SNSコラム

JEANASISと語る「リアルな場での体験価値」EC化が進む中、アパレルが提供できる普遍的価値とは?

2020年11月06日
ザ・プロフェッショナル

各業界で活躍する様々なプロフェッショナルたちとホットリンクCMO・いいたかが、2020年以降のSNSマーケティングのあり方について考える対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」。

今回のゲストは、アパレルブランド「JEANASIS(ジーナシス)」プレスの久保江由貴さん。
久保江さんは、JEANASISのすべての公式SNSアカウントの統括と、オウンドメディア「JEANASIS MEDIA」の編集長も務めていらっしゃいます。メディアプラン設計やノベルティ、イベント企画など、様々な施策からブランドとお客様の接点を作り続けるお仕事をなさっています。

今回はホットリンクのライター・私がエレンも参加しつつ、Instagramを中心としたJEANASISのSNS運用について聞いていきます。店舗スタッフがSNSで積極的に発信することの意義や、コロナ禍だからこそ見えたリアルな場での体験の価値など、現場の観点も交えたお話をたっぷり伺いました。

久保江由貴。大学のアルバイト時代より株式会社アダストリアに在籍。入社後は2年間の店舗勤務を経たのち、JEANASISのプレス担当に。2016年にはJEANASISのオウンドメディア「JEANASIS MEDIA」を立ち上げ、編集長に就任。JEANASISすべての公式アカウントを統括している。
Instagramアカウント

Instagram経由の購買は3パターンも発生している

私がエレン:
JEANASISのSNSアカウント、私もフォローしています。各アカウントにはどのような役割を持たせていらっしゃるんでしょうか?

久保江:
JEANASISはアパレルブランドのため、視覚的な訴求がしやすいInstagramを重視しています。ライブ配信もやってますし、広告も施策としてやってますが、うちのSNS運用の根幹や本質は「お客様との繋がり」ですね。

公式Instagram @jeanasis_official

アパレルブランドのInstagramアカウントって、ブランドの世界観を押し出すような運用がスタンダードだったかと思います。でもコロナ禍以降は、お客様にどれだけ共感して頂けるか? 繋がりを作れるか? という方が大事になってきたのではないでしょうか。

実際にJEANASISのアカウントもそちらに軸足を置いて動かすようになってからの方が、お客様に支持して頂いている印象が強くなりましたね。

私がエレン:
Instagramに載せるクリエイティブに関しては、どういった点を意識していらっしゃいますか。

 久保江:
「JEANASIS MEDIA(公式オウンドメディア)」のコンテンツを流用した投稿もあるんですが、そもそもオウンドメディアって、ブランドの世界観を表現したものが中心なんです。コンテンツを流用しているだけでは「お客様との繋がり」というキーワードから遠ざかってしまうので、現在は分かりやすさを重視したコーディネート画も紹介しています。

コーディネートの投稿ではショッピング機能(Shop Now)を活用しているんですが、そこを経由した購買行動も発生してますね。コーディネートを見ることで「自分ごと化」して頂きやすい状態になったからこその成果かもしれません。

いいたか:
ショッピング機能からダイレクトに購買してくれるお客さんって、結構いるんですかね。

久保江:
かなり多いです。Instagramトップに貼ってあるオンラインストアのリンクに飛んで購買というケースもありますし、ストーリーズからの流入もあります。Instagram経由での購買は主にこの3種類ですね。

公式WEB STORE

いいたか:
投稿を保存して店舗に見に行くとか、あるいはGoogleで検索して買うとか、間接的に購買に影響を与えている行動も起きてそうですね。

久保江:
あ、それも起きてます。「これありますか?」と、お客様の方から保存した投稿をスタッフに見せる形でお声がけ頂くケースも増えているようです。

いいたか:
なるほど。最早Instagramが接客する時のカタログになってる印象ですね。

店舗アカウントの活用は、お客様との関係性あってのもの

いいたか:
コロナ禍以降はとくに店舗スタッフがSNSで積極的に発信する動きが強くなってきてますよね。その辺りで、JEANASISが取り組んでいることってありますか?

