SNSコラム

「この味が正解、というこだわりはないんです」Mr. CHEESECAKE田村浩二 #ザ・プロフェッショナル

2021年10月13日
SNSコラム | ザ・プロフェッショナル

各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルとホットリンクCMO・いいたかが、SNSやマーケティング、ビジネスのあり方について考える対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」。

今回のゲストは、株式会社Mr. CHEESECAKE 代表取締役・田村 浩二さんです。

前回の記事では、「買えないブランドを作りたいわけではない」というお話を伺いました。今回の記事では、全国にポップアップストアを順次オープンする企画「Mr. CHEESECAKE YOUR CITY」について詳しく伺っています。(司会・執筆・編集:澤山モッツァレラ[ホットリンク]  撮影:小林一真 )

田村浩二(たむら・こうじ、写真左) Mr. CHEESECAKE代表/料理人。調理師専門学校を卒業後、都内のフレンチレストランを3店舗経験。その後渡仏し、ミシュラン三ツ星・一ツ星レストランで修行、2016年に帰国。帰国後は、世界最速でミシュランを獲得した都内のフレンチレストランでシェフを務める。2018年には、ミシュランと肩を並べるレストランガイドブック『ゴ・エ・ミヨ ジャポン』が設ける「期待の若手シェフ賞」を32歳で受賞。シェフとして順風満帆なキャリアを歩んでいたが、2018年に方向転換しMr. CHEESECAKEを創業。現在は自らを「Food Expander」と呼び、食に関する事業を複数手がけている。Twitter

※編集部注:被写体がマスクを外している写真では、周囲に人がいないことを確認して撮影時のみ外しています。インタビューは、すべてマスク着用で行なっています。

ポップアップ自体は、ずっとやりたかったんです

いいたか:
2021年10月現在は「Mr. CHEESECAKE YOUR CITY」と題し、全国8箇所のポップアップストアを順次オープンされている最中ですね。この企画に、田村さん自身は参加されるんですか?

田村:
します、します。基本的にすべて行く感じですね。

いいたか:
そもそも、この企画をやる背景ってどのあたりだったんですか?

田村:
ポップアップ自体は、ずっとやりたかったんですよ。コロナ禍もありましたが、まだ生産数が追いつかなかった事情もあって。

生産数が増えて、準備が整ったことで実施に踏み切りました。「海外に行く前に、日本をちゃんと回っておこう」という意図もありますね。Mr. CHEESECAKEができた最初から、グローバル展開を考えているので。

澤山:
最初から想定されておられたんですね。

田村:
そうです。「自分たちの街に来たMr. CHEESECAKEというブランドが、海外でも販売されるらしいぞ」となったら、自分ごとに捉えてくれる方が増えるんじゃないかと思って。

もちろん、送料が重しになっていた方へのアプローチでもあります。これまで購入を見送っていた方が、「自分の街に来るなら買ってみようか」となるならうれしいですね。

いいたか:
約2年前も、新宿伊勢丹さん・阪急うめださんでポップアップを開いていましたね。当時、新規で来た方はどれぐらいの割合いましたか?

田村:
割合はちょっとわからないですね。というのも、前回では並んだ人で売り切れてしまったので。フラッと来ても、お買い求めいただけなかったんです。

いいたか&澤山:
すごい。

田村:
新宿伊勢丹さんでは、整理券を朝から配ったんです。お店は10時オープンだったんですが、8時ぐらいから並ぶ人がいて。10時には整理券を配り終わり、開店から1時間は商品の受け渡しで終わりました。 

阪急うめださんは整理券がなかったんですが、オープン直後から行列ができて。中国とかで、デパートのオープンと同時にダッシュで買う光景あるじゃないですか? あれの、おとなしいバージョンになったんです。

澤山:
半端ない人気ですね……。

田村:
阪急うめださんでは200本用意したんですが、両会場とも午前中で完売する状態でした。初めて知った人がどの程度いるかは、わからなかったんですね。

いいたか:
基本的には、クチコミで来てるってことですよね。

田村:
そうですね。基本的にはクチコミで、そういう意味では集客は自社SNSがメインですね。

いいたか:
ある意味、もったいない状況だったんですね。本当の新しい出会いが、創出できなかった可能性があるわけなので。

田村:
ですね。本来なら1日ずっと販売できる状況で、新しい方に知ってもらい、購入してもらうのがいいので。今回は本数を用意できるので、今度こそと思っています。

現地でケーキを作らず、東京で作る理由

いいたか:
チーズケーキは、現地で作るんですか?

