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内山幸樹(グループCEO)インタビュー(中編)

2021年04月08日
創業ストーリー

「知識循環型社会のインフラを担い、世界中の人々が“HOTTO(ほっと)”できる世界の実現に貢献する」。この存在意義のもと、2000年にホットリンクを創業した内山幸樹さん。
 
大学時代に知ったITの世界、日本最初期の検索エンジン立ち上げに携わった彼は、世界の広さと壁を知り、そこに挑戦し続けてきました。
 
前編では「少年時代、東大を目指した理由」から、「ホットリンク誕生秘話」までをご紹介しました。今回の記事である中編では「創業1年目の苦悩。受託への決意」など、当時の内山さんが抱えていた葛藤について伺っています。

創業1年目の苦悩。受託への決意

――ホットリンクの代名詞とも呼べるサービス「クチコミ@係長」が正式リリースされたのは、2008年のことでした。創業から8年とやや期間が開いているように思いますが、この間、皆さんはどんな活動をしていたんですか?

内山:

ホットリンク創業直後、提供していたのは「ホットリンクサービス」というプロダクトです。これはインターネットを介して人々の知恵を集めるため、ホットリンクツールバーをブラウザに組み込みます。

ユーザーはさまざまなホームページをブックマークし、それがブログのようにマイページへ蓄積され、それを見たユーザーがFacebookのように「いいね!」できるようにしました。

これ以外にもブックマークでコメントを入れたり、タグ付けしたり。こうした情報の集積を元に、検索エンジンを作ります。ここで検索をすると、該当するホームページを「いいねの数が多いもの」から上位に表示します。さらにページをいいねしたユーザーが、他にどんなページを閲覧し、いいねしているかも出る仕組みです。

ツールバーでソーシャル=人間の頭の中を集めて、ビッグデータ化し、検索エンジンを作成。さまざまな情報をユーザーにレコメンドし、ユーザーがさらに好き・嫌いをフィードバックする。

ソーシャル・ビッグデータ・AIが循環するという、現在のソーシャルメディアとビッグデータが体現する世界を、2000年にイメージして作ったのがホットリンクサービスでした

こうした機能に加えて、このプロダクトでは訪問したホームページをブックマークした人と、チャットでコミュニケーションできる機能もありました。ホームページを通じて、人と人とが出会う。そうやって「人の頭の中」という知識の宝庫に、ホームページを介してアクセスできるようにしようという発想だったんですね。

しかし、ホットリンクを設立した直後、いわゆる「※ドットコムバブル」がはじけてしまったんです。

※ドットコム・バブル(dot-com bubble)

「インターネット・バブル」「ITバブル」とも言われる。1990年代前半〜2000年代初頭にかけて、アメリカを中心に起こったIT関連企業への期待が膨らみ株価が急騰。連邦準備制度理事会の米ドル利上げなどをきっかけに、株価は急速に崩壊した。

内山:

ホットリンクサービスのビジネスモデルは、ツールバーに広告を流すものでした。ユーザーがどんなホームページをブックマークしているかというデータがあるから、その人に適切な広告を出せると考えたんです。さらに、ユーザーがどのホームページを訪問していても、ツールバーに広告を出しつづけられる。すごい広告媒体じゃないか!と。

それが、ネットバブル崩壊で破綻しました。僕は、以前のベンチャーの経験もあって「絶対に受託開発はしない」と決めていたんです。当時は、「SI(システムインテグレーション)はキーボードを使った土方」だと考えていました。つるはしからキーボードに、使う道具が変わっただけじゃないかと。

これからのIT時代は、SaaS(当時はASP)を活用して、コンピュータが人間の代わりに24時間365日働いてくれる時代だ。だから僕たちは、人間の代わりに働いてくれるコンピュータ=プログラムにお金を稼がせるべきだ、と考えていました。

そうこう考えている内に、当初出資してもらった1億円も尽きかけていました。当時はようやく日本経済新聞社という大企業に導入ができ、社会人も入社してくれたタイミングでした。

彼らに、「実は、キャッシュが持たないかもしれない。入社してもらったばかりで申し訳ないのだけれど、転職活動を始めてもらっていい」と伝えました。

けれど、結局誰も転職活動をしなかった。「何言ってるんですか内山さん、僕らはまだまだやれますよ。受託でもなんでもいいから生きのびましょう」と。彼らの言葉も受けて、受託開発を受けるようになったんです。

その後すぐ、松下電器(現パナソニック株式会社)さんから受注が入りました。それがきっかけで他社からの受注も増え、1年間まったく収入がなかったところから、がーっと売り上げも伸びて社内も活性化していった。受注が入ると、社内が大いに盛り上がりました。

それでも、やはり心のどこかで、受託仕事を続ける悔しさがありましたね。

受託から巡ってきたチャンスとゲームチェンジ

内山:

