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【参加報告】人工知能学会2018@鹿児島

R&D部のです。今回は、学術イベントへの参加報告をお届けします。

6月5~8日に、鹿児島にて「第32回人工知能学会全国大会(以下、JSAI018)」という学術イベントが開催されました。今回、弊社R&D部メンバー1名で、発表・聴講・独自イベント運営という形で本イベントに参加させて頂きました。以下、イベントの雑感、自分が運営した企画、イベントにて行われた発表の一部、ついてご紹介します。

概要

人工知能学会とは、人工知能の関連領域に携わる、研究者・企業技術者・学生が一同に集う人工知能学会の一大イベントです。

本イベントの内容は多岐にわたります。AI技術一般に関する発表を行う「一般セッション」はもちろん、独自の研究テーマを扱う「オーガナイズドセッション」、AI技術に関する問題の議論やデータ分析コンペなどAI技術に関する企画を扱う「企画セッション」、初学者や他分野の研究者に向けてAI技術の解説を行う「チュートリアル講演」、スポンサーによる「ランチョンセミナー」など、様々な企画が行われます。参加される方々の動機も様々です。研究動向の把握、研究実績の公開およびフィードバックの獲得、交流および人脈構築など、色々な目的の方がいらっしゃいます。

「人工知能」という言葉の多義性も相まって、他の学会と比べても、多様なテーマ・イベントが扱われるのがJSAIの特徴です。例えば、「コミック工学」「感性と質感」「農業」「不動産」「人狼知能」「人工生命」とセッション名のキーワードを並べるだけでも多様さが伝わるかと思います。かたや、「AIで切り開く未来社会」「AI人材」「AIの倫理」など真面目な話題も取り扱っています。

自分の主観的な印象では、JSAIとは、「人工知能」というテーマに沿ったお祭りのようなイベントです。

弊社は、AI技術をビジネスに活用しております。このため自社の研究発表はもちろん、研究動向の把握や共同研究の可能性などを求めて、本イベントに参加させて頂きました。主催いただいた実行委員会の皆様には、改めてお礼申し上げます。

 イベント全体に関する所感

今回様々な研究発表の聴講やイベントへ参加し、大きく2つの所感を持ちました。

1点目は、イベントの規模と分野の広がりの2つの側面から見て、AIブームのますますの盛り上がりを感じました。

イベントの規模という面でみると、JSAIへの参加者はここ5年で2倍以上に膨れ上がりました。特に一昨年→昨年で約1000名の増加です。昨年度が都市部での開催(名古屋駅前)であったのに対し、今年は鹿児島での開催であったため、自分としては昨年度の人数を下回るのではないかと考えていました。しかし蓋を開けてみれば、昨年度を上回り、過去最高の参加人数を記録しました。実際、招待講演や参加者交流会もあふれんばかりの人手でしたし、発表自体も17並列で行われており、もはや全体を把握するのが困難な位の盛り上がりでした。

人工知能学会の参加者数推移(JSAI公式発表値)
2015年@函館:約1200名
2014年@愛媛:約1000名
2016年@北九州:約1500名
2017年@名古屋:約2500名
2018年@鹿児島:2572名

分野の広がりという観点でみると、スポンサーの業種の拡大が顕著でした。いわゆるデータ分析をビジネスに活用している企業は昨年までも参加していましたが、今年は、広告代理店や製造メーカーの参入が顕著でした。特に製造現場(工場)へのAI技術(機械学習・時系列解析)の導入事例が徐々に増えつつあり、AI技術が幅広い裾野にまで広がってきたことを感じました。

2点目は、イベントの規模が拡大しているにもかかわらず、相変わらず多様な話題が扱われる雰囲気が維持されている点に安心しました。

自分の主観ですが、JSAIの良さというのは、多様な話題を自由に議論できるという良い意味での「緩さ」がある点です。もちろん、社会からの期待に応えるためにもAIに関する先端的な研究や社会的な役割についての議論も行われるべきですが、そればかりでは、今後のAIの進化の方向性が限定されてしまうリスクがあると考えています。そのような意味で、多様な分野・議論を包含できるJSAIという場は、今後も幅広い方向で発展していく可能性を秘めていると感じました。

