SNSコラム

ひとりではなく皆で。加速度的に変化する時代で私たちができること  #NEWWORLD2020 DAY2

2020年04月27日
SNSコラム

最終更新日:2020年12月3日

新型コロナウイルスの影響は、人々の生活を一変する事態に発展しています。政府による緊急事態宣言発令と、各自治体からの外出自粛要請。激動のさなかにある今、私たちにできることはないだろうか。

そんな思いから、ホットリンクは各界のリーダーをゲストに招き、時代の変化に対応するヒントを探るカンファレンス「#NEWWORLD2020」を開催することとなりました。

#NEWWORLD2020 - 各業界をリードする15名をゲストに激動の時代のマーケティングを語る|イベント・セミナー|ホットリンク

2020年4月22日〜5月1日の平日の7日間にかけ、毎回異なるゲストを招いて行う当カンファレンスでは、オンライン会議ツールZoomを使用。リリースからわずか3日という期間にもかかわらず、3,000名以上の方々にお申し込みいただき、現在では4,000名を超えています。

DAY2のゲストは、arca CEO /クリエイティブディレクターの辻愛沙子さんと、栃木SC マーケティング戦略部長の江藤美帆さん。そして、ビッグデータ解析の分野で活躍する謎のツイッタラー、jigen_1さんの3人です。

当社CMOの飯髙とともに、私たちが今できること、この時代をポジティブにとらえるための考え方を語っていただきました。

※DAY2は三部構成形式

DAY1の記事はこちらから。

不可逆的な変化を受け入れ、スピーディに挑戦し続ける  #NEWWORLD2020 DAY1

性別も、立場も超えて社会と向き合い乗り越えていこう

〜第一部 arca CEO /クリエイティブディレクター 辻愛沙子〜

飯髙悠太(以下、飯髙)
辻さんは今回の登壇者で、唯一僕よりも年下の方なんですよね。僕たちよりも若い世代の意見を、ぜひ聞かせてください。

辻愛沙子(以下、辻)
はい。私はarcaというプロジェクトで、マスコミや広告コミュニケーション、クリエイティブの手法を用いながら、フェミニズムやジェンダー問題へのアクションを起こしています。そのなかで、去年の後半から社会問題に対するジャーナリズムに、変化が起こってきた気がします

これまでジェンダーや環境問題、政治は「詳しくないやつは黙っている」みたいな風潮でした。それが落合陽一さんをはじめ、スポーツ界やアパレル、ホテルなど専門家以外の人々が、自分のフィールドから社会課題に取り組む機会が増えてきました。それぞれの原体験から、一緒にスピーチを発信できるようになったんです。とくにZ世代は、SDGsや社会課題への意識が高まりつつあります。SNSを通じて社会や政治と自分の生活が、決して離れた問題ではないことを痛感したんじゃないでしょうか

女性について言えば、「セーラームーン世代」と呼ばれる現在30代前半の方々は、自立した女の子が戦うという意識が強く根付いています。そして「初代プリキュア世代」の私たちは、彼女らの背中を見て育ち、よりジェンダーレスに働きたいと思うようになりました。女だから、男だから、日本人だからという意識を超えて、その人の本質に価値が生まれる時代が近づいているのかなって。今まで当たり前にカテゴライズ、タグ付けしていた社会の、前提がくつがえりつつあると思います。

物資と気持ちの両軸で、困っている人を支援したい

飯髙:
なるほど。それに加えて、今コロナによって時代が一気に揺れているじゃないですか。辻さんのチームや支援先の企業・団体は、現状どうなっていますか?

辻:
一番影響が大きいのは、イベント制作や映像制作です。案件がなくなってしまうというより、コロナ禍で方向性をシフト変更が必要だね、という感じです。3月下旬はまだ楽観的で、「コロナが収束したらこうしよう」というふうに、数ヶ月先のスケジュールを描いていました。今は将来がまったく読めません。なので、スピーディに意思決定してメッセージ性のある情報を出し、プロジェクトを動かせるチームが強いと思います。

そういう意味では、多くのマーケットに対する商品を抱えた大企業ほど、明確なメッセージを出せないという葛藤を抱えているんじゃないでしょうか。

飯髙:
昨日も牧野さんにも聞いたんですが、この状況下で辻さんが面白いなと思ったプロモーションの事例はありますか?