久保江:
まず挙げられるのは、全71店舗にInstagramのアカウントを持たせていることですね。
やっぱりお客様が身近に感じている店舗スタッフの存在や関係構築が出来上がっているところからの情報発信の方が届きやすいんですよ。正直、本部の公式アカウントからの発信よりも求心力が強いなと感じます(笑)。
お客様と一対一の関係性を作っているのは、リアル店舗のスタッフですから。店舗とお客様の間で既に完成している関係性をベースに、よりファンになって頂く部分を担ってもらっているなと思います。

久保江:
テナントで入っている店舗に関していうと、テナントさん独自の周年祭とか期間限定イベントが開催されても、本部運営の公式アカウントからその情報って発信できないんです。そこを店舗アカウントに担保してもらえれば、目の前のお客様とのつながりをしっかり作ることもできます。

お客様目線で考えたら、よりお得にお買い物したいじゃないですか。
なので理想は、店舗と公式アカウントの両方をフォローして頂くことで、「こんな情報が流れてきてラッキー」と思って頂けると嬉しいです。

いいたか:
店舗アカウントは個性の方が出やすい分、ブランド全体の方針の反映とか投稿のクオリティ面のコントロールが難しそうな気もします。公式アカウントの方が、コントロールは効きやすそうですね。

久保江:
公式アカウントは完全に私の管轄なので、確かにそうです。

でも、店舗アカウントの方は結構自由にやってもらってますよ(笑)。私から伝えていることとしては「こうするとよりお客様との繋がりを作りやすいよね」とか「こうするとフォロワー増えるよね」ぐらいで、あとはスタッフの解釈に任せているところもあります。

例えば、店舗アカウントの強みってニュースをいち早く発信できる点にもあるんですよ。「この人気商品、3日で完売しちゃいました。でも今週また入りますよ!」というニュースがあるとしたら、それはお客様にとっては知りたい情報でしょう。であればいち早く店舗から発信してお客様に伝える必要があるよね、という話はしていますね。

いいたか:
確かに。僕らもアパレル企業さんのSNS支援をさせて頂いてますが、世界観を重視しているからこそ、本部の公式アカウントしかないブランドさんって多いなと思います。

でも、方針的に本部以外のアカウントは作らないで欲しくても、店舗側が発信したくて作り始めちゃう(笑)。今でこそどこのブランドもオープンになってますが、店舗アカウントの開設を許容した企業としなかった企業の差が、だいたい4年ぐらい前から出始めてたと思います。

久保江:
とくにうちのブランドは10代から30代・40代までと、お客様の幅が本当に広いんですね。スタッフも約700人もいるので、ひとり一人が異なったJEANASIS像を持っていて、それをコーディネートで表現しています。お客様も幅広ければ、スタッフの着こなしも多様となると、公式アカウントのみに縛られることはそれこそリスクだったと今は思いますね。

いいたか:
しかも、本部発信の情報と店舗に並んでる服って全然違うじゃないですか。実は店舗の方がトレンドを押さえていることもある。

久保江:
そうですね。店舗アカウントによって全然コーディネートが違うのも、企業の一方通行的な発信感がなくて今っぽいと思います。画一化された投稿じゃない方が、お客様も手に取りやすいでしょうし。

いいたか:
本部が定める「ブランドらしさ」も重要ですが、結局は商品を手に取ったお客様が感じる世界観が、一番のブランドイメージです。

公式から発信されたブランド像がその「ブランドらしさ」を最も表しているとは限らなくなってきてるのかなあと、僕は思います。

リアルな場だからこそ生まれる体験の価値とは?

いいたか:
自粛期間中は店舗休業もされたと思いますが、その状況下で新しくやった取り組みとか、やってよかったことはありましたか?

