2022年12月6日、ホットリンクでは「SOCIAL MEDIA HOURS」と題した3部構成のセミナーを実施。各SNSにおける一年の変化の振り返りと、2023年の動向を予測しました。
・第1部:Instagramの2022年振り返り/2023年の変化を予測
・第2部:TikTokの2022年振り返り/2023年の変化を予測
・第3部:Twitterの2022年振り返り/2023年の変化を予測
本記事では、ソーシャルメディア事業本部・コンサルティング兼Instagram事業推進室室長の北原一輝が登壇した、第1部「Instagramの2022年振り返り/2023年の変化を予測」のダイジェストとして、以下のトピックをご紹介します。
・Instagramの2022年の主要アップデートとポイント
・Instagramの2023年の未来予測
・2023年のInstagramマーケティングの考え方と対策
2022年の動向をおさらいし、2023年に予測されるSNS環境の変化を踏まえて最適な活用法を模索したい方の参考になれば幸いです。
また、ホットリンクでは、Instagram運用の戦略策定から施策の実行まで伴走支援しています。日々の運用でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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Instagramの2022年の主要アップデートとポイント
2022年のInstagramは、リールの強化やアップデートに注力していました。
Instagramがリールの強化に注力を始めた背景には、動画配信の市場規模拡大があります。
特にTikTokの躍進は目覚ましく、2020年の第1四半期には、AppStoreとGoogle Play上で累計3億1,500万回以上のアプリダウンロード数を記録しました。
参考:「TikTok Crosses 2 Billion Downloads After Best Quarter For Any App Ever」Sensor Tower
Youtubeでも「Youtubeショート」という短尺動画機能が搭載されるなど、短尺動画に対する需要や注目は高まる一方です。
こうした潮流やトレンドを受けて、Instagramもリールの推進により、事業およびプラットフォームのさらなる成長を狙ったことが考えられます。

以下の3つの要素が、リール強化の目的として挙げられます。
①ユーザー体験の向上
これまでのリールはTikTokと比較して動画制作のハードルが高かったり、コンテンツの閲覧や回遊の導線が整備しきれていなかったりなど、不十分な点も目立っていました。
Instagramに限ったことではありませんが、ユーザーに利便性や「面白さ」などの情緒的便益を感じてもらうことは、自社のサービスの継続的な利用を促進するうえで重要なポイントです。
そこで2022年は、下記のような機能搭載や仕様変更が行なわれました。

・「スタンプ機能」の導入
→エンゲージメントポイントを増やすことが目的
・オリジナル音声のインポートが可能に
→自分で作成した楽曲の追加や、カメラロールにある自分の動画から音源や音声だけを取り込むことが可能に
・動画の尺を最大90秒まで延長
→クリエイティブの表現の幅が広がることに
・「フォローボタン」の追加
→リール投稿の見やすい位置に配置することで、投稿したコンテンツをフックにフォローが発生しやすくなる設計に
・「テンプレート」の追加
→動画制作の初心者向けの機能。初心者でも容易に動画が作れるよう、あらかじめ用意されたテンプレートに合わせて動画をはめ込むだけで、リール投稿の作成が可能に
多様なアップデートの結果、2022年はリール全体の投稿量が大幅に増加したり、動画制作の初心者(いわゆる「ライトユーザー」)が多数参入したりなど、一定の成果が見受けられました。
また、2022年のInstagramでは、キーワード検索結果やハッシュタグ検索結果、発見タブに掲載されるリールの枠が増えました。リール投稿のインプレッション数やエンゲージメント数なども、2022年以前と比べて伸びやすくなりました。
一方で、静止画を用いたフィード投稿は、2021年と比較すると伸びづらくなった部分もあります。リールの掲載枠が増えたことで、必然的・相対的に静止画のフィード投稿の掲載枠が減ったことが要因と考えられます。
とはいえ、上述したアップデートを積極的に行なったことは、短尺動画制作のハードルを下げ、ユーザー体験の質の向上に寄与したといえます。
動画制作のリテラシーが高く、制作スキルが優れているユーザーばかりが投稿するプラットフォームになってしまうと、限られたユーザー間でしか盛り上がらないサービスになりかねません。
ユーザー数の減少やサービスに対するエンゲージメントの低下を防ぎ、継続的な利用を促進するためにも、
・リールの視聴体験を向上させる
・投稿すればきちんと伸びる仕様にする
といった体験を創出することが、2022年のリール強化の狙いだったのではないかと推測します。
②クリエイターやユーザー同士のコネクション
ユーザーやクリエイター同士のコネクション(つながり)を構築するようなアップデートも行なわれました。
・リミックス機能の導入
・リミックステンプレートの拡大
・お題機能の導入

