次のUGCを生む循環です。SNSでの話題づくりと、検索マーケティングは、この循環の中でつながっています。
私たちホットリンクが支援してきた実績のデータでは、UGC数は指名検索数と相関し、指名検索数は売上と相関することが分かっています。
たとえばご支援させていただいたジンズ様では、公式Xアカウントの運用方針を転換してから1年で、UGC数が約380%に、指名検索数が約165%に伸びました。SNSの成果を社内で説明するときは、SNS上の数字に加えて、自社名や商品名での指名検索の推移を並べて見せると、Web施策とのつながりが伝わりやすくなります。
ジンズ様のSNSマーケティングの事例詳細は下記ページより閲覧できます。
関連:ジンズの公式Xアカウント運用の支援事例
優先順位を決める3つの問い
「WebマーケティングとSNSマーケティングのどっちがいいか」に一律の答えはありません。自社の商品が今どの状態にあるかで、施策の優先順位が変わります。注力施策については、次の3つの問いで確かめてみてください。
関連:UGCと指名検索の有無で打ち手を分ける三枚おろし理論
問い1:SNS上に自社や商品のクチコミは出ているか
まず、XやInstagramで自社名や商品名を検索し、ユーザーの投稿がどれくらい出ているかを見ます。ホットリンクの「三枚おろし理論」は、この「SNS上にUGCが出ているか」を最初の切り分けに使う考え方です。クチコミがすでに出ている商品は、UGC施策との相性が良く、SNSマーケティングで高い投資対効果を生むことができる可能性が高いです。
問い2:自社名や商品名は検索されているか
クチコミがまだ出ていない場合は、次に指名検索があるかを確かめます。Googleトレンドで推移を見て、キーワードプランナーやSearch Consoleで検索数を把握します。三枚おろし理論では、UGCはないが指名検索はある商品の場合はUGCの初期発生のための運用施策を。UGCも指名検索もない商品には、シェアされる文脈を生み出すためのコンテンツを作る、というように打ち手を分けています。
指名検索が一定数ある商品は、検索結果や自社サイト、ECページで取りこぼしがないかを先に点検しておくこともおすすめします。
問い3:成果をいつ、何で測るか
今期中に問い合わせ件数や売上を伸ばす必要があるなら、成果を計測しやすいリスティング広告やサイト改善を先に進めるのが現実的です。半年から1年かけて認知と指名検索を育てたいなら、SNSを並行して始め、UGC数と指名検索数を評価指標に置きます。どちらの場合も、何をいつまでに評価するかを施策ごとに決め、社内で合意してから始めます。
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