ステルスマーケティング(ステマ)とは?
ステルスマーケティングとは、消費者に広告であることを隠したまま、商品やサービスを宣伝する行為のことです。略して「ステマ」とも呼ばれます。一般的なクチコミやレビューを装って好意的な情報を発信させ、消費者の購買行動に影響を与えることを目的とします。
ステマの本質的な問題は、消費者が「第三者の率直な意見」と「広告」を区別できなくなる点にあります。広告であると分かっていれば、消費者は宣伝であることを踏まえた上で内容を受け止めることができます。しかしクチコミとして提示された情報は、より素直に信頼してしまう傾向があります。この情報の非対称性こそが、ステマが規制対象となった最大の理由です。
ステマの基本的な定義
内閣府告示第19号では、ステルスマーケティングを「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」と定めています。つまり、事業者が表示内容の決定に関与しているにもかかわらず、その関与を消費者が判別できない表示はすべてステマに該当する可能性があるということです。
ポイントは「一般消費者が認識できるか」が判断軸になっている点です。たとえ「PR」と書かれていても、文字が極端に小さかったり、大量のハッシュタグの中に埋もれて見つけにくかったりすれば、規制違反と判断される余地があります。
ステマがいま注目されている背景
ステマが社会的な注目を集めるようになった背景には、SNSとインフルエンサーマーケティングの急速な普及があります。Instagram・X(旧Twitter)・TikTok・YouTubeといったプラットフォームで、フォロワーを多く抱える個人が企業の商品を紹介する手法が一般化しました。
一方で、企業が広告であることを明記せずに報酬を支払って好意的なクチコミを投稿させていた事例が相次ぎました。結果として、SNSユーザーの間で「インフルエンサーによる投稿は信用できない」という不信感が広がりました。こうした状況を是正するため、2023年10月の規制施行へとつながったのです。
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2023年10月施行の景品表示法によるステマ規制
2023年10月1日から、ステルスマーケティングは景品表示法第5条第3号に基づく内閣府告示第19号によって、不当表示の対象として明確に規制されるようになりました。
この規制は、これまで法的にグレーだったステマ行為を明確に違法と位置づけた点で、日本のマーケティング業界に大きな転換点をもたらしました。事業者は広告と非広告を明確に区別する義務を負うことになり、対応を怠れば行政処分の対象になります。
規制の対象者と対象行為
ステマ規制の対象者は、原則として商品・サービスを供給する「事業者(広告主)」です。インフルエンサー・アフィリエイター・広告代理店・媒体社など、事業者の依頼を受けて表示を行う第三者は、従来の景品表示法と同様に告示の規制対象外となります。これは消費者保護の観点から、最も影響力の大きい主体に責任を集中させる設計といえます。
対象となる行為は、事業者が表示内容の決定に関与しているにもかかわらず、その関与を一般消費者が認識できない状態で発信される表示です。媒体は限定されず、SNS投稿・ブログ記事・クチコミサイトへの投稿・動画コンテンツ内での商品紹介・アフィリエイト記事・ECサイトのレビュー・新聞・テレビ・ラジオ・雑誌など、商品やサービスについて行うあらゆる表示媒体が対象になります。報酬や物品提供の有無、明示的な指示の有無を問わず、客観的に「事業者が表示内容の決定に関与した」と認められれば規制対象です。
違反した場合の罰則と措置命令
ステマ規制に違反した場合、消費者庁から措置命令が出されます。景品表示法に基づく措置命令の内容として、違反行為の差止め、違反したことを一般消費者へ周知徹底すること、再発防止策を講ずること、その違反行為を将来繰り返さないことの4点が挙げられます。命令が公表されるため、企業の社会的信用への打撃は極めて大きくなります。
ステマ告示違反そのものには課徴金は課されませんが、措置命令に従わない場合には2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。法人に対しては3億円以下の罰金が定められており、ブランドイメージへのダメージと合わせると、ステマで得られる短期的な利益とは比較にならない損失を被ることになります。なお、表示内容に優良誤認や有利誤認の要素も含まれる場合は、ステマ告示違反に加えて、優良誤認・有利誤認として課徴金の対象となる可能性もあります。
過去の投稿も規制対象になる可能性に注意
実務上、特に注意が必要なのが、2023年10月以前に投稿されたコンテンツも規制対象になり得るという点です。規制施行日以降にその投稿が「現に表示として存在している」状態であれば、過去のものであっても違反と判断されます。
このため、企業はインフルエンサーに依頼した過去の投稿、自社サイトのアフィリエイト記事、引用されているクチコミなどを一通り棚卸しし、PR表記が漏れているものは速やかに取り下げや修正する必要があります。
ステルスマーケティングの代表的な手口
消費者庁の運用基準では、ステマの典型例として大きく「事業者が自ら行う表示」と「事業者が第三者をして行わせる表示」の2系統が示されています。一般的には前者が「なりすまし型」、後者が「利益提供秘匿型」と呼ばれることもあります。仕組みが異なるため、企業として防止策を考える際にも両方を意識した体制構築が必要です。
事業者本人や関係者によるなりすまし
ひとつ目は、事業者本人や従業員、グループ会社の社員などが、一般消費者を装ってクチコミやレビューを投稿する手法です。事業者と一体とみなせる立場の人物が、関係性を隠して好意的な投稿を発信します。
代表的な事例としては、商品の販売担当者(役員・管理職等)が自社商品の認知向上を目的に投稿するケース、自社製品の優良性を強調するため競合商品を誹謗中傷するケース、飲食店の関係者が複数アカウントを使い分けてレビューサイトに高評価を投稿するケースなどが挙げられます。これらは消費者庁の運用基準で明確に規制対象となります。
