SNSコラム

UGC活用の大前提は、心からいいと思ってもらえるサービス設計。HafH(ハフ) #きょうのUGC

2022年03月23日
SNSコラム | きょうのUGC

一般ユーザーによって作られたコンテンツ、UGC(User Generated Content)。近年、マーケティングでも非常に重要な要素となっています※「UGCって何?」という方はこちらの記事をどうぞ!)

そこでホットリンクでは新連載として、質の高いUGCを生み出し、集客やサービス認知に成功している企業様の事例を紹介していく企画「きょうのUGC」を発足しました。

第1回は、ホテルのサブスクリプションサービスを展開するHafH(ハフ)さんに登場いただきます。

「旅のサブスク」HafHは、定額料金を支払うことで世界1040以上の宿泊先に旅行できるサービスです。(2022年2月末現在)有効会員数は2021年末に35,000人を突破し、サービス内で獲得できる「コイン」に応じて宿泊可能なホテルの種類が変わる仕組みを取り入れています。

日本サブスク大賞2021グランプリを受賞し、数々のメディアでも注目されるHafHさんはまた、様々な施策の中でも「UGC活用」に重きを置いています。

今回は、同サービスを運営する株式会社KabuK Style COO・大瀬良亮(おおせら・りょう)さんに、サービスの根底にある思いやUGC活用を重視する理由を伺いました。(執筆:サトートモロー 取材・編集:澤山モッツァレラ)

移動も含めた「旅」のサブスク

――定額でホテルに泊まれること、コインの付与に合わせてホテルのグレードを上げられること、様々なやり方でコインを獲得できることなど、貴社のサービス設計はどれもユニークですね。

大瀬良:

ありがとうございます。僕たちは2021年から、HafHを「旅のサブスク」と呼んでいます。宿泊だけでなく移動も含めた「旅」を、便利でお得なものにしたい思いからです。

プランは合計5種類あり、一番おすすめのスタンダードプランは月額9,800円です。定額に付与されるコインに加えて、コイン還元ボーナスなどを積立することで1泊1〜2万円のおしゃれで満足度の高いホテルに宿泊できます。

コインが貯まりやすくなる仕組みも、随所に散りばめています。例えば3カ月以上の長期利用で毎月貯まるコインが10%アップしたり、クイズに正解するとコインがプレゼントされたり。

コインを貯める楽しさも、機能として追加し続けています。例えばお気に入り機能によって、次に泊まりたいホテルをチェックできるようになっています。「このペースでコインを貯めると、○○月には泊まれますよ」とお知らせしてくれるんですね。

――長期利用によるメリットなど、さまざまな特典が用意されているんですね。

大瀬良:

現在、1,000拠点以上の宿泊施設と提携しています。この数は、毎月増え続けています。利用者の皆様と一緒に、泊まれるホテルが増えていく楽しみを共有する。これも、後にご紹介するUGCを生むひとつのきっかけになっているかなと。

現在は、各交通事業者様にご相談しつつ、移動についてのサブスクリプションサービスのリリースも進めています。2022年3月で3周年を迎えます。まだまだヒヨッコなサービスですが、コロナ禍においても、順調に会員数を伸ばしています。

――利用者の方々は、どんな特徴がありますか?

大瀬良:

30代以下の方々が75%、会社員の方々の登録数が60%以上という割合は特徴的だと思います。

創業当初、主な利用者はアドレスホッパーや長期滞在者の方々だろうと思っていました。しかしフタを開けてみると、宿泊施設を変えながらさまざまな宿を楽しむ方の利用が多かったんですね。

HafHの需要としてもっとも多いのは、気分転換での宿泊です。ワーケーションというより、在宅ワークが増えた中ストレス発散として泊まる方が多いようです。

また、利用者様の多くがオーガニック検索でサイトを訪問しています。7割以上がクチコミやSNSを見て登録されたようです。知人のリアルなクチコミが、僕たちにとって大事なマーケティングのポイントというのを強く感じています。

――まさに、UGCが貴社のマーケティングにおいて重要な位置を占めているんですね。

「悪いUGCが出にくい」サービス設計

大瀬良:

「つながる」という言葉は、この現代において非常に大切なキーワードだと思います。

なかなかオフラインで会えない中、人や地域と「つながる」価値は非常に高まっていると感じます。そして「つながりたい」インサイトを満たすのに欠かせないのが、UGCやSNSを通じたコミュニケーションだなと。

利用者様によるUGCは、僕たちの大きな強みになっています。SNSでは、HafHを利用した泊まったという体験を、「#HafH」をつけて投稿される方がたくさんいらっしゃいます。特徴的なのは、定額であるがゆえホテル自体のコストを気にせずクチコミされることです。

――たしかに、ホテルに泊まる際はどうしても費用面を気にしてしまいます。

大瀬良:

HafHを利用する時点で「お得に泊まれる」という認識があるので、コストに関する悪いクチコミがほとんどないんですね。必然的にハード面(設備)やソフト面(サービス)、宿泊先での出会いといった思い出が体験のメインになるんだと思います。

この点は、ホテルさんにもすごく喜んでもらえています。「HafHのネイバー(会員)さんに泊まってほしい」「クチコミを書いてもらいたい」というニーズは、日々高まっていると感じますね。

――悪いUGCが出にくい設計になっているのは、とても強いですね。

大瀬良:

実際の事例でいうと、2021年5月に「#HafH得ワーケーション」と称し、石川県へのワーケーションツアーを開催しました。

参加者の皆さんにハッシュタグ付きの投稿をお願いした結果、10日間で約180ツイート、総いいね数4万以上、RT数のべ5000以上と非常に大きな話題を呼びました。

このツアー以降石川県への送客実績もじわじわ増え、前年比で20倍以上まで成長しました。HafHにおける2020年の石川県の予約数ランキングは20位以下でしたが、2021年には9位まで伸びました。HafHにとって、石川県が「得意な地域」になったんですね。

大瀬良:

SNSだけでなく独自のコミュニティを持ちながら、UGCを作っていきたいという思いもありました。そこで、昨年8月からはHafHのオンラインコミュニティを立ち上げています。

現在はSlackを通じ、約400名と交流しています。気に入ったホテルの情報や宿泊先のおすすめなど、コミュニティでの内容は「#ハフコミュ」でTwitterでも発信しています。

こうした交流があるおかげか、「HafHを利用している」ということが共通の価値観になりつつあります。イベント部や広報部、グルメ部、スポーツ部など部活動も盛んで、全員が同じマンションに住む間柄のような、不思議な関係が築かれているんですよね。

クラウドファンディングをプレスリリース代わりに活用

――そもそも大瀬良さんはどのような経緯から、HafHを立ち上げたんでしょうか?

大瀬良:

会社員だった頃に政府に出向する機会をいただき、多くの海外出張を経験しました。こからなぜ退職し、HafHを立ち上げたかについてはこちらのnoteにまとめています。長くなりましたので、ぜひこちらを参照いただければ。

電通を退職しました。なぜ今か。|Ryo Osera | 旅のサブスク HafH(ハフ)創業|note

――HafHを創業する中で、どのようなビジネス課題がありましたか?

大瀬良:

やはり、このサービスをどうやって多くの人に知ってもらうかですね。いろいろ考えた結果、選んだのはクラウドファンディングサービス「Makuake」をプレスリリース代わりに利用することでした。

毎月定額で、世界中を旅しながら働く!HafH(ハフ)を長崎から世界に広めたい!|マクアケ - アタラシイものや体験の応援購入サービス

――なるほど、単にプレスリリースを出すのではスルーされる可能性もあります。クラファンとして出すことで、賛同者の方がUGCを出して広めてくれ、しかも支援までしてもらえる。すごい設計ですね。

大瀬良:

ありがたいことに。結果として、プロジェクトは408名の方がサポート応援してくれ、いいね数も5,000以上になりました。

ちなみに、僕たちの本社は長崎県長崎市にあります。実はここにも、僕たちの思いが込められています。

HafHは「世界中を旅しながら働く」という夢を語っています。そんな会社の本社が、大都市東京にあるのは変じゃないかと考えたんです。世界に挑戦する会社を、長崎という西の果てに立ち上げる。そこで成功することに、意味があると考えました。

実は408人のサポーターのうち、約100名は長崎在住の方々です。長崎から世界に挑戦する企業が出たということに、ワクワクしてくれているのかなと思います。

Makuakeでの支援方法がわからず、現金を持ってきてくださった方もいるんですよ。「やり方はようわからんけど、金渡すからぜひ使って」って(笑)。

――現地の方々からも、多くの支援があったんですね。

大瀬良:

これだけ認知を広げられたのは、Makuakeさんのおかげでもあります。Makuakeの担当者さんは、PRのためにたくさんのメディアを紹介してくださいました。

ハフポストさんやBusiness Insider Japanさん、旅行系メディアの方々にもつないでいただきました。こうしたメディア露出を通じて、UGCを増やしていきました。

NewsPicksさんでの露出では、東京都の宮坂学副都知事や堀江貴文さん、大手企業の役員の方々が興味を持ってくれたおかげで広く認知されるに至りました。

Makuakeやメディア露出で話題をつくり、興味を持った方が僕のnoteを読んだり、UGCを生んだりしてくれる。このように、多くの方々に共感されるための仕組みづくりを考えていきました。

――UGCが生まれる仕掛けを、かなり綿密に考えていたんですね。

大瀬良:

そうですね。どこでどういう情報を出していくかは、創業前からずっと意識をしています。

「イベント後の送客」も意識したUGCのしかけづくり

――最近のUGC活用事例を教えてください。

大瀬良:

TABIPPOさんと共同で開催した「トラベルウィーク」というイベントがあります。これはJALさんとの「HafH×JAL『航空サブスクサービス』実証実験」も兼ねていて、HafHでは全国5都市(北海道・釧路、金沢・小松、和歌山・南紀白浜、四国・高知、九州・長崎)のオリジナルツアーを企画しました。

このツアーでは、最初からKPIをUGC数に設定しています。各ツアーに何人来るかは、あくまでその旅を楽しむための人数の目安と捉えたんです。

ツアーでは「#つながる余白をつくる旅」というハッシュタグを用いて、参加者の皆さんにどんどんつぶやいていただきました。結果、当初予定していたよりも多くのUGC数を達成しました。しかも、このツイートを見た方が、ツアー終了後に20名で釧路へ旅行に行ったそうです。

――イベント企画単発で終わらず、参加者の方から質の高いUGCが出た結果をそのまま送客に繋げているんですね。

大瀬良:

そうですね。僕たちは当日の参加人数より、「その後の送客」をすごく大切にしています。例えば、トラベルウィークでは参加者様の写真以外に、必ず全行程に相沢亮さんや上田優紀さんといったプロカメラマンを手配して、写真をアップしてもらいました。

――クオリティの高い写真が多いなと思っていたのですが、プロのカメラマンの方が同行されていたんですね。

大瀬良:

そうですね。UGCを見た方に、旅先の魅力が最大限伝わるようにという意図があります。

それ以外の施策としては、招待コードもUGCの大きな要因になっていると思います。コードを入力して登録すると、よりお得にコインがもらえるというものです。

昨年8月2日は「HafHの日」と称して、より多くのコインがもらえるキャンペーンを実施しました。この時期に、一気に会員数が伸びました。

――すでにコミュニティの基盤ができているので、こうしたキャンペーンが高い効果を発揮するんですね。

「心からいい」と思ってもらえるサービスを。

――お話を伺うほど、HafHさんはUGCをとても有効に活用しているように思います。UGCの重要性には、いつ頃気づいたんでしょうか?

大瀬良:

HafHを立ち上げる前から、インフルエンサーによる広告宣伝の実態に、多くの消費者が気づいていると確信していました。皆さんが、心からいいと思うものをつぶやいてもらえる仕組みが必要だと感じたんです。

HafHは以前から、アンバサダー制度を取り入れています。通常のインフルエンサーの方々ではなく、HafHがライフスタイルの一部となっている方に、アンバサダーをお願いするようにしているんです。

HafHが、自分の生活をアップデートしてくれる。心からそう感じている方の発信の方が、インフルエンサーよりもエンゲージメントが上がるというのを、この3年で実感しました。

――本当に好きでなければ、効果的なUGCは生まれないということですね。アンカー・ジャパンCEOの猿渡歩さんも、同じことをおっしゃっていました。

本当に好きでなければ、効果的なUGCは生まれない。アンカー・ジャパン猿渡歩×ホットリンクいいたかゆうた #ザ・プロフェッショナル

大瀬良:

そうなんですね、光栄です。実はホテルさんも、UGC活用には困っています。「リアルな声が欲しいけれど、UGCの活用方法が分からない」という声は多いんですよ。

ホテル業界は、コロナ禍で大きな制限を受けています。にもかかわらず、ここ数年インバウンド需要に合わせてホテルがどんどん増えました。

需要と供給のバランスが大きく崩れているなか、ホテルさんはいまだにUGCの一歩手前である広告宣伝やインフルエンサーマーケティングに頼っています。結果、大手OTAに広告を割いたのはいいけれど、かけた金額に対して集客がうまくいかない。

一方、UGCは広告と違ってじわじわと効果が生まれてくる施策です。だからこそ、僕たちのような存在がホテルさんに求められているんだと思います。

UGC活用に踏み切るには、プロダクトを信じる勇気が必要

――HafHさんは今後、UGCをどう活用していきたいですか?

大瀬良:

もっともっとUGCを増やしていきたいと思っています。もちろん、プロダクトやサービスの質があることは大前提ですが。

プロダクトやサービスが素晴らしいものであり、「本当にいい」と感じてくださる方がいる。これが、UGC活用をマーケティングの中心にすえる大前提だなと。

加えて自分たちのサービスを愛し、自慢できる人がマーケティング担当者であること。「ここが変われば、もっとプロダクトを愛する人が増える」という形でコミットでき、マーケットインとプロダクトアウトを両立させること。

これらが、UGCマーケティングを成功させるうえで重要なことだと思います。

スピード感を持ってHafHが成長する過程で、マーケティング側とプロダクト側の想いも、同じスピード感で成長し、同じ方向で進んでいく必要もあるでしょう。

こうした課題をクリアし、成長させるためのこのマーケット・プロダクトの関係を維持することが、僕たちのチャレンジだと思います。

スタートアップの急成長を描く上で、今はとても重要なフェーズです。僕たちはまだまだ成長途中の会社なので、ますます頑張らないといけないですね。

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