SNSコラム

アットコスメ編集長と語る、ごまかしの効かない時代を生き抜く方法 #ザ・プロフェッショナル

2021年03月29日
コスメ業界向け | ザ・プロフェッショナル

各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルとホットリンクCMO・いいたかが、SNSやマーケティング、ビジネスのあり方について考える対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」

今回のゲストは、株式会社アイスタイルが運営する日本最大のコスメ・美容の総合サイト「@cosme(アットコスメ)」編集長の篠田慶子さんです。

1999年にオープンして以来、美容のクチコミサイトとして圧倒的なクチコミを生み出し続ける「@cosme」。月間UUは1450万人、会員数は650万人(2020年12月時点)を超えます。現在は実店舗やECの運営、メディアとしての発信なども強化しており、クチコミサイトから「美容のプラットフォーム」に進化しつつあります。

今回はホットリンクの美容好きライター・「私がエレン」も参加しつつ、「@cosme」創業当初から揺るがない運用ポリシーや、クチコミへの向き合い方について語っていただきました。

篠田慶子(しのだ・けいこ)。早稲田大学卒業後、ファッション誌・フリーペーパーでスタイリスト、編集者を経たのち、Webメディア編集長の複数経験。現在は株式会社アイスタイルにて「@cosme」の編集長を務める。

ユーザーとブランドの分断が起きたコロナ禍 「@cosme」が選んだ道

私がエレン:
「@cosme」さんは、総合サイトを基盤にTwitterやinstagram、Facebook、LINE、YouTubeなどSNSを幅広く活用されていますよね。

篠田:
そうですね。SNSの中では、とくにTwitterとInstagramに注力しています。
Twitterでは、サイトの新着コンテンツを発信しています。現在の「@cosme」はクチコミだけでなく、各ブランドのブログ、ユーザーのブログ、編集部が作成した記事など、さまざまなコンテンツがあります。リアル店舗の「@cosme STORE」やECの「@cosme SHOPPING」からも情報発信しており、それらをTwitterに流しています。

Instagramはビジュアル重視で、フィードに投稿する画像に関しては「@cosme」の世界観を崩さないことを意識しています。昨年6月からは、Instagramでのライブ配信もスタートしました。

ライブ配信では、ユーザーさんが知りたいであろう新商品情報などをお伝えしています。

いいたか:
ライブ配信を始めたのは、コロナの影響でしょうか。

篠田:
そうです。「@cosme」の役割は、ユーザーさんとブランドさんをつなぐところにあります。

昨年4月の緊急事態宣下で、店舗で商品を試すことができなくなりました。気になる商品があっても自由に試せなくなったユーザーさんに対して、自分たちは何ができるか考えたんです。

店舗以外の場所で、ユーザーさんとブランドさんをどのようにつなげればいいか。すぐにできるのは、Instagramでのライブ配信だろうなと。
最初は編集部の企画として手探りでスタートしたのですが、幸い各方面から嬉しい声をいただいて。昨年秋ごろから、ブランドさんや美容系メディアからお問い合わせをいただき、コラボが増えました。

いいたか:
他のメディアからも依頼がくるのはすごいですね。

篠田:
「@cosme」はあくまでプラットフォームであって、メディアではないんですよね。自分たちの意見を表明するのではなく、「『@cosmeユーザーは』この商品が良いと言っていますよ」など、クチコミ情報の発信に徹しています。
スタンスの違いがあるので、美容メディアとはバッティングしにくく、むしろコラボしやすいんですよね。

ブランドさんからご依頼いただけるのは、「@cosme」のユーザー属性にも要因があります。「@cosme」のユーザーさんは、商品の使い方を正しく理解したいなど、真面目に美容に取り組んでいる方が多いんです。そのような方に情報共有したいブランドさんからよくお声がけいただきますね。

クチコミの効果は、フォロワー数と連動しない

いいたか:
確かに、「@cosme」には商品をしっかり使った上で真面目にレビューされているユーザーが多いと感じます。長文投稿も、参考になるコメントも多い印象ですね。
ユーザーがクチコミを投稿するモチベーションは、どこから生まれているのでしょうか?

篠田:
自身のログとして記録されている方が多いですね。例えば1回投稿して一年後に「こんなふうに評価が変わりました」と投稿される方も多く、経過観察用に使われている場合も。

私がエレン:
面白いですね。良くも悪くも、SNSでは承認欲求が投稿の原動力になる傾向がありますが、そういった設計ではないんですね。

篠田:
「@cosme」には、一般的なSNSのように、いわゆる承認欲求を満たすための装置があまりないんですよね。クチコミは基本的に匿名で、誰が言っているかはそこまで重視されない設計になっています。

篠田:
つまり、SNSのようなインフルエンサーは生まれにくいんです。ユーザー同士のフォローや投稿へLikeできる機能はあるものの、ユーザー間でメッセージを送ったり投稿にコメントをつけたりすることはできません。

いいたか:
あえてそのような設計にしているんですか?

