SNSコラム

UGCを起点に開発し、流通させていく。スナックミーが切り開いた新たな販売の在り方 #ザ・プロフェッショナル

2021年06月04日
ザ・プロフェッショナル | 食品業界向け

各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルとホットリンクCMO・いいたかゆうたが、SNSやマーケティング、ビジネスのあり方について考える対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」

今回のゲストは、おやつのパーソナライズ型サブスクリプションサービス「snaq.me(スナックミー)」などを運営する株式会社スナックミー代表取締役の服部慎太郎さんです。

「おやつの時間をもっと価値のあるものにする」をミッションに掲げ、2016年にスタートした同サービス。SNS上でのクチコミを軸に人気を拡大し、2020年11月からはおつまみの定期便「otuma.me(オツマミー)」の提供も開始しました。

思わずSNSでシェアしたくなるような仕掛けを多数組み込んでいるスナックミーは、SNSをどう捉えているのでしょうか。

今回はホットリンクのライター・「私がエレン」も参加し、SNSマーケティングや、食品業界におけるSNS活用の可能性を語っていただきました。

※編集部注:一部写真において被写体がマスクをつけていませんが、周囲に人がいないことを確認し、撮影時のみ外しています。インタビューは、すべてマスク着用で行なっています。

服部慎太郎(はっとり・しんたろう)。1981年生まれ。慶応義塾大学大学院修了後、ボストン・コンサルティング・グループなどでコンサルティング業務に従事。その後、スタートアップを経て、ディー・エヌ・エーに入社。ボストン・コンサルティング・グループでは主にインターネット関連企業への新規事業立案、M&A、アライアンス戦略を担当。ディー・エヌ・エーではスタートアップ約15社への投資を行う。2015年9月に独立し、株式会社スナックミーを設立。

UGCも、プロダクトの一部と捉える

私がエレン:
まず、服部さんがSNSに注力し始めたきっかけを教えてください。

服部:
スナックミーをスタートして、最初のお客様は広告経由で集客しました。100人ぐらいです。その後、本当にスナックミーがサービスとしてニーズがあるのかを探りたくて、一気に広告を止めてみたんです。

すると、予想以上にお客様が増えていきました。TwitterやInstagramに投稿してくださる方がとにかく多くて、投稿を見た方が新規で購入してくださるという流れができていました。

お客様インタビューを続けていく中で、満足度が高い方ほどSNSに投稿していただける傾向にあると気づいたんです。UGC(ユーザー投稿コンテンツ)はサービスに対する満足度の指標になっているし、投稿してもらえれば、そこから新たなお客様に出会える。そのことに気付いてから、SNSはマーケティング施策の1つというより、プロダクトの一部と捉えるようになりました。

自分なりにSNSを活用していましたが、2019年の3月頃に初めていいたかさんとお会いして、いいたかさんにアドバイスをいただいたんです。そこからは、目に見えてUGCが増えていきましたね。

いいたか:
僕からは、すごくベーシックなことをお話ししました。自社アカウントでUGCをしっかり拾い上げていきましょうとか、商品が届いたときや食べるときなど、どのようなタイミングで投稿したくなるのかを一緒に考えて、施策やプロダクトに落とし込んでいきましたね。

服部:
スナックミーでは、毎月箱や同封する冊子のデザインを変えています。冊子は16ページぐらいあって、毎回新しいコンテンツを作っています。毎月デザインするのは大変でもありますが、「今月の箱がかわいい」と投稿してもらえることも多いですね。

いいたか:
スナックミーをきっかけにTwitterやInstagramを始める方も結構いますよね。スナックミー専用アカウントを作成されている方、よく見かけます。

服部:
そうなんですよね。今までSNSに触れてこなかった方にも、楽しんで投稿してもらえている印象があります。

私がエレン:
スナックミーさんがSNS上で発信されているコンテンツは、おやつに限らず、暮らしに関連する内容も多い気がします。

服部:
ライフスタイルをテーマに、コンテンツを作成するように心がけてますね。「おやつを食べる時間の価値を上げたい」という思いがあるので、単にモノを取り上げるだけのコンテンツは載せていません。

「お菓子」と「おやつ」の使い分けにも、気を付けています。僕は、お菓子はモノで、おやつは体験と捉えています。社内でも「お菓子を売っちゃダメだよ。おやつという体験を提供しよう」とよく話しています。

UGC起点のプロダクト開発に徹することで得たもの

いいたか:
僕がおもしろいなと思ったのは、冊子でTwitterのUGCを紹介する取り組みですね。

服部:
紙の方が特別感があるようで、Twitterで紹介する以上に喜んでいただけます。冊子に取り上げられているのを見た本人が、またTwitterに投稿してくれたり。