不可逆的な変化を受け入れ、スピーディに挑戦し続ける  #NEWWORLD2020 DAY1

辻:
私も牧野さんとの対談を聞いていたんですが、やっぱりポカリスエットはよかったと思います。有事に社会課題系のコミュニケーションを打ち出せるのは、すごい大事なことだなって。

プロモーションは「中の人」がどれだけその問題について考えているか、結構透けて見えてしまうんですよね。今行おうとしているアクションが、本質的かどうかを見極める必要があると思います。たとえばNYでは、毎日19時に最前線で疲弊している医療従事者へ感謝のアクションを起こしています。

参考:「ニューヨーク午後7時、響く医療関係者への感謝の口笛と拍手 危機に見せる人々の強さ」毎日新聞

これに近いことをできないかなって、今考えているんです。都内には指定感染症の病院が、約30ヶ所あります。人々の目につく媒体を押さえて、クラウドファンディングを募り、民間から医療従事者へ応援メッセージを出したいなって。

「そのお金で必要な物資を揃えて、困っている方へ届けるべき」という意見になってしまうかもしれません。ですが皆が外出自粛で不安を抱えるなか、物資だけでなく気持ちを支える軸での支援も、今は必要だと思います。

多角的な視点で、連帯し乗り越えていこう

飯髙
企業側が正しいと思っても、多角的に見たら間違っていることもありますよね。すべての人々に好かれるプロモーションはない以上、その塩梅を考えるのはすごく難しい気がします。


年代や性別を超えて、自分と視点の違う人の意見を聞きながら、想像力を働かせる。そのうえで「全員がハッピーにはなれないけど、自分はここに向き合っているんだ」と納得して、決断していくことが大事かなって思います。

飯髙
働き方、生き方がどんどん変わるなかで、辻さんの目線から視聴者の皆さまへ、メッセージをお願いします。

辻:
大きな課題を前に、自分のフィールドでできることを考える人が増えています。しかし社会を一気に変えるアクションを、ひとりで起こすのは難しいです。私も「困っている人々の声がそばで聞こえているのに、何もできない」という無力感にさいなまれていました。

それでも、立ち上がって考えて進むことでしか変わらないし、自分も他人も救えない。休みながら、考えながら、自分の意思で進むしかないなと思っています。多くの領域で連帯して、皆で乗り越えていきましょう。一緒にできることがあれば、ぜひご連絡ください!

誰かのために行動することが、未来へとつながる

〜第二部 栃木SC マーケティング戦略部長 江藤美帆〜

飯髙
江藤さんは唯一、スポーツ業界で参加いただきました。コロナの影響ですが、率直にどうなっていますか?

江藤美帆(以下、江藤)
今シーズン最初の試合以来、中断されて再開の目処も立っていません。東京都で非常事態宣言が出されてから、練習はストップされました。4月上旬から事務所休業、一部スタッフは在宅ワークにシフトしています。

飯髙:
江藤さんはBtoCの領域で、観客を増やすことがミッションだったじゃないですか。そのミッションは、どう変化しましたか?

江藤
ファンの皆さんに忘れられては困るので、選手PRなどを行っていますが、一番力を入れているのは地域の活動です。栃木県の魅力を発信するタウン情報もんみや(新潮プレス)は、フードロス問題と外出自粛で高まるテイクアウトニーズを踏まえ、4月15日に『もんみやフードレスキュー』 という新サービスを立ち上げました。

栃木SCはもんみやさんとコラボして、アスリート向けの「栃木SCスペシャルメニュー」を提供することで、地域を応援できる取組みをしています。

参考:「4月15日(水)より新サービス『もんみやフードレスキュー』 をスタートしました」株式会社新朝プレス

元気な地域とサポーターが、サッカーを支えている

飯髙:
これまでも、スポーツクラブとして地域とかかわってきたと思います。コロナ禍の状況で、地域への考え方は変わりましたか?