篠田:
そうです。クチコミを書きたい人が書いて、読みたい人が読む純粋な空間を保つためです。承認欲求を満たす装置が充実し、インフルエンサーが生まれたら「@cosme」らしさが失われてしまいます。

個人的には、インフルエンサーの力は徐々に弱まっていると感じています。
インフルエンサーのように特定の誰かが発信する情報よりも、純粋に「信用できる情報」にフィーチャーされていくのかなと。「@cosme」が目指すのは、まさしくそこです。素性はわからないけど、年齢や肌タイプが同じ人が真面目に投稿していたら、つい見たくなりますよね。

いいたか:
クチコミに対する考え方とか、インフルエンサーの影響力が弱まっているという意見に関して、僕も前から同じようなことを言い続けてます。

クチコミって、フォロワーなど「数」を多く持っている人が発信するから効果が高いわけじゃないんですよ。例えば、学校のクラスってファッションに詳しい人もいればグルメに詳しい人もいますよね。そういった一定のコミュニティ内で出ることが有効だと考えています。

今の時代、情報の99%は届かないと思っておいた方がいい。情報爆発が起きてしまっているんです。だからこそ、井戸端会議が盛んだった時代に戻っているという考えを僕は持ってます。

これまでの情報伝搬は、マスメディアが発信側で、一般人が受信側という非対称的な構造でした。今は、情報の発信側と受信側が、近所で井戸端会議が行なわれていた時代のように、フラットになってきている。ずっと前からその話を伝えているんですが、篠田さんのお話を聞いていたら感覚近いなと。

篠田:
うんうん、感覚近いです。

いいたか:
僕はまず、「インフルエンサー」という言葉が良くないと思っていて。

いいたか:
当社もいろんな方とのコラボ企画を実施しているのですが、ゲストをアサインする際は、フォロワー数はほとんど見ていないんですよ。フォロワーが300人でも「密度の高いコミュニティに所属しているか?」が大事なんですよね。

そのゲストが発信する情報の伝搬を見ることの方が、よほど重要な観点だからです。

たとえば、誰もが知っているタレントがTwitterで「新発売のチョコ美味しかった!」と投稿したとします。一見効果が高そうなクチコミに見えますが、これって「再現性がないクチコミ」なんですよ。そのつぶやき以降、彼ら彼女らが自社商品のクチコミを出してくれることは、今後限りなくない。
「フォロワー数が多い人が出すクチコミ=影響力が高い」と定義できない理由は、このあたりにあると考えています。

篠田:
なるほど。あと、今のユーザーさんは情報の嘘っぽさにより敏感になっていますよね。若ければ若いほど「ステマっぽい」「サクラっぽい」と気付きやすい傾向にあると思います。

いいたか:
同感です。それでいうと「@cosme」さんには嘘やサクラのにおいがしない、「正直な情報」を求めに来る人が多い印象がありますね。

篠田:
ユーザーさんの正直な声が集まっているのは、そうだと思います。
毎年発表している「@comse ベストコスメアワード」があるんですが、これはあらゆるデータを元に算出しているんです。ECでの販売数、商品ページの閲覧数など、多種多様なユーザーデータが根拠になっています。つまり、ユーザーのリアルを限りなく反映しているんです。データドリブンを元にしたコンテンツを発信している点が、ユーザーさんに信頼して頂いているひとつの要因かもしれません。

クチコミで低評価がついても恐れる必要はない

いいたか:
現代の購買行動をどう捉えられているかも伺いたいです。
SNSやレビューサイトが台頭した今、Google検索だけでなく、SNS検索にシフトしているユーザーもいるんですよね。購買行動に関しても、SNSで出たクチコミ(UGC)を起点に購買が発生するモデルへと転じ始めています(※1)。

(※1)ホットリンクはこれを「ULSSAS」と名づけ、SNS時代の購買行動モデルとして提唱しています。

ULSSAS(ウルサス)とは|メソッド

こうした変化の流れがあるなかで、「@cosme」ユーザーはどのような購買行動をされているのでしょうか。

篠田:
「@cosme」のユーザーさんは、気になる商品のSNS上でのクチコミも「@cosme」の投稿も、くまなく見ていらっしゃる傾向がありますね。納得するまで情報を調べたい方が多いです。

特に現在はコロナ禍の影響で経済状況がシビアになっている方も少なくないので、お金を払う際に「失敗したくない」心理がより強まっていると思います。

興味深いのは、「高いから買わない」ではなく、「安くても失敗したくない」気持ちが強いことです。高価格でも自分が満足できるかが大事なんですよね。

篠田:
購買行動の流れとしては、気になる商品をTwitterやInstagramで発見したら、各SNSで商品のレビューを検索し、商品名を検索して「@cosme」に流入。クチコミ投稿を読み込み、ランキングも確認して、「@cosme SHOPPING」や店舗で購入、というパターンが多いと思います。
入り口はSNSで、購買に至る最後のひと押しを「@cosme」が担っているイメージです。

私がエレン:
「@cosme」ユーザーにしても、やはり購買の入り口をSNSにされている人が多いんですね。ULSSASとの共通項を感じます。ただ、「@cosme」で低評価がついていたら、逆効果になってしまうこともあるのでしょうか。

