SNSコラム

才流が目指す「メソッドカンパニー」とは? 2022年のコンテンツマーケティングを語る。才流・栗原康太×ホットリンクいいたかゆうた #ザ・プロフェッショナル 

2022年02月02日
SNSコラム | ザ・プロフェッショナル

最終更新日:2022年9月20日

ホットリンクCMO・いいたかゆうたが、各業界のトッププレーヤーを迎えてお送りする対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」。今回のゲストは、株式会社才流(サイル)代表取締役社長・栗原康太さんです。

すでに「BtoBマーケティングといえば」という評価を固めつつある才流さんですが、栗原さんの目指す世界はBtoBに留まらず「方法論のインフラ」になることだとか。

聞き慣れない「メソッドカンパニー」の定義から、栗原さん・いいたかが考える「コンテンツ発信の巧みな会社」の話まで縦横無尽に伺いました。(撮影:八木竜馬 進行・執筆・編集:澤山モッツァレラ)

メソッドカンパニーとは何か?

いいたか:
才流さんは、「メソッドカンパニー」を掲げていますよね。読者の方にはそれほど馴染みのない単語かなと思うので、どういうものかご説明いただけますか?

栗原:
そうですね、才流はメソッドカンパニーについて「仕事に関する様々な、再現性ある方法論を開発し、発信する会社」だと定義し、目指す理想像に掲げています。 

いいたか:
面白いですね。メソッドカンパニーの構想を思いついたのは、いつ頃からなんですか?

栗原:
4年前ぐらいですね。弊社は2016年の創業時、フリーランス人材と企業のマッチングという現在とは違うサービスを提供していました。2018年3月までにいろいろあってサービスをすべて閉じ、ゼロから何をやるか模索したんです。

結果、「せっかく会社をやるなら、意味のあることをやりたい」と思いました。そして、僕にとってそれは「インフラを作りたい」ということだったんです。

――「インフラ」といっても、物理的なものではなさそうですね。

栗原:
そうです。50年前、100年前に生まれていたら、水道、電気、ガス、通信などの生活を支えるインフラを作ることが意義深かったと思いますが、現代ではそれらのインフラは整備されています。

先進国ではほぼ衣食住足りてるといえる現代において、今後も世の中に必要なものがなにかと考えたときに、企業や個人が何らかの課題解決や自己実現のために事業づくりやモノづくりを続けることは変わらないと思ったんです。仕事を通じて課題解決や自己実現に取り組む人たちが一刻も早く、理想を実現できるよう、その裏側をノウハウで支える企業になれたら意味がありそうだなと。

いうなれば、ノウハウのインフラであり方法論のインフラ。そこから「メソッドカンパニー」という着想を得ることができました。

いいたか:
確かに、面白い発信をしている企業や個人は多い一方、ノウハウや方法論として確立できていないケースは結構あると思います。メソッドというのは、コンサルティングを通じて得た知見から抽出したものを活用しているのでしょうか?

栗原:
そうですね。当該ジャンルに詳しい人を採用し、プロジェクトを担当しながらPDCAを回してもらい「この業種ならこう」「プロダクトのこのステージならこれ」というノウハウを抽出してもらっています。それを都度ブラッシュアップし、発信していくやり方を取っていますね。

メソッドカンパニーの到達点は?

いいたか:
興味深いですね。メソッドカンパニーは、どういう状態になれば完成だと考えていますか?

栗原:
まずは、メソッドのテーマ数を100個以上に増やしたいと思っています。現在はBtoBマーケティングと営業が少し、という状態なので。今後扱いたいテーマは採用、組織、エンジニアリング、新規事業開発など多数ありますが、まずは100個ですね。

だいたい1テーマあたり15人の組織で扱いたいので、15人×100テーマで1,500人の従業員がいる状態になります。

彼ら・彼女らが全員毎月1本コンテンツを出せば、才流からだいたい月1,500本コンテンツが出ます。その状態になれば、「メソッドカンパニー」ぽくなるのかなと。

いいたか:
月1,500本はやばいですね(笑)。同じぐらい出している会社だと、それこそベイジさんが資本提携したクラスメソッドさんぐらいでしょうか。(参照

栗原:
クラスメソッドさんも凄まじい発信量ですよね。ライトなものを含め、年間数千本は発信されているんじゃないでしょうか。

――1,500本/月となると読まれない記事も出てくると思いますが、そこには拘泥しないということでしょうか?