「リミックス機能」とは、ほかのユーザーが作ったリールやフィードの投稿を活用してコンテンツが作れる機能です。導入に伴い、リミックスのパターンの幅を広げるべく、テンプレートも拡大されました。
Twitterの引用リツイート機能やTikTokの「デュエット機能」に近い機能ですが、日本では現状、そこまで活発ではありません。アメリカでは、リミックス機能によってミーム(※)が生まれていたり、人やコンテンツを軸としたコネクションができたりしている様子が見受けられます。
(※)「ミーム」とは……
インターネットやSNS上で流行の「ネタ」として拡散されたり、消費されたりするコンテンツのこと。英語のスラング。
Instagramは拡散性に乏しいSNSでしたが、リミックス機能の導入やテンプレートの拡大は、ユーザー同士のコネクション構築と、投稿の表現の幅を広げることに寄与しました。
Instagramのミッションは「大切な人や大好きなことと、あなたを近づける」です。
リミックス機能でほかのユーザーとのコラボレーションを促進したり、コンテンツによるコネクションを構築したりすることは、本来のミッションにも紐づいたアップデートとなります。
「コンテンツ軸でのコネクション構築」という観点では、リールやストーリーズに「お題機能」が導入されたことも注目に値します。
「お題」という共通カテゴリーにより、フォロー・フォロワー関係ではない人の投稿も見られるようになったり、自分も投稿に参加できるようになったりなど、コンテンツを通じてユーザー同士がつながれるようになりました。従来は、発見タブやハッシュタグ検索、ストーリーズへのリポストでしかフォロー外の人とつながるきっかけがなかったため、大きな変化といえます。
また、Instagramのビジネス活用においても変化がありました。
「クリエイターマーケットプレイス」の登場です。

「クリエイターマーケットプレイス」とは、自社とマッチするクリエイターやインフルエンサーを発見できる機能です。アメリカで先行して公開され、日本にも徐々に導入されています。
インフルエンサーマーケティングを実行するうえで、クリエイターやインフルエンサーの発見・コミュニケーションのハードル・やり取りの工数の多さなどは、ネックになりがちです。クリエイターマーケットプレイスの登場により、そうした負担は軽減されつつあります。クリエイター側にとっても、収益増大のチャンスがつかみやすくなったというメリットが生じました。
※クリエイター活用の重要性・詳細については、後述します。
③良質なコンテンツの再評価
短尺動画の市場規模拡大という時流に沿い、リールを強化した結果、コンテンツ量が増加したことについては先述したとおりです。
しかし、コンテンツ量が増えたことで、
・良質なコンテンツや透明性の高いコンテンツの識別が困難になった
・プラットフォームとして、クリエイターおよびユーザーを守りきれていない
という新たな課題も生まれました。
前者の課題の背景には、TikTokのロゴが入った短尺動画をそのままInstagramに投稿したり、ほかのユーザーが作ったコンテンツを盗用し、インプレッション数やリーチ数などを稼いだりする行動が、一部のユーザーの間で散見されたことがあります。
「ほかのSNSで展開されたコンテンツならば、そちらのSNSを利用すればいい」となってしまえば、ユーザーの流出を招きかねません。「投稿を盗まれた」と感じるユーザーが増えれば、アプリ上での体験の質低下につながり、結果的にユーザーが大量に離脱する可能性もあります。
そこでInstagramは公式に、クリエイターや投稿を守るべく、下記のようなアルゴリズムの変更と禁止事項を発表しました。
・オリジナルのコンテンツを優遇するアルゴリズムに変更すること
・ほかのユーザーによる投稿や、ほかのアプリで作った投稿の再利用を禁止すること
これにより、ユーザーの投稿を再利用したり、ユーザーの投稿を集めたりなど、リポスト型のメディアを運用しているアカウントや投稿はインプレッション数が減るなどの影響がありました。
参考:
・Instagramの責任者、 アダム・モッセリ氏のツイート
・「Instagram’s @Creators」公式の投稿
ブランドコンテンツポリシーの規定が改定されたことも重要なポイントです。
たとえばPR投稿であれば、従来はPRであるとわかるハッシュタグがあれば問題なかったところが、2022年6月以降は、「ブランドコンテンツタグ」を使用するルールとなりました。
参考:「ブランドコンテンツポリシーについて」Instagramヘルプセンター
また、ホットリンクが支援するクライアントのアカウントを分析・調査したところ、「良質なコンテンツの再評価」に関するInstagramの動向について、ある示唆が得られました。
次のグラフ(集計期間:2022年1月〜10月)を見てください。

