2025年9月初旬、Xの「おすすめ(For you)」に関わる最新のコードが公開されました。
出典:https://x.com/XEng/status/1965226798460887127
ホットリンクでは、SNSコンサルタントを中心にこのアルゴリズムを精読し、「今後のX運用にどのように活かせるか」をまとめました。
2025年12月時点で確認できた情報を整理しましたので、みなさまのX活用にお役立ていただきたく、可能な限り分かりやすい表現で記事化しました。
Xの「おすすめ(For you)」に表示されるまでの全体フロー
公開されたソースコードから、「おすすめ(For you)」タイムラインは、以下の工程を経て組み立てられていることが読み取れました。

①候補生成(Candidate Generation)
フォロー内外を含めて「表示候補になりそうなポスト」を大量に集める。
②軽量選別(Light Ranking≒Scoring/Pre-ranking)
集めた候補を、比較的軽量な基準でスコアリングし、「有望なもの」に絞り込む。
③本ランキング(Heavy Ranking)
より高精度なモデルを使い、「そのユーザーが反応しそうか」を予測して最終スコアを付与する。
④可視性・品質フィルタ(Visibility/Quality Control)
ブロックやミュート、センシティブ判定などを反映し、「そもそも表示対象外となる投稿」を除外する。
⑤ミキシング/最終出力(Mixing&Response)
スコア付与済みの投稿群をもとに、並び替えや重複・過密の調整を行い、広告や各種モジュールを所定の位置に差し込んだうえで、1本のタイムラインとして画面に表示する。
各工程でどのような処理が行われているのか、以下に詳述します。
工程①候補生成(Candidate Generation)

フォローしている・していないアカウントのポストを含めて、「表示候補になり得るポスト」を幅広く収集する工程です。
2023年に公開されたソースコードでは「フォロー内50%・フォロー外50%」という割合が明示されていました。しかし、最新版のコードではこのような固定比率は示されていません。現在は、各候補ソースから一定数ずつポストを集め、後続工程で行われる「軽量選別」や「可視性・品質フィルタ」などを通じて、結果的にバランスを取る設計になっていると読み取れます。
フォローしている・していないアカウントのポストは、それぞれ異なる観点から候補として抽出されます。
フォローしているアカウントのポストの抽出ロジック
・直近の投稿を中心に、一定期間内のポストが候補となる
→「あなたがフォローしている人の投稿の中から、一定期間内の投稿」が候補として集められる。
フォローしてないアカウントのポストの抽出ロジック
・あなたのフォロー相手が反応したポスト
・あなたと似た行動傾向を持つユーザー群の中で注目されているポスト
・過去にあなたが反応した投稿と、同じ投稿に反応したユーザーが、他に反応しているポスト
→フォロー関係ではなく、「行動や関心の近さ」を軸に、投稿が広く集められる。
工程②軽量選別(Light Ranking≒Scoring/Pre-ranking)
工程①で集められた1,500〜2,000件のポストに対し、比較的軽量な特徴量を用いてスコアを付与し、工程③で処理する対象を上位数百〜1700件に絞り込みます。
工程③では計算負荷の高い機械学習モデル(約6,000の特徴量を用いる)が使われるため、この段階であらかじめ候補数を減らしておくことが、全体のパフォーマンス上、重要な役割を果たします。
どんなふうにスコア付けされるのか

以下は、公開されたソースコードから読み取れる、軽量選別で主に参照されている要素です。これらを組み合わせて投稿ごとにスコアが付与され、一定の基準を満たした投稿が工程③へ進みます。なお、具体的な合算方法や重み付けの定数は明示されていません。
「いまの関心」に近いか=Earlybirdの関連度スコア
・Xの内部システムが、ユーザーの直近の関心シグナル(閲覧・反応・フォロー関係など)と投稿内容との近さを評価
・「いま関心の高いテーマ」に近い投稿ほど、相対的に高いスコアが付与されやすい
例:
最近「猫」動画に反応している場合、猫に関する投稿の評価が高くなりやすい
行動が似ているユーザーの反応=UTEG/GraphJetの共起スコア
・行動傾向の近いユーザーが、対象ポストにどの程度、どのような反応(いいね・リポスト・返信・クリック等)を示したかを数値化
例:
「行動の似たユーザー」が強く反応している投稿ほど、評価されやすい
エンゲージメント統計値
・ポスト自体が集めている反応量(いいね数・リポスト数・返信数など)を反映
→多くのユーザーから反応を得ている投稿が、相対的に有利になりやすい
鮮度・著者情報
・投稿の新しさ(投稿時刻)や、著者が過去に得てきた反応実績など、比較的軽量な特徴量を参照
工程③本ランキング(Heavy Ranking)

