コモディティ化とは
コモディティ(commodity)はもともと「日用品」「市販品」を意味する英単語です。経済学では、原油や金属、穀物のように、生産者やブランドが違っても品質に差がなく、市場価格だけで取引される商品を指します。
コモディティ化とは、もともと差別化されていた製品やサービスが市場で均質化し、消費者が価格や入手しやすさだけで選ぶようになる現象のことです。ビジネスの世界では差別化要因を失ったブランドが価格競争に巻き込まれていく状況を指す言葉として使われます。
たとえばガソリンや乾電池、ミネラルウォーターを思い浮かべてみてください。「どのメーカーのものでも大差ない」という感覚で、価格や買いやすさだけで決めている方が多いはずです。これがコモディティ化した市場の典型的な姿です。
コモディティ化が進むと市場で何が起きるのか
コモディティ化が進むと、消費者にとっての選択基準は機能やブランドではなく、価格と手に入りやすさに集約されていきます。その結果、企業は価格を下げ続けなければシェアを維持できなくなり、利益率がじわじわと下がっていきます。
価格競争が激化すると、各社が広告や販促の予算を削らざるを得なくなり、ブランド投資も難しくなります。一度この状態に陥ると、自力で抜け出すのは容易ではありません。
コモディティ化の対義語
コモディティ化の対義語にあたるのは「差別化」や「ブランディング」です。さらに広い意味では「脱コモディティ化」「プレミアム化」といった言葉も使われます。いずれも、価格以外の軸で選ばれるブランドや商品を作るという意味合いで語られます。
コモディティ化の主な原因|なぜ起こるのか
コモディティ化はある日突然起こるものではなく、複数の要因が積み重なって進行します。代表的な原因を4つ整理します。
技術革新と品質の均質化
製造技術が進歩し情報が共有されると、ある企業が培ってきた品質や機能はすぐに他社に追いつかれます。家電やスマートフォンのように、かつては技術力で差がついていた製品でも、製造技術が広がると各社の機能差はわずかになり、消費者からは「どれを買っても同じ」と見られるようになります。
また近年では生成AIの普及により、Webサービスなどにおいても提供価値が均質化する方向に向かっており、コモディティ化する可能性があります。
市場の成熟と競合の増加
市場が成熟し、参入企業が増えると、価格・品質・サービスのレベルが横並びになっていきます。ニーズが満たされ尽くしたカテゴリでは新しい付加価値を見つけにくく、機能ではなく価格で勝負せざるを得ない状況になりがちです。
情報の非対称性の解消
インターネットとSNS、さらには対話型生成AIの普及により、消費者は商品スペックや価格、レビューを瞬時に比較できるようになりました。かつては専門家しか知らなかった情報が誰でも手に入る状態になり、企業側の情報優位性が崩れていきます。情報の非対称性が解消されると、消費者は冷静に価格を比べやすくなり、コモディティ化が一気に進みます。
コモディティ化の身近な事例
教科書的な定義だけだとイメージが湧きにくいので、具体的な業界・商品で考えてみます。
日用品のコモディティ化(ゴミ袋・乾電池・ティッシュ)
スーパーやコンビニに並ぶゴミ袋、乾電池、ティッシュなどは、典型的なコモディティ商材です。「次に買うときはこのブランドにしよう」と意識して選ぶ人はほとんどおらず、棚にあるものをなんとなく手に取るという行動が定着しています。生活に溶け込みすぎた商品ほど、ブランドではなく利便性と価格で選ばれやすくなります。
家電・スマートフォンのコモディティ化
かつては各社が独自の技術競争で差別化していた家電やスマートフォンも、いまや基本機能では大きな差がなくなっています。スマートフォン市場ではAppleのように強いブランドを持つ一部企業を除き、多くのメーカーが価格競争に巻き込まれています。
SaaS・サービス業のコモディティ化
近年は、SaaSやコンサルティングなど無形のサービスにもコモディティ化の波が広がっています。タスク管理ツールや勤怠管理SaaSのように機能が似通った製品が乱立する市場では、最終的な選定理由が「価格」「導入実績」「営業の熱意」になりやすく、本来の付加価値で選ばれにくくなっています。
コモディティ化が企業にもたらす影響とリスク
コモディティ化が進むと、企業経営にはさまざまな悪影響が出てきます。代表的な3つを整理します。
価格競争による利益率の低下
最もわかりやすい影響が、利益率の低下です。価格でしか比較されなくなれば、競合と同水準まで値下げをせざるを得ず、原価率は上昇し、広告・人材・研究開発に投下できる原資がどんどん減っていきます。
ブランド価値の希薄化
「どこで買っても同じ」と見られるようになると、ブランドへの愛着や信頼も薄れていきます。長年積み上げてきたブランド資産が、コモディティ化によって少しずつ侵食されていくのです。
マーケティング施策が効きにくくなる
コモディティ化した市場では、広告を打ってもブランド指名での購入につながりにくく、常に他社製品と比較されます。
コモディティ化から脱却するための4つの差別化
伝統的な経営学では、コモディティ化への対策として次の4つの差別化が語られます。
- 製品の差別化:機能や品質、デザインなどの面で独自性を打ち出す
- ブランドの差別化:ストーリーや世界観で情緒的な価値を加える
- 市場の差別化:ターゲットを絞り込み、ニッチ市場で圧倒的な存在になる
- ビジネスモデルの差別化:販売方法・課金方法・サプライチェーンを変える
これらの方向性は今でも有効ですが、機能差で勝負しにくいコモディティ商材の場合、製品の差別化だけに頼ると行き詰まりやすいのが現実です。ブランドや顧客体験の側面から打ち手を考えていく必要があります。
コモディティ商品におけるSNSマーケティング戦略
消費者が多くの可処分時間をSNSに費やす現代において、マーケティングにおけるUGC(SNS上のクチコミ)の重要度が高まっています。コモディティ商品においてSNS戦略をどのように考えればいいのか、ホットリンク独自の観点で解説します。
SNS時代のマーケティングフレームワーク「ULSSAS」
デジタル時代において、SNS上のUGCはブランドを成長させるための強力な手段です。企業発信の広告よりも、消費者同士のクチコミの方が購買意思決定に大きな影響を与えることが多くの調査で明らかになっています。
関連:インターネット上のクチコミを参考に8割超が商品を購入。購入商品のTOP3は、食品・化粧品・日用雑貨
これまでのホットリンクの支援実績から、SNS上のUGC数は指名検索数と相関し、指名検索数は売上と相関することが、データ上で判明しています(※商材や消費者行動の特徴によって、相関関係が変わることもあります)。