栗原:
そうですね、記事を出すことをまずは優先します。あまり一記事あたりのPVは追いません。「これぐらいの量を出せば、何かが起きるのではないか」という感覚で発信します。

もちろん、一応ブレイクダウンして計算はしますけどね。この程度の本数なら、どれくらいの問い合わせにつながるか、とか。とはいえ、まずは月1,500本出すことを目指したいと思います。

いいたか:
すごいですね、ほとんど新聞社並の発信力だ。その理想から考えると、現時点での到達度はどの程度だと評価していますか?

栗原:
パーセンテージで表すなら、1.5%でしょうか。まだまだ先は長いな、という感覚です。

いいたか:
月1,500本はいつまでに達成したいですか?

栗原:
20年後です。1,500本というと途方もない目標に聞こえますが、年間5個ずつコンサルメニューを増やしていけば20年後には100個になります。このぐらいのタイムスパンなら、十分現実的な目標だと思っています。

ただ、一番難しいのはその領域の専門性を持つ人たちの採用ですね。BtoBマーケティングに関しては、初期にベテランを中心に良い人材を採用できました。これをあと100回やるのは大変ですが(苦笑)、ここの採用はキモだと思っています。

コンテンツ執筆者の評価制度はどうするのか?

いいたか:
コンテンツ発信をより活発化させる中で、コンテンツ制作者の評価制度はどのように考えていますか?

栗原:
今は何も検討していないですね。コンテンツに関してはノールックで今後も投資していく予定です。メソッドカンパニーを目指している以上、コンテンツを出すことは前提ですから。

もちろん、コンテンツをスムーズに作れるような仕組みは整えています。例えば、弊社は毎週水曜09:30~12:00までzoomをつないで「もくもく会」を行なっています。その時間帯は、ひたすらコンテンツを書く時間に当てるんです。

コンテンツのボリュームにもよりますが、現在は少なくとも1人あたり2カ月に1本はコンテンツが出せるように仕組み化しています。

いいたか:
みんなでZoomを開いて、一緒に記事を書くっていいですね。

栗原:
そうですね、この制度はかなりワークしてると思います。弊社は採用要件に「コンテンツを作れる」を入れているのですが、業務が忙しくなるとどうしてもコンテンツを作る手は止まってしまいがち。

サボっているわけではもちろんないのですが、コンテンツが出せなくなることでお互いストレスを抱えることになるんですね。それを解消するために、「もくもく会」のような仕組みは必要でした。

いいたか:
他に、コンテンツ制作のための仕組みはありますか?

栗原:
毎週やっているのは「プロセス改善会議」ですね。うちはコンサルのやり方をかなりパッケージ化しており、「こういうふうに進めて、こういう提案をすれば成果は出る」というメソッドはすでにあります。

ただ改善の余地はあるので、Slackにコンサルタントがクライアントワークをしながら得た気づきを投稿できるチャンネルを設けています。そこの投稿を拾って、コンサルティングの提供プロセスを磨き込む会議を週イチでやっています。サービスの質も上がりますし、そこからコンテンツの素になるメソッドが生まれます。

これも、すごくワークしていると思いますね。カッコよく言えば、トヨタさんのカイゼンに近いものです。

いいたか:
いいですね。メンバーの状態によってはSlackの投稿数に上下が発生することもあるのかなと思ったのですが、実際どうですか?