江藤:
ホームの自治体の大切さは分かっていましたが、私たちがサッカーをできるのは地元があってこそなんだと、コロナ禍で痛感しました。地域のサポーターが元気な状態じゃないと、興行がそもそも成り立たない。自分たちよりも地域や周りを支援して、皆でコロナを乗り越える。そして皆で元気になって、試合を観に来ていただければと思っています。

飯髙:
今後は無観客試合の可能性もあると、ニュースで目にしました。江藤さんは今後、Jリーグの試合のあり方はどうなっていくと思いますか?

江藤:
最初は無観客試合で始まる可能性が高いでしょう。仮に観客を入れたとしても、満員のスタジアムでの興行は当面厳しい気がします。たとえば収容率を、半分に下げるといった対応が求められるでしょう。そうなると、来季以降はチケットの値段を上げざるをえません。Jリーグ観戦が、プレミア感の高いエンタメに変わるかもしれません

afterコロナで変わる、スポーツの楽しみ方

飯髙:
チケット代が上がっても、スタジアムに戻ってきてくれるのか。今後ライブ観戦や試合視聴のあり方も変わる気がしますよね。

江藤
私はもともと、前田裕二さんが立ち上げた「SHOWROOM」の、投げ銭システムに興味があったんです。投げ銭という新しいエンタメのスタイルが、10年後にはスポーツにも導入されるだろうなって。その流れが、コロナ禍でずっと早まる気がします。Bリーグでも、一部で投げ銭のサービスが導入されています。ワンタッチで簡単にできるなら、このサービスはうまく機能するんじゃないかなと思っています。

参考:「コロナが「変革」するアスリートとファンの関係」VICTORY

飯髙:
コロナ禍では地域貢献への意識が高まったほかに、ポジティブにとらえられた話はありますか?

江藤:
実は一部のスタジアムって、収容人数が多すぎて集客しきれないところがあるんです。栃木SCも国体を受けて新スタジアムが設立されましたが、収容人数は27,000人とJリーグの試合では多すぎます。そのため、集客のために招待券を配布するなど、チケットの価値が下がるマーケティングにも踏み切る必要がありました。

今後席数をしぼり、収容率50%という対応が求められれば、有料客が増えて自然とチケットの価値も上がります。スタジアムのキャパシティにもよりますが、席数限定をポジティブにとらえることもできるでしょう。

飯髙
ここ数ヶ月で、選手が自主的にSNSで発信をしているじゃないですか。このプロモーションは上手だなと思った事例はありますか?

江藤
横浜F・マリノスさんが行ったオンライン感謝祭はすごいなと思いました。

参考:「横浜マがオンラインで感謝祭 選手自らが発案し参加」朝日新聞

クラブや選手だけでなく、サポーターが盛り上げてくれているコンテンツも多いですよね。あるサポーターさんは名作映画の『天使にラブソングを』の楽曲に合わせて、Jリーグのあるあるネタを発信していました(笑)。ファンやサポーターの方々が自主的にあげているコンテンツは、本当に面白いです。

飯髙:
クラブには届いてないだけで、オンラインオフ会とかサポーター同士で楽しんでいるイベントは多いのかもしれませんね。最後に視聴者の皆さまへ、メッセージをお願いできますか?

江藤
自分たちが生きるための最低限の自己防衛を確保しつつ、周りの困っている人を助けサポートすること。自分よりも周りの人々のために動くことが、未来につながる気がします。

新たな時代の変化を、若者に切り開いてほしい

〜第三部 謎のツイッタラー jigen_1〜

飯髙
jigen_1さんには、海外のリサーチも含めたお話を聞ければと思っています。日本では一律10万円の支給などが話題ですが、海外の経済対策はどうなっているんでしょうか?

jigen_1
中国とアメリカとを比較してみましょう。中国はアメリカと違い、基本的にレイオフが難しい国です。感染拡大の中、政府は雇用を守るよう民間企業に指示を出しています。それに対して、北京市や上海市といった自治体が政策を立てているという感じです。

中国でビジネスをする知人に教えてもらったんですが、現地では人員削減をしなかった企業に対して、昨年の失業保険の還付分を50%還元したらしいんです。企業にとっては、数千万規模の補填になります。失業者を出さなかったから、保険料の負担を軽減する。とても合理的な政策だと思います。