田村:
いえ、自社ですね。東京で作ったものをお送りする形です。

澤山:
そこは、同じクオリティで出すことを優先したと。

田村:
そうですね。再現性高いレシピにはしているんですが、作る人の熟練度はありますから。安定する前に量産しても、お客様の体験が下がってしまいます。

あとウチは平日5日稼働、1日8時間という一般企業と同じ労働条件ですから。お菓子屋さんで14、5時間働くケースとは違うんですね。

澤山:
作ろうと思えば作れるけど、あえて作らないと。

田村:
誰のためにもならないですから。ガシガシ働いた結果、現場が疲弊して人が辞めたり、良いものが作れないなら長期的にはお客様に届く数が減ります。

1日14時間労働はそもそも異常ですし、長時間働いただけで熟練度が上がるわけでもない。適切な範囲で、どう高めていくかが大事です。なので、どうしても時間がかかってしまうんです。

いいたか:
去年の時点でも「生産量がマジで追いつかない」って話をされてましたね。海外展開するにあたっては、日本で一定の土台を作ってからと考えてますか?

田村:
まだわからないですね。鶏か卵かって話かもですが、基本的に日本で買いやすい状態を作るのが第一です。でも、海外とトレードオフになるかは別の話だと思っていて。

日本での販売は今後、落ち着いていくと思うんです。良くも悪くも。一時的なブームがあった一方、他社さんの新ブランドもどんどん出てくる。Mr. CHEESECAKEが「定番のようなもの」と認知され始めると、状況はまた変わってくると思います。

その中で、新しい挑戦をするなら新ブランドか海外になると思います。コロナ禍がなければ海外挑戦は始めていたので、少し遅れたタイミングでの始動ってところですね。

「この味が正解」というこだわりはないんです

いいたか:
過去に外食のマーケティング支援をしていたんですが、「日本の味を再現するのが難しい」問題がありました。水が違ったり、小麦が違ったり。同じような問題はありそうですか?

田村:
そこは調整中ですね、「同じものを作る必要があるか」を含め。日本で作っているMr. CHEESECAKEを出して受け入れられれば、もちろんうれしい。でも、今の味が各国にアジャストできるかはわかりません。

その国に合わせ、その国の人に喜んでもらうほうが、ものづくりとしては正しいと思っています。同じ味が世界中で楽しめればいいとは思いますが、変なこだわりはないですね。

澤山:
なるほど。

田村:
ただ、そうなるとMr. CHEESECAKE自体は世界中で食べられても「オリジナル」は日本でしか買えない、ということはあるかもしれません。いろいろな戦い方、挑戦の仕方があると思います。

いいたか:
田村さんの柔軟性、すごいですよね。人によってはこだわりを捨てず、「この味が正しい」となりそうなところを。

田村:
「この味が正解」というより、「これがおいしいと思うんだけど、どう?」という感覚が根底にあって。

おいしいと思う人もいれば、「ちょっと酸味が強いな」と思う方もいるはず。それは全然いいんです。その中でさらなる提案をしているのが限定フレーバーで、「季節限定で、こういう味の方向性もありますよ」と。

例えば、昨年・一昨年の秋はかぼちゃを使ったフレーバーを販売しました。こちらは、酸味がほとんどありません。「これなら好きだな。次にこういう味が出たら食べてみよう」という意見もあると思います。

澤山:
正解は、お客様の中にあるという考え方なんですね。

田村:
そうですね。コース料理と違って、単品だと「構成を考える」ことができないですよね。

レストランのコースは15品ぐらいあって、最初の3品は変わった組み合わせで前菜を出して、中盤で皆が絶対に好きであろう料理を出す。魚・肉で緩やかにトーンを落とし、デザートでまた上げる。そういう流れを組むんです。

そういうことが、単品だとできない。どこで幅を出すかというと、限定フレーバーなどでいろいろな味を出して、興味を持ってもらうことなんです。

基本は僕が作っておいしいか判断をするので、僕の好みに依存はします。けれど、「こういう味の着地だと、どう受け入れられるか」は常に試行錯誤していますね。

いいたか:
何がおいしいかは、その人が何を食べてきたかで大きく変わりますよね。

田村:
そうなんですよね、経験で変わることもあります。「大枠、こういう方向性で僕らは行きますよ」でいいと思ってます。

いいたか:
それこそ、前回のお話でも出た「Mr. CHEESECAKEが提供しているのは時間だ」ということですよね。一緒に食べるシーンは家族と一緒なのか、カップルなのかわからないけど、ケーキを食べる時間が良いものになればいいってことですよね。

瞬間の熱量を、ちゃんと記憶しておきたい。

いいたか:
「Mr. CHEESECAKE YOUR CITY」の話に戻します。この企画をやるにあたって、ユーザーや店舗のほうから実際どういう反応があったんですか?