栗原:
実際、投稿する人・しない人はいますね。もともとのメソッドは実務で使うもので、すでに完成度は高く、投稿がなくても実務上の支障はありません。ただ、投稿数が今後もっと増えればいいなとは思っています。

あとは、先ほども述べましたが、各コンサルチームは1ジャンルにつき10~15名程度で抑える予定です。

いいたか:
15名というのは、何か意図があるんですか? 例えば倍の30人なら、そのジャンルの投稿数も倍になるのではという観点からの質問ですね。

栗原:
大きく分けて二つの観点から、現状では15人程度がベストだと思っています。

一つは、メソッドの種類をもっと横に広げることを優先するため。30人採用するエネルギーがあるなら、3~4テーマ広げたいなと思います。

もう一つは、マネジメント観点ですね。20人、30人の壁ってあると思っていて、そのぐらいの人数だとマネジメントが必要になります。そうすると、採用要件に「マネジメントできる人材」も入ってくるので。

15人程度までならマネジメントは必要ないし、専門性の高い人材を採用していけばいい。採用要件としても、それがいいのかなと。

メソッドはどこまで無償で発信する?

いいたか:
開発したメソッドは、すべて無償提供されますか? それとも、どこかで有償化の線引きを考えていますか。

栗原:
現時点は、すべて無償提供するつもりでいます。

一時期、研修などで一部有償提供していたこともあり、有償化を検討したことはあります。ですが、会社としてのビジョンを「メソッドカンパニー」に定めてからは、バラまくことにまずは専念しようと思いましたね。

いいたか:
いいですね、立ち返る場所があるのはわかりやすいですね。

ホットリンクも一時期、「これ有償販売したらメチャ売れるかな」という気持ちはあったんです。実際、メソッドを販売している人たちもいたので。

ただ、それをやると価値が値段以上にならないし、広がっていかないんですよね。

栗原:
そうなんですよね。粗利は高いですし、「もうちょっと儲けよう」というよこしまな気持ちが出そうになりますが(笑)。そこはメソッドカンパニーとして、無償提供にこだわりたいと思います。

栗原さんが見る「コンテンツ発信のうまい企業」2選

いいたか:
ここからは、メソッドカンパニーを目指す栗原さんの観点から見て、コンテンツ発信が巧みだと思う企業について伺いたいと思います。気になる企業はありますか? 

栗原:
幾つもありますが、まずは二社挙げさせていただきます。

一社目は、先ほども少し名前が出ましたがクラスメソッドさんのDevelopersIOですね。

直近の数字は存じ上げないのですが、月間300万PVぐらい、累計の記事総数は3万本以上を出しておられる会社です。ブログ更新はリード獲得目的もあると思いますし、社員育成やキャリア形成の目的もあるようです。

実際、コンテンツってリード獲得だけでは続かないんですよね。クラスメソッドさんは育成や社員さんのキャリア形成をセットにしていることで、永続的にコンテンツが出る仕組みを作られていると思います。

――改めて拝見しましたが、1日で1ページが埋まってしまうぐらい活発な更新がなされていますね。

いいたか:
すごい更新頻度ですよね。

栗原:
二社目は、東証一部上場の社会人教育・コンサルティング企業であるインソースさんです。月に200本以上コンテンツを作成し、年間5,000件以上のお問い合わせを獲得されているようです。

やっていることはシンプルで、研修関連のコンテンツを作成し、「インサイドセールス 研修」「新人研修」などの検索キーワードを徹底的に取っていくこと。企業の研修担当者さんが研修会社をネットで探すと、主だった検索キーワードではどこでもインソースさんが出てくるんです(笑)。

いいたか:
半端ないですね。主要キーワードは軒並み押さえちゃってる状態なんですね。

栗原:
こういう状況を、20年近くかけて築き上げた会社なんですよね。競合はなかなか戦うのが大変じゃないかと思います。

一部上場企業なので、ドメインパワーも非常に強いです。この差は、なかなかひっくり返せないんじゃないかなと思いますね。

インソースさんの事例に関しては「やりきること」の尊さを感じます。研修系のキーワードで上位を取ろうと考えた人は、世の中に何百人、何千人といたと思うんです。でも、それを会社全体でやりきっているのが本当にすごいですね。

マーケティング支援企業で気になる事例は?

いいたか:
マーケティング支援企業に絞ると、どこが思い浮かびますか?

