SNSコラム

「SNSの重要性は、1%にしか認識されていない」西井敏恭×いいたかゆうた #ザ・プロフェッショナル

2021年10月29日
SNSコラム | ザ・プロフェッショナル

各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルとホットリンクCMO・いいたかが、SNSやマーケティング、ビジネスのあり方について考える対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」。

今回のゲストは、株式会社シンクロ代表取締役の西井敏恭さんです。株式会社シンクロ代表取締役、株式会社グロースX取締役CMO、オイシックス・ラ・大地専門役員、GROOVE X 取締役CMOと4社の役員を兼任され、八面六臂の活躍を続けられる西井さんは、いいたかの憧れの人物の一人でもあります。

昨年4月開催のイベント「#NEWWORLD2020」以来、約1年半ぶりの対談となった今回。社会情勢の劇的な変化からマーケティング、SNSについてまで、多くの切り口からお話を伺いました。(執筆:サトートモロー 進行・編集:澤山モッツァレラ[ホットリンク])

 

西井敏恭(にしい・としやす):株式会社シンクロ代表取締役、株式会社グロースX取締役CMO、オイシックス・ラ・大地専門役員、GROOVE X 取締役CMO。2年半をかけ世界一周を経験後、帰国してECからWEBマーケティング、デジタルマーケティングを経て起業。自身が代表を務める会社で10社ほどの企業のマーケティング支援をおこないながら、兼務で数社マーケティング責任者として経営に参画。その間もイエメン、スリランカ、バングラデシュ、パプアニューギニアなどバックパッカーとして旅行を続け、訪問した国は2021年9月時点で142カ国にのぼる。

※本対談はリモートにて収録されました※

1年半で「デジタル化は当たり前」になった

澤山:
いいたかさんと西井さんは、いつ頃から面識があったんですか?

いいたか:
4、5年前からですね。10年前くらいから一方的に知っていて当時、西井さんのイメージは「旅人」でした。後から仕事内容を知って、「この人、すごいマーケターなんだ!」と興味を持ちはじめたんです。

そこで、前職で担当したサイトで『イケてるマーケターを増やしたい! 西井敏恭の連載企画「マーケティングジャーニー」』という企画を立てて出演をお願いしました。それが最初のアプローチだったと思います。

西井:
旅行から僕を知った人って、100人に1人くらいですよ(笑)。今は海外に行けない代わりに、感染対策に気を付けつつ国内を旅しています。今日は、北海道からzoomをつないでいます。

澤山:
西井さんといいたかの対談は、「#NEWWORLD2020」以来約1年半ぶりです。その間に起きた変化で、特に印象的だったことはありますか?

西井:
イベントは、コロナ禍が拡大した直後でしたよね。あれから、社会はものすごく変わったと思います。

具体的には、「デジタル化は当たり前」という空気感になりました。リモートワークの普及は、その典型。「打ち合わせはzoomで」と誰もが口にするし、事前承認を取る必要もなくなりました。

私は2014年に前職を辞め、海外に滞在しながらSkype経由でコンサルティングをしていました。当時から、リモートに慣れない人には「まずお会いしたい」と言われることが多かったですね。ビフォーコロナの日本企業は、「頑張ってデジタル化に取り組もう」程度のムードだったと思います。

この1年半で、「打ち合わせはオンライン」が当たり前に浸透した。これは、非常に大きな変化だと思います。

澤山:
確かに、私自身も特に社内の打ち合わせはオンラインで十分、と考えるようになりました。マーケティング施策の部分では、どのような変化を感じられますか?

西井:
それでいうと、BtoBマーケティングへの意識は大きく変わりましたね。

ビフォーコロナでは、BtoBに真剣に取り組むマーケターは少数派だったと思います。コロナ禍が拡大し、BtoBマーケティングの重要性について認識が高まったことで、相談件数も非常に多くなりました。

いいたか:
従来のBtoBマーケティングは「とりあえずリスティング」「FB広告でセミナーの案内を」といった手法論が多く、マーケティングを全体最適で捉える意識が希薄だったと思います。

例えば、オンラインイベントを開催したら思いのほか大量のリード獲得ができたケースもあります。しかしBtoBマーケティングの知見がなければ、リードがたくさん集まっても有効活用できないんですよね。

西井:
そうですね。反面、僕のところに来る相談を聞くと、デジタル人材の不足はいよいよ深刻だなと思います。以前から少ないと言われてましたが、想像の5倍ぐらい足りないイメージです。

