SNSコラム

「“お客さまの暮らしのリアル”にこだわったSNS戦略を展開したい」メルカリ池田早紀​​・山岸香織×いいたかゆうた #ザ・プロフェッショナル

2022年06月30日
SNSコラム | ザ・プロフェッショナル

各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルとホットリンクCMO・いいたかが、SNSやマーケティング、ビジネスのあり方について考える対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」。

今回のゲストは、株式会社メルカリのコミュニケーションプランナー・池田早紀さん(写真右)とコンテンツプランナー・山岸香織さん(写真左)のおふたりです。

2,000万MAU(月間アクティブユーザー数)を超える、国内最大のフリマアプリ「メルカリ」。
老若男女問わず集まるメルカリでは、どのようなSNS戦略が取られているのでしょうか。

「実は、UGCを活用した施策を行なうことに躊躇があった」と語ってくださった池田さんと山岸さん。
葛藤を乗り越えた先に見えた、メルカリならではのSNS戦略の要とは?

「お客さまの暮らしのリアル」と向き合いながら、挑戦を続けるおふたりにお聞きしました。

(撮影:八木竜馬 執筆:サトートモロー 編集:私がエレン 進行:澤山モッツァレラ)

「2023年6月までにフォロワー数100万人達成」は通過点

いいたか:
現在のメルカリのマーケティングの戦略において、メルカリの公式Twitterはどういった位置づけなのでしょうか?

山岸:
ひとつは、アプリ外でお客さまと接点をつくる機会を創出することです。
日常生活で不要品が出たときや欲しいものを探しているときの選択肢に入れてもらえるような視点で、Twitterを運用しています。

また、Twitterは「評判形成のツール」という捉え方が、メルカリのサービス特性に合っていると思っていますアッパーファネルからローワーファネルまで、幅の広いお客さまが有益と感じる情報発信を起点に、「メルカリを使ってみたい・楽しんでみたい」と思っていただける価値を提供するメディア運用を心がけています。お客さまの日常のなかで、メルカリが自然と想起されるような発信ですね。

いいたか:
「日常想起」というのは大切なキーワードですね。SNSの特性にも、とても近い気がします。

この取材の前にお二人に回答していただいたアンケートでは、2023年6月までにTwitterフォロワー数を100万人にするという目標を書いてくださったと思います。なぜ100万人フォロワーなのか、その意図も教えていただけますか?

山岸:
「100万人フォロワー」は、一旦の通過点として書きました。

メルカリは月間2,000万人以上のアクティブユーザーがいるサービスで、幅広い年齢のお客さまにご利用いただいています。まだメルカリを使っていないお客さまにも情報を届け、できるだけ多くのお客さまとつながり、幅広い話題を提供したいと考えています。

そのために、担当着任当初20万強だったフォロワー数を「(わかりやすく)100万人までに増やす」という目標として設定しました。

池田:
2,000万MAUを超えるメルカリの、Twitterの適正フォロワー数を測りかねている側面があるのも事実です

「Twitterを利用している人」かつ「メルカリを利用している人」は、きっと現在のTwitterフォロワー数よりも多いだろうと。100万人フォロワーはゴールではなく、どれくらいのスピードでフォロワー数が増えるか、一度しゃかりきに頑張ってみようという指標でもあります。

その結果次第で、今後の計画も立てやすくなりそうです。実際、想定以上にフォロワーさんが集まってきています。おそらく2023年6月という目標は、上方修正できるかなと考えているところです。

「点でのコミュニケーションを、どうやって面として見せていくか」

いいたか:
適正フォロワー数は難しい問題ですよね。

大前提として、メルカリでものを買いたい・売りたいときと、Twitterを見ているときの動機が異なるじゃないですか。
ブランドが好きでも、フォローするのは結構ハードルの高い行為でもあるし。そういう意味では、野菜・果物を売っていることを知らないお客さまに向けて、お客さまの投稿をリツイートで認知させるのは有効な戦術だと思います。

仮に100万人フォロワーが集まっても、その先にはもっと多くの人がいると考えれば、ダークソーシャルの会話をどこまで想像するかも重要だと思うんですよ

ある人がメルカリで野菜・果物が売っていることを知り、それを知人同士で話す。こうなったら、認知の数は100万人フォロワーを一気に上回ると思います。

その後、獲得した認知がアプリ上でどういう行動につながっていくのかをデータと紐づけていけば、Twitterフォロワー数以上の価値がメルカリに還元されるのが見えるなと感じました。

