※こちらの記事は2019年11月に社員の個人noteで公開された記事をベースに加筆修正を施しています。
Instagramの利用者は全世界で10億人、日本でも3,300万人を突破し、まさに破竹の勢いでユーザー数が伸びています。
Instagramの公式ブログによると「発見タブ」を月に1回以上閲覧するユーザーは50%を超えているそうです。
FacebookがInstagram発見タブのレコメンドシステムについて公式に発表していたので、今回の「#まなぼうSNS」では、その内容を解説したいと思います。
また、ホットリンクでは、Instagram運用の戦略策定から施策の実行まで伴走支援しています。日々の運用でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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Instagramの「発見タブ」とは?
「発見タブ」は2012年にInstagramに追加された機能で、画面下の虫眼鏡アイコンをタップすると表示されます。

Instagramのフィードやストーリーズは人軸でプライベートなコミュニケーションのために使われることが多いですが、発見タブはユーザーの興味関心軸で投稿やアカウントを発見する場になっています。
発見タブの構成は大きく分けて2つです。
①検索
検索窓にハッシュタグやアカウント、スポットの名前を入力することで知りたい情報について能動的に探索することができます。

「ググるよりタグる」といわれるように、特にビジュアル検索において主要な検索エンジンの1つとして使われています。
②レコメンド
検索窓の下に、グリッドでユーザー行動を基にしたレコメンドが表示されます。
検索は「知りたいことがわかっている」タイミングで利用するのに対して、レコメンドはセレンディピティ(偶発的な発見)の場所として利用されています。
ホットリンクが支援しているいくつかのInstagramアカウントでは、ハッシュタグ経由の流入の存在がかすむほど、発見タブレコメンド経由の流入が爆増しているケースが見られます。
リーチの観点からいえば、非常に重要な機能です。
このレコメンドに表示される投稿が、どのようなアルゴリズムで決定されているのかを解説します。
アカウント埋め込み
Instagramでは「Embedding(埋め込み)」という方法で、投稿単位ではなくアカウント単位でアカウント同士のトピック類似性を特定しています。
アカウント埋め込みには「Ig2vec(アイジーツーベック)」というフレームワークが使われています。
自然言語処理において使われる「word2vec(ワードツーベック)」というフレームワークが、文章の文脈に基づいて言葉の重み付けを学習するのと同じで、Ig2vecでは単語の代わりに「ユーザーが関わりを持ったアカウントID」を扱います。
例えば、Instagramアプリ上の1セッションで、あるユーザーが連続で複数のアカウントにいいねをしたら、それらのアカウントたちはトピック的に関連性が高いと判断します。
このテクニックによってInstagramは「ユーザーがどのアカウントに対してインタラクトしそうなのか」を予想することができるのです。
蒸留モデル
Instagramが採用している複雑なランキングモデルで処理される、候補の「インプット情報」と「アウトプット情報(ランキング結果)」を記録し、シンプルなニューラルネットワークモデルを使って結果を複製します。
この工程でランキング候補を絞っておくことで、複雑なランキングステージにおいて複数のパラメータをチューニングしたり、複数のモデルを保持する必要性を最小化することができます。
Sourcing StageとRanking Stage
数十億の投稿から発見タブに表示する投稿を25程度に絞る工程は、大きく2つに分かれます。
・Sourcing Stage
・Ranking Stage

図表:ホットリンク
Sourcing Stage(候補生成ステージ)
① ユーザーが過去に接触(いいねや保存など)をした「Seed Accounts」と呼ばれるアカウントを洗い出す
② アカウント埋め込みを用いて①の類似ユーザーを抽出する
③ ①と②のユーザーの投稿を一人あたり数千くらい抽出
④ そのうち500をサンプリングして次のランキングステージに渡す

図表:ホットリンク
Ranking Stage
Sourcing Stageで抽出した500の候補に対して、ランキングの妥当性と情報処理効率のバランスをとるために、3つのランキングステージを用います。
①ファーストパス
さきほど説明した蒸留モデルを用いて、下記に挙げるセカンドパス・サードパスの工程を真似た処理をし、500の候補のうち150の高品質のものに絞る
②セカンドパス
「ライトウェイトニューラルネットワーク」を用いて最も関連性の高い50まで絞る
③サードパス
「ディープニューラルネットワーク」を用いて最も関連性の高い25まで絞る
セカンドパスとサードパスにおいて、最も関連性の高い候補を選択するために、Instagramは”multi-task multi-label (MTML) neural network”を用い、
・それぞれの投稿に対するいいねや保存などのポジティブなアクション
・「このような投稿の表示を減らす」といったネガティブなアクション
など、個々のアクションを予測します。
“The shared multilayer perceptron (MLP)”によってユーザーの異なるアクションから共通のシグナルを見出すことができるのです。