DXに取り組みたいけど、何から始めればいいかわからない企業は多いですね。BIツールを入れたりMAを入れたり、いろいろ導入したけどやり方がわからないと。

さらに、どうデジタル人材を教育すればいいか、どう組織を作ればいいか。弊社には、組織コンサルの依頼もすごく増えています。既存の組織にツールだけ導入しても局所的な「デジタライゼーション」でしかなく、抜本的な変化は起こりません。

DXとはデジタル・『トランスフォーメーション』なので、文字通り変化・変革しなくてはいけない。そういうタイミングに差し掛かっているのかな、と思います。

「共通言語」をどう作るか

いいたか:
2020年8月、西井さんは津下本耕太郎さんと一緒に株式会社コラーニング(現在は「グロース X」に商号変更)という会社を設立されました。

事業内容を拝見し、「西井さんがついに、本気でマーケティング人材を育てはじめた」と思いました。初めてお会いしたときから、「どうしてイケてるマーケターが少ないんだろう、育たないんだろう」っておっしゃられていたので。

西井:
たしかに、ある意味で念願が叶ったと言えるかもしれません。僕は約5年前から、いいたかさんに話していたことをさまざまな場所で口にしてきました。その末に設立したのが、グロース Xです。

従来のEラーニングは、動画での学習がメインでした。しかし動画は、2~3年もするとコンテンツとして古くなることが多いです。「#NEWWORLD2020」の配信も、今見ればある種の古さを感じると思うんです。

いいたか:
そうですね。

西井:
グロース Xが提供するマーケティング学習アプリ「コラーニング」は、チャットのようなコミュニケーション形式を採用しました。ユーザーからリアルタイムでフィードバックをもらい、より良い形へ修正していきます。

これって、SaaSの特性そのものですよね。津下本が、プロダクトをアジャイルに成長させる形を生み出したんです。彼の、類まれなる優秀さを感じます。法人化1年ちょっとですが、導入企業はあっという間に200社近くになりました。7,000人近いマーケター育成を担っており、タクシー広告もたくさん出し、現在はテレビ広告を打てるほど成長しています。

いいたか:
グロース Xさんの動きは、本当にすごい。人材育成って、アセスメントが難しいですよね。何をどうできたら、どのくらいの点数になるのか。僕はそれがボトルネックで、やり切ることができなかったです。

西井:
「コラーニング」というアプリは、僕がコンサルで体験したことをSaaSに落とし込んで開発した経緯があります。僕は起業して7年経っているんですが、5年目になったときにほとんどの会社さんと契約継続いただいてて。

もちろん売上があがっているから継続いただいてるのですが、うまくいっているケースで特に重要になっているのは「共通言語の形成」なんですね。

例えば「LTV(ライフタイムバリュー)を上げよう」と話したとします。でも、LTVの定義は意外と会社や人によって異なります。そこを、ちゃんと詰めていくことが大事です。

言葉一つ一つを精査し、施策に落とし込み、全員が同じ認識を持てるようにする。共通言語化が進めば、議論が活発になり、皆が同じ方向を向けるわけですね。

いいたか:
すごくわかります。重要とはわかっているけれど、なぜ重要なのか理解しているケースは少ない。共通言語があれば、現場サイドでも取り組みを正しいと思えるようになり、モチベーションアップにつながると思います。

西井:
「リピーターを大事にしましょう」ではなく、「2回目に来てくれるお客様の割合を、何%にしましょう」なら共通認識が生まれます。そうしたら「まずは2回目のお客様を増やそう」という行動が生まれ、合格点に達したら次のアクションの話になる。

コラーニングアプリを導入しているお客様からも、「会議がすごくスムーズになった」「経営陣のデジタルに対する理解度が上がり、話が進みやすくなった」という声が多いです。

僕は、よく野球に例えて説明します。ピッチャーが投げ、バッターが振る。当たったら、一塁に走る。野球のルールを誰も知らなければ、ゲームになりません。でもビジネスの現場って、そんな場面がすごく多いんですよね。

1アウト、ランナー1・2塁のときに送りバントをしたら、選手はどう動くべきか? こうしたルールを全員が理解している状態で、はじめて議論が成立するんだと思います。

いいたか:
以前、西井さんに「もし上司が、いいたかくんの話を全然理解できなくて、稟議を上げられなかったら?」って聞かれたことを覚えています。

僕は「辞めます」と答えましたが(笑)、こういう事例って多いんでしょうね。マーケティングという言葉でも、デジタルネイティブと僕らや上の世代とでは認識が違います。

西井:
おっしゃる通り、マーケティングという言葉自体さまざまな定義や意味があります。

以前「マーケティングが嫌いなんです」とある会社の方に言われたんですが、その方にとっては「市場調査」を意味していたんです。彼らは「市場調査しても答えは出ない」と考え、必要ないという結論になっていた。

同じように「デジタルマーケティング」と聞いた瞬間、「EC」を想起する人も多いです。それぞれの定義の正誤が重要ではなく、相互の誤解を解くことが必要。そのために、共通言語はすごく重要だと思います。

今、業績が伸びているからこそ。

いいたか:
1年半の変化のなかで、大変だったことはありますか?