私がエレン:
箱も冊子もパッケージも、細部にまでこだわりがあって、シェアしたくなる仕掛けがふんだんに盛り込まれていますよね。

服部:
僕たちとしては、ディズニーランドのような体験を提供したいと思ってるんです。ディズニーランドって、「隠れミッキー」のように、園内にいろんな仕掛けがあるじゃないですか。1回行っただけでは絶対に見つからないし、見つけられたらすごく嬉しくて、思わずシェアしたくなる。スナックミーもそんな存在を目指しています。

私がエレン:
今のような、UGCを生み出すプロダクト設計にたどり着くまでに、どのような経緯があったのでしょうか。

服部:
実は、2018年の終わり頃にすごく迷っていた時期がありました。それまでは、冊子は今よりもボリュームが少なかったし、デザインも今のようなペースでは変えておらず、商品設計にそれほど凝ってはいませんでした。

そのなかで、「良いものを相応の値段で売るのか、全く別のものを作るのか」で迷い、別のものを作ると決めたんです。

それまでの経験から、UGCを起点にサービスが広がっていく実感はあったので、UGCをフル活用する方向にシフトしていこうと決めました。

私がエレン:
実際、UGC起点のプロダクト設計をするようになってから反響はいかがでしたか。

服部:
UGCの増加とともに売上も伸びていますね。指名検索数もかなり伸びて、そこから売上につながっています。

いいたか:
スナックミーさんのUGC、本当に伸びていますよね。2018年から2019年の1年間で約10倍に増えていますよね。

※ホットリンクのデータ分析ツール「BuzzSpreader Powered by クチコミ@係長」調べ

服部:
公式アカウントで、「推しスナックミー」とか、「初めてスナックミーを買ったときのことを教えてください」などのキャンペーンを定期的に実施しているんですが、毎回ポジティブなUGCがたくさん出ています。

私がエレン:
それを機にスナックミーを知った方が、新規購入に至るという流れができているんですね。

服部:
はい。そのようなポジティブな言及はかなり強力な後押しになっていますね。スナックミーは買い切りではなく定期購入型なので、初回のハードルは高いんです。それに、自分の好みに合うかは、食べてみないとわかりません。だからこそ、実際にご利用いただいているお客様の声が参考になるんですよね。

食品は、企業やお店側からいくら発信しても、味の良さまでは感じてもらえません。でも、自分の友人や同僚が「美味しい」って言っていれば、買ってみようかなと思いやすくなる。

いいたか:
スナックミーを起点に、ちょっとしたコミュニティも生まれていますよね。

服部:
はい。他ユーザーによるスナックミーに関する投稿を見た方が「私まだ食べたことない」「これは美味しかった」と話していて、ユーザーさん同士のコミュニケーションが生まれています。

私がエレン:
服部さん自身は、SNSとどう向き合っていますか?

服部:
もともと僕は、全然SNSを使っていなかったんですよ。でも、当社の広報につつかれて、さすがにやらないといけなくなって(笑)。

最初はスタートアップの会社としての情報発信、代表が何を考えてるのかを発信するための場として利用していました。noteに長い文章を書いて、投稿したらTwitterで告知していました。

私がエレン:
SNSを使って良かったと思うことはありましたか?

服部:
お客様の心情が理解しやすくなりましたね。僕自身、自分で買ったり使ったりした製品について投稿したいと思うタイミングがあったので、「製品を投稿する時ってこういう気持ちなんだな」と、実感できました。

いいたか:
スナックミーの社員の皆さんもSNSに取り組まれてますよね。アイコンが統一されていて印象的です。

服部:
当社メンバーが設定しているアイコンは、イラストレーターさんに描いてもらったものです。入社した段階でイラストを配って、好きに使っていいよと伝えています。強制はしてないんですけど、みんな使ってくれていますね。

今の時代は、「製品の中の人の声」がすごく大事だと思っています。どんな人が作っていて、どう考えているのか。どんな思いを持っているのかをちゃんと伝えるべきです。

そこに共感し、スナックミーの公式アカウントだけでなく、社員のアカウントもフォローしてくださっているお客様も一定数いますね。

自分語りはせず、すべてをUGCに委ねる

私がエレン:
服部さんには、2020年にホットリンクが主催した#NEWWORLD2020」にも参加いただきました。変化はあったでしょうか?