第三者に依頼して行わせる表示(インフルエンサーによる投稿)
ふたつ目は、事業者がインフルエンサーやアフィリエイター、レビュー仲介業者などの第三者に依頼して、表示内容に関与しているにもかかわらず関係性を明示せずに発信させる手法です。表面上は第三者の自発的な感想に見せかけることで、消費者の信頼を不正に獲得します。
具体例としては、報酬を支払ってインフルエンサーに投稿を依頼したのに「PR」表記をつけなかったケース、商品を無償提供したうえで方針に沿った投稿をさせたものの提供事実を伏せていたケース、アフィリエイトサイトに広告主の表示である旨を明示しなかったケース、EC出店者がブローカーや購入者に依頼して好意的なレビューを投稿させたケースなどがあります。なお、明示的な依頼や指示がなくても、無償商品の提供や言外のニュアンスで「投稿すれば今後の取引可能性がある」と推認させた場合も規制対象となり得る点に注意が必要です。
ステマが企業にもたらすリスク
ステマを行った場合、企業は短期的な売上向上と引き換えに、複数の深刻なリスクを抱え込むことになります。リスクは法的なものだけでなく、ブランド・SNS・顧客関係といった多面に及びます。
法的リスクと措置命令
最も明確なリスクが法的リスクです。前述の通り、措置命令を受けた場合は違反内容が公表され、命令違反時には罰則も科されます。措置命令は消費者庁のウェブサイトに掲載されるため、検索すれば誰でも閲覧可能な状態になり、ニュースメディアにも取り上げられます。
法的リスクの本質的な怖さは、罰金そのものよりも「公的機関に違反企業として認定された」という記録が永続的に残る点にあります。取引先からの信用評価、求職者からの企業イメージ、株式市場での評価など、多方面に長期的な影響を及ぼします。
ブランドイメージの毀損と信用失墜
2つ目はブランドイメージの毀損です。ステマが発覚した瞬間、これまで築き上げてきたブランドの信頼資産は一気に目減りします。「あの企業は消費者を欺いていた」という認知が広まれば、商品の品質や企業姿勢そのものへの疑念に発展し、長期的な売上低下を招きます。
特にブランドエクイティ(ブランドが持つ無形の資産価値)はマーケティング戦略の中心に据えられる重要な要素です。ステマはこのブランドエクイティを毀損してしまう行為のひとつであり、回復には数年単位の時間と継続的な誠実なコミュニケーションが必要になります。
中長期的な売上・顧客離れへの影響
3つ目は中長期的な売上への影響です。ステマ発覚直後は短期的な売上の急減が起こりますが、より深刻なのはその後の顧客離れです。一度「信用できない企業」として認識されると、リピート購入の停止、離反した顧客の競合への流出、新規顧客の獲得難化などが続きます。一度損なわれた信頼を再構築するのは新規獲得よりはるかに困難です。ステマで得られる短期利益と、失う中長期的な売上を天秤にかければ、合理的な経営判断としては選び得ないことが分かります。
事業者がステマ規制に違反しないための対策
ステマ規制に違反しないためには、社内の運用ルールを整え、外部パートナーとの契約・指示書まで含めて一貫した体制を構築する必要があります。実務で取り組むべき対策を解説します。
「PR」「広告」表記の徹底ルール
最も基本的な対策が、広告であることを明示する表記の徹底です。消費者庁の運用基準では、一般消費者にとって分かりやすい表示の例として「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言の使用が挙げられています。SNS投稿の冒頭などの目立つ位置に「#PR」「#広告」「#プロモーション」を明記し、文字色や文字サイズを本文と同等以上にするといったルールが推奨されます。
注意すべきは、表記を入れていても消費者が事業者の表示と認識できなければ違反と判断され得る点です。大量のハッシュタグの中に紛れ込ませる、極端に小さなフォントで記載する、画像内の見えにくい場所に置く、動画で認識できないほど短時間しか表示しない、長時間動画で中間や末尾にだけ表示する、といった対応はNGです。「一般消費者が広告であることが分かるか」を判断軸として、表記方法を社内で標準化することが重要です。
インフルエンサー契約・指示書での明示
二つ目はインフルエンサーや代理店との契約段階での対策です。契約書や発注書に「広告であることを明示する義務」「PR表記のルール」「違反時の責任分担」を明記し、双方が同じ理解で進められるようにします。
実務では、投稿前の指示書(ブリーフィング資料)にPR表記の具体的な記載方法を例示する、投稿後にPR表記が適切か確認するチェックフローを設ける、修正が必要な場合の対応手順を事前に取り決めておく、といった運用が有効です。インフルエンサー側は告示の直接の規制対象ではありませんが、企業側が主導してルールを示すことが、結果的に事業者・第三者双方を守ることにつながります。
ステルスマーケティングに関するよくある質問
ステマはいつから違法になった?
日本でステマが景品表示法違反として明確に規制対象となったのは、2023年10月1日からです。具体的には、景品表示法第5条第3号に基づく内閣府告示第19号「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が施行されました。それ以前はステマを直接的に規制する法律はなく、業界団体の自主規制や倫理的な指針に頼る状況が続いていました。施行以降は、事業者の関与を消費者が認識できない表示は不当表示として処分対象となり、事業者の責任が法的に明確化されました。
ステマの規制対象にはインフルエンサーも含まれる?
景品表示法のステマ規制において、直接的な責任を負うのは商品・サービスを供給する事業者(広告主)であり、インフルエンサーやアフィリエイター個人ではありません。これは従来の景品表示法と同様の枠組みです。ただし、インフルエンサー側もステマに加担すれば社会的信用を失うリスクは大きく、また従業員等で「事業者と一体」とみなされる立場であれば事業者の表示として規制対象に含まれます。双方が透明性を意識した運用を行うことが重要です。
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