西井:
どうだろう、常に苦労している感じだから(笑)。挙げるとすれば、以下の二つですね。

一つは、「その都度変化する」スキルが求められたこと。コロナが始まり、少し落ち着いてGoToトラベルが始まったと思ったら、再び感染拡大し、GoToトラベルが中断され…。

日々刻々と状況が変化し、やるべきことも変わりました。対応するには、PDCAとは別のスキルが必要でしたね。「都度変化する」こと自体が、マーケターにとって重要な局面でした。

もう一つは、その環境下で会社を動かすこと。戦略立案だけじゃなく、組織を動かすこともマーケターの重要な役目です。リモートワークのなか、どうやって組織を動かすかは大きな課題でした。

いいたか:
ワクチンが普及し、状況が好転したかと思えば、変異株でまた感染者が増加する。今も状況が変化するなか、説明責任がずっと付きまとうのは大変ですね。

西井:
とはいえ、打つ手がないほど困難な状態にある業界も、少なくありませんから。例えば旅行業界は、感染拡大下では何をやっても成果が出づらいでしょう。外食産業の会社さんも、すごく大変だと思います。

この状況下で、「自分たちさえよければいい」とは全く思っていません。今はただ、需要が偏っているだけ。利益を享受する側が、いろいろ考えて実践することが大事だと思います

いいたか:
確かに、おっしゃるとおりですね。

アジャイルなマーケティングを実現できるのが、デジタルの強み

西井:
僕らのようにデジタル領域にいる人間は、世の中の動きをある程度可視化できる点が強みだと感じています。ファクトを提示しやすいと思うんですよね、例えば「SNS上でこういう声が上がっています」「自社のお客様は、こういう状態です」といった話をデータで示せるので。

オイシックスのようにダイレクトでお客様とつながるサービスは、お客様の動きが数値として確認できます。大きな変化があっても、デイリーでトラフィックを見ながら議論ができる。これは、昔なら難しかった部分です。

いいたか:
おっしゃるとおりですね。イメージではなく、ファクトベースで話ができるようになりましたよね。

西井:
ファクトがあることともう一つ、僕はアジャイルでマーケティングをすることが大事だと考えていて。商品を取り扱うメーカーの会社は、開発部でプロダクトを作り、マーケティングで売るというウォーターフォールモデルが一般的です。

でも顧客起点で考えれば、お客様の動きに合わせてメッセージを変えたり、プロダクトを変更できるほうが強い。変化の激しい時代においてはアジャイルに作るという点が、デジタルマーケティングではすごく重要だと思っています。

この1年、「オイシックスすごく伸びてますね」という声をたくさんいただきました。なぜ業績を伸ばせたかというと、毎月のようにいろいろなアップデートを行なった結果です。

放っていても契約農家さんが作れる野菜は限られていますし、配送センターのキャパシティもいっぱいになる。細かくアップデートし続けた結果、結果的に売上が伸びました。こういうスピード感は、従来の組織ではなかなか実現できなかったと思います。

イケてるマーケターは増えている?

いいたか:
「マーケティングジャーニー」の連載から、約3年が経過しました。あれから、イケてるマーケターは増えたと思いますか?

西井:
増えたと思います。この3年で、マーケティング自体の重要性も飛躍的に高まりました。結果、社内の重要な人材をマーケティング部に据えるケースが増えたのが要因のひとつだと思います。

スタートアップは年々増え、資金調達もやりやすくなりました。結果、今までなら大企業を選択していた優秀な若手が、スタートアップを選ぶようになりました。

また、今のスタートアップ企業の経営者さんって、マーケティングにめちゃくちゃ詳しい人が多いんですよね。マーケターがトップを務める会社が増え、優秀な人材も「マーケティングを学んで実践したい」と思うようになった。そういう変化が、この3年で起こったんじゃないかと思います。

いいたか:
最近のスタートアップは、設立当初からうまい仕掛け方をしていますよね。昔のように「一発花火をあげる」みたいなケースとは違う。しっかりと事例を作って、グロースさせていく手法が増えてきたと思います。

西井:
今のマーケティング業界は、非デジタルの人がメインだった時代から、デジタル中心に完全に移行していますね。

エンジニアやセールスからマーケティング職に移行するなど、多彩なキャリアの持ち主がマーケティングを勉強し、マーケティングドリブンで会社を立ち上げる。そういう流れが増えていると思います。

SNSは、マーケティング戦略の中心に立っている

いいたか:
ホットリンクのマーケティング施策について、西井さんはどんな感想をお持ちですか?

