「ROASが合わないので、今回は見送りました」
マーケティングの現場で、こうした判断を耳にする機会は少なくありません。限られた予算の中で成果を求める以上、数値で評価すること自体は合理的な判断と言えます。
一方で、SNS施策をはじめとした中長期の取り組みにおいて、ROASという指標が「やらない理由」として使われてしまっている場面も増えています。
本記事では、「ROASで測れないものは価値がないのか」という問いを起点に、短期と長期の指標の考え方や、挑戦できる組織であり続けるための意思決定の軸について、ホットリンク執行役員CEOの鈴木が解説します。
【プロフィール】

鈴木 脩平
株式会社ホットリンク 執行役員CEO
エン・ジャパン株式会社や楽天株式会社(現・楽天グループ株式会社)、KDDI株式会社を経て、2018年に株式会社ホットリンクに入社。ファッションメーカーや出版社、決済サービスを扱う企業などに、SNSマーケティングのコンサルティングを実施。2023年には書籍『SNSマーケティング7つの鉄則』(日経BP刊)を著者の一人として発売。執行役員COOを経て、現在は執行役員CEOを務める。
なぜ組織は挑戦しなくなったのか
SNS施策を新たに検討する際、従来の広告施策と同じ評価軸で判断してしまうケースは少なくありません。とくに、短期で成果につながるのかという視点だけで評価してしまいがちです。
SNSは本来、認知の拡大やブランドへの好意形成など、中長期で効いてくる価値を積み上げていく施策です。しかし、その特性を十分に考慮しないままROASで判断してしまうと、成果が見える前に施策そのものが止まってしまいます。
こうしたROAS思考に陥ることで、本来であれば事業成長につながる可能性があった長期施策に挑戦できなくなり、結果として気づかないうちに機会損失を生んでいる可能性があります。
「やらない理由」として機能してしまうROAS
ROASは本来、広告効率を測るための指標であり、短期的な成果を最適化するためのKPIです。しかし、短期施策と長期施策をROASで一律に評価しようとすると、現場では必然的に次のような判断が生まれます。
「ROASで測れないため、実施は難しいです」
「数値的な説明がつかないため、今回は見送りました」
このように、ROASを重視した評価軸によって新しい施策が中止・見送りになるケースは少なくありません。ただし、これは現場の怠慢ではなく、評価制度に対して極めて合理的に振る舞った結果です。
なぜなら、ROASは「実施を見送る理由」として、組織内で非常に高い説得力を持ってしまう指標だからです。
定量的で、反論しづらく、しかも経営層が重視している指標。現場はこれを拠り所にしてしまいます。そしてこれが積み重なった結果、組織全体の挑戦が減っていくのです。
本当に測るべきものが測れなくなる
ここで考えるべきは、ROASで測れないものは本当に価値がないのか、という問いです。
ブランドの売上や新規顧客数の変化はどうでしょうか。ブランドの想起率や指名検索数、UGC数は?
これらは売上の源泉として非常に重要であり、事業を持続的に成長させる要素です。
ROAS至上主義に陥った組織では、こうした本質的な指標や発想が抜け落ちてしまいます。その結果、新しい施策を避けて既存施策の延長で安全運転を続け、挑戦しない組織になっていきます。
「ROASが高い=良い」に留まらず、「ROASが測れることしかやらない」組織になるのです。
短期施策と長期施策で指標を切り分けるべき理由
では、どうすればいいのか。重要なのは、短期指標と長期指標を明確に切り分けてモニタリングすることです。
短期指標としては、ROASやCPAといった売上に短期的につながる指標があります。もちろん、これらは施策の効率を測る上で重要な指標です。一方で長期指標としては、指名検索数・ブランド想起率・市場シェアといったものが挙げられます。
問題なのは、短期指標だけで判断してしまうことです。
短期と長期、両方の指標を見ながら判断する。そして、「ROASが合わなくても、長期的な事業成長につながるなら投資する」という判断ができる組織を作ることです。
これができない組織は、数字で管理しているつもりで、実は数字に支配されていると言えます。
あなたの組織は、どちらを選びますか
売上が足りない。だから失敗したくない。そのために短期指標で縛る。結果、誰も動けない。
これは組織が停滞する典型的なパターンです。短期的な安心感と引き換えに、組織の挑戦する力を奪っています。
もしあなたが経営層やマーケティング責任者なら、一度立ち止まって考えてみてください。
・あなたの組織は、短期指標だけで意思決定していませんか。
・現場が新しい施策を提案しなくなっていませんか。
・「やらない理由」ばかりが会議で語られていませんか。
もしそうなら、それは組織が健全に機能していないサインです。今こそ、成果が積み上がるマーケティングへと舵を切りましょう。
ホットリンクでは、中長期で事業成長につながるSNSマーケティングの支援を行っています。少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ気軽にご相談ください。