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この記事の内容
最終更新日:2024年2月7日
各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルと、SNSやマーケティング、ビジネスのあり方について考える対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」。モデレーターはホットリンク・編集者の澤山モッツァレラが務めます。
今回のゲストは、HONE Inc.代表取締役の桜井貴斗さんと、株式会社ロックヒル代表の蛭田一史さんです。
人口減少による地方の衰退が危惧される中、「マーケティング」という武器を携えて身を投じるお二人。桜井さんは日本中を飛び回って地方の課題解決に向き合い、蛭田さんは飲食・観光を軸に支援しつつご自身も地元・三浦市(神奈川県)で飲食店を経営・プロデュースされています。 様々な部分で難易度が高いと予想される、地方のマーケティングに携わった理由は何か。「サムライ」「よろずや」それぞれの個性が際立つお二人に、お話を伺いました。(写真・執筆:サトートモロー インタビュー・編集:澤山モッツァレラ)
澤山:まずは、現在のお仕事から教えてください。
桜井:現在、地方に特化したマーケティング支援を生業にしています。支援先は地元・静岡が4割で、あとは東北・九州・関西にお客様がいます。最近は、人口減少などでより深刻な悩みを抱えている東北・九州への支援が増えていますね。
それ以外には、デザイン専門学校や行政へのマーケティング研修なども行っています。1人で産学官連携に取り組んでいるような感じです(笑)。それぞれをつなぎ合わせることで、一緒に地方のためにできることがないかを模索しています。
蛭田:僕は飲食店向けのマーケティング支援、食にまつわるスタートアップの事業支援、あと訪日観光客を受け入れるためのインバウンド整備支援をしています。
澤山:お二人はどのように知り合ったのですか?
蛭田:桜井さんが主催するサークルに参加したのがきっかけです。ものすごい盛況で、「地方マーケティングでこんなに多くの人を集められるのか!」と興味を持ちまして。それ以来、仲良くしてもらっています。
桜井:去年(2023年)には、静岡にも遊びに来てくれましたよね。
蛭田:リアルで会うのが初めてだったんですが、その時は終電ギリギリまで飲んで語っていました(笑)。
澤山:知り合ったのは割と最近なんですね。お二人は働き始めた時からずっと、地方マーケティングに携わってきたのでしょうか?
桜井:いえ、僕のキャリアは静岡の上場企業で営業マンになるところから始まりました。当時は成績がよかったので、生意気にも「営業ってなんかちょろいな」と思っていました。
そんな矢先、新規事業開発室に配属されて、壁にぶち当たりました。毎日200件テレアポをしても飛び込み営業しても、まったく成果が出ない。「会社の看板を背負っていたからうまくいっていたに過ぎないんだ」と気づき、半泣きの毎日を過ごしていました。
次第に「営業知識だけで事業開発はできない」と悟り、26歳ごろから経営学などを学び始めました。そこで初めて、マーケティングと出会ったんです。
澤山:必要に迫られ、マーケティングの知識を身につけたんですね。
蛭田:僕は大手人材会社の内定などを頂いていたのですが、新卒の際はSESのエンジニア派遣事業などを行なうベンチャーに就職しました。その会社をほどなくして辞め、独立してメディアの立ち上げや受託の仕事を請けていました。
そんな中、堀江貴文さんに誘われてグルメアプリ「TERIYAKI」の運営会社の社長をやらせてもらいました。それまでもテレビ番組のリサーチで飲食店を探していたり、●●横丁の開業時のオープニングのお手伝いとか食に関わるお仕事をちょくちょくしてはいました。が、ここで本格的に堀江さんも含め出版、メディア、ビジネス、一線で活躍されている方と触れ合って、ビジネスに関するイロハを学びました。
その後は、未開のビジネスをしたくなって中国の決済スタートアップで事業部長を務め、インバウンドにも詳しくなっていきました。
澤山:それぞれのキャリアから、なぜ地方マーケティングを選んだのでしょうか?
