Z世代をターゲットとしたSNSマーケティングにおいて、従来の「映える」投稿や一方通行の情報発信では、思うように反応を得られないケースが増えています。特に「BeReal.」のようなありのままの瞬間を共有するプラットフォームでは、従来のアプローチではユーザーに響きにくくなっています。
こうした課題を受けて、ホットリンクではBeRealとの共催セミナーを実施。2025年6月末に開催した「Z世代の心を掴む!「BeReal.」と「fasme」に学ぶ共感されるコンテンツ作り」にて、実践的なヒントを探りました。
同セミナーでは、BeRealの後藤 沙百合氏と、トレンド発信メディア「fasme(ファスミー)」で編集長を務める富井真歩が登壇し、Z世代のトレンド感覚やSNSの使い分け、企業が取り入れるべき“リアル”な表現について対談しました。司会はホットリンクのCNS事業本部 本部長であり、執行役員の石渡広一郎が務めました。
本記事では、Z世代の投稿心理を紐解きながら、共感を生むコンテンツ設計のヒントを実例とともにご紹介します。
(執筆・編集:髙橋 真穂)
登壇者紹介

後藤 沙百合様
BeReal. Agency Partnerships Lead 兼SMB Onboarding Manager
新卒で広告代理店に入社し、メディア営業・運用を経験後、ライフスタイルメディア「TRILL」にて広告営業・商品企画・マネタイズに従事。フルファネル領域での広告営業経験を活かし、現在はBeRealの代理店チームでZ世代に向けた広告施策の提案を行っている。

富井 真歩
株式会社ホットリンク ソーシャルメディアマーケティング本部 ソーシャルメディアマーケティング2部 部長/「fasme(ファスミー)」編集長
大学卒業後、2021年に株式会社ホットリンクに新卒入社。コスメやアパレルメーカーのSNSコンサルティングや運用代行業務に従事。美容師やアパレルブランドの販売員向けのSNS運用セミナーの講師を数多く務める。トレンド発信メディア「fasme」の編集長も兼任。

石渡 広一郎
株式会社ホットリンク 執行役員 CNS・マーケティング担当/CNS事業本部 本部長
弁理士。エンターテイメント企業、特許事務所を経て2017年から株式会社ホットリンクへ。ライツに関する経験と専門的な知識を活かし、2019年4月から新規事業開発に従事。コンテンツマーケティング、インフルエンサーマーケティングを所管するCNS事業部の本部長を経て、現在は執行役員を務める。
Z世代はSNSを使い分ける? BeRealが支持される背景
Z世代と呼ばれる1997年から2012年頃に生まれた世代は、小学生の頃からSNSに触れてきた“デジタルネイティブ”です。SNSで投稿を「見る/見せる」ことに慣れているため、自然とプラットフォームごとの特性を理解し、目的に応じて使い分けています。
実際に、fasmeのアンケート調査やトレンドまとめ記事などから、主な読者層である18〜24歳の女性は、用途や雰囲気に応じた使い分けをしているユーザーが多い傾向がうかがえます。

富井:たとえば、TikTokはトレンド収集の場、Instagramは連絡手段としての役割が強く、“最初に交換するSNS”にもなっている傾向が高いです。一方で、BeRealは“自分らしさ”や“日常”を出せる場所として活用しています。
石渡:私も仕事柄、BeRealを使っていますが、Z世代よりも上の世代には、このようなSNSの使い分けにギャップを感じる方も多いと思います。なぜZ世代の間でBeRealが流行っているのでしょうか。
Z世代は、SNSの中でもInstagram、TikTok、BeRealを積極的に使っており、BeRealを毎日使用しているユーザーは42.9%と多く見受けられます。(関連記事:2025年最新BeReal事情♡Z世代のリアルなビーリアルの使い方&投稿トレンドを大調査! )

BeRealは、スマートフォンの前面と背面の2つのカメラで同時撮影を行います。1日1回ランダムに届く「BeReal Time」の通知から2分以内に投稿する設計です。
フィルターや加工機能がないため、“ありのままの瞬間”を共有する文化が根付いています。また、投稿は24時間で消えるため、気軽に投稿できるのも特徴の一つです。
富井:“映え”や“盛る”投稿に疲れを感じているZ世代にとって、BeRealのような“飾らない自分”を見せる場は、投稿のハードルが低く、受け入れられているんだと思います。
後藤:BeRealは“いま”を切り取ることで、他のSNSとは違う世界観を生み出しています。“気取らない日常感”が価値になる感覚は、Z世代だからこそ自然に受け入れられているものだと思います。

