ホットリンクはこれまで、ゲストや参加者の方々とお酒を飲みつつSNSやマーケティングについて学ぶ「#ノミナー」を開催してきました。
しかし新型コロナウイルスの影響でイベントは延期に。「今だからこそ楽しく学べる場所を、皆様に提供できないだろうか」と模索した結果、新企画「#バズらない話をしようか」がスタートしました。
本企画は、いいたかゆうたがマスターをする都内某所のBar「#ダークソーシャル倶楽部」にゲストをお招きし、SNSやマーケティング、ビジネスについて語り合うオンラインイベントです。
2020年7月28日の配信では、アナグラム代表取締役の阿部圭司さんと謎のツイッタラー、jigen_1さんがダークソーシャル倶楽部を訪れてくれました。
会場にはzoomで参加可能な「特別枠」の皆さんと、アシスタントとしてkeniamarilia(当日いいたかが着るシャツを手がけた)の座波ケニアさんも参加。
協賛はオリオンビール様とスナックミー様。ご提供いただいたお酒・おつまみを楽しみました。
普段顔出しをしていない、jigen_1さんがリアルタイム配信でどう映り込むのか。配信パートナーであるシングメディアの協力のもと、普段のセミナーでは聞けないNGすれすれな会話が飛び交いました。長年にわたって会社を経営されてきた阿部さんとjigen_1さんだからこそ語れる話にも注目です。
5年かかって立証された、jigen_1さんのソーシャル・ビジネス論
いいたか:
ひとつ目の質問は、第一回に参加してくれたFREE WEB HOPE代表の相原ゆうきくんからのもので、「二人が仕事で泣いた話」を聞きたいです。嬉しかったことでもいいし、辛かったことでも。
jigen_1:
中小企業の経営者をやっていると、オーナーの仕事の90%は資金繰りなんだよね。ファイナンスの問題で、乗り越えたり乗り越えられなかったりしたことが一番きつかったかなあ。
売上は伸びているのに、それに資金が耐えられない。そんな忸怩たる思いをすることがあるんです。
いいたか:
阿部さんはどうです?
阿部:
泣いたことはないですね。なんで仕事で泣かねばならんのかという感じ。
でも悔しいはいっぱいあります。jigen_1さんと同じで、キャッシュフローに関しては「1ヶ月後に会社が潰れる」って臨場感は、何度も味わったことがある(笑)。
いいたか:
だから僕は、自分で会社はやりたくないです(笑)。そもそも、おふたりってどう出会ったんですか?

阿部:
入り口はTwitterですよね。たまたま地元が近いというのあって。とある起業家を助けるために「一緒に仕事をしましょう」となったのが始まりだと思います。
約5年前だったと思いますが、当時はまだソーシャルメディアに関するビジネスの話題は少なくて。僕も懐疑的でした。ですが、jigen_1さんの話を聞くと「これはホントに起こることなのかも」と考え直したんです。
実際に一緒に仕事をして、彼が言ったとおりのビジネスの変化が起こった。5年かけて彼の話が立証されたことが衝撃的でした。
「人を大切にする」って、どういうこと?
いいたか:
おふたりが会社経営で大事にしていることはなんですか?
阿部:
いっぱいあります。でもひとつ挙げるなら「整合性」かな。言っていることに嘘がないというか、正直さというか。ブレていいことはなにもないです。
いいたか:
僕と阿部さんは2011年頃に出会ったんですが、たしかにあれから言っていることは変わらないですね。当時僕に言ってくださった「若いうちはお金はどんどん使え」って言葉を大事にしたら、人生が豊かになった。正しい投資ができたと思っています。
jigen_1:
私は人かな。自分はずっと営業で生きてきたから、今から事業を興して半年で粗利5000万にしろって言われてもできると思う。けれど、それ以外は何ひとつできない。
昔から新しいビジネスを興すときは、私に足りないものを持っている人材を集めるところから始めてきました。