図表:ホットリンク
コンテンツの関係性を判断する上で、異なるシグナルを捉えるために”Value Model”と呼ばれる計算式を用いて異なるイベントの予測を一体化しています。
[w_like * P(Like) + w_save * P(Save) - w_negative_action * P(Negative Action)]
上記のような予測の加重を用います。
例えば、発見タブにおいて保存はいいねよりも重要度が高いと考え、保存アクションの重みづけを上げています。
一方で、新しい発見をする場として発見タブが機能するためには「顕在化している興味」と「新しい発見」のバランスをとる必要があります。
Value Modelに、同じ投稿者や同じシードアカウントによる投稿にマイナスポイントを付与するルールを追加して、同じアカウントからの投稿ばかり表示されてしまわないようにしています。
ユーザーが同じアカウントからの投稿を見るほど、そのアカウントに対するペナルティーが大きくなる仕組みです。
フォローされなくてもエンゲージユーザーの母数を増やす
レコメンドアルゴリズムを踏まえた上で、どういった対策をすればいいのかを考えたいと思います。
① ユーザーが過去に接触(いいねや保存など)をした「Seed Accounts」と呼ばれるアカウントを洗い出す
と上述したように、ユーザーにエンゲージしてもらえればSeed Accountになれます。
過去にエンゲージしたユーザーの母数を増やすシンプルな施策が大事です。
例えば、このような施策が考えられるでしょう。
・ハッシュタグ上での露出を最大化するためのハッシュタグPDCAを回す
・1投稿あたりのリーチ数とエンゲージメント率を高めるためのクリエイティブ改善を回す
・投稿の回数を増やす
・投稿をブーストする広告で広くエンゲージメントを集める
アカウントのテーマ性をInstagramに伝える
② アカウント埋め込みを用いて①の類似ユーザーを抽出する
発見タブにおいては、投稿単位ではなくアカウント単位でトピック類似性を特定して候補を生成している点に、最も注目すべきではないでしょうか。
Instagramは以下の項目を見てアカウントのテーマ性を特定しているのではないかと推測します。
① どういうプロフィール設定か(プロフィール文、カテゴリの設定)
② どういうコンテンツ(画像、動画、キャプションの文字、ハッシュタグ)を投稿しているか
③ どういうユーザーにフォローされているか
④ どういうユーザーをフォローしているか
⑤ どういうユーザーにエンゲージされているか
⑥ どういうユーザーやアカウントにエンゲージしているか
●テーマに一貫性がある投稿を続けること
●テーマに共通性があるユーザーと繋がること
この2点を意識することで、Instagramにアカウントのテーマ性が伝わりやすくなり、ターゲットユーザー層の発見タブ表示候補に含めてもらえる確率が高まると考えられます。
「保存されるコンテンツ」とはなにか?
公式発表にもあったように、発見タブでは候補アカウント抽出後のランキング過程において、保存が重視されています。
発見タブレコメンドやハッシュタグトップのような興味関心軸に基づく発見の場所においては、保存のような「実益目的」のシグナルがより一層重視されている可能性があります。
一方、フィードやストーリーズのようなプライベートな使われ方がされている場所では、いいねやコメントといった「コミュニケーション目的」のシグナルが重視されているのだと推測されます。
ランキング過程で上位に選ばれるためには、「潜在顧客層はどういうコンテンツなら保存して後から見返したいと思うか?」を考え、コンテンツ制作をするのが大事です。
顧客のニーズやインサイトを理解して、ユーザーの便益を最大化するコンテンツ内容や投稿フォーマットを考えていきましょう。
レコメンドの重みづけは常にテスト・調整される
現在、発見タブレコメンドでは各投稿に「投稿が表示される理由」が表示される仕様になっています。
複数のアカウントで表示されている理由を見てみたところ、以下の項目を確認できました。
・これまでに見た動画に合わせたおすすめ
・「いいね!」した投稿に合わせたおすすめ
・「いいね!」した写真に合わせたおすすめ
・保存した投稿に合わせたおすすめ
・アクションを実行した投稿と同じような投稿
・アクションを実行したアカウントと同じようなアカウント
・フォローしているアカウントによるおすすめ
・Instagramのおすすめ
・おすすめ
アカウント候補生成後のランキング生成ステージにおいては、重みづけや切り口を変えて様々なレコメンドをし、反応を見ながら調整していることがわかります。
たとえば、以下のような切り口が考えられます。
①エンゲージメントの種類によるレコメンド
・閲覧
・いいね
・保存
・アクション全体
など、エンゲージメントの種類によって重みづけを変えたレコメンド
②投稿フォーマットごとのレコメンド
・写真
・動画
・投稿すべて
③フォローしているユーザーが好反応を示している投稿
「協調性フィルタリング」を用いて、フォローしているアカウントが好反応を示している投稿をレコメンドしていると思われます。
④年齢や性別など属性データによるレコメンド
「おすすめ」「Instagramのおすすめ」は年齢や性別などの属性データを元に、同じクラスタのユーザーがどのような投稿に好反応を示しているのかを抽出し、レコメンドをしているのではないかと推測します。
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