SNSコラム

コロナ収束を見据えて日本企業が今できることは? 中国企業のプロモーションから学ぶ、自粛ムードに陥らないための施策【トレンドEXPRESS代表・濱野智成氏インタビュー】

2020年03月19日
SNSコラム

新型コロナウイルスが世界中で流行が進んでいるなか、消費や経済への打撃に対する懸念や不安が高まっています。

国内でも収束のめどがなかなか立ちませんが、現在の中国国内の消費事情や景気対策が気になるところです。

そこで、ホットリンクのグループ企業であり、中国市場を対象としたソーシャルメディアマーケティング支援を行う株式会社トレンドEXPRESS代表・濱野智成さんに、弊社CMOの飯髙が緊急インタビューを行いました。

濱野さんいわく「中国では感染抑制の段階に入っており、消費に関しても前向きな動きが目立ち始めてきたように見える」とのこと。
中国企業が行った対策や施策を、日本企業はどのように参考にできるでしょうか。

濱野智成。株式会社トレンドEXPRESS代表取締役社長。Deloitte Japanで経営コンサルティングに従事後、ホットリンクに参画。グローバル事業や経営戦略、事業開発、戦略人事をCOOとして統括。その後トレンドEXPRESSを分社化させ、代表取締役に。
Twitter:@tomohamano 

抑制が効きつつある中国 カギは「非接触社会」など徹底した感染対策か

飯髙悠太(以下、飯髙):
中国国内の新型コロナの状況って、今どんな感じなんですか?

濱野智成(以下、濱野):
実は今、中国はすごく抑制された状態になってます。新規感染者数も落ち着き始めていて、これは百度が公開しているデータなんですが、3月7日以降は感染者数も50人未満という状況です。
新規感染者もかなり少なく、グラフで見ると右肩下がりになってますね。

<データ元:百度疫情实时大数据报>
トレンドEXPRESS「コロナウイルス対策セミナー」資料より引用

濱野:
一方、中国以外の国に関しては、感染拡大が始まってしまっています。グラフで見ると中国と世界の感染拡大の差がより分かりやすいです。右肩上がりになっている方が世界ですね。

<データ元:百度疫情实时大数据报>
トレンドEXPRESS「コロナウイルス対策セミナー」資料より引用

飯髙:
えげつないですね……。

濱野:
はい。皆さん日々のニュースでもご存じかとは思いますがイタリアやイラン、あとはスペインやアメリカなどで今感染がめちゃくちゃ広がってしまっている状況ですね。

飯髙:
中国経済にはどんな影響が出ているんでしょうか?

濱野:
これはUBSが発表している資料にもありますが、今中国では感染の抑制がうまく効き始めているので、中国から景気が反発していくことが予想されています。そのため、金融機関なども中国投資に踏み込み始めているんですが、その分中国経済が世界経済に対してリードしていく可能性も考えられますね。

飯髙:
なんで中国はここまで抑制に成功したんですかね?

濱野:
感染拡大対策の一例としては、コンビニや宿舎、オフィスなど、どこに入るにも必ず検温を行っていたことが挙げられます。熱がある時点で検査を促されるため、いってみれば感染の候補者から抑え込みにいったんですね。

それから、そもそも接触をさせない。感染候補者への在宅統制や外出禁止など、いわゆる「非接触社会」を浸透させました。家にいるときもマスクをつけたり、宅配サービスを頼むときも接触しないように玄関前に届けてもらったりなど、とにかく徹底して対策していたんです。

飯髙:
そこまで徹底してやったからこそ、抑制が効いている状態に持ってこれたんですね。

濱野:
はい。ここまでやって初めて抑制されたのが現状なので、世界的な流行を止めるためには、これぐらいのレベルの行動は求められるんじゃないかと思います。

「巣ごもり消費」が活発化 コンテンツを有効活用した中国企業の消費促進施策

飯髙:
中国国内の消費の現状についてはいかがですか?

