SNSコラム

3,500人の会社に、OMO施策をブレずに浸透させる方法。藤原義昭(ユナイテッドアローズ)#ザ・プロフェッショナル

2023年08月24日
SNSコラム | ザ・プロフェッショナル

最終更新日:2023年11月29日

各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルと、SNSやマーケティング、ビジネスのあり方について考える対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」。モデレーターを務めるのは、ホットリンクのインハウスエディターで広報も務める倉内夏海と、元ホットリンクのマーケティング本部長で、現在は株式会社スノードームの代表取締役である室谷良平(以下、ムロヤ)です。

今回のゲストは、株式会社ユナイテッドアローズ CDO兼OMO本部本部長の藤原義昭さんです。

藤原さんは、2021年4月にユナイテッドアローズに入社後、CDOとして自社ECサイトのリニューアル、社内のDX推進に尽力しています。現在は、OMO(オンラインとオフラインの融合)にも携わっています。

今回は、アパレル業界とデジタルの相性、OMO施策で重要なポイントなど、現時点でのユナイテッドアローズの取り組みについて詳しく解説していただきました。

(撮影:矢野拓実 執筆:サトートモロー 取材・編集:澤山モッツァレラ、倉内夏海)

僕の役目はオーケストラの指揮者なんです

倉内:
藤原さんは、2021年にユナイテッドアローズへジョインした時、自社やアパレル業界にどんな課題を感じていましたか?

藤原:
大きな課題だと思ったのは、アパレル業界の効率化の難しさです。服作りというのは、サプライチェーンが広範囲に渡り、生地屋さんや工場やデザイナーさんなど、プレイヤーがとても多いです。しかも、商品自体も多種多様なので、自動車業界のように機能が分散しています。業界の複雑さが、デジタル化の大きな足かせになっています。

あと、これは日本のマーケティング全体にもいえることですが、顧客構造の理解不足も大きな課題だと感じています

アパレル業界は、基本的にプロダクトアウトの世界です。そのため、会話の主語がすぐに「お客様」から「商品」に変わってしまいます。すると、お客様の平均単価や年間購買額、来店動機といった顧客情報の分析を怠り、お客様の実像や顧客の構造を理解しないまま話が進みがちです。

ユナイテッドアローズのメンバーは能力が高いので、「昨年はカットソーが売れていたから、今年はこう」という予測を立てるのが上手です。半面、顧客ニーズの深堀りができていないまま、商品のヒットを狙いにいくというアクションに陥りがちな一面がありました。

ムロヤ:
目先の「服が何枚売れた」という数字だけではなく、お客様が何を思って商品を購入したのか、どんなお客様が長期に渡りファンになってくださるのかを把握することが重要だということですね。確かに、それらを把握した上で接客する方が、売上は伸びやすそうです。

藤原:
顧客理解では、因数分解が非常に重要です。ですが、お客様を購入頻度(frequency)でF0、F1、F2、F3と分けた時、F0のお客様とF3のお客様の違いをちゃんと把握できていますかと聞いて、答えられない業界関係者は多いと思います。

物づくりの起点で、特定のアイテムが何点売れたかは絶対的に重要な指標です。これがないと、事業計画を立てられません。その指標と合わせて、お客様の状況も見ていくことが大切だと思います。

まだ商品を購入したことはないけれど、ユナイテッドアローズを認知している人。一度購入したけれど、今年の購入はやめてしまった人。

このように、お客様をちゃんとセグメントして、自分たちが注力すべきお客様を見定めるという戦略は、意識すべきです。

倉内:
デジタル化や顧客理解を進める中で、藤原さんは、ユナイテッドアローズでどのような役割を担っているのですか?

藤原:
僕はいわば、オーケストラの指揮者のような役割だと思っています。各楽器のリーダーやメンバーをまとめあげて、最適化するという感じです。

ユナイテッドアローズには、CRMがうまい人、広告運用がうまい人、EC構築がうまい人など、たくさんのプロフェッショナルがいます。かつて、メンバーはそれぞれの機能を個別に取り組んでいる状態でした。

しかし本来、CRMも広告もECも、横でつなげてどう運用するかが重要です。そこではじめて、「こういうお客様に対しては、ECのこの機能が生かせるね」「このお客様に対して、こんなプロモーションが有効だ」という計画が立てられるのです。

昔はブランドごとに事業本部があったのですが、僕が入社して2年目に、機能性組織に移行しました。商品、マーケティング、販売という3部門で事業部を形成し、各本部が協調し合うことで、はじめてブランドの売上を作れる体制にしました。

ムロヤ:
組織再編を進める中で、藤原さんはどんなことを意識したのですか?

