SNSコラム

僕らはSNSで本を買う。SNS時代における「書籍」の役割について。ライター・佐藤友美×ホットリンクいいたかゆうた #ザ・プロフェッショナル

2022年02月28日
SNSコラム | ザ・プロフェッショナル

最終更新日:2023年7月13日

ホットリンクCMO・いいたかゆうたが、各業界のトッププレーヤーを迎えてお送りする対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」。今回のゲストは、ライター&コラムニストの佐藤友美(さとう・ゆみ)さんです。
 
企業における情報発信の重要性が高まる中、書籍という発信形態のメリットとは何でしょうか。佐藤さんは、その価値を「他メディアに波及していくこと」と述べています。
 
書籍が売れた場合、それ自体は数万部であっても、1,000万人以上が目にするメディアに紹介される可能性があります。いいたかの処女作「僕らはSNSでモノを買う」で佐藤さんとタッグを組んだ際は、数多くのメディアに取り上げられ、いいたかの元には多数の講演オファーが舞い込みました。
 
SNS時代における書籍の価値について、SNS時代の情報発信について、さらに「フォローされるバズとそうでないバズ」などについて、縦横無尽に語っていただきました。
 
(撮影:小林一真 進行・執筆・編集:澤山モッツァレラ)

しっかり書けて、拡散できる人が求められている

いいたか:
お久しぶりです。現在、友美さんはメインでどんなお仕事をされているんですか?

佐藤:
大まかに四つあります。一つ目が書籍の仕事、二つ目が美容ライターの仕事。執筆だけでなく、セミナーに呼んでいただいたりテレビでコメンテーターをしたりもしています。

三つ目が、WEB記事の仕事です。これはガチガチのビジネス系で、上場企業の社長さんの記事やAIやDXなど新規事業の記事を書かせていただくことも多いです。そして四つ目は、書くことを教える仕事です。

ビジネス系は、直請け案件が増えました。企業の中の人として社長さんのブログ記事を書いたり、プレスリリースやパンフレットのご相談、ニュースリリースを有料会員様に送ったり。

いいたか:
企業案件は、どのタイミングで増えたんですか?

佐藤:
それが、『書く仕事がしたい』を脱稿した直後なんですよ。本書が出版される前です。この本で「それだけはやったことがないです」って書いた直後に、中の人案件の引き合いが来て。

――やはり、腕のある書き手の需要は大きいですね。

佐藤:
編集者の竹村俊助さんが「ベンチャーで、3人目の社員に『書ける人』を雇う会社が増えた」というようなことをおっしゃっていたんですが、その感覚はわかりますね。書いて発表することによって、株価や企業評価も変わる可能性がありますから。ここが求められているのは、肌で感じます。

――僕(澤山)のところにも、ご相談はちょこちょこ来ますね。

佐藤:
そうなんですね、やっぱり。私も自分だけではお引き受けできないから、チームで仕事するようにしています。もはや、編集プロダクションみたいになっているというか。

いいたか:
今まで、上場手前の会社ってブランディングのためのクリエイティブを重視するところが一定数いるんですよね。でも、結局は売上と利益を挙げている会社に評価がつくわけです。

それはファンドもわかっているので、依頼する相手がコピーライティング系の人からより売上に繋げられる人に変わっている気がします。書くことでSNSを通じてなりで会社を知ってもらい、「あの社長さんの発信を見ました」という求職者が増えるような。

佐藤:
採用広報系の原稿を書いてほしい、というご依頼はたくさんありますね。広告というよりも、内部のリアルをストーリー化してほしい、というものとか。

いいたか:
ホットリンクでも、以前はWantedlyで入社エントリーを書いて、みたいな感じで発信していました。でも、それだとWantedlyの読者には届くけど、その他だとSNSの投稿に左右されるという問題にぶつかって。

「発信してね」と言っても、できる社員とできない社員がいる。だったらしっかりコンテンツを作れて、ちゃんと広げられる外部の人に依頼したほうがいい。全体的に、そういう方向に変わっている感はありますね。

余談ですが、弊社のようなBtoB企業で編集者を3名も置いている会社は珍しいと思います。ほとんどの会社は広報が1人いて、ニュースリリースは外部と協力して、みたいな形だと思うので。ただ、ここにお金をかける企業はより増えていく気がしますね。