濱野:
日本でも今「コロナは止めても経済は止めるな!」的な話が言われ始めてると思うんですが、中国でもやはりそうした言葉やそれに伴う動きはあり、自宅から出られない分「巣ごもり消費」が活発になっています。

例えば家でのフィットネス、DIY、ショートムービー、ゲームなど。在宅勤務やオンライン教育の広がりも、こうした巣ごもり消費に合わせて進化してます。

インターネット上の可処分時間が1.5倍ぐらい伸びているので、ネット上のコンテンツの閲覧数も比例して激増しており、エンゲージメントはかなり高まっている状況です。「巣ごもりでも消費したい」という中国国内のニーズが伺えます。

飯髙:
東日本大震災の時もそうでしたが、日本って有事の際に自粛ムードが発生しちゃうんですよね。看板から広告がなくなったり、CMが打たれなくなったり。

濱野:
広告に対してのコストダウンやキャッシュはしっかり確保しておきましょう、という意味では確かに一理ある戦略なんですけど、フリークエンシーが上がるときだからこそコンテンツを積極的に発信している企業も、中国では実は多いです。

飯髙:
成功事例としてはどんなコンテンツがあります?

濱野:
例えばエスティローダーなどの化粧品メーカーは、マスクで荒れた肌をどうしたら改善できるか? というコンテンツを発信しています。在宅で出来るスキンケアの発信ですね。

コンテンツを通じてエンゲージメントを高めていって、そのままECで購入につなげるという施策も展開しています。小売は当然下がってますが、逆にECがすごく上がっているような状況です。

あとはKeepというフィットネスアプリが、本来ならば有料の動画コンテンツを無料で公開していました。「在宅続きで運動不足を解消したい」という国民の悩みに応える形で、社会貢献も果たしつつ、結果として認知を大幅に増やしてアクセスもきちんと稼いでいます。

在宅時間が増えるからこその消費の変化として、iPadや布団の除菌グッズなどの衛生関連商品も売れ始めてますね。後ほどくわしく話しますが「衛生」という切り口での消費は、今まさに中国国内で広がっているところです。

いずれにせよ、新型コロナウイルスの影響で中国国内の消費行動やライフスタイルが変わってきているのはたしかですね。

春節明けのEC商戦、「婦人節」にも大きな打撃なく ライブ配信経由の売上は同期比200%超

濱野:
あと、3月8日(国際女性デー)は中国国内で「婦人節」と呼ばれていて、この日って中国のEC商戦の中でも影響力が大きいイベントなんですね。春節明け、つまり中国国内の年明け直後の一番大きな商戦なんですよ。

この商戦の結果次第で、現在の中国の消費状況がある程度把握できると思ったんですが、大きな消費の落ち込みはありませんでした。


トレンドEXPRESS「コロナウイルス対策セミナー」資料より引用

濱野:
こちらの資料の一部を日本語に意訳しますと、2万ブランドの売上が同期比100%増、ライブ配信経由の売上が同期比264%増、という結果になっています。

コスメの売上に関しては、キャンペーン開始の翌日には昨年の3日分を上回ったこともわかっていて、中国国内で人気の「完美日記(PERFECT DIARY)」という化粧品メーカーが婦人節に合わせて出した新商品40万個も、たった1日で売り切れました。

飯髙:
むしろ伸びている部分もあるんだ。

濱野:
今回婦人節がコロナの影響でコケなかったのは、ずっと家にこもりっぱなしでお金を使うタイミングが全然なかったので、お金を使おうとかモノが欲しいという意欲が非常に高まるタイミングと重なったのでは? と読んでいます。

飯髙:
うんうん。懸念していたよりも、中国国内では消費が盛んなんですね。思わぬきっかけでオンライン消費が拡大している状況なのは分かったんですが、今後もこうした消費の動きの余波や影響はありそうですか?

濱野:
そうですね。現在の中国国内のソーシャル上のクチコミやニュースなどで盛んに問われ始めているのは、ビジネスチャンスの文脈から「既存のさまざまな商品やサービスをオンライン化できないか?」ということですね。

その一例が、さっきも言いましたが、オンライン会議やオンライン学習です。

オンライン学習に関しては、学校で行う「学習」というだけではなく、幅広い意味での「学び」のコンテンツがこれからもニーズが増えていきそうだなと予想しています。源流である中国版TikTokの「抖音(ドウイン)」って、日常生活に役立つハウツーものの動画も多いんですが、ソーシャル上でこうした啓発的な教育コンテンツも増えつつあるので、学業だけに留まらない「学び」を得られる領域は拡大するかもしれません。

もっとも、テレワークにひもづくオンラインサービスや学びのコンテンツは日本でもコロナ収束に伴って需要が拡大しそうな領域かとは思います。

飯髙:
なるほど。現状、日本や世界の消費って停滞モードに入り始めていると思うんですけど、中国では消費がキチンと盛り上がっている理由はなんですかね?