蛭田:「ワクワクできそう」という直感があったからですね。強みである飲食・インバウンドを活かすなら、東京に固執せず地方に目を向けたほうがいいかもしれない。そう考えていたところに桜井さんのような人が現れたので、「地方マーケの波が来ているかも!」と思ったんです。
桜井:地方が、想像以上に多くの悩みを抱えているのを知ったのがきっかけでした。
とある事業で、静岡県や愛知県など東海地方のお客様を支援した時がありました。地方では、伝統工芸品などものづくりが盛んです。しかし現在は事業継承者が周りにいないし、作っても売れません。ヒト・モノ・カネのすべてが、枯渇していました。
九州や東北に行くほど、状況は深刻でした。その上、地方の中小企業を支援しようという企業は、ほとんど存在しません。「このまま地方を見過ごすことはできない。僕がやるしかない」と勝手に思ったんです。
蛭田:桜井さんはつくづく“サムライ”だなと思います。「自分がやらなきゃ」という使命感がすごく強くて、気合と根性と熱量でこじ開けていくんですよね。
桜井:僕は薪をくべて火をつけて、ゼロイチを生み出す仕事が得意です。関係者全員の方向性をそろえて、「いいからやろうぜ!」と声をかける役割というか。火がついた後は、戦術に秀でた蛭田さんのような人やSNS、広告、映像のプロフェッショナルを集めて勢いをブーストさせていくんです。
蛭田:僕はどちらかというと、よろず屋的なマーケターだと思っています。
TERIYAKIの時のボスと、塚田農場という居酒屋のインバウンド支援をさせて頂いた時期がありました。また、当時エーピーホールディングスの副社長をしていた大久保伸隆さん(現・株式会社ミナデイン)とお仕事をさせて頂いた時の経験もかなり活かされています。
TERIYAKIではデジタル領域、塚田農場では外食。2領域の魅力的な方々とお仕事をして、様々な課題解決をこなしてきました。その時の経験を活かして、課題を整理し、最適なマーケティングという武器を渡すのが得意なんです。
澤山:地方マーケティングには、どのような面白さがありますか?
蛭田:ローコストで事業を立ち上げられ、事業すべてにコミットできることだと思います。僕は三浦市で飲食店を経営しているし、桜井さんも静岡でお茶を作っています。地方はそういう事業を、ローコストで立ち上げられるんですよね。
また東京では、リスティングやSNS運用など仕事の範囲が限定されがち。その点、地方の場合は立ち上げから結果を出すまでの工程をすべて任されます。
桜井:都内のマーケティングをある程度選択肢が決まっているRPGとするなら、地方マーケティングはオープンワールドだといえます。オープンワールドのゲームって、どのフィールドに行ってもいいし、敵と戦ってもよければ悠々自適に過ごしてもいいじゃないですか。
地方マーケティングもそれに似ています。東京での仕事は、どのように成果を出すか要件定義されているのが普通です。一方、地方では要件定義はまったくのゼロ。PLや決算書を渡されて、「どうにかしてほしい」という状態からスタートします。結果、事業のほぼ全領域で手綱を握らせてもらえるわけです。
澤山:戦略も実践もすべて任されるのが、地方マーケティングなのですね。
桜井:すごく統合的です。ストラテジックプランナー、兼プレイヤーのような役割といえばいいでしょうか。
蛭田:コーチングに近い領域の仕事もします。というのも、地方マーケティングは視野を少し広げるだけで、課題を解決できるケースが多いんですよ。
澤山:具体的にはどういった事例でしょうか?