Z世代が演出する“戦略的なリアル”とは
Z世代における“リアル”は、単に“ありのまま”を発信するという意味ではありません。むしろ、自然体に見せながらも、自分らしさやオシャレな印象を演出する“戦略的なリアルさ”が好まれています。
後藤:Instagramは外向き、BeRealは内向きで、より親しい関係の中で“好き”を表現している傾向があります。
富井:確かに、私自身もInstagramには旅行の写真などを投稿しますが、BeRealではおみくじの結果とか、“些細なこと”を共有しています。
後藤:ユーザーそれぞれに“BeRealらしい充実した日常”の基準を持っています。例えば、すっぴんの自撮りやネイルだけの投稿など、あえて盛ってない瞬間を写しています。
実際にはすっぴんではなく、眉毛を整えてリップをしていたり、ネイルから手元のオシャレさをさりげなくアピールしたい意図があったりします。

デジタルネイティブであるZ世代は、SNS上でも他人からの見られ方を常に意識しています。そのため、自然体で過ごしている様子をあえて切り取った投稿が、“気取らず充実している”と受け取られ、価値あるスタイルとして支持されています。
また、Z世代はアイドルやタレント、アニメのキャラクターなどを“推す”ことが一般的になっており、BeRealをはじめ、SNS上で“推し活”の情報収集や発信を行う姿も多く見られます。
富井:BeRealは投稿しないと他のユーザーの投稿が見られないため、推しや友人の投稿をチェックする目的で投稿している人も多いですよね。
後藤:そのため、“捨てリアル”と呼ばれる壁や天井だけを写した最低限の投稿も見られます。
最近は、アイドルやインフルエンサーによる“捨てリアル”も意外と多く、ファンはBeRealならではの投稿をチェックすることができます。
Z世代に共感される設計のコツ
Z世代の共感を得るコンテンツを設計するには、“リアルさ”の強調だけでなく、ユーザーが“自分ごと化”できる余白をどう作るかが重要です。
富井:共感されやすい投稿は、“わかりやすい正解”を提示するものではないと思っています。だからこそ、あえて言い切らずに余白を残すことで、「自分の気持ちを代弁している」と感じてもらえる設計を意識しています。
後藤:BeRealは、ユーザーが何気ない日常を記録するSNSなので、過度な演出や作り込まれた投稿は、あまり好まれません。
たとえば、ロゴや商品を正面から見せるよりも、休日や放課後の風景に自然にバッグが映り込んでいるような投稿の方が、BeRealのタイムラインに馴染み、Z世代からも受け入れられやすいです。
石渡:つまり、Z世代は広告感の強いコンテンツに対して抵抗感を持ちやすいということですね。
また、企業がBeRealで広告を配信する際は、Z世代の感覚にフィットするクリエイティブ設計が求められます。具体的なポイントを3つご紹介するので、施策検討の参考になれば幸いです。
①日常のシーンに落とし込み、自然なブランド想起を促す
ユーザーの日常や気持ちに寄り添う投稿は、商品やブランドの魅力を自然に届けられます。たとえば、「試験勉強中の机の上に、エナジードリンクが映り込んでいる」「メイク途中のポーチの中身が自然に写り込む」など、生活シーンに商品を溶け込ませることで、“自分の生活にもありそう”という想起が促されます。
②“舞台裏”を見せて、親しみやすさを演出する
ドラマやライブの撮影現場、準備中のメイク台など、普段は表に出さないバックヤードをあえて切り取ることで、Z世代の「裏側を知りたい」という好奇心に応えることができます。背景を覗き見するような感覚が、ブランドへの親近感を醸成します。
③真似したくなる構図を設計し、自発的な行動を引き出す
投稿を見たユーザーが「真似して撮りたい」と思える設計は、共感だけでなく、投稿や購買などの具体的な行動にもつながります。たとえば、「友達と色違いのアイテムを並べる」「旅行先で定番のポーズを決める」など、“やってみたくなる楽しさ”を提供することがポイントです。
後藤:ある企業では、一般的なバナー広告のCTRが約0.3%だったのに対し、日常シーンに商品を映し込ませたクリエイティブでは、CTRが約3%になりました。BeRealの特性やトーンに合わせたクリエイティブにすることで、約10倍ほど数値が向上しました。
BeRealを活用した協業パッケージ&事例紹介
BeRealならではの “リアルさ” を取り入れた施策設計こそ、Z世代との接点を生み出す鍵です。最後に、BeRealを活用したパッケージと事例をご紹介します。
BeRealの協業パッケージ:「BeUP!」