一方アメリカは、レイオフしやすい雇用契約です。トランプ大統領が非常事態宣言を出したら、4週間で2,200万件の失業保険申請がありました。これはリーマンショックの約8倍で、ものすごいインパクトだったことが分かります。レイオフによって人件費負担が減るので、「あとは自己責任で頑張ってくれ」ということなのでしょう。

日本の雇用形態はレイオフが難しいので、やや中国寄りといえます。雇用調整助成金などの制度が整いつつありますが、使い勝手の悪さが指摘されてきました。実際に4月10日時点で、460件あった申請のうち、わずか3件しか決定していません。今後新しい対策や改善をしないといけないでしょう。

失われた20年を繰り返さないために

飯髙
経済の回復がまだ不透明ななか、SNSの有用性はどのように考えますか?

jigen_1
オーガニック運用ができるかどうかではないでしょうか。オーガニック運用の準備ができていたかどうかで、その成果は大きく左右することになると思います。地道に信頼を獲得できていた企業なら、しっかりファンが支えてくれるでしょう。

飯髙
jigen_1さんはITバブルやリーマンショックを経験してきた世代ですよね。afterコロナの社会情勢は、どう考えていますか?

jigen_1:
本当に新型コロナウイルスの感染拡大が、5月6日を境に収束していくなら、ポストコロナの未来も見えてくるでしょう。しかしこれがさらに3ヶ月延びたら、大半の飲食店の経営が厳しくなるし、大企業もどうなるかわかりません。そういう意味で、まだまだ未知数の部分が多いです。

バブル崩壊時は、失われた20年をずっと引きずってしまいました。デフレやリーマンショック、ITバブル崩壊も日本はゆるやかに乗り越えたけれど、その間に世界ではGAFAが誕生して、日本の大企業はことごとく抜かれていきました。

令和にまで、こうしたゆでがえるの状況を持ち込むのは考えられません。コロナ禍を機に新しい日本を作るため、若者の出番が来たんだと思います。

飯髙
日本ではなかなか、新しい産業が生まれていません。これまでなぜ、若い世代を取り入れて変わることができなかったんでしょうか?

jigen_1
ここ20年間で全盛期を迎えたブランドや企業は、立ち上げ当初に例えば25歳前後がターゲットだったとします。それが20年経つと45歳になってる、つまりターゲットとともにブランドも年齢を重ねてしまった当時のマーケティング手法のまま、若者向けのブランドを立ち上げようとして、苦戦している状況です。

スマホネイティブやソーシャルネイティブの新たな世代を、顧客と共に年を取ったブランドが取り込むのは無理があります。失われた20年にかこつけて、同じ手法に長らく浸かり続けてしまったんです。

想像よりも早く、頭の中の未来がやってくる

飯髙
多くの方が苦労されています。もちろんそれが大前提にあるうえでなんですが、今はいい意味で変われるチャンスなのかもしれないですね。

jigen_1
日本はそもそも、このまま行けばGDPの世界順位が転落し続けると言われていました。それが前倒しになっただけとも言えます。だからこそ、新たな手法を試すいいチャンスではないでしょうか。

飯髙
最後にjigen_1さんから、これから新たな手法を試す視聴者の皆さまへ、メッセージを聞かせてください。

jigen_1
今話題になっているafterコロナって、実は多くの若者がうすうす感じていた未来のことだと思います。AIによる自動化や、SNSマーケティングの台頭、ネットスーパーの拡大など。afterコロナは、以前からあった「そうなったらこの業界はどうなるだろう?」という未来予想が、ずっと早く結果としてあらわれると考えるべきです。

日本のIT化は、今後先進国並みのスピードに加速するでしょう。遅々として進まなかった状況が、劇的に打開される領域も増えていきます。このチャンスを逃して、失われた20年をまた繰り返すわけにはいきません。この重要な局面を、柔らかい頭を持つ若者に切り開いてほしいと思います。

 

――辻さん、江藤さん、jigen_1さんありがとうございました。

DAY3の記事はこちらから。

リアルの強みをネットで体現する。コンテンツメーカーが今やろうとしていること  #NEWWORLD2020 DAY3

 


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