藤原:
各チームが、リーダーを中心にしつつKPIに沿ってちゃんと機能しているかをチェックできるようにしました。KPIに振り回されるとまた機能最適な行動に偏ってしまうので、それぞれの数字の優先度を、上げたり下げたりしながら調整しています。

とはいえ、やっていることはシンプルです。お客様のルートというのは、集客→接客→CRMの3段階しかありません。そして、集客も既存顧客と新規顧客のどちらがターゲットかで変わります。

それぞれのルートとストーリーを大まかに把握して、各ルートが正常に機能しているかを僕は見ています

OMO推進の秘訣は「大事な軸はグリップしておく」「中長期的な目線での挑戦を歓迎する」

倉内:
藤原さんは、ユナイテッドアローズにて「DX推進センター」を設立し、OMOの推進に尽力していますよね。OMOを進める中で、大事にしている指標や考え方はありますか?

藤原:
大きく二つあります。一つ目はLTVを高めること。二つ目は、店舗とECのクロスユースを促すことです。その過程で、ハウスカード(ユナイテッドアローズのオフライン・オンライン共有の会員サービス)の会員様を増やすことも大切にしています。2023年夏~秋には、会員プログラムのリニューアルを予定しています。

ムロヤ:
オンラインとオフラインの融合は、言葉として理解できる一方で、現場にその考えを浸透させるのは容易なことではないと思います。藤原さん自身が、OMOの推進で難しいと感じる点はありますか?

藤原:
従業員が3,500人ほどいるので、全員がひとつの方向に向かうというのはほぼ不可能です。だからこそ、完全に方向性がそろわないというのは許容しつつ、軸となる考え方がブレないようにグリップすることが、非常に大切だと思います

倉内:
その軸にあるのが、LTVとクロスユースなのですね。

藤原:
二つの指標をKGIとして、各リーダーたちのKPIがロジックツリー上でKGIとつながっているか、定期的に確認しています。例えば、EC部門の部長であればECの売上、デジタルマーケティング部門の部長であれば、施策の成果がKPIになるでしょう。

よく「大元の数字をちゃんと見よう」という声を聞きますが、じつはそこまで重要な数字ではないケースが多いです。営業利益が大切だとはいえ、目の前のスタッフやお客様と相対する時、営業利益を意識して接するのはナンセンスじゃないですか(笑)。

年に一度、利益が増えたかを確認する指標として、営業利益は重要です。しかし、日々の運用やオペレーションがうまくいっているかは、その行動に紐づくKGI、KPIを見るべきだと思います。

倉内:
実際に、目標を達成するためにどのような施策を実施してきましたか?

藤原:
リピート購買を増やすために、どのチャネルで、どういうお客様に、どんな施策を展開するべきかを、日々考え実行しています。例えば今年5月、タレントの滝沢眞規子さんを起用したキャンペーンを展開しました。

MY FASHION TRIP いつでも、どこでも、自分らしく| ユナイテッドアローズ ゴールデンウィークをお洒落に過ごす初夏アイテム モデル滝沢眞規子

僕たちのお客様の中心は、30代〜50代未満の女性です。この世代からのアテンションを獲得できる方は誰かを考え、滝沢眞規子さんに思い至りました。

また、この時にはユナイテッドアローズを着るシーンについても、事前にアンケート調査をしました。

そこでは、多くのお客様が「特別な食事や外出時の晴れ着」として、弊社の服を想起すると回答したんです。これらの想起とマッチさせた上で、商品の販売、ハウスカード会員化にまでつなげるストーリーを、意識して企画を立てました。

倉内:
ひとつの企画を行うのに、入念な調査や準備を重ねたのですね。

藤原:
売上が1,300億ある企業なので、思いつきで企画を進めると、ほぼワンシーズンを棒に振るリスクがあるので、リサーチはすごく重視していますね。

マーケティングチームの人間は、実際に服を作れるわけではありません。事前に作られるものに対して、お客様に「それを着た日常」をどう意識してもらうかが、僕たちの仕事だと思っています

ムロヤ:
確かに、「いいものを着たい」という気持ちを持っていても、それを着てどこに行くかを想像できなければ、購入には至りません。

藤原:
その「いいもの」というのも、判断基準は人によって異なります。ある人は「肌ざわりのいいもの」と答えるかもしれないし、他の人は「TPOに合った服」と答えるかもしれません。

こうした一人一人の想起に対して、ただ服を並べておくだけでなく、ブランドイメージをどうやってコンテンツにして打ち出すかが、アパレルには大切です。

ムロヤ:
藤原さんは昨年の秋ごろ、SNSの専任チームを立ち上げたそうですね。ユナイテッドアローズで、SNS専門のチームを作った背景を教えてください。

藤原:
今やアパレルは、ブランドを立ち上げたら必ずInstagramのアカウントを作るじゃないですか。すると、何もしなくてもある程度はフォロワーが増えていきます。しかし、フォロワー数というアセットを生かして、コンテンツをリーチさせるには、戦略的な運用が必要となります。

そこで、SNS課という専門チームを立ち上げたんです。

倉内:
SNS課によるSNS運用に対して、細かく指示を出すことはありますか?

