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業務のAI化を促進し、非エンジニアでもデータを扱える体制に。美川貴彦(アドテクノロジー部 部長)

2024年05月20日
AI・WEB3

最終更新日:2024年6月20日

AIの急速な進化に伴い、多くの企業がその活用に力を入れています。弊社ホットリンクもその企業の一つです。実は、弊社は以前からAIを事業の中核に据えてきた企業でもあります。

ChatGPTの登場以降、弊社は戦術レベルでもAI活用を加速しています。広告実績問い合わせbot(仮称)の開発、非エンジニアのコード生成支援などがその一例です。どのような取り組みを行なっているのか、アドテクノロジー部・部長の美川貴彦さんに解説を依頼しました。(取材・文 澤山モッツァレラ

AI活用はホットリンクのDNAなんです

――ホットリンク社のAIに関する取り組みについて教えていただけますでしょうか。

美川:ホットリンクでは現在、AI活用に関する取り組みを積極的に行なっています。ただ、実は弊社はもともと事業や組織としてもAIに能動的に取り組んでいる企業です。

 開発本部であるR&D部には、榊剛史さんのような世界的研究者もいますし(参照)、弊社を代表するソーシャルリスニングツールクチコミ@係長にもAI技術は組み込まれています。「より多くのデータを処理し、そこから価値を生み出すためにAIを活用する」というのは、昔からわれわれの事業の中心にあるDNAだと思っています。

 近年はChatGPTなどの生成AIツールにより、事業の根幹だけでなく、枝葉の部分まで含めてAIを活用することが容易になりました。ホットリンクは元々この分野で知見のある会社なので、他社に遅れを取らないように取り組んでいます。

 ただ、AI活用と一口にいっても、できることが多すぎて漠然としてしまいます。そこで、具体的にどんな業務で活用するのかを絞り、それぞれタスク分解した上でどんな活用ができるのか検討しながら1つ1つ進めています。それらの積み上げが向き合っているクライアントへの価値提供につながると考えており、本日お話しするのもその取り組みの1つとなります。

――ありがとうございます。社内でChatGPTの活用を普及するため、Slack内でChatGPTと会話できるBotを開発されたそうですね。開発の経緯について教えて下さい。

美川:ChatGPTのリリース以降、AI活用を進めていくにあたって社内での認知度の低さがありました。一般的に新しい技術が登場した際、すぐに活用する人と、どう使っていいか踏み止まる人に分かれると思います。これは、ChatGPTでも同様でした。
 
 私自身は新しい技術が好きで、実際に利用してみて、「既存の業務を大きく変えるのは間違いない」と感じましたし、全社で利用すべきだと思いました。会社全体で導入・利用促進をするためにまずは「この技術はすごいんだ」と知ってもらう必要があると考え、Slack内でChatGPTと会話できるbot「Hottobot」の作成に取り組みました。
 
 Slack上でHottobotに話しかけると、GPT-3.5が返答するシンプルなものです。開発後、すぐにChatGPTの全社導入の話になったため、Hottobot自体の利用率はそこまで高くはならなかったのですが、ChatGPTの利用促進の一助になったと思われます。

 今でもHottobotは、ChatGPTのブラウザ版を使うまでもないテキストの構成・修正などに利用されています。例えば、フォーマットの揃っていない日付のテキストをルールに従って揃えるなどです。また、海外の開発協力会社とのやりとりにおいて、翻訳botとしても活用されています。日本語のテキストを送ると翻訳文章も一緒に出てくるので、ブラウザで翻訳ツールを使う手間が省けています。

非エンジニアでもデータを扱える体制に

――ありがとうございます。他にも広告実績問い合わせbot(仮称)の開発をされたそうですね。こちらはどのような機能があるのでしょうか?

美川:広告シミュレーションの作成・過去実績との比較をするにあたって、広告運用担当者に他案件の運用実績を聞くことが多いのですが「AIで代替できるのでは?」と考え実装を進めています。大量の過去実績がある中で、参考値として妥当な案件を探索するのはそれなりに時間がかかるため、コミュニケーションの時短化・効率化を狙っています。
 
 具体的には弊社データベースとAIを接続し、AIに対して実績の取り出しを依頼することで参考値を取り出せるようにしたいと考えています。これにより、広告効果の良い実績や過去の実績を素早く見つけ出すことができます。

――他にも、非エンジニアのコード生成についても取り組まれているそうですね。

美川:アドテク部で配信中案件の進捗・成果管理のため、一件ずつ管理画面を見たり、担当者に毎日報告をしてもらったりする必要があるのですが、今後の事業スケールを考えるといつか破綻してしまうと考えていました。
  