工程②を通過した候補に対して、高精度な機械学習モデルを用い、「その投稿があなたにとってどれだけ価値が高いか」を予測スコアとして算出する工程です。ここで算出されるスコアは、後続のミキシング工程で表示順を決めるための重要な判断材料となります。
工程②が比較的軽量な特徴量を用いた大まかな選別であるのに対し、工程③では、約6,000もの特徴量を使い、各行動が起こる確率を予測する点が大きな違いです。
どんなふうにスコアが算出されるのか
特徴量の再構築(feature extraction)
投稿ごとに、モデル入力用の約6,000もの特徴量を組み立てます。工程②で参照された情報も含めつつ、より詳細なデータが追加され、例えば以下のデータがあげられます。
・投稿内容:テキスト、メディアの種類(画像/動画)
・投稿者の特徴:過去のエンゲージメント実績
・関係性特徴:あなたと投稿者の接点(フォロー関係、過去の反応など)
・時間的特徴:投稿からの経過時間
・トピック特徴:関心トピックとの距離(SimClustersなどの埋め込みを利用)
→各ポストの特長を抽出する段階です。
マルチタスク学習による行動確率の予測
再構成された特徴量をもとに、投稿を表示した際に起こりうる各行動の確率を同時に推定します。
・正の行動(例:いいね、リポスト、リプライなど)
・中立的行動(例:プロフィール閲覧など)
・負の行動(例:ミュート、報告など)
→実績値ではなく、モデルが推定した「未来の反応確率」が用いられます。
スコア統合(予測スコアの算出)
・各行動確率に重みを掛け合わせ、投稿ごとの総合スコアを算出
・スコアが高い投稿ほど、「反応される可能性が高い」と評価される
※重み付けの具体的な値は公開されていません。なお、このスコアは、最終的な表示順を直接確定するものではなく、工程⑤で並びや差し込みを判断するための基準として使われます。
工程④可視性・品質フィルタ(Visibility/Quality Control)

工程③で高精度なスコアが付与された投稿群に対して、「そもそもタイムラインに表示してよいか」を判定し、明確に表示不適切なものを除外するフェーズです。
この工程では、表示順そのものを決める処理は行われず、主に安全性や信頼性の観点からのフィルタリングが行われます。Xに搭載されているAI「Grok」も活用されています。
このフェーズで行う主な処理
可視性フィルタ(Visibility Filter)
・ブロック/ミュート関係にある投稿の除外
・センシティブ設定や年齢制限に基づく表示制御
・「安全性フラグ」が付与された投稿の抑制
品質フィルタ(Quality Filter)
・スパム確率やbot判定にもとづく低品質投稿の除外
・信頼性の低いアカウントからの投稿の抑制
・安全性や信頼性の観点で問題があると判定された投稿の制限
→ここでは「順位を下げる」のではなく、「表示対象から外す/強く抑制する」判断が中心となります。
工程⑤ミキシング/最終出力(Mixing&Response)