「#ウルサス本」が生まれたきっかけ

――佐藤友美さんは、いいたかの処女作『僕らはSNSでモノを買う』(2019年)のライターでもあります。当時は #ウルサス本 というハッシュタグも盛り上がりました。企画は、佐藤さんからの提案だったそうですね。

佐藤:
そうです。実は、いいたかさんとは震災の頃からの付き合いなんです。あるイベントをきっかけに知り合って。当時そこまでTwitterやってる人は多くなかったし、半年ぐらいTwitterで絡んだ後お酒を飲むようになって、そこから。

いいたか:
年に2回ぐらい会う、飲み友達ですね。

佐藤:
2014年ぐらいですかね、美容師さん向けのセミナーでこの本にあるような内容を喋ってもらったの。すごく面白くて、「これは書籍にしたい」と思ったんです。そこから「いつか本にしましょう。その時は私が書きたいです」って言い続けてきました。

いいたか:
実は、前職にいた頃も書籍の依頼は多かったんです。でも、全部断ってました。「友美さんが書くって言ってるし」みたいなノリで。

佐藤:
その話、全然知らなかった(笑)。

いいたか:
まあ、ferretで持っていた講座の内容を延長したようなオファーもあったので、「それなら自分じゃなくてもいいか」と思って。書籍をやるなら、信頼している人とやりたかったですし。

佐藤:
本当にありがたい話です。ただ、企画が通ったときはパート2の部分、実務的な内容をメインに構想していたんですが、私がいいたかさんの話の内容を理解できなくて。文字起こしを読んでもよくわからない、みたいな。

いいたか:
当時はそうでしたね、フワフワしてました(笑)。

佐藤:
いろんな人に聞くと皆さん「いいたかさんはスゴい」というので、内容に間違いはないと思うのだけど、言語化に苦戦していました。

本書の輪郭を作る上で大きかったのは、桧野さん(安弘、ホットリンク執行役員CEO)にお話を伺ったことですね。いいたかさんの入社が決まったタイミングでお会いしに行って、うまく翻訳していただいたんです。「そういうことか!」と。

いいたか:
そうですね。それまで言っていたことが、ホットリンクのデータによってより根拠立てて話せるようになりましたしね。

――いいたかさんのホットリンク入社で、最後のピースがはまった感覚なんですね。

佐藤:
そうですね。ただ、UGCやULSSASの話を書きつつ、いいたかさんらしいフワッとした感じも残したかったんです。ふつうのビジネス書っぽい体裁だと、なんか違うなと思って。

最初は会話文だけにしようと思ったんですが、それだと肝心なことを喋れなかったりします。だから、地の文を混ぜる体裁にしました。ここまでは長かったのですが、そこからのスケジュールは一気でしたね。

――「構想2年、執筆1週間」みたいなスケジュールだったそうですね。

佐藤:
会話の冒頭に登場人物の顔のイラストを入れる話をしていたんですが、最初のゲラには入ってなかったんです。その代わりに、誰のセリフかわかるようにカギカッコがついていて。

その後、校了直前でイラストを挿入してカギカッコを外した結果、何が起こったかというと、「。」のない文章が残っちゃったんです(笑)。

――確かに、会話文に読点がないですね。

佐藤:
「いや、『。』入れようよ」と話したんですけど、「その修正をすると間に合いませんし、気になりません!」と編集さんに言われて。結果的に誰にも指摘されていないから、良かったんですけどね。私だけが気になっていました(笑)。

いいたか:
苦労の甲斐あって、おかげさまで本は売れました。結果、多数の講演オファーをいただきましたね。制作スケジュールもカツカツでしたが、出版後はさらに怒とうで(笑)。

友美さんの教えを守って、講演は断らずに全部出ましたよ。たぶん、1年で150本はやったんじゃないかな。

佐藤:
「本が売れたら、講演の依頼が増えるから、そのつもりでスケジューリングしたほうがいい」って話をしましたね。

いいたか:
北海道で一泊して次の日に沖縄へ行って、東京に戻って打ち合わせして、大阪行ってみたいな(笑)。地理を考えずに予定を入れたので、そんなスケジュールを平気でこなしてました。当時はZoomも普及していなかったから、全てリアルで。

佐藤:
本が売れる時って、そういうものですよね。私も『女の運命は髪で変わる』が売れた時は半年で54本セミナーさせてもらいましたし、雑誌取材は40本受けました。

言い方はあれなんですけど、「SNSマーケティングと言えばいいたか」というポジションを取るべきだと思ったんです。なので、講演はすべて受けたほうがいい。大変だったと思いますけど(笑)。

「誰でも知ってる」内容の本はなぜ売れた?