藤原:
基本的には口を出しません。ただ、中長期的目線に立って「こんなチャンスがある」と分かった時は、チームに声をかけています

倉内:
将来的に価値がありそうなことは、率先してチャレンジすべきだと考えているのですね。

藤原:
僕は前職で、パソコンに一切詳しくないのに「パソコンのことなら任せてほしい」とハッタリを言ったことがあります。24回払いのローンでパソコンを購入して、必死に勉強しました(笑)。

なぜそんなことをやったかというと、これからパソコンの時代が来ると分かっていたからです。パソコンやインターネットのスキルがあれば、会社にとっても個人にとっても、中長期的に絶対プラスになると思いました。

当時の僕にとって、パソコンはまったく分からない世界でした。勉強することで、分からない知識が手に入る、つまりゼロ→イチになるのだから、リスクは何もありませんよね。新しいことを始めるメリットは、ここにあると僕は思っています。

莫大にお金がかからないもので、「将来これは盛り上がりそう」という分野があれば、早めにテストをして確かめるというのはとても大切だと思います。ソーシャルメディアだって、これだけSNSで物が売れる時代になった以上、これからもっと注力すべきだと思います。

今も昔も、その考えは変わりません。SNS課に対しても、提案内容が視野狭窄だと感じたら、企画を練り直してもらったり、資料を作り直してもらったりしています。

ムロヤ:
挑戦の中の小さな失敗は、ある程度許容するということでしょうか。

藤原:
はい。デジタルでは、小さなチャレンジから始められますから。ちなみに失敗で大事なのは、「自分たちのここが悪かった」と、自責の念を持てるかどうかだと思います

これができる人は、あまり多くありません。ベンダーさんの提案がダメだったなど、どうしても他責の思考が働きます。ですが、いい提案を相手から引き出すには、オリエンテーションがとても重要です。

「いい提案がほしい」と丸投げしても、確実に失敗します。失敗を次に生かすためにも、自分たちの何がダメだったのかを、短いスパンでチェックすることがとても重要だと思います。

マネジメントを左右するプロセス、結果、環境の3要素

倉内:
先ほど、SNS課のマネジメントに対しては基本的に口を出さないとおっしゃっていました。それぞれのメンバーをどの仕事にアサインするかも、基本的には課内のリーダーに任せているのでしょうか?

藤原:
任せています。現在、SNS課は外部から招き入れた女性がリーダーを務めています。彼女の上司に広報を担当する部長がいるんですが、僕は彼にこうお願いしています。

「彼女はSNSのプロなので、やり方に口を出さないでください。ただし、ユナイテッドアローズというブランドを毀損したり、他の部署と衝突が生まれそうな場合は、あなたがフォローしてあげてください」

僕が意識しているのは、あくまでどんな環境を用意するかだけです。コンテンツの中身については、「あれこれ試したくなる気持ちは分かるけれど、それによって力が分散しないようにしてほしい」と伝えています。

あと、コンテンツの中身についてはもう一つ指示を出しています。それは、継続的にお金をかけ続けるような企画は避けてほしいというものです

倉内:
なぜそういった指示を出したのですか?

藤原:
企画であれチャネルであれ、長期的にリソースを割いて自社で運用しなくてはいけない企画は、大きな負担になります。なので、なるべく単発で終わる企画を中心に実施してもらっているんです。例えば、キャンペーンを用いて一度だけ、インフルエンサーなどを起用した企画を展開するのはOKだと伝えています。

倉内:
なるほど。藤原さんのSNS課への指示は、働くための場所の構築とゴールをどちらも設定しておくというのが印象的です。「場所を用意したから後は頑張ってね」ではなく、「この方向性に向かって頑張ってね」と、あらかじめ伝えているのがよく分かります。

藤原:
僕はいつも、三つの項目で構成された円グラフをイメージして、マネジメントをしているんです。円グラフには、「プロセス」「結果」「環境」という項目があり、その合計値を100%とします。その上で、「この人は、どんな構成比の円グラフだと一番活躍できるだろう?」と考えるんです。