例えば「野菜」「果物」というワードでインプレッションが出た後の3日間で、メルカリ内での「野菜」キーワードの検索数がどう変動したかをウォッチするとか。

山岸:
相関関係を見ていくわけですね。

いいたか:
そうです。相関関係が見られれば、「このやり方はメルカリに合っている」ことになるじゃないですか。自分たちの施策に、キーワードがヒットしているかを確認するわけです

池田:
そうしたデータの取り方なら、すぐに始められそうですね。

いいたか:
ホットリンクでは、多くのソーシャルビッグデータを取得できます。ただ、すべての指名検索データを把握できるわけではありません。僕たちは主に、UGCと指名検索のデータを紐づけて、ちゃんとブランド名での指名検索が増えているかを見ているんです
それを一つひとつの施策ベースで見ることが、ホットリンクのSNS支援の特徴のひとつでもあります。

池田:
なるほど。それとメルカリでは、認知率は低くとも需要があるキーワードは「狙い目」として、TwitterやInstagramでのお客さまの声をチェックしていますね。野菜・果物はまさにそのカテゴリーに該当します。

ただ、山ちゃん(山岸さん)とはよく「その事実をメルカリ側から発信しても、あまり効果がないよね」と話します。需要がある商品に関しては、あくまでお客さまの発信を通じて伝える。それにより、メルカリの可能性を知っていただくことを意識しているんです。

山岸:
いわば第三者的な観点も含めたメディア的な運用が、メルカリというサービスをSNSで体現することにつながると思っています。メルカリはプラットフォームなので「中の人」感を出すのではなく、メディアとして運用することで属人化を防げますし、SNSアカウントの持続性にもつながっていくかなと。

いいたか:
なるほど。

山岸:
それから、対象となるお客さまの幅が広いことがメルカリのよさなんですよね。100人いたら100通りのライフスタイルがあり、メルカリの使い方がある。

汎用的なコミュニケーションが存在しないからこそ、ブランドの軸はぶれないようにしつつ、需要ごとに点でコミュニケーションしているところを、どうやって面として見せるのかを模索しています

コンテンツの柱も機能面・情緒面で分けて、お客さまに共感してもらえそうな仮説を立て、地道に発信しています。
お客さまにインタビューをすると「想像していなかったマニアックな宝物と出会える」という買い手視点の回答もあれば、「ハンドメイドなど、売りたいものを売って自己実現につなげたい」という売り手視点の回答もあります。

こうした声から、私たちは「お客さまに合ったメルカリの使い方が必ず存在するはず」というのを強く信じていて、それを広く伝えたいと考えているんです。

ポジティブなUGCの創出は、企業側のアクションが重要

いいたか:
お話を聞いていると、これまでにUGC施策もやられてきたような印象です。差し支えない範囲で、UGC施策の成功事例をお聞きしてもいいですか?

山岸:
メルカリでの購入ムードを盛り上げるために、「#メルカリで買ったもの自慢」というお客さまからの投稿を募った企画を実施しました。自分が好きで、ずっと探していたものと出会えたときの喜びや、ちょっとお得に買い物ができた体験って、人に話したくなるんじゃないかなと思って起案したんです。

参考:#メルカリで買ったもの自慢 モーメントにまとめました / Twitter

ただ、このキャンペーンを実施する前、実は私とさきっちょさん(池田さん)は少し躊躇していました。メルカリはTwitter上だとサービス上でのネガティブな側面に対しご意見をいただく機会も多く、ポジティブな購入・出品体験のUGCを発露させることに、成功のイメージが描きにくい部分があったんです。

それでも、「メルカリでこういうものを買ったよ」という会話は頻繁に起こっていると思ったのでチャレンジしたところ、オーガニックでトレンド入りしました。

この経験から、「企業が率先してきっかけを提供すれば、ポジティブなUGCの創出を促せる」ことを学べましたね。お客さまが共感し、楽しんでいただく企画をどれだけ作れるかが、サービスの価値を上げることにつながるのではないかと、気づきました。

池田:
それまでは、UGC施策に関しては慎重だったんです。

でも、この企画から「人は自分の買ったものを通じて自分を表現したいんだな」ということが分かりました
お客さまのUGCから「こんなものも売っているんだ!」「こんなレアなものまであるんだ!」という会話も、Twitter上で生まれていました。