このファクトを元に、SNS上で発生したUGCによって指名検索数と購買量が増える一連の流れを表した、SNS時代の新しい購買行動モデルが「ULSSAS」です。ULSSAS(ウルサス)モデルでは、UGC → Like → Search → Search → Action → Spread という購買行動サイクルが示されています。このサイクルが回ると、消費者の自然発生的なクチコミによって指名検索が増え、結果として売上増加につながり、購買数(商品を手に取った人の数)が増えることによってSNS上のUGCが増える、という好循環が生まれます。

関連:SNS時代のマーケティングフレームワーク、「ULSSAS(ウルサス)」とは
SNSマーケティングというと「企業の公式アカウント運用」というイメージを持つ方も多いですが、ブランドの売上を伸ばすためにはSNS上で「UGCを増やす」ためのマーケティング戦略が必要なのです。
コモディティ化商材ではUGC(クチコミ)が自然発生しづらい
SNSにおける消費者行動を分析していると、コモディティ化した商材に関する共通の特徴が見つかります。それは、ユーザーがコモディティ商品について自発的に発信することが少ないということです。
たとえばあなたが昨日コンビニで買ったゴミ袋やティッシュペーパーについて、Xに投稿したくなるでしょうか。乾電池の使い心地をInstagramでシェアするでしょうか。おそらく答えはノーでしょう。コモディティ化が進んだ商材は生活に溶け込みすぎていて、わざわざクチコミする動機が生まれないのです。
つまり、コモディティ商材においては自然にクチコミが発生しないので、ULSSASの循環が生まれづらい、という特性があるのです。
ホットリンクの「3枚おろし理論」で自社の立ち位置を診断する
ホットリンクでは、ビジネスをSNSマーケティング適性で3種類に分類する「3枚おろし理論」を提唱しています。判定は2段階で行います。まずSNS上に自社ブランドに関するUGCが投稿されているかを確認し、UGCがない場合はさらにブランド名の指名検索があるかを確認するという手順です。
3つの分類は次のように整理できます。
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切り分け
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分類
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状態
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該当する商材の例
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取るべき方針
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1次切り分け
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①UGCあり
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クチコミが自然に発生
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化粧品、スイーツ、アパレル
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UGCが生まれるアカウント基盤の構築とSNS運用
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2次切り分け
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②UGCなし・指名検索あり
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認知はあるが拡散されていない
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一部の家電・サービス
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シェアされやすいSNS活用
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3次切り分け
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③UGCなし・指名検索なし
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コモディティ商材
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カップ麺、ゴミ袋、乾電池
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強力なコンテンツで意図的に話題化が必要
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コモディティ化した商材は、ほぼ例外なくこの③に分類されます。1次切り分けであれば、比較的容易にUGCを増加させることができますが、コモディティ商品のような3次切り分けの場合、通常の施策ではUGCがなかなか発生しません。
コモディティ商材においては、のちほど紹介する「PGC」を用いてブランドが話題になるコンテンツやプロモーションなどのコミュニケーション施策が必要になります。
関連:三枚おろし理論とは
PGCでコミュニケーション文脈のUGCを起こす
ここで鍵になるのがPGC(Professional Generated Content)です。PGCは、企業がプロの力で意図的に作るコンテンツで、ユーザーがクチコミしたくなる「火種」を提供することを目的としています。