栗原:
ホットリンクさんの発信力は素晴らしいなと、常々思っていますよ。

いいたか:
ありがとうございます、言わせた感が半端ないですが(笑)。 

栗原:
これはフラットに思っていることですね。何がすごいかというと、獲得系とブランディング系の施策がバランス良く打ち出されていることですね。

ホットリンクさんの場合、獲得系でいうとメルマガやセミナー、ブランディング系でいえばこの『ザ・プロフェッショナル』や書籍、PR TIMESなどでプレスリリースされている空中戦的な発信があると思います。

特に、後者をやりきっているマーケティング支援企業は少ないと思うんですね。

いいたか:
少ないと思いますね。時間がかかりますし、成果も見えづらいので。どうしても、成果に近い方に行ってしまいがちです。近くだけを見ればウェビナーやってリストを取って、メルマガを送ってを繰り返せばいいとなるんですよね。

栗原:
『ザ・プロフェッショナル』もそうですし、お酒を飲みながらやる『ノミナー』もすごく面白いですね。

――ありがとうございます、励みになります(笑)。

いいたか:
獲得系についてはあまり表に出さない部分もありますし、そもそも「このコンテンツを広めたい」という意識のほうが強かったりしますね。 

例えば、21年末には動画で学べるインスタ系パッケージを無料でお出ししました。もちろんリード獲得目的ではありますが、それ以前に「このコンテンツを見てもらいたいな」という感覚で出しています。

コンテンツが正しく広まった結果、ホットリンクを知ってもらえるという要素をより強く考えている部分はあります。

栗原:
その考え方も勉強になります。いいたかさんから見て気になる会社はありますか?

いいたか:
それでいうと、今はフィードフォースさんと合併しましたがアナグラムさんですね。運用型広告の会社として、突出した存在だと思っています。

コンテンツの質が素晴らしく高いうえ、代表取締役の阿部さんが表に出なくても質が保たれているんですよね。

広告系のアップデートがかかったら即座に、しかも深い内容の考察記事が上がりますし。広告に関してはアナグラムさんのサイトを見ればいい、という状態を作れているのではと思います。

加えて、言うべきことを言う企業体質も魅力的です。阿部さんは起業家として尊敬する先輩でいつも新しい気づきをくださります。

栗原:
傑出していますね。勉強になるなあ。

いいたか:
とはいえ、バイネームで出てくる企業はまだまだ少ない気がしますね。toCでいうと、メルカリさんは「メルカン」を筆頭にすごくコンテンツの出し方がうまくて、compassコミュニティも2022年1月現在で17,000人を超えています。

とはいえ、山田進太郎さんや小泉文明さんが強くコミットした結果の成功例だと思うので。トップのコミット度合いによって、コンテンツマーケティングの成否は大きく左右されそうですね。

栗原:
そうなんですよね。コンテンツマーケティングって、なかなか再現性の低い手法だなと思いますね。コミットするかどうかで、成果が大きく変わってくるので。

いいたか:
結果、わかりやすく「コンテンツSEOしましょう」となりがちだし、キーワード上位を取ることが目的化してしまいがちですね。

栗原:
toBは特に、コンテンツSEOをやってもリードの質が低いケースも多く、たとえば案件単価が重要になる人月系ビジネスには向きません。ソフトウェアビジネスで、リードの質に関係なく売上があがるならいいんですが。

メソッドカンパニー才流の将来像は?

いいたか:
最後に、メソッドカンパニーとなった才流さんが描く将来像について教えてください。 

栗原:
観点は二つあります。一つは、日本中のほとんどの会社にノウハウをお届けすること。

現在、弊社が提供するコンサルティングでは年間40社程度しかご支援できません。社員数が今後どれだけ増えても、日本全体で約264万社ある中ではとても支援しきれないでしょう。

ですが、コンテンツを拡充していくことで、あるいはそのうち200万社さまにはコンテンツを通じて支援できる可能性があるのではと思います。

もう一つは、そのために質の高いメソッドを提供し続けること。正しいやり方を知っているかどうかで、成果は大きく変わります。

知っていればすぐに80点を取れるような、時間とコストを大幅に削減できる、ベストプラクティスやセオリーを提供し続けたいですね。

いいたか:
本日は、お忙しい中ありがとうございました!

 

今回の「ザ・プロフェッショナル」もお楽しみいただけましたか? 本シリーズでは、今後も各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルをお招きして対談を行ないます。過去の記事はこちらからご覧ください。

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