SNSコラム

20年後、南葛SCはジャパニーズドリームを実現する。#ザ・プロフェッショナル

2021年08月26日
SNSコラム | ザ・プロフェッショナル

各業界で活躍するさまざまなプロフェッショナルとホットリンクCMO・いいたかが、SNSやマーケティング、ビジネスのあり方について考える対談シリーズ「ザ・プロフェッショナル」。

今回のゲストは株式会社TSUBASA代表取締役であり、南葛SCゼネラルマネージャーの岩本義弘さんです。

『キャプテン翼』ファンの方なら、クラブ名を聞いてピンと来られたはず。その名の通り、南葛SCは作者・高橋陽一先生がオーナー兼社長としてJリーグを目指す、実在するクラブです。

発足の経緯から、サッカーファンの中で注目の存在となっていた同クラブ。今回は、ブロックチェーン技術を利用したトークンプラットフォーム「FiNANCiE(フィナンシェ)」で、4,000万円以上の資金を調達したことが話題になっています。

異色のキャリアで、クラブ経営に携わる岩本さん。その目には、どんなクラブの未来が見えているのでしょうか? (執筆:サトートモロー 撮影:小林一真 編集:澤山モッツァレラ)

岩本義弘/株式会社 TSUBASA 代表取締役/『キャプテン翼』事業/『REAL SPORTS』編集長/南葛 SC GM/インタビュアー/サッカー解説者/Yahoo!JAPAN 業務委託社員(東京 2020 担当)/いちご株式会社顧問/F リーグ実行委員/日本パデル協会理事/前職はフロムワン代表取締役兼サッカーキング統括編集長(在籍期間 1998.7-2017.2)

クラブ経営は、中小企業経営と似ている

いいたか:
まずはクラブ発足の経緯から伺います。南葛SCは、どういった形でスタートしたんですか?

岩本義弘(以下、岩本)
そもそもは、葛飾ヴィトアードという名称で活動していたクラブが前身です。2013年、「南葛飾からJリーグを目指そう」と活動していたクラブの後援会長に、『キャプテン翼』作者の高橋陽一先生が就任しました。

僕は当時からすでに高橋先生のマネジメントとして関わっており、外部の立場からさまざまな意見を出していました。そして2018年に「そろそろ中に入って(経営を)やりませんか?」と誘われ、GMに就任しました。現在はチーム強化から資金調達、広告などクラブ経営の全般に携わっています。

関わってみて思ったのは、中小企業の経営ととても似ていること。僕自身はサッカークラブ経営の経験はありませんでしたが、『サッカーキング』という媒体を運営する会社で社長を務めていた経緯があり、仕事内容はすんなり飲み込めました。メディアの運営経験も長かったので、スポンサーサイドの気持ちもわかりますし。

いいたか:
南葛SCの経営で、参考にしている企業やサッカークラブはありますか? 

岩本:
サッカークラブでいうと東京ヴェルディさん、湘南ベルマーレさんといったJリーグクラブでしょうか。共通しているのは親会社に強い企業がなく、損失補填がなされないチームということです。

僕らはアマチュアリーグでは「資金力豊富なクラブ」と見られていますが、全然そんなことはなく。僕が経営する会社(TSUBASA)の利益の8割をクラブにつぎ込んでいるぐらい、まったく余裕がない状況です(苦笑)。

いいたか:
「高橋先生がついているんだから、資金が潤沢なんだろう」と思われているのかもしれませんね。

岩本:
今回の取材の直前、2021年7月にバリュエンスホールディングス株式会社さんが株式取得(出資比率33.5%)を決めてくれたときは、正直言ってホッとしました。「資金が枯渇する前に、やっと頼もしいパートナーが見つかった」と。

トークンによって4,200万円の調達に成功

澤山:
そういう経緯もあって、トークンの発行を決められたんですね。

岩本:
そうですね、2021年6月にFiNANCiEでクラブトークン(※)の発行・売り出しを開始しました。結果、初期募集期間でのサポート総額が4,200万円を超えました。 

※トークンとは:さまざまな定義があるが、ここではブロックチェーン技術を利用して発行された仮想通貨のことを指す。FiNANCiEでは、サポーターはクラブへの応援の証として、各クラブが発行する「クラブトークン」を購入できる。トークン購入により、クラブごとに設定した特典を得られるほか、売買が可能。その履歴により価格が上下する

このうち、8割がクラブに収益として入ります。南葛SCの年間予算は、2021年度で約1億5,000万円です。予算規模で考えれば、とても大きなボーナスになりますね。

いいたか:
「初動で大きく動いた」というのは、重要なポイントだと思います。南葛SCでは、どのように工夫して期待感を生み出したんですか?