企画・セッションの運営

若手向けイベントの運営

今回のJSAI2018では、何名かの若手研究者と組んで「AI若手の会 ランチサロン」というイベントを企画・運営しました。前述の通り、イベントが大規模化するにつれて、JSAIに複数回参加している人でも知り合いと会うのも大変な状況になっています。そのような中で、JSAIに初めて参加した人(特に若手)が、様々な研究者と交流する機会が減ってしまっているのではないか、という危惧が自分の周囲の研究者のなかでありました。

そこで、若手の参加者を対象として、様々な人と情報交換できる場として、当該イベントを実施しました。結果として、ランチサロンに42名、夜の飲み会にも43名の参加を頂き、イベントは成功だったと言えると思います。JSAI参加者の需要があることがわかったの、AI若手の会 運営委員では、来年のJSAIでも同様のイベントを開催したいと考えています。

OS-1「計算社会科学」セッションの運営

以前ブログでも紹介した計算社会科学について、オーガナイズドセッションを企画・運営しました。

計算社会科学とは「大規模社会データを情報技術によって取得・処理し、分析・モデル化して、人間行動や社会現象を定量的・理論的に理解しようとする学問」であり、弊社が扱っているソーシャルメディアデータの分析と密接に関連した分野です。この分野はできたばかりですが、発表件数最大8件のところ、20件以上も応募がありました。当日も十分な聴講者数があり、活発に議論が行われました。

自分としては、今後も計算社会科学分野の発展に貢献してきたいと考えています。

発表メモ

筆者が聴講させていただいた一般発表のうち、個人的に興味をひかれたものを、以下にいくつか挙げます(あくまで個人的なリストです)。今後の学会等で、研究の進展をお見せいただけるのを楽しみにしています。

3O2-OS-1b-05 グローバル・サプライチェーンのネットワーク構造に基づく紛争鉱物規制
グローバル化によりモノ・カネの流通経路が複雑化し、全体像がつかめなくなっている中、発展途上国の児童労働や労働力搾取などの問題と関連する反社会的な会社と知らず知らずのうちに繋がってしまうことが起きつつあります。本論文はそのような反社会的な会社との関係を絶つためのアプローチについて述べた論文です。グローバルな社会問題について、テクノロジを用いて現実的に取り得る対処方法を提示するという社会的に意義の大きい研究でした。

 3O2-OS-1b-04  世代による政治ニュース記事の閲覧傾向の違いの分析
Gunosyの閲覧行動ログを用いて、世代別の政治ニュース閲覧行動を分析し、若者の政治的無関心という言説についてデータで検証を行った論文です。アプローチはシンプルなものでしたが、これまでアンケートベースでしか検証が行われてこなかった言説について、大規模な行動データに基づいて検証を行っているという点で非常に価値が高く、また分析結果自体も面白い論文でした。

2C2-02 SNS上の一方的な選好をもとにしたコミュニケーションの解析
ソーシャルメディアにおける未成年の誘い出しを抽出する手法を開発する前段階として、誘い出しデータの分析をおこなった論文です。リンクの非対称性指数を定義することで、危険度の高いツイートの特定することに成功していた点が興味深かったです。

2C2-03 ソーシャルメディアストリームからの新固有表現の発見
ソーシャルメディアストリームから、実世界の新しい事物を発見する手法を提案している論文です。Wikipediaをある種の正解データと用いることで、既存手法よりも高い精度で新語の抽出に成功していました。ソーシャルメディアデータの解析では、辞書にない単語を扱うことが重要になる場合が多いため、その意味で、弊社にとって興味深い研究でした。   

チュートリアル資料

今回のJSAI2018では、いくつかのチュートリアルが行われましたが、そのうち弊社に関係が深く、また資料が良くできていたチュートアリルを紹介します。

"深層学習時代の" ゼロから始める自然言語処理(大阪大学  荒瀬 由紀 准教授)

ヒューマンコンピュテーションとクラウドソーシング(筑波大学  馬場 雪乃 准教授)

計算社会科学におけるWebマイニング(東京大学  鳥海 不二夫 准教授)

おわりに

当社R&D部では、自社のための研究開発を行うだけではなく、学術イベントのスポンサー・大学との共同研究の遂行・研究成果の対外発表/論文誌への投稿など、学術コミュニティへの貢献を積極的に行っています。

おまけ

なぜか(応募したからですが)、LINE Clovaが当選してしまいました。LINE様大変ありがとうございました。こちらの利用レポートもいずれ当ブログで公開したいと思います。

▼当社R&D部のアカデミックとの協力体制について▼
http://www.hottolink.co.jp/company/lab/