濱野:
恐らく元々持っている消費意欲に加えて「不景気ムードにしたくない」という政府の意向もあるのでは? と。

補助金の支給や家賃補助など、中国政府も強力なバックアップをして経済を停滞させないような空気を作っている印象があります。ウイルスの流行に関係なく、消費は滞っているわけではないという社会的な空気がソーシャル上からも強く感じますね。

大事なのは「逆張り」の戦略 自粛モードに陥らないために日本企業が出来ることとは?

濱野:
あと、この時期だからこそ中国国内で積極的に打たれているプロモーションがありまして。
大きく3つの訴求軸が分かれるんですが、ひとつは「衛生的訴求」。それから「応援訴求」「愛情訴求」です。

健康や免疫に関する商材を持っている企業は、中国広告法に気を付けつつ「この商品にはこんな免疫力がありますよ」とか「こういう衛生的効果がありますよ」といったアプローチができる広告を作ったのが、衛生的訴求。

応援訴求は、不景気や経済的なダメージに対する応援メッセージを打ち出すことで、消費活性を促したプロモーションですね。ちょうど今外出ができるようになってきた時期なので、百貨店が「今こそたくさん買い物をしよう」という広告を出したり。

あとは「今ある幸せは当たり前じゃない」という観点から、家族や身近な人たちの健康を気遣おうみたいな、愛情訴求の企画も増えています。

もちろん過剰訴求には気を付けつつ、リアルタイムなインサイト把握のもとに展開されている印象です。

飯髙:
こういうプロモーションってコロナが落ち着いてから出てきたんですか? それとも落ち着く前からですか?

濱野:
いや、もうコロナが出始めた瞬間ですね。

飯髙:
日本ってこの辺、CMとかも含めて自粛ムードになってしまうんですよね……。こういう部分は、なんかやっぱり根深い問題だなあと思いますね。だって今お話聞いて思ったんですけど、企業としては自粛するよりもそっちの方が正しいやり方じゃないですか。自粛ムードに陥り切らないために、日本企業が参考にできる中国企業の施策とかってほかにもありますか?

濱野:
それでいえば、中国では「SNSの公式アカウントは止めない」という戦略を張っている企業が多いなと思います。
こういう時期だからこそ、でき得る訴求を考えてパブリックな情報をSNSなどで発信し続けるというところは、日本の企業も参考にできるかと。

広告配信やCMを辞めると一気に露出が減ってブランドエクイティも下がってしまいます。ソーシャルでのコンテンツを充実させていくことが、打てる手のひとつだと思いますね。

飯髙:
さっき仰ってた、可処分時間の伸びを活かすイメージですよね。SNSで発信し続けるなら別に広告費もそこまでかかるわけではないですし、こういう時期だからこそ違うアプローチの投稿をする手も全然アリだと思います。

濱野:
そうですね。大事なのは「逆張り」の戦略です。

エスティローダーなどの化粧品メーカーやKeepなどのフィットネスアプリ、EC商戦、3つの広告訴求など、ここまで色んな事例を紹介してきましたが、どれも「こういう時だからこそ」という「逆張り」の戦略が功を奏しています。自宅にいる時間が長くなっているからこそ、広告を逆に増やしているんです。

プロモーション成功のポイントは「コロナウイルスによる混乱緩和や感染防止のために、企業はどんな社会貢献ができるのか? この時期に今我々に何ができるのか?」という視点があったことですね。
不謹慎だと思われないよう、社会に寄り添うスタンスで配慮・注意をしながら、国内からの共感も得つつ、企業として利益を出すことも念頭にプロモーションを打つ。

このスタンスとやり方が、広告露出に深刻なダメージを与えずに済んだ結果に繋がったかと思います。

「日本が強みを持つ事業領域が失速してしまうことに強い危機感がある」 

飯髙:
「今できること」「社会貢献」「企業としてメリットがあるやり方」の3点を満たすプロモーションを打った、と。この方向性ならば、日本の企業も参考にできそうですね。

濱野:
広告露出の自粛もそうなんですが、日本企業に対してほかにも注意点があるとすれば、「出遅れないようにする」ということです。

これはさっきも少し言いましたが、「衛生」という切り口での消費が中国国内で広がっているんですね。つまり、今後は中国に衛生文化的ものが根付いていくだろうと。
例えば「手ピカジェル」みたいな商品は中国の文化にも馴染み始めていて、もうすでに中国国内の化粧品メーカーがそのような商品を開発しているんですね。