西井:
まず、いいたかさんの著書『僕らはSNSでモノを買う』は素晴らしいと思っています。お世辞じゃなく、本当に勉強になりました。

僕自身、SNSに対する考えがあいまいだったところに、「ULSSAS」という概念を提唱されたことによって明確にフレームワーク化ができました。

今の時代、SNSはこれまで以上に重要になりました。ただ、僕も古いSNS観からアップデートできていなかった。そこを啓蒙してくれたのが、あの書籍でした。ホットリンクのコンテンツには、すごく勉強させてもらっています。

SNSは、現時点でマーケティングど真ん中の施策だと思います。にもかかわらず、世間ではその認識が薄い。

いいたか:
そうですね。

西井:
キャズム理論でいうと、まだまだイノベーター層のところだと思います。一部の人だけが「SNSマーケティングすごく大事だよね」と言ってる状態で、全体の1パーセント程度しか重要性を認識していない。

今後、その認識が広がってアーリーアダプター層を巻き込むとき、ホットリンクさんは自社のプロダクトをどうやって磨くかが重要になると思います。外部向けのプロモーションはもちろんとして。

いいたか:
おっしゃる通りだと思います。実際に、僕たちも外と内の施策を同時に進めています。現時点で、お客様の満足度は驚くほど高い状態です。

西井:
これは同じ話なんですが、僕の大好きなお店があって。毎日10人程度のお客様が通うような、小さな店です。そこはSNSでお客様とつながって、コロナ禍でも売上を伸ばしているんです。

SNSでは、世界を代表する企業がトレンドになることが多いですよね。でも、こうした小さな飲食店のSNS活用事例にこそ、SNSマーケティングのヒントがある気がしますね。会社の規模に合わせたSNSの使い方は、必ずある。

いいたか:
SNSマーケティングとして取り上げられる事例の多くは、いわゆる「バズコンテンツ」でした。そこばかりに目が行くと、飲食店などは「うちではできないな」となってしまいます。

でも個人経営のお店なら、全国チェーンの数百万分の1フォロワーで商売が成り立ちます。僕の知り合いの美容師さんはInstagramで6,000人くらいのフォロワーを獲得し、そこ経由で毎月100万円以上の売上を立てています。

西井:
そういう戦略を体系立ててわかりやすくしていくことが、業界として重要かなと思います。それがない限り、SNSは「ニッチなマーケティング手法」と思われてしまう気がしますね。

本当はど真ん中なのに、そう思われるのはもったいないな、今後の課題なんじゃないかな、って勝手ながら思いました(笑)。

いいたか:
ありがとうございます。まさに、ですね。

若手が見るべき「マーケティングのロールモデル」

澤山:
最後に、西井さんから見て「マーケターにとってのロールモデル」とすべき方がおられたら教えてください。

西井:
若い世代にとって、P&Gに在籍していた森岡毅さん・足立光さん・西口一希さんは素晴らしいロールモデルになると思います。

世界最大のマーケティング・カンパニーと評されるP&Gで戦ってきた経験があり、かつ、現在も常にチャレンジを続けている方々です。

素晴らしいと思うのは、3人とも当時ベンチャーだったP&Gでマーケティングの基礎スキルを習得して、その後実践を繰り返して、そして今はそれぞれが別々の強みをもっていろんな企業で活躍されています。

お三方を見ているとマーケティングはセンスや才能ではなく、後天的なスキルとして培われるものだと強く思わされます。P&Gには、素晴らしいマーケターが育つ環境があるんでしょう。僕たちも、そういった環境づくりをしなければと思います。

また、お三方の名前を出したのは皆さんそれぞれ得意なフレームワークを持っていること。森岡さんは統計学を有効活用し、足立さんはPR(SNS含む)や組織論に精通し、西口さんも9セグやN1分析などすごいフレームワークをお持ちです。

さらに、常に新しい環境に身をおいてチャレンジし続けている。マーケターは常にお客様と向き合っていかないといけない仕事なので、彼らのようにチャレンジできる環境に身を置くことが重要だと思います。

いいたか:
すごくわかりやすいです。

西井:
いいたかさんも、SNSに特化することで自分の色が出ていますよね。全員が同じ顔をするのではなく、それぞれの環境でチャレンジし続けた結果、自分の色が出せるようになる。それを目指していけば、いいマーケターになれるんじゃないかなと思います。

 

今回の「ザ・プロフェッショナル」もお楽しみいただけましたか? 本シリーズでは、今後も各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルをお招きして対談を行ないます。過去の記事はこちらからご覧ください。

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