篠田:
実は「低評価が多くても買う」方もかなりおられます自分と合うかどうかが重要であり、全体の評価が低くても、自分と近い人が「良い」と言っていれば購入するんですよね。

ユーザーさんからよく、「評価の低いクチコミも見ている」とお聞きします。高評価も低評価も、あくまで自分に合っているかどうかを判断する材料と捉えられているのかなと。
ブランドさんとしても、低評価を怖がる必要はないと思いますよ。

いいたか:
昨年はブランド企業も変わらざるを得ない一年だったと思いますが、「@cosme」との連携で、何か変化はあったでしょうか。

篠田:
小売しか販路がなかったけど、ECに踏み出したブランドさんが増えました。「オンラインでこのブランドが買えるなんて嬉しい」というお声をたくさんいただきましたね。

また、「@cosme」が提供しているオンラインビューティプログラム(各ブランドの美容部員による無料のオンラインカウンセリング)に取り組むブランドさんも増えました。
気になる商品を選択し、そのサンプルを自宅にお届けして、届いたころにオンラインで美容部員が使い方を伝える、という内容です。オンラインだと気兼ねなくすっぴんになれるので、たくさんの方に喜んでいただいています。

あとは、ブランドさんと編集部とでサンプルプレゼントの企画も立ち上げました。いろんなブランドさんのサンプルをセットにして、プレゼントする企画です。
店頭に行かなくなると、サンプルをもらえる機会も減ってしまいますよね。ユーザーさんと商品が出会う場を増やしていきたい、という思いで始めたものです。大変好評につき、現在も継続しています。

いいたか:
実店舗、EC、メディアのすべてがしっかり連携できていて、理想的なオムニチャネルを形成されているように思います。ブランドとユーザーをつなげる役割に徹しているんですね。

篠田:
ありがとうございます。「@cosme」は、ユーザーさんが自分に合った商品をスムーズに見つけられるように設計している美容プラットフォームです。いかに心地よく「@cosme」を使ってもらえるかに主眼をおき、連携を強化してきた一年でした。

業界人ほど、業界外の情報を摂取するべき

いいたか:
最後に、篠田さんから美容業界のマーケターや美容ブランドのSNS担当者に向けてメッセージをいただきたいです。

篠田:
信頼関係の構築に尽きると思います。信頼を構築するためには、まずは良いものを提供するところから始まります。

ブランドさんの場合だと、自社の製品がちゃんと信頼に足るものなのかが重要です。今後は、成分や商品コンセプトがよりシビアに見られる時代になるでしょう。
商品の詳細を調べられた際、最後まで正直でいられるか。心から良いと思って作った商品なのか。自らに問いかけて、自信を持って「良い」と思えてはじめて、お客様との信頼関係を構築する土台が整います。

もうひとつ重要なポイントしては、「傾聴」です。自社のユーザーになりうる方たちの声に耳を傾けるんです。

やってしまいがちなのは、美容業界のマーケターという前提を持ったまま耳を傾けること。

篠田:
美容業界にいると、ずっと美容のことを考えていて、それが当たり前の感覚になりがちです。でも、業界外ではそんな人ほとんどいませんよね。

24時間美容のことを考える人はいない、という前提を理解した上で、「普通の人が1日の中で美容に接するタイミングはいつなのか? 美容を通じて嬉しくなる時はどういう瞬間なのか?」を考えるようにしています。
業界の方であれば、あえて美容から離れることも大事だと思います。

いいたか:
メディアと企業の距離が離れつつある中で、「@cosme」さんのような、プラットフォームとしてユーザーと企業をつなげる役割は、今後さらに貴重になってくると思います。美容業界だけでなく、不動産などあらゆる業界で起こってほしい動きですよね。

篠田:
実は、創業者の吉松は当初からプラットフォームを想定していたんですよ。ただ、生活者にとってクチコミとしての機能がインフラのような存在にまで浸透したことで、イメージからの脱却が難しかったんですね。この数年で、ようやくプラットフォームに近づいてきたなと実感できています。

私は、会社は「情報の民主化」に向かっているのではと考えていまして。そのビジョンを、今は美容カテゴリで実現しようとしているのではないかと。

性別や年齢に関係なく、興味があれば、どなたでも自由に美容の情報発信ができるし、商品も購入できる。「@cosme」はそういう場に向かうと思っています。実際、店頭には男性のお客様も増えていますしね。

いいたか:
やはり男性ユーザーも増えているんですね。

篠田:
そうなんです。まだしばらくは「メンズ美容」と銘打っていく必要はありますが、本当はそのような打ち出し方もしたくなくて。「こうあるべきだ」ではなく、あくまで皆さんが自由に美容を楽しめる場を提供していきたい。

トレンドを押し付けるのではなく、ひとり一人に合った美容を見つけてほしいというスタンスは、貫いていきたいですね。

――篠田慶子さん、本日はお忙しいところありがとうございました。

 

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