――「ウルサス本」出版において、最も記憶に残っている反響はどういうものでしたか?

佐藤:
これは慎重に表現したいんですが、ある重鎮の方が「こんなこと、誰でも知ってるよ」って言ってらしたことですね(笑)。

いいたか:
ありましたね~。

佐藤:
「こんな、誰でも知ってる内容が売れるのはわからない」という言い方をされていたんです。

私は、それは違うなと思って。フワッと理解していた、わかったようでわかってないことを言語化して書籍に落とし込み、「みんなココからつまずいてますよね」という部分に目線を持っていった。ここが、ウルサス本の価値だと思うんです。

――知識があることと、インサイトが見えていることは別の話ですよね。

いいたか:
Amazonレビューでも、そういうものを見かけますね。悪いレビューを書いてる人は、内容どうこうより「こんなこと、前から知ってた」というコメントだったり。

佐藤:
「こんな基本的なことを」って言うけど、そこが皆さんの知りたかったインサイトなんですよね。だから、これだけ売れたわけで。

いいたか:
とはいえ、心が折れそうになったことはありましたよ。ズタボロに書かれてると(笑)。友美さんが「気にしなくていいよ」って言ってくれて、すごく気が楽になりましたね。

佐藤:
いろんな著者さんに言うんですけど、売れる本のレビューは荒れやすいんです。あくまで傾向ですが、売れなかったらファンしか買わないから点数が高くつきます。

いいたか:
(カスタマーレビューを見ながら)なんやかやで星5つ中の3.9に戻っていますね。面白いのが3をつけている人が22%いて、星2つ以下は13%。低い評価をつけてる人は、それなりにいるんです。

佐藤:
この分布になっているのは、良い本だと思います。ノリが軽いことにイラっとする人もいるのかもしれないですけど(笑)。

いいたか:
でも、会話調にしてもらってすごく助かりました。企画の最初に、友美さんから「いいたかさんらしさを無くすと、変わらなきゃいけないタイミングが来るかもしれない」って話してたじゃないですか。

堅い文体になると、合わせて僕が口調を変える必要が出てくる。今このノリで喋れてるのは、書籍がフランクなおかげなんです。「はいどうも~」みたいな、地方に行っても「書籍のまんまですね」って言われたり(笑)。

佐藤:
会話調にした理由なんですが、実は私、ブックライターとして本を書くときは朝から晩までその人の音声を流してるんです。

――すごい。

佐藤:
役作りじゃないけど、その人の口調や口癖を意識してインプットするんですが、いいたかさんの場合、この語り口を生かしたほうがいいんじゃないかなと思って提案した部分もありますね。

SNS時代における、「書籍」の役割とは?

――企業における発信の重要度が増す中で、発信形態として「書籍」を選ぶ意味はどのあたりにあるとお考えですか?

佐藤:
他メディアに波及していくことだと思います。テレビにもラジオにも雑誌にも。発信の起点になるのが、書籍という媒体なんです。

もちろん、売れればの話ですけど。メディアの人たちって、売れてる書籍からネタを探すんですよね。結果、書籍自体は数万部しか出なくても、1000万人以上が目にするメディアに紹介される可能性があります。

――いうなれば、「原液になる」ということですね。

佐藤:
そう。WEBではどんなに長い文章でも、10万字は書けないじゃないですか。でも書籍なら書けるわけです。『僕らはSNSでモノを買う』は、この一冊にいいたかさんの考えが全て詰まっている原液なんですよね。だから、カルピスみたいに「みんな好きに割って飲んでください」と(笑)。

いいたか:
書籍を出してから、オファーのされ方は変わりましたね。出す前は、マーケ系のメディアから呼ばれない時期があって。

佐藤:
髪が長すぎたんじゃない?(笑)

いいたか:

(笑)企業色が強すぎたのかもしれません。今はMarkeZineさんに連載を持たせていただいてるし、NewsPicksさんなどにお声がけいただけましたし。

――書籍を出すことで、いろいろなパーセプションチェンジが生まれたんですね。 

佐藤:
でもね、これも「売れたから」なんですよね。売れないとなかなか世界は変わらない。

ベンチャーの方からよく「名刺代わりの本を作りたい」というご依頼をいただくんですけど、「売れるタイミングで、ちゃんと売れる本を作ったほうがいい」とお返ししています。そもそも、名刺代わりと考える時点で読者目線じゃないですしね。

「これをどうしても知ってもらいたい」という思想や情報があって、それが人口に膾炙(かいしゃ)した結果、はじめて名刺代わりになるんです。人の役に立つものを作ることがすごく大事。本を書ける人はたくさんいますけど、「読者が知りたいことを書ける人」は、そんなに多くはいないんでしょうね。

フォローされるバズ、されないバズ

佐藤:
SNSの話に戻すと、自分の名前で発信するようになって気づいたことがあるんです。東洋経済オンラインさんと講談社のmi-molletさんでテレビドラマ評を書かせていただいてるんですが、時々すごくバズるんですよね。

20万PVぐらい読まれたり、私のTwitterアカウントにいいねが何百もついたり、たくさん引用リツイートされたり。でも、面白いことにフォロワーは全然増えないんですよ。

一方で、私の子育てエッセイや書評だと、コメントしてくれる人たちはもれなくフォローしてくれるんですね。

いいたか:

そういう傾向、ありますよね。

佐藤:
ドラマ評で集まった人は、記事を喜んでくれる。だけど、私の他の記事には興味ないんですよね。

でも、kufura(クフラ)さんの子育てエッセイとかtelling,(テリング)さんの書評の記事は、読者数はそこまで多くないけど、明らかに毎週読んでくれたり、私の書くものをほとんど読んで感想をくれる方がいます。

数十万PVの記事を書いたら「ドヤッ」て思うんだけど(笑)、作家として生き残っていくことを考えると、後者のような記事が、すごく大事なんだなと思いました。

いいたか:
それはありますよね。ドラマの記事だと、エンタメ要素で引っ張られますから。サスペンスものなら、「真犯人は誰々だ」とかでめちゃくちゃレビューが出ます。そのとき、ユーザーに課題はないんですよね。皆の意見を読みたいだけなので。

昨年末に「2021年にTwitterで話題になったアーティスト」というツイートをしたんですけど、

900RT、2,100ふぁぼ以上ついても、新しいフォロワーはゼロでした。

――インプレッション数も相当出たはずですが、フォロワーは増えなかったんですね。

いいたか:

TWICEとかLiSAとかBTSなどの単語をツイートに入れ、エゴサーチを取りに行ってバズらせようとしてるだけですから。

今まで関わったことがない人たちに、たくさんリツイートされました。なのでツイートは伸びるけど、フォロワーは増えない。「BTSってすごい」「やっぱり1位だよね」みたいな感情が動くだけで、誰のツイートかは重要じゃないんですよね。

佐藤:
自分が主体で発言しているかどうか、なんでしょうかね。過去に、すごいバズり方をしてフォロワーが増えたことが2回あって。

1回目は、浜崎あゆみさんに関する本の書評を書いたときです。当時「M 愛すべき人がいて」というノンフィクション的な書籍がすごく叩かれたときでした。「浜崎さんに救われた人がどれだけいると思ってるの」「あの本は女の子が読むもので、(本を叩いている)あなた方が読むためのものじゃない」ってことを書いたら、すっごくフォロワーが増えました。

2回目は、女子に一番人気のAV男優「一徹」さんの本をお手伝いしたときですね。一徹さんのファンの方々が、一気にフォロワーになってくれました。

いいたか:
一徹さんの件はどういう理由なんですかね、フォローしておいたら一徹さんの写真が上がってくると思われたとか?