服部:
基本的なことは変わっていませんね。不可逆な変化を経た今、これまで変化の乏しかった流通が、いよいよ変わらなければいけないのかなと感じています。

これはよく聞く話なんですが、各食品メーカーは、小売側から「コロナはそろそろ終息するだろうから、量を増やしてくれ」と言われ、増産したところで自粛期間が延び、在庫を大量に抱えてしまう状態に陥りがちです。以前と比べて、オフラインで販売するリスクが増えています。

一方スナックミーは、ECで、サブスクリプションという販売形態を取っているので、売り上げの変動リスクは少ないです。取引先からも、すごく喜ばれていますね。

自粛期間がずっと続くわけではないと思いますが、以前のような日常には戻らないでしょう。そのような状況で、何十年前から続く販売形態だけを続けていても、厳しいと思います。

私がエレン:
スナックミーさん自身も、いろいろと新しい取り組みをされていますよね。昨年末にリリースした「otuma.me」は、どのような経緯でスタートしたのでしょうか。

服部:
きっかけは、僕が住んでいるマンションの他の部屋の外に、お酒の瓶がたくさん転がっているのを見たことですね。家で飲む人がすごく増えたんだなと。それなら「家飲み」をもっと楽しむためのおつまみを提供したいなと思ったんです。

僕は、ペルソナとかターゲットとかは一切作りません。とにかく良いものを作ることに拘っています。

いいたか:
「otuma.me」のWebサイトを拝見したのですが、かなり実験的ですよね。

服部:
そうなんですよ。サイト上にはほとんど情報を載せていません。購入導線と、Twitterへのリンクぐらいしか設置していないですね。

私がエレン:
なぜこのようなアウトプットになったんですか?

服部:
ブランドについてブランド自身が語ることに、僕が疲れてしまって。語らなくても、「ものが良ければいい」って思考になったんですよね。自分では語らない代わりに、SNS上でのUGCを見てほしいと思ったので、Twitterリンクを設置しました。

Twitterアカウントでは、UGCのRTと、メディアに取材していただいた記事のツイートしかしていません。Instagramも運用していますが、そこでも自分語りはせず、淡々と商品を紹介しています。

いいたか:
自分語りに疲れてしまったのはなぜですか?

服部:
言葉を選ばずに言うと、普通のブランドなのにそれっぽくストーリーを語ってるのをよく見かけるようになって、それが嫌になったんですよね。

私がエレン:
「ブランドを自身で語らない」を実践してみて、感触はいかがでしょう?

服部:
「otuma.me」も、少しずつお客様が増えています。このやり方でも買っていただけるんだなと実感できているので、嬉しいですね。

普遍的なものを作り、時代に合わせてメッセージを変えていく

私がエレン:
服部さんが考える、食品メーカーにとってのSNS活用の可能性について教えてください。

服部:
やはり、食品は食べないとわからないので、実際に食べた方によるUGCのパワーは強いです。

あとは、製品開発にUGCを活かせる仕組みを作ることも大切です。スナックミーの場合は、インスタライブで製品改善のための意見を募って、そこで集まった意見をもとに改良を進めています。

どちらの場合でも、大前提は「商品が美味しいこと」です。美味しさは当然担保するとして、そこからさらにUGCを生み出せるように設計していく必要があると思っています。

いいたか:
おっしゃる通りですね。

インスタライブを通じてファンとコミュニケーションするのは本当に良い取り組みだと思います。特にECの場合は、小売店で流通している商品と違ってユーザーから見えない部分が多いので、SNSを通じてどんどん見せていくのは重要ですね。

服部:
本来であれば、実際に目で見て選べるので、オフラインで売られている食品の方が手に取ってもらえる確率は高いですし、UGCを生み出すポテンシャルも高いはずですよね。

いいたか:
そうなんですよね。でも、店舗で何気なく買ったものは投稿しないけど、ECで買ったものは投稿したくなる。特別感に差があるようです。

服部:
そもそもメーカーって、消費者から距離が遠いから、消費者の感覚をプロダクトに組み込みにくい側面はあるのかもしれないですね。でも、絶対にSNS活用はポテンシャルを秘めていると思います。

私がエレン:
ありがとうございます。

最後の質問になりますが、コロナの影響もあって大きな変化が起こっている昨今において、食品業界に携わるマーケターが意識すべき点は、どういうものでしょうか?

服部:
僕はマーケティングというよりプロダクト寄りの人間なのですが、マーケターであっても、どんどんプロダクト開発に関わってほしいです。どんな時代でも買ってもらえるものを作って、時代や環境に合わせてメッセージを形成していくべきだなと。

いいたか:
そうですね。僕が知る範囲でも、マーケターがプロダクト開発に関わっていくケースは増えています。マーケティングは「届ける仕事」と思われがちですが、「届け方を最適化している」だけ。プロダクトが良くないと何も始まらないですから。なので、マーケターであってもプロダクト開発タイミングから関わるべきと考えています。

服部:
そうやって「良いものを作ること」はブラさずに、あとは時流を読み取って、素早く柔軟に対応していけるかどうかですね。小さなアクションでもいいから、どんどん行動していくべきだと思います。

―服部慎太郎さん、本日はお忙しいところありがとうございました。

 

今回の「ザ・プロフェッショナル」もお楽しみいただけましたか? 本シリーズでは、今後も各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルをお招きして対談を行ないます。過去の記事はこちらからご覧ください。

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