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この記事の内容
各業界のマーケティング分野で活躍するさまざまなプロフェッショナルたちとホットリンクのCMO・飯髙が、2020年以降のSNSマーケティングのあり方について考える対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」。
今回のゲストは、ソーシャルゲームのイラスト制作やマンガ制作事業を展開する株式会社フーモア・CEOの芝辻幹也さんです。
SNSと親和性の高いコンテンツのひとつであるマンガは、企業のマーケティング活動を推進する可能性を秘めています。
前編では、マンガと商材の相性やマーケティングにおけるマンガの強みや活かし方などについてお話ししていただきました。
写真提供元:株式会社フーモア
後編はこちら。
着目すべきは「UGC」と「ダークソーシャル」 SNSマーケティングのこれから
飯髙: フーモアさんはさまざまな企業からマンガ制作の依頼を受けられていますが、どのような依頼が多いのでしょうか?
芝辻: マーケティングで活用したいというご依頼が半数を占めていますね。あとは、社内コンプライアンスやIP関連のご依頼も多いです。マーケティングや認知拡大を目的としたプロモーションから、リード獲得まで幅広く活用いただいています。
飯髙: マンガの特徴のひとつに、あらゆる商材の良さをわかりやすく、楽しく伝えられる点が挙げられると思うのですが、相性のいい商材、悪い商材ってあるのでしょうか。
芝辻: ありますよ。まず、相性がよくない傾向にあるのは、有形商材ですね。実際に手に取ったり、体験したりした方が良さが伝わる商品の訴求にはあまり向かないかなと思います。 たとえば高級マンションの場合、どうしても建物の雰囲気やディティールは伝わりにくくなってしまいます。 その代わり、マンションそのものの訴求ではなく、マンションか戸建てかで悩んでいる方向けに双方のメリットやデメリットを伝える内容をマンガ化するのはマッチすると思います。
飯髙: マンガ活用のポイントとしては、ユーザーが持つ課題に対して解決策をわかりやすく提示するということですね。
芝辻: そうです。相性がいいのはそのようなソリューション型ですね。 とくにITツールなどの無形商材の場合、それを導入することで何が解決されるかイメージしづらい。そこでマンガが活きてくるんです。潜在層はもちろん、興味が顕在化していても「テキストで読むのは面倒だ」という層にもアプローチできる。
飯髙: なるほど。さまざまなフェーズのユーザーにアプローチしやすいということですね。 マンガのもうひとつの特徴として、SNSとの高い親和性があると思います。最近だと『100日後に死ぬワニ』が大きな反響を呼んで、一気にビジネスへ展開されましたよね。
参考:100日後に死ぬワニ 完結記念サイト
芝辻: 更新中はすごいムーブメントが起きていましたよね。 『100日後に死ぬワニ』が成功した要因は、大きくは2つあるかなと思います。ひとつはコミュニティの存在。企画が始まる前から、作者のきくちゆうきさんには一定数フォロワーがいて、彼を中心としたコミュニティが形成されていました。そこを起点に拡散が起きたのだと思います。
ふたつめは、やはりコンテンツの構成が素晴らしい点。タイトルで結末が提示され、どのようにしてその結末を迎えるのかその過程を追う倒叙ミステリのような構成は、見る側の推測を促すのでSNSで盛り上がりやすい。
最近はあのフォーマットを真似した企画がどんどん出てきていますが、それらもすごく面白いです。やっぱりあのフォーマットがよかったのかなと思います。
飯髙: 100日間という期間も、短すぎず長すぎず、SNSでの盛り上がりを維持できる絶妙な設定だったかもしれませんね。 ちなみに、SNSで話題になったマンガ作品の中で、芝辻さんの印象に残っているものってありますか?