折れ線グラフは毎月の平均のエンゲージメント数、棒グラフがフォロワー・非フォロワーの毎月の平均のインプレッション数を表しています。
1月〜10月までの平均のエンゲージメント数はおおむね横ばいですが、非フォロワーのインプレッション数は、月によって大きな差が生じています。インプレッション数が顕著に伸びているのは、4月〜7月までの期間です。
この期間中に細かなアルゴリズムの変動や調整があったと推測できます。
以上のデータから、「エンゲージメントされるコンテンツとはどういう投稿なのか?」を、Instagram側がテストしていた可能性が考えられます。
フォロワーからのインプレッション数が高かったり、一定の評価がつきやすかったりすることは、ある意味当然です。そこで、エンゲージメントがつくコンテンツとはどのようなものかを解明するべく、非フォロワーからのインプレッション数を調整し、良質なコンテンツの再評価を試みていたのかもしれません。
データ分析や仮説検証は、ホットリンクが得意とする分野・支援内容です。
データ分析から得た示唆を活用し、成果の創出につながった事例も多数あります。よろしければ、こちらの記事もご参考にしてください。
SNSマーケティングの成功事例をイッキ見! 本質的なSNS活用が学べる記事12選
2023年の未来予測
アルゴリズムの変動やアップデート、規定改定などにより、Instagramが良質なコンテンツを重視していることは明らかです。
この流れを汲み、2023年のInstagramは、よりユーザーにアプリを楽しんでもらうべくレコメンド量を増やしていくことが予測できます。
実際、すでにレコメンド量が増えていることに気づいた人もいるかもしれません。以前よりもフィード画面に「おすすめの投稿」が表示されていたり、「〇〇のリール動画を見た人におすすめ」といったレコメンドがあったりなど、予兆は見えています。
このため、2023年以降のInstagramは、従来のような「友人の投稿を楽しむ場所」→「興味関心に基づいたコンテンツを楽しむ場所」へとシフトしていくでしょう。
また、Meta社は2022年の第2四半期の決算説明会にて、2023年はレコメンド量を30%に引き上げることを正式に発表しました。決算説明会資料が発表された2022年7月時点のレコメンド量は15%だったため、2倍となる形です。

今まで以上に、自社の投稿がオススメされる施策を展開することがリーチを最大化させるポイントとなります。
発見タブやハッシュタグ検索画面のトップに掲載される投稿を、積極的に行ないましょう。
一方で、友人の投稿が表示されなくなる・フォローしていない人の投稿で埋め尽くされるといった懸念も考えられます。
そうした懸念に対しては、すでにInstagramが声明を発表しています。Meta社の2022年の第2四半期決算説明会資料によれば、多くのユーザーは、興味のあるコンテンツや話題になるコンテンツをフィードで発見してDMで会話をする、といった使い方をしているとのことです。