 そこで、広告実績データベースから条件を設定して一括でデータを呼び出せる環境を作ろうと考えたのですが、そのためにはSQLなどのデータベース言語を修得しないといけません。
 
 私はレポート作成ツールの開発のためにSQLを勉強し、多少修得できているのですが、他のメンバーは未修得でした。「私だけがSQLを書ける・理解できる」という状態から脱却するために、メンバーにSQLの基本とデータベースのテーブル構造を教え、ChatGPTを使ってSQLを生成指示のやり方を教えたところ未修得のメンバーがたったの1~2日でSQLが書け、狙ったデータを取り出す事ができるようになりました。
 
 従来は、エンジニアの工数を使う必要があった業務です。ChatGPTの補助により、非エンジニアでもデータを取り出すことができるようになったのは大きな効果だと感じています。

――ターゲティングの重複チェックマクロの作成やクリエイティブのチェックにもAIを活用されているそうですね。

美川:はい、各メンバーも自分の担当業務に合わせて、自発的にAIを活用してくれています。ターゲティングの重複チェックではChatGPTにマクロを書かせて、VBAによる実装を行ない、X広告でハンドルターゲティングやキーワードターゲティングの重複を削除する業務を効率化しています。
 
 またクリエイティブのチェックでは、表記ゆれ・てにをはのチェックを実施するために、クリエイティブのテキストをChatGPTに投下して、各チェックポイントの指摘をさせています。テキストの重複のチェックや編集修正処理は、ChatGPTが最も得意とするところです。
 
 ただし、もちろん最終的には人間がチェックし、AIでわかる部分とわからない部分があることを認識しながら活用しています。AIを業務に組み込むことで、これまでよりも幅広い業務領域で、品質をクリアしたアウトプットが出せるようになるのは、すごいことだと思いますね。

X広告にはまだフロンティアがある

――最後に、AIターゲティングの実証実験についても詳しく教えていただけますか?

美川:こちらは弊社の技術アドバイザーである琉球大学の山田先生にアドバイスを頂きながら、X広告のターゲティング自動化を進めているプロジェクトです。山田先生は社会科学分野のデータサイエンス(データ分析・モデリング・社会への応用)を専門としており、ホットリンクとは、ソーシャルメディアマーケティングに関する共同研究など含め10年以上のお付き合いがあります。

 X広告については、媒体が用意したターゲティングや、デモグラフィックのみを設定するブロード配信よりも、媒体非保有データによるターゲティング設定を施した方が効率を上げられると、過去の運用実績からわかっています。AIを活用し、実績値の確認、効率の悪いターゲティングの削除・効率の良いターゲティングから新しいキーワード・ハンドルの追加などを人間ができないスピードでPDCAを行うことにより、運用効率のアップ・工数削減につなげることを目指しています。
 
 認知型の広告配信のターゲティングについては、人間の運用と同等〜それ以上のパフォーマンスを出せることがわかったため、現在は領域を広げ、獲得型広告でクライアント様にご協力いただきながら実証実験を進めているところです。FacebookやTikTokなどの媒体ではターゲティングの自動化が進んでいますが、X広告ではまだフロンティアがあると考えています。

 また、広告クリエイティブ生成のプロジェクトも進めていますが、テキストの生成はできる一方、画像・動画の生成はまだ難しいと感じています。大手広告代理店などは、膨大なデータと開発リソースを活かしてAIを用いたクリエイティブ制作を行っていますが、そこまでのリソースがないわれわれのような企業では難しい面もあります。できるところから、着実に進めていくのが大事ですね。
 
 現状、ChatGPTではこちらの意図する成果物を出力することは工夫を重ねないと難しいですが、画像を分析する能力には長けていると感じています。例えば、成果の良かった画像5枚に共通する特徴を抽出させて、それを基に人間が新しいクリエイティブを生み出すといったプロセスを導入することで、制作の効率化や品質向上につなげられるのではないかと考えています。

 なお、他にも弊社ではこのような取り組みを行なっています。

・広告の自動化やその他機械学習
・獲得系の広告自動運用
・chatGPTを活用した社内システム開発
・SQLをchatGPTに書かせる

 これまで、さまざまな制約があって解けなかった課題が、AIとの協力で解決できるようになったなと実感しています。これからさらなるクライアントへの価値貢献のために、AIもチームの一員として、新たなチャレンジや取り組みを進めていきたいです。

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