その後、株式会社NTTデータの新規事業開発室と連携して、新規事業の共同検討会を立ち上げました。当時、NTTデータの社長は、社内でこんな話をされていると聞きました。

「NTTデータはITゼネコンです。このビジネスは、10年後にはなくなるでしょう。今から、コンシューマーと直接接するサービスを準備しなければなりません」

彼らと提携した時期に、アメリカでブログが流行りだしていました。僕はこのブログが、消費者と直接コミュニケーションするきっかけになると感じました。そして、まだアメブロもなかった2003年、日本最初期のブログポータルサイトである「Doblog(ドブログ)」をリリースしたんです

ホットリンクはツールバーを通じて、人にホームページをブックマーク・コメント・タグ付けをしてもらい、人の「頭の中」をネットに吐き出すツールを提供していました。しかしブログも、ある意味で人間の頭の中をネット上に吐き出す、ひとつの入り口になるのではないか

ホットリンクのビジョンを形にしたいけど、いきなりネット社会全体で人の知識を循環させるのは難しい。まずはひとつずつステップを踏んでいこう。その入り口として、ブログサービスはありだと考えました。

――受託案件という決断から、巡り巡ってホットリンクが考えていた構想に近づけるサービスに関わられたんですね。

内山:

当時、ブログサービスを提供しつつ、ブログシステムの受託開発をする企業として、ホットリンクと株式会社ドリコムがありました。この2社でシェアを争っていたんですが、ドリコムは2003年にそのまま上場します。

当時は、すごく羨ましいと感じました。しかし僕らのブログビジネスの収益は、あくまで受託。そのままではスケールしないと思っていたし、ブログサービスで上場したいとは思っていませんでした。実はこのとき、僕は「ブログが普及するほど、検索エンジンは役に立たなくなる」と予測していたんです。

従来の検索エンジンは、キーワードに関するホームページがどこにあるかを指し示すものです。しかしブログが増えると、ひとつのブログ記事だけを閲覧しても、キーワードに関して包括的な情報が得られない。自然と、読まなければならないブログ記事が多くなります。

ホームページからブログへというように、発信される情報が細切れになっていく時代には、そうした細切れの情報を要約をしてくれる検索エンジンが必要になるだろう。そこで2005年頃から、ブログ記事を分析する研究開発を始めました

「クチコミ@係長」の正式リリース

――ブログサービスの受託から、新たな事業へと一歩を踏み出していくんですね。

内山:

ブログ分析サービスのビジネスを、「ブログウォッチャーエンタープライズ」という形で、東京工業大学と組んで展開しようとしていました。同じ頃、電通と株式会社ガーラも、共同して「電通バズリサーチ」という名称で同じようなサービスの開発を進めていました。

そしてガーラから、自分たちの傘下に入るよう言われたんです。僕はブログ分析は次世代の検索エンジンになるはずだから、絶対自分たちだけでこの道を進むべきだと思いました。

しかし、当時ホットリンクに出資してくれた某ネット広告大手企業CEOの方が、僕を諭してくれました。「うっちー、夢を追うのもいいけど、まずはキャッシュだよ。ブログ分析サービスの新規事業は、いつ収益化するか分からない。今は受託でも、ちゃんとお金をもらったほうがいい」と。

そこで、泣く泣くブログウォッチャーエンタープライズを辞め、「電通バズリサーチ」を、開発費をもらいながら受託開発として開発し始めたんです。

そこから3年間、僕たちは潤沢な開発費を活用し、研究開発してノウハウを蓄積しました。その間、電通バズリサーチはサービスとしては時代に早すぎ、なかなかビジネスとして期待したスピードで成長しませんでした。

数年後、ガーラは、ゲーム事業へ主軸を移行する決断をしました。そこで僕たちが、2008年3月に電通バズリサーチ事業を買い取ったんです。同年7月、電通バズリサーチのシステムを全面リニューアルし、同時に別ブランドとしてソーシャル・ビッグデータ分析ツール「クチコミ@係長」をリリースしました。

大きな転換点です。この事業がきっかけで、現在に至るとも言えます。

――ホットリンク設立から、「クチコミ@係長」がリリースされるまで。約8年の期間で、ものすごくたくさんのドラマがあったんですね。

受託事業から新規事業開発に踏み切る決断

内山:

2008年1月頃から、ホットリンクでは既存の受託案件と新規受注をすべてストップししました。経営者として、ものすごく大きな決断だったと思います。

新規事業は投資が先行し、損益分岐点を超えるまでは資金がどんどん減っていきます。したがって、既存事業をやりながら新規事業を続け、軌道に乗ったら新規事業に重心をシフトしていくのが一般的です。しかし僕は、それでは本気でブログ分析サービスに取り組む競合に負けてしまうと思いました