BeRealでは、企業がZ世代とリアルに接点を持ちながら共感を得るための施策支援として、コンテンツパートナーとの協業による広告パッケージ「BeUP!(ビーアップ)」を提供しています。
「BeUP!」では、媒体の特性に即したクリエイティブ制作やインフルエンサー起用を通じて、Z世代の自然なタイムラインの中に“違和感なく”ブランドを溶け込ませることが可能です。
同サービスでは、BeRealの世界観にマッチした施策をスムーズに進行できるよう、投稿設計や制作費の一部補助なども含めた支援を用意しています。
ホットリンクの協業パッケージ:「田中パウロ淳一 BeRealコラボパッケージ」
ホットリンクでは、BeUP!を活用した施策のひとつとして、プロサッカー選手・田中パウロ淳一さんの公式BeRealアカウントを活用したコラボパッケージを展開しています。
Z世代を中心に支持を集める田中パウロ淳一さんの魅力を活かし、投稿企画からコンテンツ制作、広告配信、効果測定までをワンストップでサポートします。
関連記事:“リアル”な発信でZ世代に響く!プロサッカー選手・田中パウロ淳一の公式BeReal.を活用したコラボパッケージ
事例:若年層へのアプローチでマンガ作品の認知を拡大
ホットリンクは、講談社初のマンガアプリ「マガジンポケット」で連載中のマンガ作品『薫る花は凛と咲く』のTVアニメ化に際して、BeRealを活用したプロモーション施策を行いました。
本施策では、2025年3月2日、京セラドーム大阪で開催された「KANSAI COLLECTION 2025 SPRING & SUMMER」において、特設ステージ「BeRealスペシャルステージ」を実施。当日は、BeRealのアプリ起動時に全画面で表示される独占型広告枠「MaxTakeover」を活用した予告動画を配信しました。
また、特設ステージ中にBeRealのリアルタイム通知「BeReal Time」の仕組みを活用したことで、来場者が一斉にアプリを起動し、起動時に表示される広告を通じて予告動画の視聴につなげることができました。その結果、ターゲットである若年層女性へのリーチが拡大し、多くのインプレッションを獲得できました。
事例詳細:「BeReal.」で講談社のマンガ作品の認知を拡大! リアルイベントと広告配信で若年層にアプローチ
トレンド発信メディア「fasme」とは
「fasme」は株式会社ホットリンクが運営するトレンド発信メディアです。Webサイトの月間PV数は約100万、X・Instagram・LINEの総フォロワー数は約140万人です。ユーザーは18~24歳のZ世代の女性が多く、ファッション・コスメ・美容関連への関心が高い傾向があります。「mees(ミーズ)」という公式アンバサダーを抱えており、彼女たちが"今リアルに興味がある事柄"もコンテンツとして発信しています。
■fasme Webサイト:https://fasme.asia/
■fasme X:https://x.com/fasme_media
■fasme Instagram:https://www.instagram.com/fasme_media/
■fasme LINE:https://page.line.me/rgu7907d?openQrModal=true
2017年11月より提供を開始した「診断コンテンツ」は、fasmeの中でも特に人気の高いコンテンツです。制作総数は50件以上にのぼり、様々な企業とのコラボレーションも行なってきました。性格や恋愛診断に基づくコンテンツを中心に、美容商材や不動産(賃貸)、食品(お菓子)を題材にした診断コンテンツも制作しています。現在も、タイアップ企業様を募集しています。
2023年9月には、累計発行部数560万部超えの人気マンガ『明日、私は誰かのカノジョ』とコラボレーションした診断コンテンツの完全版を公開しました。2024年2月に公開した「fasme UFPT診断」は、実施回数が9万回を突破しました。
■明日カノ診断完全版:https://fasme.asia/quiz/asukano-shindan4740/
■fasme UFPT診断:https://fasme.asia/diagnosis/face-mbti5723/
Z世代に向けたSNS施策やBeRealの活用にお悩みの方へ
ホットリンクでは、SNS上のユーザー動向を独自のデータで分析し、その知見をもとにZ世代の感性に寄り添った投稿設計やクリエイティブのご提案を行っています。
BeRealとのコラボパッケージやイベントと連動した施策など、目的や課題に応じて、企画から実行まで一貫してサポートが可能です。まずはお気軽にご相談ください。
インフルエンサーマーケティングの支援内容を見る