久保江:
それでいえば、ストーリーズの質問箱を活用した企画が成功しました。
本部で作った質問箱のフォーマットと、A店ならTシャツ/B店ならパンツなど、売ってほしい商品を伝え、各店のインスタからお客様にアイテムを着こなす際のお悩みなどを聞いたんですね。その返答も店舗スタッフにやってもらい、質問箱に寄せられた投稿画そのものを本部に納品にしてもらったんです。その回答を集約させたコンテンツをEC上にローンチさせました。

画像提供:JEANASIS

いいたか:
それはうまい取り組みですね!

 久保江:
休業になってお店で動けなくなったスタッフ達の「何かしたい」というモチベーションもあって、本当にうまくいきました。お客様にしてみれば、ストーリーズで自分の悩みも聞けますし。

それで店舗スタッフから納品された投稿を見ると、日頃からお客様の一番近くにいるのでやっぱり親近感を感じるようなコンテンツになってるんですよね。反応がすごくよかったので結局3、4回ぐらいやりまして。

いいたか:
店舗でスタッフさんに「こっちの方が似合いますよ」とかいわれるとシンプルに嬉しいんですよね。お客さんとのコミュニケーションの質が普段から担保されているからこそ、場所がSNSに移っても成功できたんでしょうね。そのベースがあるからこそ、SNSやオウンドメディアなどの各チャネルとお客様との間に「フィット感」が出せたのかと。フィット感を出せない企業も割と多いです。

いいたか:
あと、逆説的ですがリアルな接客の場の重要性も感じる事例だとも思います。コロナ禍になった後、多くの人がオンラインやSNSでもリアルな場を求め始めてるなと感じていて。

久保江:
オンラインって、どちらかというと目的買いが多いじゃないですか。例えばオケージョン用のドレスを買うとき、オンラインだと「このスタッフさんのスナップを見る限り、自分と体型が近いから合いそうだな」と思ってポチる。そこで終了です。

でも店舗に行くと、ドレスに合うコサージュやブローチなど、その時のオケージョンに合ったものをスタッフが持ってきてくれて「ああ、素敵!」という、思わぬ価値を見つけた感動が生まれる瞬間がありますよね。それって、やっぱりリアル店舗じゃないとなかなか生まれにくい。

 いいたか:
わかります。この前服を買いに行ったとき、店員さんがシチュエーション別の着こなしとか色々とレコメンドしてくれたんですが、「オンラインだったらコーディネートがひとつ提示されて、そこで終わりだな」と思いました。
今だからこそ見直されているリアルな場での体験の価値って、絶対ありますよね。

店舗スタッフは今後美容師のようになっていく?

私がエレン:
店舗体験ができるようなデジタル上の施策については、何かやってらっしゃいますか?

久保江:
今5ヶ月間ほど、週1回ペースで店舗からのライブ配信を行っています。本部との連携も取りながらやっていることもあり、成果はかなり出ています。

店舗スタッフの強みのひとつは、お客様と普段リアルに繋がっているからこその言葉を発信できるところです。
質問箱の企画もそうですが、店舗での一対一の接客から得たコミュニケーション感覚って、場所が一対複数人のインスタライブになっても活きるんですよね。
例えば「このパンツに合うアイテムを教えてください」というコメントに対して、店舗スタッフの子たちって「そのパンツはシルエットがこうで、着心地はこうなので、上質な素材と合わせて…」みたいな言葉がスラスラと出てきます。

コミュニケーションの相手が複数人であり、同時に質問をたくさん頂ける分、ある意味効率化した形でお話できるというメリットもあります。また、都心以外の店舗からでも、全国に発信できる体制ができたことには、手応えを感じますね。

私がエレン:
いわゆる「スタッフのインフルエンサー化」みたいなお話ですよね。いいたかさんは今後、この動きは広がっていくと思いますか?