蛭田:例えばある飲食店が、「人口が減って、来店客が少ない」という課題を抱えているとします。視野が狭いままだと解決策を見い出せないですが、「インバウンド需要に応えよう」と視点を変えることで客数を増やせるわけです。
来店客が少ないという事実に対して、「どこからの来店数が少ないのか」を見ていく。こういう方法で打開できるシーンが、地方には多い気がします。
地方の人々にマーケティングを伝え、視座を高め、売れるべきものを売れるようにする。マス向けに展開していた事業を整理し、届けたい人に届ける。僕たちは、こうした作業を手助けしています。
桜井:マイナスの事業を、軌道修正させるケースもありますよね。
蛭田:そうそう。話を聞いてみると「なんとなく」で仕事をしていて、施策をファクトベースで効果検証できていないことがすごく多いです。
桜井:逆に、本来なら大々的に打ち出していけるハイクオリティなものが、その地方では当たり前すぎて埋もれているケースもあります。
澤山:聞けば聞くほど、お二人の領域の広さに驚かされます。事業立ち上げから、既存事業の再生に関わることもあるのですね。
蛭田:最近では、地方で眠っているハイクオリティな要素に気づき始めている人も増えています。地方にハイエンドな宿が増えている事例は、その典型だと思います。
三浦市にあるマグロが有名な三崎港には、宮川輝雄さんという伝説の目利きがいます。彼の息子の宮川大知さんが「キセキのマグロ」というブランドでSNSを展開しているんです。そこで認知を勝ち取って、ECでの販売につなげるといった交通整理を実現させています。
桜井:僕は先日、宮城県丸森町という人口1万人ほどの町に行ってきました。そこでゲストハウスを営んでいるオーナーは、関西から地域おこし協力隊で丸森町に移住したんです。
地域おこし協力隊の期間中は給与が発生しますが、任期終了後は自社事業のみで生計を立てていく必要があります。ゲストハウスは古民家を活用していて、すごく広くて1泊2食出る料理もおいしい。暖炉やサウナ、五右衛門風呂も完備され、町の人々も丁寧にアテンドしてくれます。それなのに、1泊の料金はたったの数千円なんです。
澤山:地方とはいえ、さすがに安い。燃料費、人件費などを払ったら利益が残らなさそうです。
桜井:「これでは安すぎる!」ということで、適正価格で事業が継続できるための支援をしています。支援ではサウナ小屋やストーブの改善など、プロダクトの見直しも行なっています。
地方では、プロダクトが未完成であるケースがとても多いです。プロダクトを改善し、プライスを見直した上で、プロモーションを整えていくことが大切だと思います。プロモーションでは、モデルさんの手配や撮影の香盤表作成、ホームページのライティング、ロゴ制作なども中心となって進めています。
澤山:マーケティングの4Pでいうと、「プレイス」を除くすべてに関わっておられるんですね。
桜井:地方支援は、とにかくお客様と一緒に物事を進めなければなりません。「課題は何か」と尋ねるだけでなく、現地でプロダクトを体験し、課題を見つけ、要件定義し、プランを考える必要があります。
澤山:地方マーケティングを志す人は、どんなスキルやマインドセットを持つべきですか?
蛭田:圧倒的に「愚直で、土着」だと思います。
桜井:めちゃくちゃかっこいいですね。
蛭田:かっこよくないですよ! デジタル全盛の時代に、めちゃくちゃアナログなことを言っています(笑)。地方での仕事は、お客様とずっと一緒に働くことができません。相手との関係性を保つには、とにかく「嘘をつかない」「愚直であること」を繰り返す必要があるんですよね。
地方議員や商工会議所、商店街の人々といった地元のキーマンと話をすることも大切です。関係者の中には変革を望まない人もいるので、合意を取る上でも現場で地道にやり取りする必要があります。
桜井:すごく同感です。地方は、現地に行って初めて要件定義ができると思っています。リモートでは、地域やお客様の課題に気づけません。
岩手県普代村という小さな村で、豆腐屋を営んでいるお客様がいて、一丁数百円の焼き豆腐を訪問販売で売っているそうです。
澤山:人口2,300人あまり(2024年1月時点)の自治体で、事業が成り立っているのはすごいですね。
桜井:とはいえ、労働集約型で商売を続けていても身体がもたない。それで、最寄り駅の普代駅にテナントを借りたそうです。このタイミングで相談されたので、現地に行って1日の乗降者数を調べたところ80人しかいなかったんです。
澤山:それは厳しい。
桜井:「さすがに無理だろう」と思ったんですが、テナント賃料を聞いたところ、思ったよりもリーズナブルで。それで、勝てそうなイメージを持つことができました。
普代駅のすぐそばに、「青の国ふだい」という道の駅があります。そこで販売されているものや、お客様がどんな商品を展開できるかを踏まえて、プランを練りました。
駅の乗降者数を調べれば、その日の売上はある程度計算できます。ですが、実際にテナントや駅を見たり、地元の人々の話を聞いたりしないと方向性が正しいかはわかりません。地方マーケティングは、現場にすべての答えがあります。
澤山:まさに「愚直で、土着」ですね。
桜井:地方マーケティングで大切なのは、そのブランドが5年後も10年後も続いているかという観点を持つことだと思っています。
世界遺産に認定された和歌山県の熊野古道は、10年以上をかけて現在のブランドを作りました。おもてなしのワークショップを開いたり、外国人の受け入れ研修を行ったり、お店のメニュー表記をすべて統一したり。地元・田辺市に深い愛情を持つ人々が、官民一丸となって努力した結果が、今の姿なんです。
そこに僕たちが割り込んで、安易に「今これが流行っているから」と行動したらどうなるでしょう? 地域の人々が積み重ねた、10年の積み重ねを水の泡にするかもしれません。地域の人々の努力や誇りを、僕たちが汚してはいけない。先日、熊野古道に行ってそれを強く感じました。
澤山:ゼロからブランドを立ち上げる場合も、すでにあるブランドの発展に関わる場合もあるのですね。
桜井:人々が大切にしているブランドが赤字のケースもあるので、余計に注意が必要です。静岡のお茶は、その最たるものだと思いますね。今の若い世代で急須を持っている人は、果たしてどれくらいいるでしょう?