いいたか:
会社経営では「人を大切にする」ことがよく語られる気がします。おふたりにとって、人を大切にすることの定義や、具体的な指針はありますか?
阿部:
ホントに人を大切にしたいのなら「優しくしない」ことじゃないでしょうか。刹那的に仲良くしたいならいいけど、その人の10年後を思うなら、厳しく言わないといけない場面が必ず出てきます。
jigen_1:
今の時代、一歩間違えると「パワハラ」と言われてしまうから難しいところでもあるよね。でも実際に経験則を持たせるには、厳しく言わなきゃダメなこともある。
私は失敗に対しては怒りませんが、挑戦しない社員には結構怒ります。「部下の失敗を許容できないのなら、そもそもマネジメントをするな」という考えです。
僕も阿部さんも、これまでの仕事でたくさん失敗しています。言葉を選ばないのなら「お前ごときが失敗をおそれるな」と。失敗したときに社員を許容できるかが、優しさじゃないかな。
いいたか:
サッカーで一番の恩師と呼んでるコーチがいるんですが、現役時代は彼のことが大嫌いでした。「お前はこれが間違っている」って、めちゃくちゃ厳しいことを指摘してくるんです。
でも引退してフタを開けてみると、彼の話は100%正しかったと思います。僕はこれまで6社の企業を経験していますが、厳しいことを言ってくれる人は裏に優しさがあって、今もよく覚えていますね。もちろん、感情のままに怒るのとは違いますよ。
30歳になる手前で、彼ら・彼女らの言葉はその瞬間には理解できないけれど、未来につながるものなんだって気づきました。

これからのマーケターに必要なこと
いいたか:
YouTubeからも質問がきているので見てみましょう。
座波:
「中堅マーケターが成長するうえで必要なことはなんですか?。あるいはマーケターがこれから成長するうえで、必要なスキルを教えてください」とのことです。
阿部:
マネジメントじゃないですかね。マーケターって「自分のスキルをどう上げるか」に固執しているイメージがある。そんなことよりも、身近な人とうまく仕事をする方がめちゃくちゃ大事です。
マネジメントを嫌がる人は多いんだけど、なぜみんながそんなに、ひとりで働きたがるのかがよく分からないんです。歴史上、人間は集団でしか生きられないと結論づけたことはよく考えたほうがいい。マネジメントって、実はすごい素晴らしい仕事なんですよ。うまくいけば、ひとりではできない大きな仕事にも着手できます。

jigen_1:
もし質問者の方が「中堅マーケター」という存在なら、今までの手法をディスラプト(破壊)しないといけないかなと。
アフターコロナの時代、これまでの手法はほぼ通用しません。これから多くのメディアは衰退するだろうし、既存のマーケティング手法はAIに取って代わられる。
私がデジタル広告代理店にいたとき、上司や先輩はみなCPA(Cost per Acquisition)ばかりを指標に働いていました。その基準を変えられなくてね、お客様の要望がそこじゃなくても一点張りで通してしまう。けれど自分が上にあがって、抽象度の高いマネージャーになったとき、若い世代の常識はすでにお客様が言った側に変化している。
部下が理解できない旧来の手法ばかりを教えたって、疑問が残るばかりです。プレーヤー時代に身についたフィルターで、世界を見るのをやめましょう。
自己否定せずに「昔からこうなんだ」なんて言っていたら、経営層には一切なれないと思ったほうがいい。
「Marketeer」が生まれた表の理由と裏の理由
いいたか:
阿部さんが「Marketeer(マーケティア)」を立ち上げたのは、2017年でしたよね。
当時はアナグラムの公式ブログもあったなかで、なぜあのタイミングでメディアを立ち上げようと思ったんですか?
阿部:
2012年ごろから全国に行く機会があったんですが、地方のめちゃくちゃおもしろいマーケターさんといっぱい知り合って。でも彼らは、一切メディアに出ていません。なぜならメディア側の人間が誰も「うちの媒体に出て」ってオファーしていないから。
地方のマーケターさんて、地元ならではの面白い話がいっぱいあるんですよ。例えば、大分で家業のお肉屋さんを継いだ山崎昌彦さん。彼は先代が販路開拓したスーパーの肉屋事業から撤退して、「臭くて硬くてまずい肉」をネット通販しはじめたんです。これ、本人がこう言ってるんですよ(笑)。筋トレとか身体を鍛えている人にいいんだって。

