ホットピ

AIで実現した、X広告のターゲティング工数を大幅削減&「人間では発見しにくいターゲット」へのリーチ

2025年03月24日
AI・WEB3

最終更新日:2025年4月8日

ホットリンクは、2024年7月から生成AIツールの活用を本格化し、全社を挙げてAI化を推進しています。

X(旧Twitter)広告の運用では、ターゲティング最適化のプロセスにおいてAIを活用し、約80%の自動化を実現しました。その結果、工数は約75%削減され、人の目では発見しにくいターゲットにもリーチすることで、広告の成果を高めています。

本記事では、博士号を取得し、機械学習研究に長年携わってきた榊剛史と、AI推進部 部長の美川貴彦が対談。AIを活用したターゲティング最適化の仕組みやクリエイティブ評価基準の策定と自動ラベリングの取り組みについて紹介しています。さらに、全社的なAI推進の背景と今後の展望について話しています。

(執筆・編集:髙橋 真穂)

この記事に登場するメンバー

株式会社ホットリンク 開発本部 本部長
榊 剛史
中国・清華大学による世界的なAI研究者2000人に選出。2006年電力会社にて情報通信業務に従事した後、東京大学博士課程に入学。2013年松尾研究室にて博士号取得。2015年、株式会社ホットリンクに入社。言語理解とコミュニケーション研究会委員長。計算社会科学研究会 幹事。ホットリンクでは、ソーシャルメディア分析機能・X(旧Twitter)マーケティング支援技術の研究開発に従事している。

株式会社ホットリンク アドテクノロジー本部 アドテクノロジー部 部長 兼 AI推進部 部長
美川 貴彦
2020年5月、ホットリンク入社。アドテクノロジー部の部長として、SNS広告運用業務に従事。2023年からは社内のAI活用プロジェクトを牽引し、部署を横断した業務の効率化に取り組む。

複雑かつ負担の大きいターゲティングを自動化

――まず、AI導入以前のX広告の運用にはどのような課題がありましたか。

榊:X広告の運用では、ユーザーの投稿や検索で使われたキーワードを指定する「キーワードターゲティング」と、特定のアカウントのフォロワーを指定する「アカウントターゲティング」が主要なターゲティング手法となっています。

 キーワードやハンドルは無数に存在して、どのユーザー層に広告を出すのかを細かくコントロールできます。一方、その自由度の高さゆえに、運用者側での管理や調整を行う作業が非常に複雑になっていました。

 また、広告運用ではお客様の予算を直接管理しています。設定ミスやターゲティングの誤りが発生すると、本来のターゲットではない層に配信され、効果が出にくくなるリスクもあります。成果を最大化するにはターゲットを頻繁に見直し、継続的に調整する必要があります。慎重な運用が求められますが、手作業での運用には限界があり、週に1~2回の更新が限界です。

美川:私も複数の広告運用を担当してきましたが、AI導入前はターゲットの見直しや調整に時間と手間がかかり、頻繁に最適化を行うのが難しい状況でした。また、管理画面の操作が複雑なうえ、細かなミスを防ぐための確認作業も必要になるため、運用担当への負担は大きくなりがちです。それでも、複数の案件を同時に進めながら、こまめに分析と微調整を重ねることで、高いパフォーマンスを維持できるよう努めていました。

発見しにくいターゲットへのアプローチも可能に

ーーターゲティングの最適化において、AIは具体的にどのような役割を果たしていますか? また、AIはどのような仕組みで作動しているのか教えてください。

榊:ターゲティングの最適化では、広告の成果が良いターゲットを特定し、成果の低いターゲットを除外しながら、新たに成果の期待できるターゲットを探すことが重要です。しかし、手作業ではすべてのターゲットを検証するのが難しく、調整にも限界があります。

 そこで、AIを活用してこのプロセスを自動化し、最適なターゲティングを継続的に更新する仕組みを構築しました。具体的には、広告の実績値(CTRやCV数などの指標)を基に、成果の高いターゲットを残し、成果につながりにくいものを除外しています。また、成果が出そうな新たなターゲットをデータから見つけ出し、配信先に組み込むことで、より精度の高いターゲティングを実現しています。

 また、AIは過去の成功パターンを学習し、一見関連が薄いと思われていたアカウントが、実際には高いCVR(コンバージョン率)を示す可能性があるものを見極められます。これにより、手作業では発見しにくいターゲットにも効果的にアプローチできるようになります。その結果、従来のターゲティングではリーチできなかった層にも広告を届け、より精度の高い運用と成果向上につなげています。

美川:人間の場合、どうしても知っている範囲でターゲットを探すため、「女性向けだから女性誌」「コスメ系だからコスメメディア」といった経験に基づいた連想に頼りがちです。しかし、AIは過去の実績データを分析し、似たパターンを学習することで、「このキーワードやアカウントも成果が出る可能性がある」と導き出します。

 例えば、女性向けターゲットのアカウントとしてアミューズメントスポット「ナンジャタウン」が高い実績を出したことがあります。「ナンジャタウン」はサブカルチャーを好む層から高い支持を得ているため、AI分析でその特性が抽出され、成果に結びついています。このように従来、担当者の目では捉えにくい部分も、AI活用によりターゲット選定の精度が向上しました。

 X広告では入札制のオークションが採用されており、一般的には同じターゲットで入札する広告主が多いほど競争が激しくなるとされています。そのルールから言えば、AIが新たなターゲットを発見することで、競争の少ない層にリーチしやすくなり、費用対効果を高めながら成果を最大化できます。

――AIの導入によって、広告運用の効率がどのように変化したのか、お聞かせいただけますか?