山岸:
累計出品数や月間利用者数、取引数が多いフリマアプリだからこそ、UGC施策は相性が良いコンテンツだなと思いました。
キャンペーン後もお客さまが自発的にハッシュタグをつけて投稿してくれていたことにも、今後の期待がもてました。

やっぱりメルカリの価値をコンテンツとして届けるためには、「お客さま自身の体験を話してもらうことが重要だ」と確信した施策だったと思います。

いいたか:
この施策は、かなりの成功事例ですよね。僕たちもこのキャンペーンに関連するデータを取ってみたんですが、トータルでツイート数が2万8,000件(10%サンプリングの結果は2,876件)以上も出ているんですよ。

投稿内容のキーワードも、「よい」「安い」「かわいい」といったポジティブなものが大半で、ネガティブなキーワードはほとんど出ていませんでした。

対象メディア:Twitter10%サンプリング
検索ワード:#メルカリで買ったもの自慢
分析期間:2021/7/1~2022/6/7

同上の検索条件で算出した「頻出関連語」
※検索KWの周辺で語られているKW。出現数が多い順に表示

池田:
嬉しい、泣いちゃうね。

山岸:
本当、嬉しいね。UGCに対する基本姿勢を作ったきっかけが、「#メルカリで買ったもの自慢」という企画だったと思います。お客さまと手を取り合えた瞬間でした。

コンテンツ企画の鍵は、「リアルなお客さまの姿」の想像

いいたか:
池田さんはメルカリで働きつつ、銀行やコンビニで副業をしているということで話題になったじゃないですか。そのあたりの話も、ぜひ聞きたいなと。

参考:「メルカリ」で働きつつ、静岡銀行、コンビニ店員の副業をこなす。池田早紀さんの仕事のやりがいとは - ミーツキャリア(MEETS CAREER)

池田:
私はコンテンツを企画する際に、「あの人は理解できるかな」「あの人は面白いと思うかな」と、具体的な姿を思い浮かべられるかを大事にしているんです。

コンビニはメルカリ商品を発送するための「持ち込み場」なので、メルカリを使うお客さまのリアルなサンプルを見られるんですよね。
例えば「20代の若い女性」ではなく、「あのとき持ち込みにきたお客さま」という、鮮明な想像ができるようになります。コンビニでの週1回3時間のアルバイトは、コンテンツ企画やお客さまのリアルな姿をイメージすることに役立っているんです。

いいたか:
実際にお客さまの顔を見ることで、かなりイメージしやすくなりそうですね。

池田:
ここ1ヶ月間メルカリのアカウントを1,000個ぐらい見ていたんですが、出品しているものを見ると、お客さまがどういう生活をしているのか、妄想できるんですよね

池田:
SNSを運営する身として、この感覚はとても大切だなと。皆さんが、常にメルカリだけをやっているわけじゃないので。
どういう生活をしていて、何が好きなのか。土日は何をしているんだろうとか。山ちゃんともよく、こういう会話をしているんです。

例えば、2021年の年末に開催した「メルカリみくじ」というキャンペーンでも、お客さまのリアルな生活ぶりについてかなり話し合いました。

「メルカリみくじに反応してくれるような人は、今年の年末は何をして過ごしているかな」とか。以前行ったブランド調査で、メルカリを使うお客さまの好きなテレビ番組の1位が『世界の果てまでイッテQ!』だったことから、『イッテQ!』が好きな方たちは、今年は何をして過ごしているのかなと考えていまいたね。

参考:メルカリ公式Twitterで「メルカリみくじ」を引こう!2022年のラッキーアイテムがわかる

あくまで想像の範囲でしかないですが、お客さまの生活の解像度を上げるというのは、もはや趣味になっています。メルカリはお客さまの層があまりにバラバラなので、そこまでやらないと、お客さまの具体的な姿が見えづらいというか。

山岸:
「お客さまの暮らしのリアルって一体なんだろう?」って常に考えて話し合っていますね。「こういう世界は存在しないよね」と疑ってしまうプロモーションは、絶対にやりたくないんです。

実際のお客さまのなかからインフルエンサーを見つけ出す

山岸:
「リアルなお客さまの姿」という話とも関連するんですが、いわゆるインフルエンサー施策といいますか、世間的に有名な方とコラボレーションする際もできるだけ「お客さまの暮らしのリアルを考える」という視点は外さないようにしています。