佐藤:
「一徹さんを取り上げてくれる人が好き」ってことかもしれないですね。浜崎あゆみさんのときも、そうかも。「推し仲間」というか。

いいたか:
なるほど。それでいうと僕の投稿は結果を言ってるだけで、名前が出ている人を推してるわけではないんですよね。

自分を出さないと、読者は増えない

佐藤:
ドラマ評も、ただのレビューならフォロワーは増えない。けど「この場面の演技はよかった」と書くと、俳優さんのファンからフォローされるかもしれないですね。

一徹さんのファンの方々とは、今でもやりとりをしています。そこで仲良くなった女性の美容師さんが、髪型の記事にも反応してくれるようになったりして。

いいたか:
それは面白いなぁ。

本来、人って誰かを好きになるとき「その人を知って」好きになるじゃないですか。でも、「こんな課題を解決します」「利用企業は*万社です」とか売り出してしまう。

転職市場にしてもそう。「こんな経歴があります」と言われても、僕らはそこで採用しているわけじゃないですから。中身が大事で、経歴なんてぶっちゃけどうでもいい(笑)。

いい記事なら、PVが伸びなくても10人が感動してくれたとか、そういう基準も必要だと思うんですよね。もちろん数字も大事なので、どちらかが正しいわけではないですが。

佐藤:
誰に届けたいかによりますよね。『書く仕事がしたい』はライターさん向け、物書きになりたい人に向けて書いてることもあって、ずいぶん熱いレビュー投稿をいただいています。絶対数は爆発的ではないけど、部数を考えればレビュー数が相当多いように感じます。

私は、文章のゴールを「読者の態度変容を促すこと」だと思っています。態度が変わる、思考が変わる、情報が増える、なんでもいいんですが、読み手の何かが変わらないなら文章を書く必要はないと思っています。

その観点だと、『書く仕事がしたい』は、レビューを書きたいと思ってもらえるような、いい仕事ができたのかもしれないです。

いいライターが増えれば、企業は幸せになる

佐藤:
いいたかさん、この先はどんなキャリアを考えているんですか?

いいたか:
そうですね、SNSマーケティングの市場は引き続き面白いと思いますし、以前と比べて良くなっていると思います。一方でいろいろ弊害も起きているので、何にフォーカスして何を提供するかを考えるタイミングには来ているのかなと。

僕らはSNSの肯定的な側面を取り上げ、伝えてきました。一方で、SNSによって不幸になっている人たちはいるし、教育における問題も顕在化している。今後は、そちらにもアプローチしていきたいですね。

佐藤:
教育というと、いじめ問題だったり?

いいたか:
そうですね。学校へのアプローチだったり。今年から早稲田大学で50代以上の方を対象にしたスクールができるんですが、僕も1コマ持たせていただくことになりました。そういう方々にも、何かを伝えられたらと思っています。

佐藤:
いいたかさんの「何かを伝えたい」という気持ち、今ならとてもよくわかります。私、以前まで「教える」ことに本当に興味がなくて。誰かに教えたら「ライバル増えるじゃん」ぐらいに思っていましたから。

今は考え方が変わりました。良い仕事ができるライターさんが増えれば、ライターという職業の価値が上がるし、結果として私たちの仕事は増えていく。だから、全員でうまくなっていきたいですね。

――徐々に、そうした循環はできている気がします。

佐藤:
『書く仕事がしたい』を出版したのも、業界全体が盛り上がってほしいという気持ちがありました。

いいライターさんが育ってほしい。育てば、買い叩かれて1文字いくらで売られることもなくなるし、「下手だから教えてやる」を口実としたセクハラまがいも減る。業界全体が健全に潤うと思うんですね。

いいたか:
トライバルメディアハウスの池田紀行さんとも「業界を良くしたいよね」ってよく話しています(参照)。いがみ合う必要はない。僕らができない案件でトライバルさんが得意なら、彼らにやってもらったほうがお客さんは幸せになる。

フラットに、得意なところを見て選んでもらいたい。「ここが得意/ここは苦手」って棲み分けられたほうが、お客さんにとってメリットが大きいと思うんですよね。

佐藤:
オールジャパンのように、業界全体で盛り上がって戦ったほうがいい状況が生まれると思う。

この先、私は「書きたい」人たちに伝える局面が増えていくと思いますし、増やしていきたいと思っています。人の原稿を添削している場合じゃないときもありますが(笑)。

いいたか:
ありがとうございます。いい感じで締まった気がします。

佐藤:
ほんとにね、良い世の中になってほしいですよね。

 

今回の「ザ・プロフェッショナル」もお楽しみいただけましたか? 本シリーズでは、今後も各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルをお招きして対談を行ないます。過去の記事はこちらからご覧ください。

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