スコア付与や可視性フィルタを通過した投稿群をもとに、「どの投稿を、どの位置で、どの順序で表示するか」を組み立て、最終的に1本のタイムラインとして画面に表示するフェーズです。
工程③で算出されたスコアは重要な判断材料として用いられますが、ここでは単純なスコア順ソートではなく、構成ルールにもとづいたミキシングが行われます。
工程③が「どの投稿が有望か」を数値で評価する工程だとすると、工程⑤は「それらをどう配置し、どう見せるか」を決める工程です。
このフェーズで行う主な処理
投稿ソースの統合とミキシング
・複数のパイプラインから供給されたオーガニック投稿を統合し、提案コンテンツやモジュールを含めて、1本のタイムライン構成を作ります。
広告の組み込み
・広告は通常の投稿とは別の仕組みで選ばれ、タイムラインを組み立てる途中で専用の処理によって差し込まれます。
・広告と通常の投稿がスコアで直接競い合うわけではなく、投稿の並びを大きく崩さない形で、あらかじめ決められた位置に配置されます。
位置指定・順序制御
・決まった位置への挿入や表示数の上限、特定タイプのコンテンツが続きすぎないようにするなど、いくつかのルールを順番に適用しながら、最終的な並びを整えます。
・そのため、スコアが高い投稿であっても、構成上の理由から表示位置が前後することがあります。
重複・過密の調整
・同じ投稿者やトピックスが過度に続かないように整理されます。
レスポンス生成
・最終的に確定したタイムライン構成をもとに、画面表示に必要な指示情報や、ページ送りのための情報、付随するデータをまとめたレスポンスが生成され、ユーザーに返されます。
運用に活かす7つのポイント
ここまで見てきた通り、Xの「おすすめ」は単一の指標で決まるものではなく、複数の工程と多様なシグナルを組み合わせて表示が制御されています。その前提を踏まえたうえで、日々の運用で意識したいポイントを整理します。
■エンゲージメントは重要な指標として追い続ける
アルゴリズムが複雑化しているとはいえ、反応される投稿が評価されやすい構造自体は変わっていません。いいね、リポスト、返信といったエンゲージメントの数や率は、候補生成やその後の評価において、引き続き重要なシグナルであることが読み取れます。
まずは、「ユーザーから反応されるか」の観点で日々の運用に注力し、振り返りを行いましょう。
■いいね・リポスト・返信以外の指標にも目を向ける
工程②・③では、さまざまな行動シグナルが参照され、最終的には「反応されそうかどうか」の確率が評価されます。いいね数やリポスト数といった分かりやすい指標だけでなく、プロフィール遷移、メディアのタップ、滞在時間なども含めて評価されている可能性があります。
投稿が伸びた、あるいは伸びなかった理由を考える際には、複数の指標を定点観測することで、要因を立体的に捉えやすくなります。
■「どの文脈で発話されたいブランド」か逆算して投稿を考える
フォロー外の投稿が推薦される工程を見ても、アルゴリズムは「誰が、どんな話題や会話に反応しているか」を見ています。そのため、自社のアカウント・投稿がどの会話や話題に位置づけられているのかを意識したうえで運用する重要性が高まっています。そうした会話への参加を積み重ね、特定のコミュニティの中で認識されるアカウントになっていくことが、おすすめ表示につながりやすい構造だと考えられます。
■話題のトピックにタイムリーに乗る
「今この瞬間に盛り上がっている話題」にどれだけ早く反応できるかが、表示候補として抽出されやすくなると読み取れます。トレンドに入りやすいモーメント(○○の日)や、X上の旬な話題を捉えて会話に入りにいく姿勢が、結果的におすすめ表示につながりやすくなっています。なかでも、自社のアカウントが属するコミュニティ内で盛り上がっているトピックに早く乗る姿勢が大切です。
■フォロワーとのコミュニケーションと反応率を大切にする
フォロワー数そのものよりも、「フォロワーがどれだけ反応してくれるか」は引き続き重要です。返信や会話が多いアカウントは、結果として評価が積み上がりやすいと考えられます。既存フォロワーから安定して反応が得られている状態は、結果的におすすめ表示につながりやすい構造だと読み取れます。
■投稿単体ではなく「アカウント全体の傾向」を意識する
アルゴリズムは投稿単体だけでなく、アカウント全体の過去の反応傾向や振る舞いも踏まえて評価していると読み取れます。短期的な当たり外れだけでなく、中長期でどんな投稿を積み重ねているかを意識することも重要です。
■オーガニックにこだわりすぎず、広告も現実的な選択肢として考える
ここまでの解説からも分かるように、オーガニック投稿が「おすすめ」に表示されるまでには多くの工程があり、不確実性も高いと言えます。
すべてをアルゴリズム理解と運用努力で突破しようとするよりも、目的や状況によっては広告を活用したほうが、費用対効果が高いケースも少なくありません。オーガニックと広告を切り分け、それぞれを適切に使い分ける視点も、今後のX運用では重要になってきます。
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