池田:
普通の人が普通に使えることが、メルカリにとって一番ふさわしい。そのスタンスを表現すべきだと考えているからです。

山岸:
メルカリに対して共感してくださっている方ほど、コラボレーションが盛り上がると実感しています。
先ほどもお伝えしましたが、メルカリの楽しみ方はお客さまの暮らしの楽しみ方とイコールになるケースが多いので、リアリティがあるコンテンツになりやすいからです。

いいたか:
影響力のある方とコラボをするにしても、メルカリのユーザー像とマッチしていることを重要視しているんですね。

僕たちも、ざっくり「インフルエンサー」という捉え方はしたくないと思っていて。実際、ホットリンクが企業を支援するときは「現時点のリアルなユーザー」からインフルエンサーになりうる存在を探すんですよ。

いいたか:
ジョンソンヴィルさんの案件では、リロ氏というインフルエンサーとコラボをしました。
当時からジョンソンヴィルさんを絶賛してくれていたので、声をかけて宣伝に協力してもらったんです。

参考:ジョンソンヴィルが取り組んだインフルエンサーマーケティング。成功のカギはインフルエンサーとブランドの「共創」

インフルエンサーマーケティング案件だけの関係ではなく、リロ氏自身のアカウント成長にも貢献したいという思いで、さまざまな企画を立てました。
起用した方と企業がお互いにハッピーになれるような関係を作りたいという点で、御社とは考えが近いなと感じますね。

「公式アカウントをお客さまに楽しんでいただける場所に」

いいたか:
メルカリが来年でサービス開始10年を迎えるそうですが、今後どんな形でSNSを使っていく予定ですか?

山岸:
メディア運用って、ハムスターが回し車で必死に走っているのに近いと感じる局面もあるじゃないですか。

運動量は多いんだけれど、実は同じところをぐるぐる回っているだけかもしれない。そんな状態になっていないか、常に俯瞰で見るようにしています。個人的には、SNSは常により広いコミュニティであってほしいなと。

アプリではできないコミュニケーションが、公式Twitterではできます。お客さま同士が、メルカリの使い方や良さをシェアし合える空間にできると、見ていても楽しいですよね。
それ自体が、魅力的なコンテンツにもなると思います。

メルカリのSNSアカウントが、ちょっとした掲示板みたいになってほしいなと、思っています

そのためにも、アカウントをフォローし続けてもらえる企画を仕掛けていきたいです。メルカリのサービスはもちろん、生活全体が豊かになる驚きがあるというか。お客さまが心から「楽しい」と思えるイベントを、これからも企画したいです。

池田:
SNSでどんな発話をもたらしているかを正確に捉えて、社内にフィードバックしていきたいですね。
Twitterにとどまらず、オフラインも含めてタッチポイントが増えたタイミングで、メルカリをどう紹介すべきかも考えたいと思っています。

タッチポイントによってお客さまの属性は違うと思いますし、現状ではその属性をセグメント化しにくいんですが…タッチポイントが増えれば、それも可能になってくるかなと。

それと、お客さまにメルカリを見たり不要なものを出品することを習慣化してほしい気持ちはあるけれど、決して必須なものではない。なので、せめて「週末にメルカリの公式Twitterアカウントがこういう案内を出しているから、見てみようかな」という状態にしたいなと。1年後にそうなっていたら、とても嬉しいですね。

山岸:
企画は無限にありますしね。

いいたか:
企業にとってはうらやましい状況ですね(笑)。

池田:
現在のメルカリは個人間の取引だけでなく、グループ会社のソウゾウが運用する「メルカリShops」というネットショップも加わったため、フリマアプリからマーケットプレイスへと変化を遂げている最中です。

しかし、その主体が個人であっても、事業者さんであっても、生活者に寄り添ったSNS運用は変わらないと思います。これからもメルカリらしさは変えず、やっていきたいですね。

いいたか:
フリマアプリNo.1のメルカリでは、どのようなSNS戦略を展開しているのか、僕自身もずっと興味がありました。

フォロワー数を目標のひとつに置いてはいるものの、それが目的にはなっておらず、あくまで指標のひとつであるということ。何より、お客さまのことを本当の意味で第一に考え、それが終始一貫した方針になっていることが知れてよかったです!


今回の「ザ・プロフェッショナル」もお楽しみいただけましたか? 本シリーズでは、今後も各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルをお招きして対談を行ないます。過去の記事はこちらからご覧ください。

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