岩本:
高橋先生のイラスト入りサインが書かれた南葛SCのユニフォームを特典としてつけたプランを、50万円・限定20個で発行しました。結果、約2日で完売になり、3日で約2,000万円まで集まりました。このスタートダッシュが、「みんなが買っているなら、私も」という消費者心理を刺激したのではと思います。

加えて、南葛SCのトークンは(2021年8月6日現在)値崩れしていないことも特徴です。価格が下がったら誰かが買う、というサイクルが回り続けています。長期保有を前提にしている方が多いのかな、と思っています。 

FiNANCiEの導入を決意した理由

澤山:
数あるプラットフォームの中で、FiNANCiEを選んだのはどういった理由からですか?

岩本:
ライバルでもあるSHIBUYA CITY FCさんが、トークンを導入して大きく伸ばしていることを知ったことですね。

「すごいな」と思って見ていたタイミングで、NFTに詳しいdoublejump.tokyo株式会社さんにFiNANCiEの担当者さんを紹介いただいたんです。「僕らもすぐ参入しよう!」と決めて、そこから約半月でローンチしました。

澤山:
すごいスピード感ですね。

いいたか:
SHIBUYA CITY FCの存在が、もっとも大きかったんですね。

岩本:
そうです。実は2019年にFiNANCiEができた際は、サービスとしてまだ厳しいかなと思っていたんです。ある程度成功のメドが立たないと、中途半端な形で終わるリスクがあるので。

澤山:
確かに。当時は「インフルエンサーの新しい資金調達プラットフォームなのかな?」と解釈していました。こんな形でサッカークラブが参入するとは、思わなかったですね。

岩本:
SHIBUYA CITY FCさんの動きを見て、すぐに湘南ベルマーレさんやY.S.C.C.横浜さんのトークンを購入し、勉強しました。クラブごとの特性や仕掛けを研究する、いい機会でしたね。

いいたか:
研究過程で、最初期にどう「盛り上がってる感」を演出するかという工夫を考えていったんですね。

岩本:
そうですね。最近参入したクラブも、いろいろな工夫を凝らしています。例えばアビスパ福岡さんは、スタジアムのVIPルームで観戦できる特典をつけています。「スタジアムを持ってるクラブはいいなあ」という感想です(笑)。

8月には株式会社フィナンシェの代表取締役CEOに、もともと同社親会社の創業者である國光宏尚さんが就任しました。今後、FiNANCiEはさらに面白い仕掛けを出してくるのではと期待しています。

トークンを発行すれば、バラ色なのか?

澤山:
ただ、当然ながらトークンは値動きします。実際のところ、サッカークラブが発行したトークンはどのような状況なのでしょう?

岩本:
今は、トークンが下げ止まらない状況が続くクラブがほとんどですね(2021年8月6日現在)。どのクラブも、運営はかなり大変だと思います。

いいたか:
(あるクラブのチャートを見ながら)うわ、これは厳しいですね……購入当初は価値があると思って保有していたのに、特典に魅力を感じなくなり、手放してしまったということでしょうか。

岩本:
それもあるでしょうし、投機目的の方が離れたという観点もあると思います。

個人的には、今の状況を面白いと感じています。お伝えしたとおり、南葛SCは値動きが少ない状況です。それだけでなく、クラウドファンディングをやる以上は「集めて終わり」では当然ないと思うんですね。

資金を提供いただいた以上、サポーターとの間に責任が発生するわけです。こうした緊張感を伴う関係性のほうが、良いものが生まれると僕は思います。

澤山:
「(流行ってるから)とりあえずやっとこう」みたいな参画だと、良いことはなさそうですね。

いいたか:
FiNANCiE、面白いですね。単なるブロックチェーン技術を活用したサービスという枠に留まらず、サポーターからの応援を形にできるところが。サッカーのサポーターって「無償の愛」という側面があったと思うんですが、トークン購入によってクラブ経営にわかりやすい形でコミットできるというか。

岩本:
そうですね、加えてサポーター同士のコミュニケーション機会が生まれているのもうれしい副産物でした。

FiNANCiEはアプリなので、「ストアにアクセスして、インストールして、トークンを購入する」というプロセスが難しい方もいるんですよ。その方に対して、デジタルに明るい世代のサポーターさんが教えてあげる、というコミュニケーションが発生しています。非常にありがたいことですね。

トークン購入者限定ルームでは、サポーター同士の意見交換も活発で、僕たちにもさまざまな意見が届いています。閲覧者が限定された場所なので、心理的安全性が確保され、意見を言いやすい環境なのかなと思っています。

いいたかが、南葛SCに参画するなら

澤山:
南葛SCさんは現在、関東2部リーグ所属です。Jリーグは1部リーグを「J1」と呼んでいますが、関東2部リーグはさしづめ「J6」。そのクラブが、ここまでの動きをしているのは異例ですね。