参考:事業継承、スーパーからの撤退、三代目が直営店舗とネットショップに振り切った理由とは?|大分県で糖質制限用食肉のネットショップを営む山崎昌彦さん
阿部:
実際にそんな肉が、めちゃくちゃ売れるんです。僕もモツ鍋用の肉は、ここが日本一うまいと思っています。
もともと新規事業をやりたかったし、幸いうちのマーケティングチームは編集もできました。話を聞いた僕だけが恩恵を受けるんじゃなく、取材された側にも恩恵がある。三方良しでみんながハッピーになるメディアを作りたいと思いました。取材後に、前方からから「おかげで仕事がきたよ」って話を聞くと、ホントに嬉しいですね。
メディアを立ち上げたのにはもうひとつ理由があって。うちのお客様に、約10年リスティング広告に真剣に取り組んでいた企業があったんです。提案時は「なんでもっと早く来てくれなかったの、もっと早い段階で一緒に仕事したかった」って言われました。
「いやいや、僕たち結構ブログ発信とか本の出版とか、セミナー開催でたくさん情報出してましたよ」って当時は思ったんです。でも、お客様は忙しすぎて情報にリーチできなかった。彼らに情報を届けるには、マーケティングというくくりに特化しないといけない。そう分かって、「Marketeer」を立ち上げたという背景もあります。
さらにもうひとつ、裏の理由もあるんですけどね。
いいたか:
それを聞く前に、表の理由で僕が思ったことを話してもいいですか? 「Marketeer」の立ち上げ当時、言葉を選ばずに言うと、メディアの価値としてはまったくの無名だったじゃないですか。
それなのに、世に出ない人をメディアに呼び込んで、驚く量のトラフィックを生み出しました。僕はそれを見て、正直嫉妬したんですよね。こういうやり方もあるんだって。

いいたか:
記事では僕が知らない人もたくさん登場して、「Marketeer」がきっかけで何人かとも知り合えました。僕も出たいなと思って、去年出ることができたのは嬉しかったです。じゃあ裏の理由も聞かせてください(笑)。
阿部:
これ、人に言ったことないんだけどね。もう編集長退任したからいいかな。実は初代の編集チームって、僕がえこひいきしたい人たちだったんですよ。
彼ら・彼女らは入社後すぐに頭角を現しましたが、当時の評価制度ではメンバーが頑張っても、なかなか給料があがらないタイミングでした。
このイケてる子たちを、いかにえこひいきするか。そのために三方良しの座組を作ったと言っても、過言ではありません。
「Marketeer」の立ち上げ当時は、地方出張が多かったんです。毎月創業者と一緒に地方に行って取材して、現地のめちゃくちゃ美味しいものを食べて、地方のイケてるマーケターの話を夜通し聞ける。こんなの面白くないわけないじゃないですか(笑)。