いいたか:
とくにBtoCで広がっていくだろうね。コンセプト設計がしっかりしていて、ターゲットも明確かつ細かいBtoCはやりやすいと思います。

従来はお客さんへの情報発信というと「プレスからのメッセージ」になってましたが、それをスタッフが伝えていくとなると、スタッフ自身がどうブランドを着るか? がポイントになってくるんじゃないでしょうか。

スタッフの発信によってお客さんが親近感を持つことで、「この人がオススメしてる商品だったら、私も似合うから買おう」という流れが起こるかもしれませんよね。今までだったら「店舗に行って試着して買おう」でしたが、行動の在り方が変わる可能性はあります。

ただ、スタッフの「個の発信」という意味合いではアパレル関係なくどこの業界でも同じことがいえると思います。既に変化は起きているでしょうし、もっと強くなるかも。

久保江:
それでいうと、今アダストリアが運営している「STAFF BOARD」というスタッフがコーディネートを投稿するサービスページが浮かびました。ここのコンテンツは、今いいたかさんが仰ってくださったところをカバーしてそうです。

STAFF BOARD| dot st(ドットエスティ)

いいたか:
あ、ほんとですね。身長も書いてある。
アパレルブランドって従来は高身長な外国人モデルを広告に使ってたので、自分が着たときのイメージが湧かなかったんですよね。でも身長も体型も、顔も違う多様なスタッフさんの発信があれば、お客さんとしてはイメージしやすいでしょうし。

ちょっと言葉が合ってるか分からないですけど、店舗スタッフって美容師さんみたいになっていきそうにも見えます。髪を切りに行くときに「今日あの人がいたらいいな」って感覚あるじゃないですか。それって、アパレルブランドの店舗にも絶対あると思うんですよ。

STAFF BOARDみたいなサービスで自分の体型と近かったり、コーディネートが好きだったりするスタッフさんをフォローしておいて、「あ。この日出勤してるなら行こう」みたいな購買行動って絶対起きると思うんですよね。
スタッフがコンテンツを発信することがお客さんに寄り添う形になる、みたいな動きはより加速しそうです。お話を伺っていると、もう既にそうですしね。

時代がどう変わっても「ブランドらしさ」を外さない発信を

私がエレン:
先日、新ブランドがローンチされたそうですね。Instagramを見る限り、大人の女性向けブランドという印象でした。

久保江:
「eL(エル)」というブランドですね。8月5日にデビューしました。

公式Instagram @el_jeanasis

私がエレン:
今回の新ブランドは、JEANASISのブランディング構築においてどういう意味合いがあるのでしょうか。

久保江:
JEANASISのコンセプトは「同性から支持される」こと。「20代からの憧れ、30代の定番」もブランドテーマにもっています。
実際には高校生ぐらいの年代から愛用して頂いているので振り幅の大きなブランドですが、来年の20周年を目前に「大人の女性たち」からも親しみを持って頂きたく、ローンチに至りました。

20年も経てば、お客様も成長していきますから。

私がエレン:
なるほど。従来のJEANASISらしさをベースにしつつも、新しい顧客層からの共感も得ようと。

久保江:
はい。ブランドとしての軸の話をすると、JEANASISは時代性に合わせた編集が出来るところが強みです。
とはいえJEANASISらしさは崩さずに、時代性に合わせて編集した商品を展開し、そこから得られる共感を通じてお客様と繋がっていく。それをキーワードにし続けられるブランドでありたいですね。

いいたか:
最後に、アパレルブランドのSNS担当者や同業界の方々に、SNSでのコミュニケーションやコンテンツ発信などにおいて、今後も意識していきたいことがあれば教えてください。

久保江:
Instagramもどんどんアップデートされて新機能が出てくるので、まずは試してみることが大切だと思います。「ひとつの物事を多角的な視点で見ることが大事」とはよくいわれる言葉ですが、実際に動かしてクイックにPDCAを回すと、結構正解も見えてくると思います。果敢にチャレンジしていくことが重要でしょうね。

ただし、ブランドが大事にしていることは絶対に外してはいけない。時代性に合わせて編集するとしても、「自分のブランドの強みやらしさ」という中核を押さえたコンテンツを発信していけば、ブランディングは守られると思っています。だからこそ共感者や支持してくださる方も増えるのでしょうし。

SNSや時代がどうなっても、ブランドの中核は外さないでいることを最重視したいと思いますね。


――久保江由貴さん、本日はお忙しいところありがとうございました。

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