2023年以降のInstagramは、レコメンデーション型のみのメディアではなく、そこにDMを軸としたソーシャルメディアとしての機能も組み合わせたメディアを目指すようです。
・フィード投稿で面白いコンテンツやリール投稿を発見する
・発見したコンテンツをDMで友人にシェアする
(※先述した「コンテンツを軸としたコネクションの構築」という2022年の注力箇所とつながる)
・DMで会話が生まれる
・そのコンテンツを参考に新たな投稿が生まれる
(※先述した「リミックス機能」の拡充ともつながる)
このような「フライホイール」型のサイクルが循環する仕組みを作っていくことが発表されています。
エンゲージメント数やいいね!数・保存数・コメント数などの指標だけではなく、「いかに投稿がシェアされるか?」といった観点も、今後のInstagramのアルゴリズムにおいて重要となるかもしれません。
2023年のInstagramマーケティングの考え方と対策
最後に、2023年のInstagramマーケティングの考え方と対策をご紹介します。
下記3点を意識をすることで、競合他社に先んじた施策を展開していただけますと幸いです。
①良質なフォロワーの獲得
よくあるSNSマーケティングのKPIに「フォロワー数」が挙げられますが、2023年は数よりも、フォロワーの質の方が圧倒的に重要となりそうです。
たとえばフォロワーが1万人いたとして、2,000人しかエンゲージメントをしてくれないアカウントより、フォロワーが6,000人でも、エンゲージメントをしてくれるユーザーが4,000人いるアカウントの方が、グロースの見込みが高いです。
良質なコンテンツは、ユーザーが起こすアクションの割合が大きければ大きいほど、アルゴリズム上で優遇されます。
アクションを起こしてくれるユーザーは自社のアカウントにとって良質なフォロワーになり得るため、特に投稿の分析や効果検証においては、エンゲージメント数を重要指標に置くことをオススメします。
②コンテンツ制作のリソース確保
特に、リールの制作体制を社内で整えることが重要です。
動画制作には工数もかかります。体制構築が不十分な場合は、来年を皮切りに整えていく必要があるでしょう。
ただし、「そもそも短尺動画での訴求が最適なのか?」という観点を忘れないことが、リールを強化するうえでの注意点です。
「2023年はさらにリールが重要となるから、コンテンツはすべてリールで作る」といった判断は、本質的ではありません。
じっくりと閲覧してもらった方が訴求できる商材やコンテンツであれば、フィード投稿もしくは静止画を選択する。短尺動画が投稿の目的に適っているようであれば、リールを選ぶ。
このように、投稿の目的や訴求したい内容・ポイントに応じて、戦略的にコンテンツの形式を使い分けることが鍵となります。
リールだけではなく、クリエイターを活用したコンテンツも重要となります。
自社のクリエイティブを作ってくれたり、コラボをしてくれたりするクリエイターとの協業も視野に入れてみましょう。
動画制作に対する需要は、ホットリンクが支援するクライアントにおいても非常に高まっています。
制作体制やリソース確保などにお困りの方は、お気軽にご相談ください。下記のリンクが、ご参考になれば幸いです。
https://www.hottolink.co.jp/service/creative/
③計画~改善のスピード感
2023年のInstagramも、アルゴリズムの変動が激しくなることが予想されます。「PDCAのサイクルのスピード感」は、2022年以上に求められるでしょう。
先述したように、2022年のInstagramは良質なコンテンツの再評価に注力してきました。プラットフォームとして、良質なコンテンツの定義が今以上に定まっていくことが考えられます。
このため、投稿後の分析や効果検証をいち早く行ない、次の投稿時にはすでに改善されている状態を作ることが理想的です。
良質なコンテンツを制作するには、ソーシャルリスニングの活用と強化も鍵となります。
自社もしくは競合他社のUGC(User Generated Content=ユーザーによるクチコミ)がどのように創出されており、どのような顧客層に届いているのか? といったことも、積極的に分析してみてください。
まとめ
2022年のInstagramの動向と2023年の未来予測をまとめると、下図のような変化や流れがうかがえます。

- 2022年:リールの強化
→2023年:動画を制作できる体制やリソースの確保が必要となる
- 2022年:良質なコンテンツの再評価&クリエイターのサポートを強化
→2023年:良質なコンテンツの定義がより定まってくることで、その定義に沿ったコンテンツを制作することが鍵となる。
クリエイターやソーシャルリスニングの活用など、手法は多数。
特にクリエイターとは、今のうちから関係構築などの準備をすることが吉
- 2022年:レコメンド量の増加など、アルゴリズムに変動
→2023年:さらなるレコメンド量の増加が予定されているため、アルゴリズムの変動も、より激しくなる可能性。
迅速な投稿分析や効果検証がポイントになる。また、プラットフォーム側に投稿がレコメンドされることが非常に重要となるため、良質なフォロワーを集めることを重視
以上が、「SOCIAL MEDIA HOURS 2023年のSNSを未来予測!〜激動のメディア変化を理解しマーケティング施策に活かす〜」Instagram編のダイジェストとなります。
・TikTokの2022年振り返り/2023年の変化を予測
・Twitterの2022年振り返り/2023年の変化を予測
については、下記の動画資料(無料)をDLいただくことで、閲覧可能です。
【動画】2023年のSNSを未来予測!〜激動のメディア変化を理解しマーケティング施策に活かす〜
また、本セミナーの内容に関連する記事として、下記の記事もご参考になれば幸いです。
※セミナーでは、下記の記事ともリンクする内容をお話しています。
【緊急公開】僕らは、イーロン・マスクに何を期待すべきか? ホットリンク・室谷良平 #ザ・プロフェッショナル