UGCには2つの文脈があると考えるとわかりやすくなります。商品そのものを語る「商品文脈」と、コンテンツや広告などブランドに関連する話題について語る「コミュニケーション文脈」です。

コモディティ化商材は商品文脈ではUGCが生まれづらいですが、コミュニケーション文脈なら別です。広告や企画コンテンツで話題の切り口を用意することで、ユーザーにブランドについて語ってもらうことができるのです。
コモディティ商材でUGC創出に成功した事例
実際に、PGCによってコミュニケーション文脈を作り、コモディティ化の壁を突破している企業は少なくありません。代表的な事例を3つ紹介します。
ジョンソンヴィル|インフルエンサー・タレントコラボのPGC企画
アメリカの老舗ソーセージブランドのジョンソンヴィルは、2019年からホットリンクのSNSマーケティング支援を受け、UGCの増加と日本国内での売り上げアップに成功しています。
従来のジョンソンヴィルの商品は、輸入食品店やスーパーマーケットのF2層(35~49歳の女性)、F3層(50歳以上の女性)をターゲットにした6本入りのソーセージでした。新たに全国のファミリーマート(約1万6,000店舗)で、男性層をターゲットとした1本包装のソーセージを新発売することにともない、新たな顧客層にリーチできる新たな文脈のUGCの醸成が必要になりました。

そこで、1本包装に関連するUGCの増加を目的として、インフルエンサー・タレントとコラボしたPGC企画に取り組みました。具体的には、豪快な料理動画で人気を集めるインフルエンサー「リロ氏」によるPR投稿を起点に、ターゲット顧客層から人気の高いタレント後藤真希さんによるパロディ動画を公開。
結果としてPGCコンテンツに関するUGCが大幅に増加し、過去最高の話題量を記記録。初めてジョンソンヴィルを知り買って食べたユーザーによるUGCも多く発生しました。

PGCを起点にコモディティ商材におけるUGC創出に成功した事例と言えるでしょう。
事例詳細:ジョンソンヴィルが取り組んだインフルエンサーマーケティング。成功のカギはインフルエンサーとブランドの「共創」
日清カップヌードル|アニメ・映画クリエイターとのコラボでUGCを誘発
※ホットリンク支援事例ではありません
カップ麺は典型的なコモディティ商材です。それでも日清食品は、「ONE PIECE」とのコラボや新海誠監督起用のアニメCMといったコミュニケーション文脈の仕掛けを次々と打ち出し、SNS上で大量の話題を生み出してきました。商品の機能ではなく物語性で語られる対象になったことで、UGCが自然発生する状態を作り出しています。
アロンアルフア|接着剤のアニメコンテンツ化
※ホットリンク支援事例ではありません
接着剤もまた、機能差では語りにくい典型的なコモディティ商材です。アロンアルフアはブランドの世界観をアニメ化することで、商品単体ではなくキャラクターや世界観を語る文脈をユーザーに提供しました。結果としてSNSで話題になり、ブランド指名での想起にもつながっています。
ペプシコーラ|本田圭佑起用によるストーリーテリング
※ホットリンク支援事例ではありません
炭酸飲料も、競合との機能差はほとんどありません。ペプシコーラは本田圭佑を起用したCMで、サッカー選手の挑戦というストーリーを商品と重ね合わせ、視聴者が共感し語りたくなる要素を生み出しました。コミュニケーション文脈で記憶に残るブランドになることが、コモディティ脱却の入り口になっています。
ホットリンクのコモディティ商材のPGCマーケティング支援
ホットリンクでは、SNS上のクチコミデータの分析から、会話をしてくれる可能性が高いユーザー群の特定や会話をしてもらいやすい文脈の特定可能です。
分析からわかった示唆をもとに広告やプロモーション企画、インフルエンサー活用施策を横断的に設計することで、成功確度の高いPGCマーケティングの設計が可能です。
コモディティ商材で売上につながるSNSマーケティングを模索している方はぜひお気軽にお問い合わせください。
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