それでも、お茶の文化は残さないといけません。「文化を守りながら、どうやって攻めるか」を考えるのが地方マーケターの仕事です。
蛭田:その上で結果も出さないといけないのが、地方マーケティングの難しさですよね。
桜井:ほんの少しポイントを間違えるだけで、事業は簡単に崩壊します。絶妙なバランスの中で、進めないといけないですから。
澤山:桜井さんと蛭田さんは、SNSをどのように活用していますか?
蛭田:僕は主にX(旧Twitter)とInstagram、Googleマップを主に活用しています。認知を獲得するためのツールとして、そのエリアで一番のフォロワー数を獲得すること。コミュニケーションツールとして、地域のお客様の声をちゃんと拾い上げること。この2つが、主な利用目的です。
澤山:地方マーケティングにおいて、使いやすいSNS媒体はありますか?
蛭田:業態によると思います。飲食店の場合、X(旧Twitter)はコミュニケーションを取りやすく、Instagramは認知を獲得しやすいです。僕は合計3店舗でInstagramを運用していますが、店舗間での集客はもちろん、それぞれの店舗にもお客様を誘導しやすくなりました。
桜井:SNSはライフラインですね。地方は広告に回せる予算があまりないので、広告費自体が存在しないこともあります。無料で運用できるSNSは最高のコミュニケーションツールであり、情報源になります。
僕自身も、地方×マーケティングで影響力をつけようと思い、日々SNSで発信しています。その結果として、情報感度が高い支援者とたくさん知り合えました。
蛭田:桜井さんさすがだなと思うのは、「影響力を持つ」という宣言どおりX(旧Twitter)で約26,000フォロワーを獲得しているところですよね。
桜井:やったことといえば、1日30投稿をポストし続けただけですけど(笑)。
蛭田:それだけの量をこなしていたら、普通は内容が薄くなっちゃうじゃないですか。投稿ごとの品質を落としていないのも、すごいところですよ。
桜井:そこはもう、根性と気合ですね(笑)。とはいえ、僕はX(旧Twitter)以外の媒体での発信はできていません。InstagramやYouTubeはやらず、とにかくX(旧Twitter)だけにフォーカスしました。
澤山:なぜX(旧Twitter)に注力したのでしょうか?
桜井:言語化するのが得意だったからです。もししゃべるのが得意な人であれば、YouTubeやInstagramのリールでもいいと思います。
友人で「世界へボカン」という越境EC会社を経営する徳田祐希さんは、コロナ禍の2年間YouTubeで動画を投稿し続けました。結果、チャンネル登録者数を1万人まで伸ばしています(参照)。どのSNSを使うにしろ、必要なのは発信し続ける胆力だと思います。
蛭田:SNSも、愚直にやるのが大事なんですよ。お金がないのなら、自分の身体を使うしかない。幸いにも、地方にはコンテンツがめちゃくちゃあふれています。
桜井:大事なのはコンテンツの切り取り方と一貫性、売上に寄与するかどうかかなと思います。
蛭田:Instagram運用を専門業者が代行しているものの、その地方や会社のよさを引き出せていないケースは山ほどあります。自分たちの価値を磨いて外に発信する作業は、すごく大事ですよね。
桜井:Instagramは、ブランドを体現できる最高のコミュニケーションツールの1つです。ただ地方の場合、そもそもどんなブランドを体現したいのか定まっていないことがよくあります。
「とりあえずSNSをやってみよう」では何を表現すればいいか分からないので、継続できません。「何を伝えたいのか」という原液さえ見つかれば、あとは根性で続ければいい。
蛭田:多くの自治体が、横並びでご当地キャラを前面に押し出したプロモーションを展開しました。ゆるキャラブームはできましたが、狙った効果を出せた自治体はいくつあったでしょうか。伝えたいことがないプロモーションは、誰にも刺さりません。人が介在して、価値を磨き続けないといけないんです。
澤山:地方マーケターに「こうあってほしくない」と思うことはありますか?