芝辻: 古参の作品にはなるんですけど、ゆうメンタルクリニックの『マンガでわかる心療内科』です。
参考:「ゆうきゆうのマンガで分かる心療内科」秋葉原心療内科・精神科】ゆうメンタルクリニック秋葉原院
もともと、ゆうメンタルクリニック代表のゆうきゆうさんが心療内科ってよくわからないし、受診までのハードルが高いことに課題を感じていたんですよね。そこで、ハードルを下げるためにマンガを活用し、どのような病気を治療する場所なのかなどをわかりやすく解説した作品です。
飯髙: 最初に出てきた時のインパクトはすごかったですよね。単純に解説するだけでなく、普通に読み物としておもしろかったですし。
芝辻: そうなんですよ。作品自体すごくおもしろくて、Twitterで拡散されただけでなく、単行本の累計発行部数は約400万部を超えているらしい(2020年5月現在で確認できた情報)です。
参考:「話題のゆうきゆう(安田雄一郎)氏に独占インタビュー!」
2008年からスタートしていて、1ページか2ページだけTwitterで見せて、あとはランディングページに飛ばすという導線になっていたのですが、当時の通信環境を考えるとその設計もよかったんだろうと思います。
2008年だとまだ4Gも普及していない時代で、通信量を食わないコンテンツが受け入れてもらいやすかった。動画より静止画の方がよかったんですよね。静止画の中でもマンガ形式のコンテンツはまだまだ少なくて、さらにクオリティが突出していたから、成功して当然だったのかもしれません。 僕が記憶する限りでは、Twitterではじめてビジネス的に成功したマンガだったのではないかと思います。
飯髙: 今だと通信量をそれほど気にすることなく動画を楽しめますし、5G導入後はよりその傾向が強くなっていくと思います。その中で、マンガの優位性をあえて提示するとしたらどのようなポイントになるのでしょうか。
芝辻: 受動的か、能動的かの違いは大きいでしょう。 動画は、ユーザーが認識している/していないに関係なく自動的に再生されます。漫画の場合は能動的に読み進めてもらう必要があります。
飯髙: 読み進めてもらう必要があるという点では、テキストコンテンツも同じですよね。
芝辻: そうですね。テキストのみのコンテンツと比べると、マンガの方が読み進めてもらいやすい傾向にあります。出口弘明さんの『説得工学 -効果的な伝え方の技術』によれば、テキストコンテンツや会話などと比べて、マンガの方が1分間で伝わる情報量が多いそうです。
参考:「漫画制作・マンガ広告なら安心実績のフーモアにお任せ」株式会社フーモア
また、写真との比較もよくされますね。写真の場合は背景に余計な情報が入るが、漫画の場合は排除できる。伝えたい情報だけを盛り込めるわけです。
もちろん、マンガのデメリットもあります。たとえば、写真はフリー素材などが豊富で、それほどコストや工数をかけずにコンテンツを作成できますが、漫画の場合はある程度作成コストをかける必要があります。
飯髙: 確かにマンガを作成するとなると工数がかかりますよね。導入を検討する多くの企業にとって課題になる部分かなと思います。
芝辻: そうなんです。そこで、マンガの制作工程にイノベーションを起こすために開発しているのが、絵が描けない人でも描けるようにAIツールです。
どういうキャラを作るのかという人物設計の部分は創造的なんですが、それ以降の線を描いたり、色を塗りつぶしたりする工程は結構作業的なんです。
たとえば、マンガをプロモーションに活用したいマーケターやプランナーが「このようなキャラクターを主人公にしたいな」と考えたとします。ただ、そのキャラクターイメージを伝えたいけど自分では描けないから、一旦近いものを画像検索してみたり、外注して作成したりしなければいけません。そのような手間を一気に省略したいんです。
InstagramやYouTubeが流行ったのは、誰でも写真や動画が撮れる環境ができたからだと僕は思っています。今後は、イラストやマンガも同じようにしていきたいんですよね。制作作業の手間を極力減らし、誰でも気軽にそれらのコンテンツを活用できるようになってほしい。
そうしたらこれまで作業に追われていたクリエイターは、キャラクターやストーリー設計など創造的な部分に注力できるようになると思います。
――後編は、マーケティング活動全般へと話題が広がりました。デジタルシフトによる大きな時代の変化が起こりつつある今、どのようにマーケティングを推進すればいいのか、両者の意見が交わされました。
今回の「ザ・プロフェッショナル」もお楽しみいただけましたか? 本シリーズでは、今後も各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルをお招きして対談を行ないます。過去の記事はこちらからご覧ください。
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