飯髙:
中国ってそこらへんの生産や開発のスピードが本当に速いですよね。

濱野:
はい。ただ、衛生商品ってもともとは日本がすごく強い領域ですよね。
今飯髙さんが仰ったように、中国の企業はスピード感が非常に速いです。だからこそ、日本国内で衛生商品を持っている企業さんは、今の時期からしっかりとプロモーションを組んで、出遅れないようにする必要があります。

濱野:
今、日本国内では売れすぎてしまっている商品もあるとは思いますが、であれば逆に売れすぎの反動を広告やPRの領域で上手く活かし、存在認知を広げることで、生産と購買を両立させていくことが本当に大事です。

今の時期から早めに手を打たないと、日本が強みを持っている事業領域がどんどん失速していってしまう可能性に、僕は今非常に危機感を感じています。

大事なのは、コロナ収束を見据えた準備を今からしておくこと

飯髙:
今って、インバウンドにも深刻な影響が出始めちゃってるじゃないですか。そのあたりって、濱野さんはどう考えてますか?

濱野:
まず、新型コロナウイルスによる混乱は絶対いつか収束します。その時期が今確実に見えないという点も含めて世界に不安が広がっているとは思うんですが、まずは、いつかちゃんと落ち着く、ということを言いたいです。

飯髙:
まあ、そうですよね。

濱野:
そのうえでインバウンドへの影響を考えますと、旅行者数は回復することが予測できます。

これは、中国国内のソーシャル上に書き込まれている、日本に「行きたい/行きたくない」のクチコミを整理したグラフです。


<データソース:新浪微博2020年3月2日~6日日本旅行への関心に関する書き込みを抽出整理>
トレンドEXPRESS「コロナウイルス対策セミナー」資料より引用

濱野:
当然、今はこんな状況なので94%の方々が「行きたくない」と言っていますが、コロナウイルス流行の収束後なら「行きたい」と言っている人が98%もいます。
今は外出を我慢している状況ですので、流行が収束したらその反動で日本を訪れる可能性は大いにあるのではないか? と僕は考えています。

また、訪日外国人向けのインバウンドマーケティングを専門にしていらっしゃる中西恭大さんはご自身のnoteで「過去にも同じような状況がありましたよね?」ということで、SARS・リーマンショック・東日本大震災後の訪日外国人観光客数の増減をグラフ化し、その推移を分析・考察しています。

中西恭大 「コロナウィルスの影響で減少した訪日外国人はいつ戻ってくるのか?」|note

グラフを見ると、確かに一時的にはガクンと下がっているんですが、だいたい半年から1年前後で元の水準に戻ることが分かっています。
SARSのときは7~8か月程度、リーマンショックは半年~1年、東日本大震災は約10か月で、訪日外国人観光客数が回復しているんです。

飯髙:
なるほど。今の悲惨な状況が1年先もそれ以降も、ずっと続くわけではないと。

濱野:
はい。確実に収束はします。

だからこそ、収束に向けた準備を今からしておくべきなんです。
ブランドエクイティを下げないためのブランディング活動はしておくとか、キャッシュを担保しつつ逆張りのプロモーションを行うとか、収束してから何か手を打つのではなく事前に対策を考えることが重要だと思います。

では肝心の収束はいつなのか? という点ですが、楽観的に考えた場合だと、夏休みぐらいには回復の兆しが見えてくるか、遅くても秋口ぐらいには回復しているんじゃないかなと僕は見ています。

飯髙:
コロナの流行は必ず終わる。その時を見据えて、企業はSNSでも広告でもPRでも、濱野さんがお話してくださったような施策もぜひ参考にしつつ、今自分たちにできる手を打って頂けたらなと思いますね。

濱野:
はい。今の状況では、日本や世界経済の方がやはり心配です。日本や世界では今「コロナは止めても経済は止めるな!」というよりも、どちらかというと「コロナも止めて経済も止めて」という状況になりつつあると思います。

なので、日本も世界も、コロナウイルスを抑制させつつ経済活発のムードを出していくことで、「コロナは止めても経済は止めるな!」という状況に移行させていく。

これが、今後の日本を含む世界経済の重要なテーマだと思っています。

濱野智成さん、本日はお忙しい中ありがとうございました!

濱野さんのTwitterアカウントはこちら。毎日旬な中国マーケティング情報ツイートされています。
Twitter:@tomohamano


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