新入社員の方であれば、プロセスがほぼ99%だと思います。環境も成果はほぼゼロで、とにかく仕事のやり方を教えてあげるのが得策です。社歴を重ねたスタッフは、結果を重視していくべきで、環境さえ整えれば成果を出せる人なら、環境を重視すればいいと思います。

藤原:
個人だけでなく、部署も同じです。その部署のスタッフそれぞれの円グラフの合計を見て、「この部署はこういう人が多いから、これを用意してあげよう」と考えるという感じです。

倉内:
非常に興味深い話ですね。チーム作りは採用も非常に重要だと思いますが、これまでの採用活動は、どんな点を意識してきましたか?

藤原:
僕はとにかく、人とたくさん会って相手を見極めるようにしています。今年からはやめましたが、それまでは一次面接からすべて僕が見ていました。そのおかげか、僕は前職も含め、採用で失敗したことがほぼありません。

倉内:
そう言い切れるのはすごいですね。欲しい人材を見抜くための、コツがあるのですか?

藤原:
まず、職務経歴書を見た段階で、その人がウソをついているか分かります。すごい実績がズラリと並んでいるけれど、これはあなた一人の成果ではないよね?と。

あとは、物事に対する考え方もじっくりと質問します。僕は「自責の人」かをとても重視していますが、会話をしているとなんとなく、自責・他責の傾向が見えてくるんです。

倉内:
具体的に、会話のどんな部分からそれを感じ取りますか?

藤原:
「ベンダーが」「会社が」と、第三者が主語になることが多い人は、他責の傾向が強いです。それと、チーム全員が同じような考えの人で固まらないようにもしています。僕はなるべく、多様な考え方が組織に集まるようにしています。

実は前職の時、社運をかけた新店舗を作るというプロジェクトで、スター社員ばかりを集めた時がありました。その結果、チームはプロジェクト発足後すぐに崩壊してしまいました。

チームとして働く以上、点を取るエースだけでなく、エースをサポートする存在も必要です。チーム全体で、どうやってパワーを発揮するかという観点が、その時はありませんでした。

ムロヤ:
過去の失敗から、現在のチーム作りの考えに至ったのですね。

「10万円で最高のコーデを提案してくれる」が最高の顧客体験

倉内:
OMOでは、デジタル(EC)での顧客体験はもちろん、店舗での顧客体験も大切だと思います。藤原さんは、店舗ならではの体験価値をどのように考えていますか?

藤原:
ECと店舗の大きな違いは、距離感にあると思います。ECは目の前にショップがあり、そこで求められるのは、表示スピードやUXなど、機能面での便利さです。一方、店舗は皆さんの家から数百m~数km離れた場所にあります。わざわざ店舗に足を運ぼうと思っていただくには、それ相応のリッチさが必要です。

そこで重要となるのが、パーソナライズドされた体験です。僕が個人的に感じる最高の店舗体験は、「10万円渡したら、最高のコーディネートを提案してくれる」だと思っています。ECでは、この機能は代替できないでしょう。一種のコンサルテーションに近い接客ですが、ユナイテッドアローズはこれができるはずです。

倉内:
それだけ、アイテムが豊富で、優秀な店舗スタッフもそろっていると。

藤原:
ファッションのことが好きな人はたくさんいますが、ファッションを「分かっている」という人は少ないと思います。店舗スタッフは皆、ファッションを熟知しています。だからこそ、「10万円渡すので、あとはお任せします」と言ってくださるお客様が増えれば、その分良質な体験を提供できるはずです。

ムロヤ:
店舗で買い物をしていて、「シャツを買うつもりだったのが、気づいたらパンツも買っていた」という経験をしたことがあります。その時に感じたのは、不要なものを買わされたという不快感ではなく、すごくいい気持ちで買い物ができたという爽快感でした。

こうした買い物をできることは、店舗を利用する方にとって、すごくいい体験なのかもしれませんね。

藤原:
店舗の買い物の満足度は、そうした体験に左右される気がします。

データを現場に反映し続けて、最高の顧客体験を提供し続けていきたい

倉内:
入社後、藤原さんは多くの施策を展開してきたと思います。その中で、ユナイテッドアローズという組織がもっとも変化したのはどんな部分ですか?

藤原:
店舗スタッフの行動が、もっとも変化したと思います。僕は今日まで、代表取締役社長の松崎善則と共にOMOを推進してきました。それに対して、「OMOって大切なんだね」という認識が徐々に広まり、現場での行動にも影響を及ぼし始めているのに、とても驚かされています。

倉内:
ある意味、デジタルとはもっとも遠い存在である店舗で、もっとも大きな変化が起きているのですね。なぜ、現場にもOMOの重要性が浸透してきたのでしょうか?

