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「AKB48の計算社会科学」イベントレポート後編 ~アイドルがファンを獲得するにはソーシャルメディア上でどう振る舞うべき?~

 
神戸大学で開催された「AKB48の計算社会科学~かよよん(田北香世子さん・AKB48チームA)を迎えて」というイベントレポート、後編は自分の発表「アイドルがファンを獲得するためにはソーシャルメディア上でどのように振る舞うべきか?」についてご紹介したいと思います。
前編はこちらから
 
実際には4年ほど前の研究で、当時はAKB48が全員Google+を使う事が推奨されていたため、Google+のデータを使った分析となっています。詳細は[1]にまとめられていますのでそちらをご覧下さい。
なお、本分析内容は2012年時点のAKB48メンバーおよび彼女らのGoogle+データを対象とした分析です。当時のAKB48の状況を表した内容であることをご理解いただければと思います。
 
[1] AI的AKB48論、松尾 豊、吉田 宏司、榊 剛史、人工知能学会誌
 

ファンの行動を測る「熱心度」から導き出す「おすそ分け戦略」とは?

ではさっそく内容の紹介をしていきましょう。当時の状況として、AKB48が分析対象として優れていた点としては、下記の2つが挙げられます。
 
 ・200人以上のほぼ全員がGoogle+を利用しているため、メンバー間の比較が容易
 ・毎年一度、ファンによる人気投票(選抜総選挙)が行われており、人気の定量的評価が可能
 
まずは、ソーシャルメディア分析をする前提として、ソーシャルメディア上のファンと総選挙の順位に相関があることを示す必要があります。
ここでは、ファン数=シェア数+プラスワン数(FacebookでLikeにあたるもの)+コメント数と定義して、1投稿あたりの平均ファン数と総選挙順位をプロットした図が下記になります。
 
 
ざっくりとした結果ではありますが、総選挙の順位と平均ファン数には一定の相関があることが見てとれます。これより、ソーシャルメディア上のファン数が実際の人気を反映していると考えられます。言い換えれば、ソーシャルメディア上のファン数を測定することで、リアルタイムに人気度を測定することが可能になります。
 
次に、AKB48のファン行動を分析するために、AKB48全体に対する熱心さを表す「熱心度」を定義します。
 
熱心度の定義は、ごく単純で「何名のメンバーに反応しているか」です。4名のメンバーに発信しているメンバーは熱心度4、1名のメンバーに発信しているメンバーは熱心度1となります。この場合、熱心度が低ければ低いほど、あるメンバー固有のファンだと考えられます。そこで、実際に熱心度の低(熱心度=1)、中(熱心度=2〜9)、高(熱心度=10以上)のファンの分布を順位毎にプロットすると、下記のような図になります。
 
 
順位が高いほど熱心度が低いユーザが多く、順位が低いほど熱心度が高いユーザが多くなっています。言い換えれば、上位メンバーほど固有のファンが多く、下位メンバーほどファンを共有していることがわかります。つまり、AKB48のファンでは、複数のメンバーに反応するファンが多数いることがわかります。これにより、下位のメンバーがより多くのファンを獲得したい場合、下記のような戦略が考えられます。
「誰かと一緒に露出(共露出)して、ファンをおすそ分けしてもらう」
※あくまでファンを奪うのではなく、「ファンを共有する」「ファンをおすそ分けしてもらう」ことを目指します。

誰から「おすそ分け」してもらうのか?

このように考えた場合、次は誰からおすそ分けしてもらうかを考える必要があります。
 
まず、どの程度ファンが共通しているかを表すネットワーク図を書いてみます。ここでは、各メンバーをノードとした後、ファンの重複割合が一定以上メンバー間にエッジを作成して、ファン共有ネットワークを構成します。
 
 
この図をグループ毎に見てみますと、同じグループや同じ期のメンバーはファンを共有している事が高いようです。つまり、次のようなことが言えます。
「同グループ、同チーム、同期のメンバーは一緒にいることが多く、ファンの移動が起こりやすい」
 
ただ、上記のグラフでは、エッジに矢印が無いため、ファンがどっち方向に流れているかがわかりません。そこで、次にファンの遷移に基づいたネットワーク図を作成します。
 
 
ここでは、同じく各メンバーをノードとし、メンバーm1に反応した後にメンバーm2に反応するファンが多い場合にメンバーAとメンバーBの間にエッジを作成し、ファン遷移ネットワークを構成します。するとネットワーク図は下記のようになります。下記では、AKB48のメンバー46人のみをノードとし、各メンバーのファンの遷移元上位3メンバーから張られるエッジのみを可視化しています。
 
 
上記のネットワーク図を見ると、例えば篠田麻里子さんからは多数のエッジが出ており、多くのメンバーにファンが遷移していることがわかります。一方、柏木由紀さんから入るエッジは多いものの、出るエッジは少ないため、ファンはほとんど遷移していないことがわかります。
 
これを単純に考えれば、篠田麻里子さんからファンをおすそ分けしてもらうのが適しているように見えます。ただ、裏を返せば、篠田麻里子さんはすでに多くのメンバーとファンを共有しているので、これからおすそ分けしてもらうのは難しいかもしれません。
それでは、どのように共露出するメンバーを決めればよいでしょうか?
 
この問題を解くために、GoogleのPageRankを利用します。PageRankは、Googleが当初採用していた検索結果のランキングアルゴリズムです。
端的に言えば、ユーザがあるウェブページに滞在する確率をネットワークの構造から計算するアルゴリズムです。これを、AKBのメンバーネットワークに当てはめると、ファンがあるメンバーにアクションする確率を計算できます。「ファンがあるメンバーにアクションする確率」は言い換えれば人気を表す指標になります。ただ、単純にPageRankを適用しただけでは、現在の人気度がわかるだけです。
 
そこで、「あるメンバーm_kのPageRankを高めるためには、どのメンバーとのエッジを強くすべきか」ということを考えます。手法は単純です。あるメンバーm_kとつながりのあるメンバー集合に対して、「あるメンバーm_iとのエッジをx倍して、m_kのPageRankを再計算する」ということを繰り返します。x=1.1~4.0で変化させた場合に、メンバーm_kのPageRankの増加率上位5名を抽出します。実際には、xをいくつに設定しても、上位5名はほとんど変化しませんでした。
 
このようなアプローチを取ることで、「ファンをより多く獲得するためには、つながりを強くすべきメンバー」を判定することができます。
なお、論文の方では、具体的なメンバー名をあげて分析していますが、ここでは省略させていただきます。
 
このように、ソーシャルメディア上のファンの行動を分析することで、
 ・人気をリアルタイムに測定することができる
 ・共露出するのに適切なメンバーを推測することができる
ということが可能になります。
 
今回はアイドルの人気向上が目的でしたが、マーケティングにおいては、製品やブランド価値向上にも同様のアプローチが使えるかもしれません!
 
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