岩本:
そうですね、ありがたいことに。今後、チームはまずは関東1部リーグ、そして近い将来、J3の一つ下であるJFL(日本フットボールリーグ)昇格を目指しています。

JFLからJ3に昇格するクラブ要件に「平均動員数は2,000人以上」とあるのですが、南葛SCはすでにFiNANCiEで1,000人以上のコミュニティができています。この数字は、今後のクラブ経営において非常に大きなアドバンテージとなるでしょう。

一方で、南葛SCはまだまだ葛飾というローカルエリアのクラブに過ぎません。選手たちには「商店街を片っ端から回って、『下町パートナー』を増やそう」と伝えています。これは、一口5万円からのスポンサーとなるものです。FiNANCiEと並行して、地域への働きかけも欠かせないですね。

いいたか:
スポーツは地域に根づくものなので、オンラインにどれだけ取り組んでも「規模を広げられない」という壁にぶつかると思います。そこで自分たちはどうするか、という解をクラブや選手が持っているというのはすごく重要なことですよね。

岩本:
いいたかさんは、サッカークラブに関わらないんですか?

いいたか:
やりたいと思いつつ、まだ取り組めてはいないですね。

岩本:
ぜひ南葛SCで一緒にやりましょう(笑)。僕らも、まだまだたくさんの仲間が必要です。しかもいいたかさん、葛飾区リーグでプレーしていた経験もおありだとか。

いいたか:
知り合いに誘われて入っただけですが(笑)、葛飾区リーグ1部でプレーしていました。なんだかんだ、毎回優勝争いをしていましたね。

澤山:
仮にいいたかさんが南葛SCに参画して、SNS戦略に取り組むならどんなことをしますか?

いいたか:
やはり、ファンからのクチコミをどう広げ、どうクラブの価値を高めるかを工夫しますね。

プロスポーツのSNSって難しいんですよね、基本的にお客さんが撮った写真をSNSに投稿するのが禁止されているので。とはいえ、スポーツはユーザー発信との相性が抜群に高いですし、選手が活用することもできます。もろもろの規制が緩和すれば、シンプルに「ユーザー発信をどう取り扱うか」にフォーカスできるようになるかなと。

SNSが当たり前となった今、選手はできるならやった方がいい。それがスポーツの発展にも繋がるし、個人としてもずっと現役ではいられないわけで、セカンドキャリアにもプラスになるので。

「日本でもっとも価値のあるクラブ」を目指したい

澤山:
南葛SCさんは、今後どのような目標を立てていますか?

岩本:
「10年でJ1昇格」と言いたいところですが、さすがに難しいかもしれません。それでも20年以内に達成したいですし、実現できれば日本でもっとも価値の高いクラブになれると思っています。

バリュエンスホールディングスさんに参画いただいた7月、コンサルティング会社の正式な調査によって南葛SC全体の企業価値を算出してもらいました。結果、有形資産10億円、無形資産集めた時価総額は30億円と試算されたんです。

いいたか:
へー!

岩本:
現時点でもそれぐらいの価値はあるわけなので、Jリーグへ進出すれば高橋先生の『キャプテン翼』を使えるという価値がさらに希少性を生むと思います。 

2021年は『キャプテン翼』連載開始40周年を記念し、Jリーグ全クラブとのコラボグッズを販売しました。でも、仮に南葛SCがJリーグに進出すれば他クラブは『キャプテン翼』を扱えなくなり、僕らが唯一扱えるクラブになるわけです。

また、世界との接点を持てるという意味でも特殊だと思います。実は海外の企業からも、「南葛SCのパートナーシップに興味がある」という打診は受けているんです。

澤山:
半端ないですね(笑)。

岩本:
日本でも内田篤人や中村憲剛を始め、『キャプテン翼』好きの選手・元選手はとても多いです。でも、実は海外のほうがこの作品の価値は高いんですよ。

澤山:
実際、あのイニエスタ選手が2019年に四ツ木駅「キャプテン翼」特別装飾完成記念オープニングセレモニーのオフィシャルサポーターに任命され、京成電鉄四ツ木駅の構内にわざわざ来たわけですもんね。

岩本:
南葛SCが日本を代表するようなクラブになったとき、海外戦略もより積極的に動ける可能性が見えてきます。海外の企業、海外のクラブとも提携していけたらいいなと思っています。トップチームはもちろん、アカデミーなど育成においても。

僕は常日頃から、FCバルセロナやユベントスなど海外トップクラブと仕事で関わりを持っています。僕の仕事や『キャプテン翼』で生まれた海外とのつながりを、南葛SCに還元していきたいですね。

澤山:
実現すれば、まさにジャパニーズドリームですね。今回はお忙しい中、ありがとうございました!

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