藤原:
OMOに取り組むことで、店舗にお客様が来てくれるということに気づき始めたんだと思います。集客にいい影響があるのなら、ちゃんと取り組もう。そう考える人が増えたのかなと。

ムロヤ:
店舗スタッフは、具体的にどんなことに取り組むのでしょうか?

藤原:
三つのコンテンツを発信しています。

一つ目は「スタッフのスタイリング」で、ECと連携したコンテンツ。

二つ目は、「個人のSNSアカウント」。

三つ目は、公式サイトにある「スタッフコンテンツ」というキラーコンテンツです。カメラマンも入れて、特に頑張っているスタッフに密着した特集を出しています。

どのコンテンツも、基本的に僕は口を出していません。販売担当者や広報担当者がコントロールして、「ユナイテッドアローズっぽさ」が演出されるように意識しています。

倉内:
なるほど。それにしても、藤原さんは責任を持つ部分と任せる部分を、しっかり線引きしている印象です。

藤原:
任せているというか、リスク管理まで意識して行動するというのが、スタッフの責任だと思っているんです。それが皆さんの業務であり、責務でしょうと。その代わり、スタッフが責任を果たすべき環境を作るのが、僕の責務だと思っています。それはオペレーション全体の設計かもしれないし、評価制度の設計かもしれません。

100%全員が納得できる環境を作るというのは、難しいと思います。そこにどこまで近づけられるかが、僕たちの腕の見せ所なのでしょう。

倉内:
現場で意識と行動が変化しているということは、そうした環境づくりがうまくいっているとも言えますね。今後、OMOをさらに推進させていくことで、ユナイテッドアローズがどんな組織になれば理想的だと藤原さんは考えていますか?

藤原:
「洋服を買っていただく」ではなく、「ユナイテッドアローズというブランドを買っていただく」という点まで、意識を拡張させていきたいです。仮に僕たちがカレーを販売したとしても、今と同じ接点でお客様とつながることができるかどうかが、とても大事だと思っています。

そのために、重要となるのは顧客の行動データです。データをしっかり収集して、お客様一人一人に完璧にパーソナライズできている状態を作れれば、お客様にさまざまな体験が提供できます。代表的な体験が「店舗受け取り」です。ECでお客様が商品を選び、店舗で取り置きして、店舗で受け取っていただく。簡単に見える一連の動きも、データがあってはじめて可能となります。

お客様のことをデータから検証して、本当に大切にすべきお客様のことを理解して、素敵な体験を提供する。この理想的な状態を、OMOで実現していきたいです。

ムロヤ:
デジタルを活用してオンラインで盛り上がりを作るだけでなく、そこで得られたデータを、オフラインでも生かしていくと。理想形に対して、今の進捗度は何%だと思っていますか?

藤原:
ゴールと言える形は存在しないので、まだまだ道半ばだと思います(笑)。テクノロジーは進化し続けますし、お客様のニーズも尽きることはありません。見えないゴールを追いかけるように、どこまでも理想を追求し続けなくてはいけない気がします

お客様がどの商品をライクしたのか、どの記事を読んでいるのか、どのお店で誰の接客を受けたのか…。こうした行動データをつぶさに集めて、そこで得られた知見を、お客様にサービスとしてお返ししていく。それを続けて、顧客体験を磨き続けることで、お客様との関係もより深くなっていくのだと思います。

倉内:
時代の変化、技術の進化を加味しながら、常にゴールをアップデートしていくということですね。

藤原:
そうですね。非常に難しいことですが、なんとか続けていきたいです。

倉内:
ちなみにSNS運用については、今後どうしていきたいと考えていますか?

藤原:
理想を言うと、自社を中心とした運用が必要なくなるのが一番いいなと思っています。お客様からいかにUGCが生み出されていくかが、今後のソーシャルメディア運用で重要な観点だと思うからです。

ソーシャルメディアはコミュニティです。コミュニティの中で、お客様と関係構築できているというのは、UGCが数多く生まれているという事と同じだと思います。それに、ソーシャルメディアは常に情報のアップデートが必要で、自社で運用するにも限界があります。人的リソースの限界という点で考えても、UGCを生み出すことの重要性が増している気がします。

一方で、ユナイテッドアローズには「数」という強みがあるので、そのアセットを活用しつつ、戦略的に運用できることもあると考えています。その点については、地道に実績を積み上げていきたいですね。

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