田村:
そうですね、催事の際にお声がけいただいたり、「うちでやりませんか?」という話はずっとあったんですね。

ただ、その時点では明確にやる意味を見出せてなかったんですよ。ネットで売り切れてしまうものが、催事という形で、場所を限定して販売される。ネットから注文してくださる方からすると、不公平じゃないかなって。大阪にいれば買えるけど、北海道では買えませんとか。

今もそうですが、買ってくれる方々は送料1,200円を覚悟して買ってくれているんですよね。ケーキで3~4,000円して、送料で1,200円かかるってなかなかの出費ですよね。

ただ、未だに大多数の人は「クオリティの高い冷凍ケーキがある」という意識もないと思うんです。層が広がっていく中で、そういうハードルがだんだん大きくなってきたと思い始めて。

ウチとしては、食べてもらえれば価値は伝わるし、満足度も上がると思っているんです。では、どうやって食べてもらうか。送料ゼロはビジネス的にも、買っていただく方たちに対しても失礼なのでできない。

じゃあ、ポップアップが着地としては一番いいんじゃないかと。生産準備も整ったし、世界に行く前に日本を回っておきたい。そういう流れで実施が決まったんですね。

いいたか:
「行けるなら全会場行きたい」っておっしゃってましたよね。ポップアップを出すとき、トップが行く意図って何か考えていますか? 僕も物産展とか好きなんですけど、ああいう場に社長がいるってほぼないですよね。

田村:
そうですね、もちろん全日程で立つことはできないので、初日や2日間とかに限られると思うんですが。

例えば僕のことを知っていて、Mr. CHEESECAKEも好きという方は初日に来てくださると思うんですね。そういうとき僕が居たほうが、ひょっとしたらポップアップでの1日がより良い体験になるかもしれない。

僕自身もなんとなく8箇所やるのでなく、Mr. CHEESECAKEを知ってもらうために行くので、僕がまったく行かないのは選択肢になくて。

いいたか:
うんうん。

田村:
自分が居ることで、新しい出会いがあるかもしれない。瞬間の熱量をちゃんと記憶して、記録にも残しておきたい。そういう理由ですね。

それに、もともと僕はオフラインで商売をやってる人間なので。リアル店舗を出すのに、その場所に行かないって変な感じがするというか。

いいたか:
それは確かにそうですね。

田村:
今の世の中を考えると、貴重なリアルの接点ですよね。僕にとっても、会いたいと思ってくださる方がいれば、その方にとっても。

会社があることで、中の人がどう豊かになるか。

いいたか:
ブランドとしての話は伺いましたが、会社として今後の展開はどう考えていますか? 

田村:
そうですね、まずは「会社があることで、中の人たちがどう豊かになるか」を考えていきたいですね。

僕のスキルは、チーズケーキを作るだけのものではないんです。今はMr. CHEESECAKEというブランドしかないので、どうしてもそこに大部分決まっちゃうんですが。

日常から非日常、いろんなグラデーションがある中で、もっといろいろな商品を作りたいですね。もっと日常に近く手軽に楽しめる、コンビニ商品とは少し違うもの。あるいは、もっと非日常に振り切ったもの。

僕自身がより「こういうものを提供できたら、面白いな」と思えるものを、アウトプットしていきたいと思っています。

もちろん会社としてやりたいこととか、今働いてる専属スタッフからアイデアをもらったりとか、いろいろなものが生まれていい。その時、その人を応援できるような会社でありたいですね。

澤山:
会社としての成長速度は、重視しつつ。

田村:
もちろん、なるべく早いスピードでやりたいです。ただ、どうしても短期に目が行きがちなんですよね。

僕自身も働いてる人も、短期スパンで生きてはいないじゃないですか。まず働いてる人たちの心理的安全性があって、初めて挑戦できる環境になる。そういうことも意識しないと、つまらなくなりそうだなって。

組織としての強度は、ブランドとは別軸で考えていきたいと思います。

いいたか:
難しい話ですね。

田村:
ホント、難しいっすよ(苦笑)。

 

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