阿部:
移動中や取材後の食事でも、たくさんのことを話しました。会社の方針や人事についてとか。そこで声をかけた2名が、今は経営の根幹といわれる、人事で頑張ってくれています。
いいたか:
地方の美味しいものを食べられるのが、表の理由だと思ってました(笑)。
阿部さんが取材後に病んでしまったすごすぎるマーケター・北原さん
いいたか:
「Marketeer」には、jigen_1さんも何本か出ているじゃないですか。
参考:ホントのインフルエンサーとは、自分の投稿をリツイートしてくれる人|ビッグデータを扱うjigen_1さんの語るTwitterオーガニック論とは?
僕がferretにいた時期、企画書を書いて送っても「絶対出ない」ってスタンスだったんですよ。なぜjigen_1さんは、「Marketeer」に出ようと思ったんですか?
jigen_1:
それはまあ、阿部さんと仲良かったからね。この人断れない雰囲気醸し出すでしょう? 見事に術中にはまって、結果5本も書いてしまったっていうね。
阿部:
そもそも断れないように頼みますからね。これがセールスってものです。
jigen_1:
それに、地方のマーケターさんの活動をすごく知りたい思いもありました。「Marketeer」には知り合いも多く出てるけど、知らない人も多い。特に北原さんの記事は、「マジでこの人すごいな」と。読んだあとに「参りました」って思いました。
参考:世の中のマイナスをプラスに変えれば世界は変わる!|「人のためのビジネス」を推し進めるDearsの北原孝彦さん
阿部:
ここだけの話、僕完全に取材のあと病んじゃって。なんなんだこの人って。すごすぎてここでは言えないくらい、絶対的な正義なんですよね。
このときは長野へ2人のメンバーと取材に行ったんですけど、取材後にご飯を食べている間も、ずっと悶々として。ホテルに戻った後、思わず取材メンバーに2軒目行こうって誘ったら、2人に断られちゃったんですよね(笑)。
僕もうどうしていいか分からなくなって、コンビニ行ってチューハイ買って、ホテルでずっと飲んでました。取材後もめちゃくちゃ考えさせられました。
jigen_1:
「Marketeer」は全部いい記事なんだけど、この記事はホントに読んでほしい。やっていることがすごすぎるから。
阿部:
取材時に「100店舗までいきたい」って話していて、翌年あっさりクリアしちゃいましたからね。100店舗行ったらまた取材しますって話していたのに、気づいたら120店舗以上に拡大していて。
もう「すみません」って感じですよ。
jigen_1:
世の中にはこういう人がいるから、自分を驕りたかぶれなくなる。知り合いでも、反則級なマーケターが出ているもの。コメ兵の藤原さんとか。彼とはTwitterで知り合って、やり方を聞かせてほしいって名古屋にも足を運んだくらい。それくらいすごすぎる。
参考:インターネットはお客さまと店舗の距離をゼロにする!ネットショップとリアル店舗ビジネスの垣根を超えてビジネスを加速させる、コメ兵の藤原義昭さん
自分の武器を売らなくなったら一人前
いいたか:
今回はマーケターという軸で、自分の立ち位置をどう作るかという話題が多かったと思います。最後にこの点について、おふたりから一言ずつコメントをいただけますか?
阿部:
興味があるところをやるのが一番だと思います。興味のある分野を突きつめて、あわよくばマネジメントにも関わる。そうすれば、ひとりじゃできない大きなことができるし、世の中への影響力も大きくなると思います。
jigen_1:
SNSに強い、リスティングに強いといった能力差はあると思います。でも将来的に「フィルターを外してものを見る」習慣を身に着けないと、新しい時代に取り残されるでしょう。
フィルターを外して、自分が「この商品を買う人間」ならば、なぜ買うのかを考える。それってリスティングのおかげでも、SNSだからでもないよね。
根本に戻って仮説を立てて、それが正しければ「こうやって広告打とう」と戦略を立てなきゃダメ。「SNSを見すぎなあなたが言うな」って話かもしれないけどね(笑)。
いいたか:
今もまさにTwitter開こうとしてる(笑)。
阿部:
心理学者のマズローは、「金槌をうまく扱える人は、全てのものが釘に見える」って言ってるんです。誰もが目的ではなく手段にとらわれてしまう。そうならないために、jigen_1さんの言うフィルターをはずすとか、抽象度を上げることが必要なんじゃないかなと。
自分の武器ではない解決策が最善だと気づいたとき、それを提案できる人。自分の武器を売らなくなったら、一人前じゃないでしょうか。
いいたか:
そろそろお開きの時間なんですが、僕が言いたかったことを阿部さんが言っちゃったんですよね(笑)。マーケティングにはいろいろな手段があって、一本軸だけでやるのはしんどいです。
より全体を見ながらマーケターとして活動していくと、経営や人事の領域までその意識が広がるみたいな。
阿部:
え、僕そんな話した?(笑)
jigen_1:
してないよね?(笑)
いいたか:
え、そうなんですか?だいぶ酔っ払っているかもしれません(笑)。
それでは次回も、バズらない話をしようか♪

次回の開催は8月27日(木)の18:30〜20:00です。
#バズらない話をしようか - カラス牧野氏 / kakeru明円氏と「 #ダークソーシャル倶楽部 」で語り合う
提供:
オリオンビール
スナックミー
配信:
シングメディア