この決断に踏み切る前、多くの経営者に相談しました。多くの経営者が、「既存事業をやりながら地道に行くのはどうか」とアドバイスしてくれましたね。この葛藤を通じて、正解はない経営上の選択時、どういう風に考えるべきかという基準が生まれました

ひとつは、どちらの方がワクワクできるか。もうひとつは、「どちらを選んでも失敗すると仮定した場合、どちら方がより後悔するか」というものです

例えば、受託をやめて全リソースを新規事業にかけたとします。その場合、10年後、新規事業が立ち上がらず倒産したとします。そのとき僕は、「受託案件をこなしがら、並行してやればよかった」と後悔するかもしれません。

逆に、受託事業をやりながら新規事業を並行し、中途半端が原因で競合に負けてしまうとします。10年後の僕は、「あのとき全リソースを、新規事業に投下していれば勝てたかもしれない」という後悔をいだくでしょう。

どちらの後悔が嫌かを考えました。そして「本気でやってたら勝てたかもしれないのに」と後悔することだけは、絶対したくないと思ったんです

2つの判断軸で考え、全リソースを新規事業に振り向け、全社員でブログ分析サービスの開発にフォーカスしました。そのおかげで、ホットリンクは2013年の上場にこぎつけたんだと思います。

2010年には、損益分岐点を超えて上場への準備を始めました。黒字化したときの社内の雰囲気は、今でも忘れられません。

アジア、アメリカへの進出

内山:

とはいえこのとき、「ブログ分析サービスだけでは100億、1000億の事業には成長しない」と考えていました。どうやったら、ブログの分析サービスをスケールする事業にできるか考え始めたんですね。

ブログ、ソーシャルメディアを通じて、人々の頭の中の情報がネット=世界に広がっています。「クチコミ@係長」を通じて、それらをリアルタイムで網羅的に収集して分析できるということは、人工衛星から地球に住んでいる人の頭の中を、リアルタイムで観測しているのと同じではないでしょうか。

そんな情報衛星みたいなツールでデータ収集できるのなら、口コミ分析以上の使い道がたくさんあると思ったんですね

まず2010年頃、東大で人工知能に詳しい松尾豊さん(現東大教授)と共同して、現在のFinTechの先駆けのようなプロダクトの構想を練りました。ブログ分析と金融を組み合わせて、ブログ情報から日経平均株価を予測して、人工知能に自動トレーディングさせるというものです。

ビッグデータ分析とメディアの組み合わせも考えました。最近テレビで、ネットで多く検索されたニュースのランキングなどを紹介していますよね。あれをクチコミ分析でできないか、と提案したんですね。

他には、ビックデータ分析×政治というアイディアも考えました。松尾先生と一緒に、2010年に行われた衆議院選挙の、全小選挙区の得票率をブログ分析で予測したんです。それが85%の精度を上げて、政治分野で売れないかと考えました。

政治、メディア、金融、あとは災害。マーケティング以外の分野の可能性を、徹底的に模索しました。この中から金融に焦点を当て、約2億円のファンドを作って、人工知能に自動トレーディングさせたんです。

それが「株ロボット(金融予測サービス)」です。2010年12月、「※Infinity Ventures Summit 2011 Fall in Kyoto」の新サービスコンテストで、1位を受賞しました。確かこのとき、NHKの『クローズアップ現代』にも取り上げられたんじゃないかな。

※Infinity Ventures Summit(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)

日本のVC、インフィニティ・ベンチャー・パートナーズが主催する、インターネットやモバイル、ソフトウェア関連のカンファレンス

――サービスリリース後、ものすごくたくさんの道を模索していたんですね。

内山:

結果として、どれも花開かないままホットリンクは上場します。上場後も、僕たちはどの分野に自分たちの技術を使えば、世界に出られるのか必死で模索していました。実際に上場直後は、中国、東南アジア、アメリカを見てチャンスを伺っていました。

中国はそのお国柄、データの供給がなかなか得られません。独特のビジネス事情に苦戦しつつも、このとき、上海の普千という会社に出資をしたんですが、後にトレンドExpressが買収することとなります。

さらにアメリカでは、GnipというTwitterデータを世界で一番多く流通させていた企業と提携し、日本向けの独占営業権を獲得しました。こうした活動のなか、アメリカのEffyis社(サービスブランド名はSocialgist)から「自分たちと組まないか」と打診されたんです。

Effyisは世界で唯一、中国を含めた世界中のソーシャルメディアデータへのアクセス権を販売していました。ホットリンクがGnipと提携したことを知り、「日本でデータサービスを展開するなら、『クチコミ@係長』で圧倒的なシェアと、Twitterデータの販売も行なっているホットリンクと組みたい」と考えたんですね。

2014年にホットリンクはEffyisと業務提携し、2015年に同社を子会社化しました。AI・ロボット時代において、石油に相当するエネルギー源はデータです。データのレイヤーを握れたら勝ちだと思い、買収に踏み切ったんです。

後編へ続く)

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