美川:実際に、AIの導入によってターゲティングの管理工数が約75%削減できた案件もあります。これまで手動で行っていたターゲットの選定や除外作業が自動化されたことで、運用担当者がレポーティングやクリエイティブの選定など、その他の業務に集中しやすくなりました。

 成果面では、キャンペーンごとにばらつきはあるものの、従来の手作業だけでの運用と比べて、CV数やCTRが上がっています。

榊:アプリインストールが目的の広告では、コンテンツにエンゲージメントしたユーザーへのリターゲティングを中心とした配信設計でしたが、AIターゲティングを導入し、CPIが安価になったケースもあります。リターゲティングよりも効果が向上する可能性があることが分かったのは、この技術を開発する際には想定していなかった新たな発見でした。

――では、クリエイティブの最適化については、どこまで自動化が進んでいますか。

榊:現在、クリエイティブの自動化は、評価指標を構築し、成果に影響を与える要素を分析している段階です。その一環として、成果の良かったクリエイティブと悪かったクリエイティブを比較し、共通点をラベリングすることで、パフォーマンスに影響を与える要因を明らかにする取り組みを進めています。

 例えば、ある案件でクリエイティブA、B、Cの成果が良く、Dの成果が悪かった場合、それぞれの特徴を整理し、成果につながった要因を分析します。こうした知見を蓄積することで、次のクリエイティブの制作時に、過去の実績から効果の高い要素を取り入れることができます。

美川:この仕組みが整えば、運用担当者が成果の高いクリエイティブを素早く見極められるようになります。特に、ラベリングの自動化により、これまで手作業で管理していたクリエイティブの特徴がシステム上で整理され、データ分析の効率を向上させることができます。今後は生成AIによって、クリエイティブデータの一元管理と分析の効率化を進めていく予定です。

研究開発や外部との連携でAI推進──目指すは広告運用の完全自動化

――X広告の運用の自動化をはじめ、ホットリンクでは全社的にAIの活用が進んでいますよね。

榊:ホットリンクはSNSマーケティング支援会社ですが、社内にR&D部門があることが大きいと思います。また、創業時からデータ活用を軸に事業を展開してきた背景があり、研究と実務を結びつける文化が根付いています。

 さらに、X広告のターゲティング最適化や、時系列データ解析の分野では、10年以上にわたり琉球大学の山田先生に技術アドバイザーとしてご協力いただいています。広告運用の実データを基に、学術的なアプローチとビジネスの視点を融合させ、AIによる広告運用の精度向上に取り組んでいます。山田先生はAI技術の知見を活かしながら、ビジネスの課題も理解し、実務に即して協力してくださるため、非常に心強い存在です。

美川:R&D部門との連携があることは、AI活用を推進していく上でホットリンクの強みになっています。R&D部門から新しい技術のアイデアが上がると、運用現場では「どうやって実際の配信に落とし込むか」を一緒に検討できるので、スムーズに実践できるんですよね。

 それに、山田先生のような外部の専門家が学術的な知見を提供してくださるのは、とてもありがたいです。

――では最後に、AIを活用した広告運用の最適化について、ホットリンクとして目指している理想の状態を教えてください。また、現在の到達率はどのくらいでしょうか?

榊:理想としては、広告運用の担当者が細かいオペレーションに追われず、戦略や顧客対応に専念できる体制です。いわゆる、航空機のパイロットが自動操縦を監視し、必要なときだけ介入するようなイメージですね。ターゲティング、入札、クリエイティブの最適化などが自動化されれば、最終チェックやリスク管理に注力できるようになります。

 ただ、完全自動化にはリスク管理やシステム面での課題が多く、さらなる改善が求められます。たとえば、ターゲティングに関しては、AIに約8割任せた結果、工数が約75%削減されました。しかし、クリエイティブや予算管理といった、他の広告運用業務の自動化レベルはまだ半分程度です。

今後も研究開発を進め、社内外の連携を強化し、AIが基本的な運用を担い、人間が担う役割は最初の戦略立案と最終チェックだけという状態に近づけていきたいです。

美川:そういった意味で完全自動化を実現するには、トラブル対応やブランドイメージへの配慮など、解決すべき課題が多く残っています。これからは、クリエイティブの最適化や予算管理の自動化をさらに進める必要があります。研究開発と現場のノウハウを融合し、着実に自動化の範囲を拡大していきたいです。

――榊さん、美川さん、ありがとうございました!

ホットリンクで一緒に働きませんか!!

ホットリンクでは、SNSコンサルタントやSNSプロモーションプランナーなど、さまざまなポジションで一緒に働くメンバーを募集しています!

SNSを理解する無料動画を今すぐチェックしよう!

Twitter, Instagramマーケティングについてお悩みの方へ

プロ視点の解決策をご提案いたします!
まずはお気軽にご相談ください

03-6261-6933受付時間:平日9:00-18:00
今すぐ相談する24時間365日受け付けています
お問い合わせエリアのイメージ