桜井:最近、「リモートで自分らしく働ける」「独立してすぐに売上1,000万を目指せる」といううたい文句を目にします。僕は、マーケティングが自己実現の道具になっている風潮がまったく理解できないんです。
マーケティングはそもそも、お客様に貢献するために存在します。お客様の役に立った結果、報酬をもらえるにすぎません。マーケターを名乗る以上、お客様の役に立つことをまず考えてほしいです。
その結果、リモートで働くことができるのならそれでも良いと思います。僕はそれができないから、現場に出ているわけで。目の前の人と真剣に向き合って、成果を出すための議論をしてほしいですね。
蛭田:地方マーケティングはブルーオーシャンではない、用意されているイスは多くないということも伝えておきたいです。
地方をみると課題やインサイトは明確ですが、そもそもマーケットが存在しないので報酬がほとんど出ません。そこに飛び込む以上、ある程度の覚悟が必要だと思います。
桜井:地方マーケティングに参入できない人の意見として、「報酬が出ない」と言う人がいます。この意見に、僕は「ふざけんな」と思うんです。自分の報酬は、自分で稼げばいい。地方で事業を立ち上げて、自分で利益を出せばいいじゃないですかと。
蛭田:ほら。こういうクレイジーな人と戦わないといけないわけです(笑)。熊野古道で「SEN.RETREAT」という宿を経営している大﨑庸平さんも、相当にクレイジーだと思います。
桜井:彼は1棟貸しの宿を、コンセプト設計から広告運用、部屋掃除まで全部1人でこなしています。
蛭田:地方マーケティングは、突き詰めるほど実務に寄っていきますよね。大変さは理解しつつも、「やりたい!」という熱意が勝つというか。
桜井:「ここまででOK」と割り切れることはほとんどないですよね。ハードルを上げたいわけではないですが、大変であることは知っておいたほうがいい。身を削るような思いで地方に向き合っていますから。
逆に、それを楽しいと感じる人は地方マーケティングが天職だと思います。いくらでも裁量はあるし、地域に貢献して成果を出せば、稼げる仕事もたくさんあります。
蛭田:その発言も語弊を生みそうだな……。桜井さんの話は「クレイジーに働けば死なない」って意味での「稼げる」だと思ってください(笑)。
桜井:確かに……人の5倍は働いていますからね。
澤山:伺っていると、地方マーケティングは「総合格闘技(MMA)」というたとえがしっくりきます。キックやパンチなど打撃だけではダメ、グラップリング(寝技)も下からの攻撃も、あらゆる局面で戦える総合力が必要。まさにMMAですね。
最後に、地方マーケティングを志す方に向けてメッセージをお願いします。
蛭田:地方マーケティングの世界に飛び込むのなら、ぜひ実業にチャレンジしてみてほしいです。
桜井:大賛成です! 僕も今度、静岡で民泊を始めようと思っています。皆さんもできるだけ借金して、自分の店を持ってみてほしいです。
支援業は、ある程度スキルがある人なら1,000万円程度はすぐに稼げます。しかし支援側の経験だけでは、事業者側の気持ちに完全には寄り添えません。実業に挑戦して、経営の痛みを知ることで、よりお客様の解像度を高められる気がします。
澤山:地方マーケターよ、痛みを知れということですね。
桜井:血の涙を流さないとダメですね。
蛭田:最後の締めがこれで大丈夫ですか!?(笑)
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